岩手県食の匠225 小向広子さん(洋野町) 鯨汁
料理の紹介(いわれ・特徴)
洋野町種市角浜地区では、今からおよそ190年前の江戸時代は文政元年3月に95頭もの鯨が浜に打ち上げられ、当時は寄り鯨があると食料になる肉や貴重な油も取れたので非常に喜ばれ、鯨の大漁を授けて下さった神様に感謝の気持ちをささげ今後も恵みを授け下さるよう願いを込め、鯨州弁財天を建立したという歴史がある。
鯨肉は動物性タンパク質が貴重な時代の安価で栄養価の高い食材として用いられてきた。鯨汁は鯨肉料理の一つであり、主に冬場に頻繁に家庭で提供される角浜地区の庶民の味で、正月などは大鍋に鯨汁を作り、餅を入れて雑煮にして食べた。高齢者には大変懐かしい味であるが、今では鯨肉を食す文化が薄れ幻の料理になりつつある。
材料(4人分)
- 鯨肉(本皮塩蔵) 80グラム
- 寒干だいこん 2本
(乾物でおよそ12センチ×3センチ相当のもの)
(乾物重量およそ6グラム(熱湯で戻し絞ったもの42グラム))
(生大根を使用する場合は150グラム) - 凍り豆腐 2枚(大きさの目安:縦8.5センチ×横6センチ×厚さ1.5センチ)
- じゃがいも 200グラム(小4個)
- ごぼう 80グラム
- にんじん 50グラム
- ねぎ 50グラム
- みそ 大さじ3と2分の1
- 水 800cc
作り方
- 鯨肉は3ミリ厚さの短冊切りにして水洗いしザルに上げておく。
- にんじん、ごぼうは皮を剥き、ささがきにする。ごぼうは水にさらす。
- じゃがいもは皮を剥きやや大ぶりの一口大に切る(じゃがいもを切る大きさの目安:小4つ切、中6つ切、大8つ切)。
- 寒干だいこんは軽く洗ったらたっぷりの熱湯で戻し、しっかり水分を絞って1センチ程度の厚さに切っておく。
(生だいこんを使用する場合は皮を剥き1センチ程度の厚さで、いちょう切りにして下茹でしておく。) - 凍り豆腐は熱湯で戻してよく水洗いし、しっかり水分を絞って厚めの短冊切りにする。
- 鯨肉を鍋で乾炒りして油が出てきたらごぼう、じゃがいも、にんじん、だいこんの順に入れて油をなじませる。
- 水を500cc加え、沸騰したら浮いたアクを取る。
- 水を300cc加え、具材に火が通るまで煮込む。
- 具材が煮えたら、みそ、豆腐を加えひと煮立ちさせ、斜め切りしたねぎを入れる。
料理・技術のポイント及び工夫している点
- 塩漬けした鯨の脂身(本皮塩蔵)をじっくり炒めることで旨み(出汁)を引き出し、野菜をふんだんに入れた味噌汁である。
- 鯨肉から出る塩気によってレシピの味噌の分量は加減すること。
- 鯨肉の油分が気になる場合は湯引きして使用してもよい。
- 主に冬場に食べられた料理であるが、寒干だいこんや凍り豆腐が手に入らない時期(あるいは地域)は生だいこんや固い生豆腐を使用してもよい。生豆腐は手でちぎって入れると味が染み込みやすい。
- 作りたてよりも何度か温め直すと味が馴染んで美味しい。特に生だいこんや生豆腐を使用するときは、何度か温め直すことで具材に味が十分に染みて美味しくなる。
- 正月は大鍋に大量に作って、温めなおしながら何日も食した料理である。また餅を入れ雑煮のようにして食べたり、せんべいを割り入れて食べたりした。
- みそは種市地域でよく食べられている赤みそを使用しているが、好みに合わせみそを代えてもよい。
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