令和7年10月31日知事会見記録
開催日時
令和7年10月31日10時00分から10時59分まで
会見記録
広聴広報課
ただいまから記者会見を行います。最初に、知事から発言と発表が2件あります。それでは、知事お願いします。
知事
まず、岩手県ツキノワグマ緊急連絡会議を踏まえた対策についてでありますが、昨日(10月30日)岩手県ツキノワグマ緊急連絡会議を開催しました。北上市から対応事例を報告いただき、岩手大学の山内准教授からツキノワグマ対策についてお話をいただきました。ブナ類が凶作のときには山にいるクマが早く冬眠する傾向にあります。一方、人里の餌になれたクマは里山や街に出てくる可能性がありますので、県民の皆様におかれましては引き続き警戒する必要があります。市町村等のクマ出没情報を参考にしながら、まずクマに出会わないようにするということが大事であります。クマの餌となるものがある場所を避け、食べ物を野外に放置しないことも大切です。もし遭遇した場合には絶対に大声を出したり、物を投げたり、急に走って逃げたりしないこと、クマを興奮させないことが大事です。クマに遭遇して距離があり、気づいていない場合にはその場を離れましょう。万が一クマが向かってきた場合には、顔や首の頭部を守るため、体を丸めてうつ伏せの防御姿勢を取り、クマが去るのを待ってください、この写真のとおりですね。これが基本的な防御姿勢になります。
里山やまちにクマが出てくる現状で、人を襲うクマもいますことから、そのようなクマを捕獲して被害を広げないよう県と市町村が連携して対応を強化します。特に11月から冬にかけて、環境省の指定管理(鳥獣)捕獲等事業を活用して県猟友会に委託し、クマの捕獲を進めてまいります。
昨日(10月30日)の会議での議論を踏まえ、更に市町村や関係機関との調整を行った上で、来週県の関係幹部会議を開催し、政府への要望を確定し、来週中に私か副知事が環境省を訪問し、要望を伝えるよう調整中です。来週は、北海道東北(地方)知事会議もあり、そこでもクマ問題については取り上げられる予定ですので、私がそちらのほうに行くようなタイミングとなれば副知事に環境省を訪問してもらうようにしたいと思っております。
以上です。
次に、発表事項ですけれども、日韓知事会議が11月12日、韓国のインチョンで行われます。日本側からは、私を含め10県の知事が参加し、韓国側からは7市道の首長が参加する予定です。経済及び産業分野の協力案の模索、人口減少及び地方消滅への対応施策がテーマとなっています。また、この日韓知事会議に併せて全国知事会として海外プロモーションを企画しておりまして、そこに岩手県も参加します。プロモーションは、「日本の小都市~まだ知らない魅力的な観光地~」がテーマで、既にSNSでのキャンペーンを始めておりますが、11月11日、ソウルにおいて自治体PRイベントとレセプションを行い、岩手からも観光地や魅力をPRいたします。
もう一つの発表事項は、令和7年度岩手県文化スポーツ表彰と、同いわて暮らしの文化特別知事表彰の受賞者の決定です。
岩手県文化スポーツ表彰、令和7年度の受賞者は文化分野で髙橋トシ(たかはしとし)様、吉田晨風(よしだしんぷう)様の個人お二人、そして、北上市立上野中学校吹奏楽部1団体です。スポーツ分野では、伊藤張二(いとうちょうじ)様、小笠原宏志(おがさわらひろし)様、小形原野(おがたげんや)様、木村昻史(きむらたかふみ)様、久保信幸(くぼのぶゆき)様、下瀬川俊一(しもせがわしゅんいち)様、下田政人(しもだまさと)様、長沼ヨウ子(ながぬまようこ)様、村松輝夫(むらまつてるお)様、吉田春彦(よしだはるひこ)様の個人10人と、岩手県弓道連盟1団体となります。
いわて暮らしの文化特別知事表彰は、グラフィックデザイナーイラストレーターのオガサワラユウダイ様、そして久慈市山村体験施設バッタリー村と久慈琥珀博物館、個人お一人と2団体です。
両表彰の表彰式は、11月18日サンセール盛岡で行います。以上です。
広聴広報課
以上で知事からの発表を終わります。
幹事社
それでは、まず冒頭に知事から発言のあったツキノワグマ対策について、各社から質問があればお願いします。
記者
先ほどの発表のほうでは、市町村と連携して対応、対策を強化されていかれるということでした。昨日(10月30日)の緊急連絡会議のほうを拝見させていただきますと、山内先生のほうからは市街地に現れるクマの現状を踏まえて、捕るほうにかじを切るべきだと、そういったお話もありました。県としては、そういった御意見を踏まえて、どのように対応されるかお聞かせください。
知事
まず、この10月に死亡事例が増えたこと、そして、市街地への出没が増えたことというのが、大きなことと受け止めております。最近の死亡事例については、加害個体を捕獲することができていますけれども、被害を広めないためにも加害個体の捕獲が重要ですので、より力を入れていきたいと思います。
市街地の出没について、一定捕獲できているところもありますけれども、できていないところもありますので、これについても警戒の度合いを高めながら捕獲にも力を入れていきたいと思います。
あとは、全体的な個体数管理の中での捕獲ということで、先ほど申し上げたような猟友会の精鋭メンバーによる指定管理鳥獣捕獲等事業、環境省の事業を活用した冬季捕獲事業を200頭を目安にして進めていきます。
記者
ありがとうございます。隣県の秋田県のほうでは、防衛省への支援要請をされて、自衛隊の部隊が派遣される方向で動いておりますし、職員の増員も発表されました。本県では、同様な動きをされるかどうかという部分で、自衛隊の派遣要請だったり、あと職員さんの増員、いわゆる担当部署の設置であったり、そういった動きとして何か御予定されているものはあるか、お聞かせください。
知事
秋田県は岩手県と比較した場合に、今年(令和7年)は出没数が多く、そして、人的被害数が多く、そして、捕獲数も秋田県のほうが多く捕獲を進めている状況です。
一方で、猟友会の会員数や市町村の数など、秋田県のほうが人口が岩手より少ないということもあって、そういった捕獲に従事する人の数が少ないということもあり、秋田県市町村からもうこのままではもたないということで、マンパワーの支援の必要性の中から自衛隊派遣を要請するという経緯になったというふうに聞いております。そういうふうに理解しております。
岩手県においては、自衛隊の派遣という要請は市町村からはないのですけれども、夏の市町村要望、相手が県への要望ということもあって、県に対する人的、財政的支援の要望というのはありましたし、あとは昨日の会議も含めて県と市町村とのやり取りの中で、マンパワー支援について国にどういう形で求めていくかということについては、まず当面来週予定している県の関係幹部会議での政府要望取りまとめに向けて調整をしていきます。
幹事社
今のお話に続いてなのですけれども、冬季捕獲等事業の話が今言及ありましたけれども、これはそうすると例年よりも捕獲を強化するというふうな方針だという理解でいいのでしょうか。
知事
岩手県は年間の捕獲上限数を増やしてきて、ツキノワグマに関して今年(令和7年)は796頭を上限数としているのですが、この上限数を超えて、捕獲してもいいということを市町村との間で決めておりまして、9月末時点で714頭というところで確認しておりますが、既にもう796頭を超えているかもしれません。それに加えて、更に200頭を目安にして捕獲するということです。
幹事社
そうすると、1,000頭規模はまずこの冬のシーズンにかけては捕獲していくということですね。
知事
はい。
幹事社
分かりました。あと、冒頭知事がおっしゃったのに加えてなのですけれども、改めて10月27日に一関でもクマによる被害で犠牲になられて、岩手県内は今年(令和7年)に入って7月から合わせて5人ということで、隣の秋田県が3人で、全国では今12人ということで岩手が亡くなっている方の数というのは一番多くて、一方人的被害のほうは秋田のほうが上回ってはおりますけれども、改めて人が犠牲になる、被害を受けているということに対する知事の受け止めをお聞きしてよろしいですか。
知事
本当にお気の毒で、また、悲惨なことでもあり、亡くなられた方の御冥福をお祈りしたいと思います。また、関係の皆さんにとってはものすごく大きな衝撃で、これも重ねてお見舞いを申し上げたいと思います。もう最初から人を襲うという形でやってくるクマがいるということでありますので、それが出てくる可能性というのがもうどこにでもあるということを前提にし、警戒の度合いを高めていかなければなりません。このもともと住んでいた場所、里への出やすさ、また、里の住居の、あるいは施設の位置関係等々、いろんな理由で死亡事例という悲劇が起きているということだと思いますけれども、そういった死亡事例の環境といいますか、背景といいますか、そういったことも分析しながら加害個体を着実に捕獲すること、また、死亡事例に至らなくても人間を襲うクマについてはとにかく捕獲していくこと、また、里山や街に迷い出たようなクマについても、これもしっかり捕獲していくこと、これに努めていきたいと思います。
幹事社
その上で、おととし(令和5年)も人身被害が多くて、今年(令和7年)は上回っているような状況ではあるのですけれども、当時知事は現状を異常事態というふうに知事会見でおっしゃっておりました。改めて今のこの現状というのを別に短い言葉でという意味ではないですけれども、表現するとしたらどう表現されるでしょうか。
知事
おととい(10月29日)狩猟に詳しい方と話をする機会があり、クマについては昔から岩手はあちこちにクマが出て、クマと遭遇した人の話というのがあり、家のあるところまでクマが出てきた、窓からクマが見えたということは昔からあって、そういう中にはいろんな笑い話のような、放っておいたらもういなくなったとか、「コラッ」と言ったら逃げていったとか、そういう話があるのですけれども、そういう過去の経験が通用しない状態になっているということを県民の皆さんに改めて知ってほしいと思います。これは、津波でも過去の経験にだけやっていると、この辺までは水が来ない、津波が来ないというところにまで津波の水が来ることがあるというのと似ているのですけれども、過去クマが出たけれども、大したことなかったというような経験だけで判断せず、今のクマは人を襲ってくるものもいる。特に昨日(10月30日)山内先生がおっしゃっていたように、今空腹になっているクマは早く冬眠してしまう、動かないで済むようにもう早く冬眠するので、今冬眠していなくて、まして人がいるようなところに出てくるクマというのはかなり確信的に食べ物を求め、あるいは人を襲うことを求めてやってきているので、これはかつてとは違うのだという認識を県民の皆さんには持ってほしいと思います。そういうことですね。
幹事社
ありがとうございます。ほか質問、クマに関してありますか。
記者
来週行うという関係本部会議の件をお伺いします。この中では、政府に対する要望を取りまとめるということでしたが、具体的なマンパワー支援であるとか、財政支援であるとか、どういったものを取りまとめるか、もう少し具体的にお聞かせ願えればと思います。
知事
今話しているような、まず死亡事例に至るような人を襲ってくるクマの対策ということ、そして、そこまで凶悪でなくても里山や、更に街に出てくるクマが増えている、そのことに対する対策、そして、年間を通じて行われている頭数管理についてもこれを増やしていかなければならない状況でありますので、それに対する支援、これらはもう今すぐやっていかなければならないことですけれども、プラス緩衝地帯を確保していくための支援、これも今できるところからどんどんやらなければならないことではありますけれども、クマの生息地と人が住んでいる場所の間にやぶとかクマが隠れるような場所を残さない、そして、河原も見通しがきくようにするということへの支援がその次に来ると思いますし、更にはクマの生態に関する調査と分析の強化ですね。今まで基本的に県単位で生息数が何頭いるので、何頭捕獲するという個体管理の目安を設定して対応しているのですけれども、クマの危険に対する対策としてのデータが今必要になっている状況ですので、よりきめ細かくこの地域に何頭いるとか、そういった更なる深い調査、分析、これは国の研究所や国の人材でないと、オールジャパンの研究体制でないとできないことだと思うので、そこまで含めて要望することになるというふうに考えています。
記者
ありがとうございます。やらなければいけない事業、対策も多いということですけれども、それでも岩手は秋田よりも人材がいるので、マンパワー支援、秋田県は自衛隊でしたけれども、国へのマンパワー支援というのは現時点では行わないという方針なのでしょうか。
知事
人手は多ければ多いほどいいですし、また、人を増やしていくためにはお金が必要ですので、そういったマンパワーや財源についての支援というのは、それを国のどの機関のどういう人たちというところまで具体的にはしないかもしれませんけれども、国からのそういう人的、財政的支援というのは強く求めていくことになると思います。
記者
人身被害が相次いだおととし2023年は猟友会に対して捕獲の報償金を支給する対応がありました。今年(令和7年)も人身被害などが相次いでいることを踏まえて、報酬面での対応として、現時点でのお考えがあればお聞かせください。
知事
来週の政府要望を取りまとめる中で、報酬の財源の確保というところも検討の対象になると思います。
記者
来週の会議を踏まえてということでよろしいですか。
知事
そうですね、その間にまた関係者とのやり取りもしながら調整したいと思います。
知事
そうですね、そういうことも含めて広く対策について確認していくことになると思います。
記者
クマ対策についてちょっと繰り返しにはなるのですけれども、隣県の秋田県が分かりやすい形で対策を進めている中で、岩手県は死者が全国最多ともなっていて、岩手の県民の方からもすごく不安な声ですとか、動き出すのが遅いのではないかと聞くのですけれども、岩手県として対策が後手に回っているという認識はあるのかというところと、あともう一点は、県の担当職員の方、秋田県で昨日(10月30日)約4倍に臨時で増やしたというところがあったのですけれども、岩手県ではその予定とか見通しはあるのかというところをお聞かせください。
知事
死亡事例に関しては、まず最近の例については加害個体の捕獲ができていますし、DNA鑑定など県の施設、人員も使って死亡事例への対応をし、被害が更に広がらないように対応しているところです。
それから、秋田がやっていなくて岩手がやっていることとしては、県で麻酔を吹き矢で当ててクマを捕獲することに関しては、岩手県として盛岡以外のところについては、これはやれる人が盛岡動物公園の園長さんしかいないということもあるのですけれども、盛岡市以外のところへは県の事業として、その方を派遣し、麻酔で捕獲することを進めています(県独自の取組については、吹き矢による麻酔のできる方を盛岡市以外に派遣している事業のこと)。
それから、11月から2月にかけての特別な捕獲というのは秋田県のほうでもやっているのでしょうか。やると決まっているのでしょうか。
記者
そこはちょっとまだ分からないですけれども。
知事
ですから、個体管理は、やはり個体数管理は非常に重要なので、そこのところを実態に合わせた強化を岩手県では既にやることを決めて、チームの編成のほうも猟友会のほうで進めてもらっていると思います。
記者
後手に回っている認識はないというところでよろしいですか。
知事
ほかに何か具体的にあれば、それらについて答えていきたいと思いますけれども、クマ対策で必要なのは個別具体的な危機に対してどう対応していくかということでありますので、凶悪なクマに対する対応、また、街に迷い出てきたクマに対する対応、それらがそもそも山の中にいるわけですから、山の中での個体数管理、それらについて先ほど申し上げてきたように岩手県としては進めてきているところです。
記者
追加の質問でそこも関連するのですけれども、県の職員、県で言うと自然保護課になるかと思いますが、例えば電話対応だったりという業務がいつもより増えている中で、臨時で例えば職員を増やすだとか、そういった見通しとかは。
知事
増やすことを決めたときには、すぐ公表したいと思います。
記者
特にまだ今予定はないということで。
知事
増やすことを決めた際には、迅速に公表していきたいと思います。
記者
先ほども少し言及がありましたが、秋田県の知事が自衛隊の派遣を要請したということについて、達増知事もSNSのほうで連絡を取り合っていきたいというような発信をされておりました。今後の幹部会議のほうでも議論するということでしたけれども、現時点で例えば岩手駐屯地のほうにはどのようなことを要請したいというようなお考えがあるのか教えてください。
知事
岩手駐屯地は、クマが出る場所で日頃から活動していますので、クマ対策ということは、クマへの警戒というのでしょうか、それは岩手駐屯地さんはふだんからやっていますので、そうした情報交換などもふだんから県との間では行われています。特に今国として防衛省や内閣として自衛隊のクマ対策支援ということを正式に決めたところでありますので、それの在り方について情報交換とか意見交換を特に今進めているところです。
記者
秋田県のほうでは、昨日(10月30日)実際に訓練も自衛隊と訓練も行ったようですけれども、岩手のほうでも今後の動き次第ではそういったことも検討していくというような形にはなるのでしょうか。
知事
岩手駐屯地の皆さんであればこういう基本的なことは既に御存じだと思います。
記者
私からは、先ほど市町村とも連携を強化していくというお話もありましたが、県内では紅葉の季節になってきて、皆さん外に出る機会も多くなってくると思うのですけれども、そこでも警戒が必要になってくるのではないかと考えておりまして、紅葉のイベント中止を促したりとか、注意を呼びかけたりという動きはありますでしょうか。
知事
市町村ごとに警戒の仕方、注意の仕方、また、場所とかきめ細かく進められていますし、業界ごとにいろいろ注意喚起でありますとか、外から来る人への助言の仕方とかは今それぞれ工夫されていると思います。観光に関しては、死亡事例があった近くに関してはキャンセルの例があると聞いておりますけれども、そのほかのところでキャンセルが増えているとか、お客さんが減っているというような報告はまだ上がってきていないところでありまして、来るお客さんたち、いろんな楽しみ方、車から降りない形でのドライブとか、そういう食事の場、道の駅でありますとか、レストランでありますとか、そういうところを車で回って歩くような、外を歩かないようなレジャーの仕方とかいろいろあると思いますので、そうした工夫、そして、イコール警戒をそれぞれの場でやってもらえればと思います。
記者
クマのことをもう一度お尋ねするのですが、ツキノワグマの管理保全計画というのは、あくまでも自然保護の観点からクマを保全するという意味での捕獲頭数の上限を決めてきましたけれども、先ほどのやり取りからあったように、やはり他県でもそうですけれども、もう上限を超えるような捕獲をしないと市町村からの要望もあって、追いつかない状況、対応が追いつかない状況になっていると、フェーズが変わったのかなと思うのですが、先ほどもおっしゃったのかもしれませんが、改めて捕獲していくことの大義といいますか、必要性みたいなところを知事からお聞かせいただけますか。
知事
今まで例がなかったような異常なクマの里山、街中への出没というのも、それは自然現象の一つではあります。ただ、そういった自然現象というのが人間側の様々な地球温暖化というのが関係しているかもしれませんし、また、山裾のところに、かつては農業地帯、農村集落がしっかりしていて、そこには狩猟をたしなむ人が大勢いて、そこを超えて街のほうにクマが出るということができなかったことが、人間側の状況が変化して、自然が、川を伝えば盛岡の中心にまで及んでくるような状況になっているということで、本質的にはやはり自然と人間には関わり方だと思います。ですから、両極端にならずに、もう自然最優先で、それに対して人間は何もしないということでもなければ、およそ自然というのを否定して人間側の論理だけでやるというのでもなくて、やはり人と自然のあるときはせめぎ合いであり、あるときは共生であるという中での対策ということだと思っています。ですから、やはり日本国として岩手県だけの問題ではなくなっておりますので、調査と分析ということをより深く、正に日本の国土に関する理解をより深めていかなければならない状況になっていますので、日本の国土を強くするという観点からもクマに関する調査研究を国として更に深めてほしいと思います。
記者
すみません、ちょっと遅れて来てしまったので、もしかぶっている質問が出ているのでしたら、お許しください。
知事
はい。
記者
専門職員の配置ということについて、質問させていただきます。隣の秋田県では、もう動物の自然保護管理に関する専門知識を持ち、継続して勤務する正規職員を配置されているというふうに聞いています。かつ、秋田県では3人いて、知事の判断でクマの事故が発生すれば現場に赴き、猟友会や市町村、警察と連携して対応に当たるというような職員がいるそうです。すみません、これ実は私が同僚にちょっと求められて質問しているので、読みながらで大変恐縮なのですが。一方で、岩手県の担当課の職員さんというのは、ほかの職員さんと同じように人事異動で来られるというような方ばかりで、そういう意味では継続的な知見の蓄積というのはなかなか難しい状況ではないかというふうに考えられます。ということで、実際にこのような専門の職員、実際環境省さんの資料によれば、岩手県にも専門職員は2人いるということになっていますが、このお二人は研究職であって、現場対応の専門職という方ではなさそうであるということでして、実際にこのような専門知識を持っていらっしゃって、現場の対応に当たるような職員さんを今後雇用していくというようなことについては、どういうふうにお考えでしょうかというような質問です。
知事
岩手県では、死亡事例があったようなときには加害個体のDNA検査に県の専門家が従事していますし、それぞれ、あと専門家の必要性というのは市町村からずっと求められていて、昨日(10月30日)の会議でも保護の必要性と、そして、安全確保の必要性、どうバランスしていいのかというような、そういうことを県からどんどん指導してほしいというニーズもあります。ただ、個別具体的なケースに応じて判断が求められるわけでありまして、そして、より深い知見を得ようとすれば、昨日(10月30日)やったように岩手大学に全国的にも信頼されているクマの専門家の先生がいらっしゃいますので、その人の下に各市町村、全市町村から集まって、そして、現状の分析と対策の確認をしていくというようなやり方が今有効な局面であります。県としても、それぞれ場面、場面に応じて市町村と連携をしていくわけでありますけれども、そういう中でどういう人材が更に必要か、どういうマンパワーが更に必要かということは随時市町村と調整しながら、国にも求めていきたいと思います。
そうですね、あと岩手は吹き矢で麻酔を打ってクマをおとなしくさせられる獣医さんの存在というのも大きいところでありまして、クマを巡っては日本のあちこちにいろんな人材がそれぞれいて活躍しているわけですので、ないものねだりではなく、あるもの、いる人を軸にしながら効果的な対策をケース・バイ・ケース、個別事例に応じて講じていくというのが基本になっているわけであります。そういう形で、先ほど述べたような対策を今講じ、更なる対策については来週関係幹部会議を開催して取りまとめていきたいと思います。
記者
ちょっと一応確認なのですが、そうなると岩大の先生含めたいろんな人材を活用してやる、外部の人材も活用してやるというやり方が今非常に機能しているので、直ちにそういう県の内側に専門家の職員を置くということについては考えておられないというような理解でよろしいでしょうか。
知事
秋田県の県職員として非常にクマに詳しい方がいるのは、私もいろいろテレビでおととし(令和5年)あたりから見ていて、非常にすばらしい人材、秋田県にいらっしゃるなというのは私も承知していますけれども、その人は本当にその人なりの生い立ち、問題意識、関心、そして、今クマに対して取り組みたいという、そういう中でそこにいる、もうその人以外に替えようのないかけがえのない個人という方でありまして、そういう方は岩手の中には猟友会会員の中とか、もうこの人のおかげで何人も助かっているとか、何件も助かっているとか、被害が拡大しないで済んでいるというような、そういう人材は岩手も何人もいますし、県や市町村がそういう猟友会の会員さんとのつながりというのも持ちながら対応しているところでありまして、要は個別具体的に問題を解決していけるかどうかというところが問われていると思いますので、そういったところに現実的に対応していきたいと思います。
記者
理由は大変分かったのですけれども、結論として直ちにそういう人たちの育成や雇用を検討するという段階にはないという理解でよろしいでしょうか。
知事
我々がまだ把握していないけれども、岩手県内にそういう人がいて、すっと県職員になるということは常にあり得ることだと思っていますので、決してこれ以上人を増やさないとか、人を求めないということを決めているわけではなく、そういう人がいればもちろんそれはどんどん活用といいますか、一緒にやっていきたいと思っています。要は、そういう人が実際にいるかどうかということで、例えばガバメントハンターという言葉もありますけれども、ガバメントハンターになりたい人応募してくださいというようなやり方で集められるものではなくて、もう本当に個別具体的にこの人であればなれる、さあ、なるかどうかというのを、本当に個別的に人一人一人に当たりながら、そういう人材がいるかどうか見つけていくようなことだと思います。基本的に命の危険に関わる作業がありますからね。ですから、そういった命の危険がある作業をやれる人たち、今までやってきた人たちが力を合わせるということを軸にしながら新しい力も頂いて対策を進めていくということです。
記者
平たく言うと、個別の事態を一つ一つ解決していく中で、そういうすばらしい人材に対する出会いがあって、先方さんにもそういう御意向があればそこで雇用というのを考えていきたいという、そういうような意味合いになりますでしょうか。
知事
ただ、聞かれればそう答える、今そう答えたわけでありまして、とにかく今やらなければならないことが北上の事案もそうですし、盛岡の状態もそうですし、まずそこに対してきちっと対応していくということから、更に中長期的な対策を広げていくということをしているところです。
記者
マンパワー的な、全国的な流れで、警察庁が、警察官が人の生活圏でライフル銃を使用できるという方向で検討しているということが報じられています。猟友会の負担軽減などにつながるのではという期待感もある一方で、過去に例のないことでもあります。知事は、こうした流れは歓迎したいというスタンスなのか、あるいは懸念点があれば教えていただきたいなと思います。
知事
銃の性能とか、銃弾の跳び方とか、それをどういう場所ではどういう危険性があり、どういう場所では有効かもしれないということを専門的に検討する必要があるのだと思います。私自身は、そういう専門的知見を持ち合わせていないところであります。
記者
ただ、これ今まだ検討段階だと思うのですけれども、実際にこうした方針でできるとなった場合は、猟友会の負担軽減だとかにつながるというふうには感じていらっしゃいますか。
知事
何か個別具体的な事例を離れた抽象論で負担の軽減とかという考え方よりも、ケース・バイ・ケースでいけば、吹き矢で麻酔を打つほうが有効で、かつ、すぐそれができる場合にはそうするということを我々はやっているわけでありまして、まずはその場、その場に応じた最適、適切なやり方を今工夫してやっていくということですね。そういう今までやったことがないことについての有効性の検討作業は、もうその専門家の皆さんにやっていただければいいと思っています。
記者
先ほど知事は来週の取りまとめの中で、やぶを残さない対策に関してのお話がありましたけれども、福島県だったり、山形県が県として予算化してやぶの刈り払いに取り組んでいる中で、岩手県は今後そうした対策の予定はございますでしょうか。
知事
国土強靱化5か年計画というのが始まったときから、国の予算を活用して河原の雑木切り倒しもできるようになって、それまであまりできていなかったことをかなりやれるようになってはいるのです。それを今のところは洪水の実績があったり、また、洪水が非常にリスクが高いところなどを優先してやってきているのですけれども、結局建設土木業者さんへの委託事業ということになっていきますので、やはり財源、予算があればどんどんやって、更にクマ対策的に優先すべきところにもどんどん作業をしていくことができますので、そういったことを国に求めていくことになると思います。
記者
あくまでも国の予算としての反応次第というようなところになるのですか。
知事
既にやっているのですけれども、一方で洪水対策も必要ですからね。それはそれでやめてしまうわけにはいきませんので、また、洪水対策としてやったことがクマ対策になっているということもあるのですけれども、県としての独自のものとしては、今県民森林税(森林づくり県民税)の活用を、クマ対策を念頭に置いた緩衝地帯の確保や河原の雑木処分にもどんどん使っていくという、それであれはもう12月定例会に報告すればいいぐらいな感じでしたかね。そうですね、既に条例の中で読めるところもあるので、そういったところについては大体賛同いただいているので、すぐにもスタートできると思います。
記者
そうなると、現時点ではまだだけれども、常任委員会で報告をすれば……
知事
いや、既にそうしようというコンセンサスは大体いただいていると思うので、すぐにも取り組めると思います(令和7年度から、いわての森林づくり県民税を活用した「県民参加の森林づくり促進事業」で市町村による緩衝帯整備に取り組んでいるほか、令和8年度以降新たに、クマ等の移動経路となり得る、河川内や学校周辺等の樹木の伐採、やぶの刈払い等の環境整備を行うことを素案に盛り込んでいる)。
幹事社
クマ(対策の件)よろしいですか。では、クマの質問は以上にしまして、それ以外発表事項でありました2件について各社から質問あればお願いします。
記者
韓国訪問について伺います。今回の訪問を通して経済及び産業分野の協力案の模索であったり、人口減少等、テーマに上がっておりますけれども、本県としても力を入れていらっしゃる人口減少対策であったり、あと海外戦略という部分で、知事として具体的に今回の訪問を通してどのようなことを発信していきたいとお考えでしょうか。
知事
海外プロモーションの全国知事会のテーマで「日本の小都市~まだ知らない魅力的な観光地~」というのがテーマなのは、もうニューヨーク・タイムズがまず盛岡市、そして、山口市、富山市と取り上げているのを受けてのものでありまして、まずそういったところを韓国の皆さんにも紹介して、アピールしていきたいと思います。
記者
そうしますと、観光面がかなり重視されていらっしゃるという意味合いでしょうか。
知事
物産の売上げ増も狙っているところではありますけれども、でもやはり観光との組合せが大事だと思っています。日本を訪れて、そこで食べたり、飲んだりするという、そういうイメージを持っていただいて、それを韓国でもできますよという感じで宣伝できればと思います。
幹事社
ほかよろしいでしょうか。では、ほかいらっしゃらなければ、その他の事項について、本日は記者クラブを代表しての幹事社質問はございませんので、各社から質問があればお願いします。
記者
度々ですみません。先日盛岡市が財政難を理由に、2026年度から順次123事業を見直すという方針を示しました。先日開催されたシティマラソンであったり、風物詩と言われる北上川のゴムボート川下りと、様々な事業が入っておりましたけれども、今回の見直しを受けて市民から非常に困惑の声も聞かれているという現状でもあります。今回方針についての知事の受け止めをお聞かせください。
知事
議論のたたき台として示されたのかなと思っております。あれを全てやめると決めたわけではないと思っておりまして、市の財政をよりほかにもいろいろお金を使えるようにするためには、ここを減らせばその分は使えるという資料としてつくられたものでありましょうから、市民的な議論を経て財政の在り方とか事業の在り方を決めていけばいいのではないかと思います。
記者
先ほどのニューヨーク・タイムズによる盛岡市の評価等もあると思いますけれども、こういったイベントを通して盛岡の魅力を発信してきたのかなというところもあると思いますが、県として例えば市と連携してイベントの継続であったり、そういった御検討といいますか、取組についてのお考えとすればいかがでしょうか。
知事
事前に説明は受けていないし、いまだ説明は受けていないので、個別のことについて県としてどうこうというのはないのですけれども、更に言えば盛岡市として今までなかったような資料を作って、今までにないような議論をするというときに、知事が最初にああしろ、こうしろというのは非常によくないと思っているので、まずは私は何も言わないことにしたいと思います。
記者
話題変わります。今週の(10月)28日に発売になりました白銀のひかりについてお伺いします。まず、知事はこの白銀のひかり、お食べになられて、どういった感想持たれたでしょうか。
知事
銀河のしずくをベースにしているので、銀河のしずくと同じような白さ、つや、一粒一粒の存在感、口に入れたときの歯ごたえのよさというのが白銀のひかりにばっちりあるので、米作の条件不利地域でも作れるということがセールスポイントではあるのですけれども、この味のよさも非常に大きいセールスポイントになるなと思いました。
記者
その上でお伺いしたいのですが、令和10年には今の作付けの面積は1,500ヘクタールまで拡大して、今年度(令和7年度)は県内の消費を中心ということですが、今後の県としての販売戦略、目標みたいなのはどのあたりまで知事としてはイメージされているのでしょうか。
知事
農林水産部が公式に発表している数字があったような記憶があるので、ちょっと違う数字は言えないから、でたらめを言うわけにはいかないのですけれども、基本的に増やしていく傾向にあります。今年(令和7年)は植えていないけれども、来年(令和8年)は植えたいとか、うちも植えたいとかという声はかなりあると聞いています。
記者
例えばの話をして恐縮なのですけれども、国内の消費拡大はもちろんですけれども、海外に向けてとかという部分も戦略としては持っていらっしゃるということでしょうか。
知事
この間、ドジャー・スタジアムでおにぎりを配ったのですけれども、その配る前、地元の流通関係の方から聞いた話で、ドーナツの代わりにおにぎりを食べるというのがはやり始めているそうなのです。
アメリカ人にとってドーナツというのは、いろんなドラマや映画でもドーナツ食べるシーンが出てくるし、ツイン・ピークスにも出てきますし、部屋の中とか会議室、コーヒーとドーナツというのがあって、休憩時間とか小腹がすいたときにコーヒーとドーナツというのは、広くアメリカ文化として定着していると言っていいと思うのですが、それがおにぎりのほうが健康だからといっておにぎりに代わっていく、一緒にお茶も飲まれたりするらしいのですけれども、そこにはものすごく伸びしろがあるなと思いました。ですから、世界中が日本の食や食を中心とした生活文化をすごく愛好して、持っていけば持っていっただけ売れるみたいな状況になってきていますので、そういうチャンスはあると思います。
記者
宮城県知事選について、ちょっと時間がたってしまったのですが、村井知事が接戦の中で6選を果たしたこと、そこに対する受け止めと、選挙の中でデマだったり誹謗中傷が今回すごく多かったというところが問題になりました。そこに対するお考えがあればお聞かせいただけますか。
知事
これなかなかちょっと実態を直接経験していませんので、なかなか確たることは言えないのですけれども、解説記事の連載を読んでいますけれども、その中でも長年にわたって宮城県政に関わっていた人が、宮城県最悪の選挙だったと言っているというのを記事で読みましたけれども、かなり今までにないような問題点がたくさんあった選挙だったなというふうに報道からは受け止めているところです。特にデマの問題ですね、デマが大量に、かつ、県外からどんどんSNSで、県外からデマが投入されていき、それが投票にかなりの影響を及ぼすというのは非常によくないなと私も思っております。村井知事もそこのところが非常に問題で、そういうことが二度と起きないような制度的なことをしなければならないとおっしゃっているのを聞きましたけれども、そういうことなのだと思います。
記者
村井知事が6選を果たしたことについては、何かありますでしょうか。
知事
そういう中で宮城県民の方々が出した結論ということで、重く受け止めたいと思います。
広聴広報課
以上をもちまして記者会見を終わります。
次回記者会見
次の定例記者会見は11月17日(月曜日)の予定です。
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