「いわて幸せ作戦会議(in二戸)」(令和6年12月12日)

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ページ番号1080082  更新日 令和7年1月20日

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日時
令和6年12月12日(木曜日)10時30分から11時50分まで

場所
二戸地区合同庁舎 1階大会議室

出席者
・参加者(敬称略)
 
新谷 武仁 (二戸市地域おこし協力隊)
  大清水 健治(軽米町文化協会副会長、書道教室主宰)
  柾本 伸悦 (有限会社高倉工芸 箒職人)
  戸来 雅美 (岩手県食の匠、学校法人カナン学園三愛学舎講師)

・県側
 達増 拓也 知事
 阿部  博 県北広域振興局副局長
 西野 文香 理事兼政策企画部副部長兼首席調査監

開会

西野副部長 
 
定刻となりましたので、ただ今から県政懇談会を開催いたします。
 皆様には、師走のお忙しいところ御出席いただきまして、本当にありがとうございます。本日は、「伝統の技と文化で豊かな暮らしを、北いわてから」を懇談テーマといたしまして、二戸地区で地域の魅力向上や活性化などに取り組まれている方々にお集まりいただいております。
 私、本日の進行役を務めさせていただきます、県政策企画部の西野と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

知事あいさつ

写真:懇談会の様子1

西野副部長
 それでは開会に当たりまして、知事から挨拶申し上げます。

達増知事
 
皆さん、おはようございます。お忙しいところ県政懇談会に参加いただきまして、誠にありがとうございます。県議会議員のお二人も、お忙しいところありがとうございます。
 県政懇談会というのは、知事が県内の各地域や各分野で活躍している人の話を直接聞いて県政に生かすということで、昔からやっているのですけれども、「いわて幸せ作戦会議」と銘打っているのは、今の県の総合計画「いわて県民計画(2019~2028)」の基本目標が、「東日本大震災津波の経験に基づき、引き続き復興に取り組みながら、お互いに幸福を守り育てる希望郷いわて」としていますので、どうやって、お互いに幸福を守り育てていくのかということで幸せ作戦会議としています。
 そして、今日は「県政懇談会in二戸」ということで、二戸広域、北いわて、カシオペアの地域で活躍してる皆さんにお集まりをいただきました。古い歴史や文化があり、高速道路もインターチェンジがそれぞれの市町村に便利なようにできていて、やろうと思うと、いろんなことができるところだと思っております。最近は、東京大学(総括プロジェクト機構)「プラチナ社会」研究所の人たち、小宮山宏元総長さんはじめ、岩手県北の二戸エリアに関心を持って、いろいろ研究をしながらイノベーションの試みをしてもらっているところです。様々な可能性が広がる地域でありますので、どうぞよろしくお願いいたします。

西野副部長
 ありがとうございました。

出席者紹介

西野副部長
 
それでは、この後の進め方ですが、まず私からお一人ずつ御出席の皆様を御紹介させていただきます。続けて、1分程度で簡単な自己紹介をお願いいたします。その後、本日のテーマに沿ってお話をいただきますが、お一人ずつお話が終わった都度、知事がコメントするような形で区切りながら進めていきたいと思います。そして、最後に自由懇談の時間も設けたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、座席表に従いまして、本日御出席の皆様を御紹介いたします。二戸市地域おこし協力隊、新谷武仁さんです。

新谷 武仁
 二戸市地域おこし協力隊の新谷と申します。本日は、このような機会をいただき誠にありがとうございます。経歴はちょっといろいろあるんですけど、前職は造園業の仕事をしておりました。今現在は二戸市で、今年の4月から二戸市地域おこし協力隊として漆掻きを始めさせていただきました。活動の内容としては、漆掻き技術の習得であったり、イベントへの参加であったり、そういったふうな活動をしています。本日は、よろしくお願いいたします。

西野副部長
 ありがとうございました。それでは、次に軽米町文化協会副会長、書道教室主宰の大清水健治さんです。

大清水 健治
 おはようございます。軽米からまいりました大清水健治です。よろしくお願いいたします。今日は、県北で活躍なさっている様々なジャンルの方のお話が伺える機会に参加させていただきまして、ありがとうございます。経歴は、配っていただいたもの(出席者名簿)に載せてありますが、今は主に書道教室の方を中心に、自分が身につけた技術で文化の発展に協力できればいいなと思って、活動を続けております。本日は、よろしくお願いいたします。

西野副部長
 ありがとうございました。続きまして、有限会社高倉工芸箒職人、柾本伸悦さんです。

柾本 伸悦
 高倉工芸の柾本と申します。現在は、箒職人ということでやらせていただいております。略歴にあるとおり、僕もいろんな海外協力隊に参加したり、大学で働いたりしていましたけども、現在は、(有限会社高倉工芸の代表が)親戚ということもあって、この地域の伝統文化である箒の製造に関わっています。高倉工芸は、もう全部、栽培、製造、販売もやっていまして、ちょうど昨日(名古屋で販売を行い)名古屋から夜たどり着いて今日来ております。どうぞよろしくお願いいたします。

西野副部長
 
ありがとうございました。
 それでは、次は岩手県食の匠、学校法人カナン学園三愛学舎講師、戸来雅美さんです。

戸来 雅美
 一戸町から来ました、岩手県食の匠をさせていただいております、戸来雅美と申します。食の匠ということで、郷土料理の伝承活動をしております。私は新潟県出身でして、岩手に移住してきて23年目になるんですけれども、岩手のこの自然豊かで人が温かくて、水と空気がおいしい、だから、そこで採れる食べ物もすごくおいしい、この岩手県のことが本当に大好きで、岩手県が良くなっていくことを考えていると本当にワクワクしますので、今日はこういう機会に参加させていただきまして本当にうれしく思っております。今日はよろしくお願いいたします。

西野副部長
 ありがとうございます。そして、県側でございますが、達増知事、県北広域振興局二戸駐在の阿部副局長でございます。
 また、本日は、県議会議員の皆様にもお越しいただいておりますので、御紹介いたします。二戸選挙区選出の五日市王議員です。

五日市 王 議員
 よろしくお願いします。

西野副部長
 同じく田中辰也議員です。

田中 辰也 議員
 よろしくお願いします。

西野副部長
 本日、このメンバーで進めて参りますので、よろしくお願いいたします。

懇談

写真:懇談会の様子2

<テーマ>
 伝統の技と文化で豊かな暮らしを、北いわてから

西野副部長
 今、コーヒーも配られましたが、皆様のお手元にお菓子と飲み物を準備いたしました。お召し上がりながら懇談いただければと存じます。
 ここで、阿部副局長から本日のお菓子とテーマの御紹介をさせていただきますので、是非お召し上がりになりながらお聞きいただければと思います。

阿部副局長
 
はい。改めまして、二戸地域担当の副局長の阿部でございます。
 本日お配りしております、お菓子とお飲み物について御説明をいたします。まずお菓子は、二戸市浄法寺の就労継続支援B型事業所「ほほえみ工房」さんの、「にゃスク」です。今年生誕30周年を迎えました、旧浄法寺町のご当地キャラ「浄法寺のねこ」の焼き印が入ったシュガーバター味の「シュガーにゃスク」と、シュガーバター味に醤油風味をのせた「醤油にゃスク」の2種類を御用意いたしました。緑のパッケージがシュガー、赤が醤油のクリスマス特別パッケージでお配りしております。浄法寺のねこさんから、直接商品開発の依頼を受け、試行錯誤を重ね、ラスクの形に仕上げたというふうにお伺いをしております。お飲み物は、二戸市下斗米にある珈琲店、自家焙煎珈琲「つきあかり」さんの、「コロンビアデカフェ」でございます。長らく関東でお仕事されていた御店主が、10年前、一杯のコーヒーに魅了されたことをきっかけに、働きながら資格取得などに励まれ、昨年、出身地の二戸市内にお店をオープンされたとお伺いしております。コーヒーを通じて幸せな人生をモットーに、道の駅やマルシェ、市内の雑貨店などに出店をされています。本日御用意したコーヒーは、カフェインを99.9%カットしたコロンビアデカフェでございます。コロンビア産コーヒー豆のマイルドな苦みと、コクのある味わいをお楽しみください。
 次に、本日の懇談テーマ「伝統の技と文化で豊かな暮らしを、北いわてから」について御説明をいたします。二戸地域には、手仕事の技や伝統工芸、多様な文化が普段の暮らしに息づいています。本日御参加の4名の皆様は、伝統の技や文化によって地域社会に多面的な価値をもたらすとともに、物質的な豊かさだけではなく、心地よい豊かな暮らしにつながる活動をされていらっしゃいます。本日は、その生き方や考え方、北いわてで暮らす魅力のほか、皆さんの地域に対する熱い思いをお伺いしながら、懇談を進めて参りたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 皆様、どうぞお召し上がりながら御懇談いただければと思います。ありがとうございます。

西野副部長
 
新しい商品ですね。ありがとうございます。
 それでは、ここからは懇談に入らせていただきます。本日のテーマ「伝統の技と文化で豊かな暮らしを、北いわてから」に沿って、現在の取組や課題、今後の方向、御自身の抱負、県への期待なども含めてお話をいただければと考えております。先ほどの順番で新谷さんから、お一人大体5分程度でお願いしたいと思います。そして、お一人ずつお話をいただいた後、知事からコメントをいただくという流れで進めて参ります。よろしくお願いいたします。
 それでは、はじめに新谷さんお願いいたします。

新谷 武仁
 
よろしくお願いいたします。
 改めて経歴の方から、私自身大阪府出身で、専門学校卒業後、伊丹空港にて手荷物とか貨物の搭降載をする仕事をしていました。後に、オーストラリアにワーキングホリデーとして移り、バナナ農場でちょっと働いていまして、そこから帰国してからはウェディングカメラマンとして約2年間働いて、その後、造園の方に仕事をシフトチェンジしました。これはコロナをきっかけに、もうちょっと何かできるんじゃないかっていうふうに、大幅にシフトチェンジしました。漆掻きを知ったきっかけっていうのが、造園業をしていた頃にちょっと資料を見てて、林野庁が出している森林・林業白書っていう冊子を見て、漆掻きについてちょっと知って、そこで調べていくうちに、二戸市が国産漆の生産量を約8割占めていて、日本一だということも知って、チェーンソーとか、そういう草刈りとかの資格も持っていて、経験もあったんで、そこでなんかちょっと面白そうだなというふうに思って始めさせていただきました。
 活動としては、(配布している)資料にもあるように写真から説明させていただきたいんですけど、まずは写真1の4月から活動をしていまして、漆掻きのシーズン自体は6月初めからスタートとなるんですけど、4月からだとちょっと早いので、4月からは浄安森林組合さんの方で、苗木の生産の方のお手伝いをさせていただいていました。この苗木の方もすごく大変で、漆の種からの発芽率ってすごく低くって、(種が)蝋(ロウ)で固まっていて、濃硫酸っていう薬品を使って溶かして、その後、約1週間から2週間漬けていることで、ようやく種に播種できるっていうふうな流れになっていて、やっぱり漆掻きをやってる上で、漆を生産するのもすごく重要だと思っていたんで、すごい良い経験をさせていただきました。植えてからも、今現在すごいシカが増えておりまして、漆の芽をシカが食べてしまって、なかなか成長ができていないという現状もあります。続いて、(写真の)2番目ですね。2番目の写真は、これは漆掻きで実際に使っている道具を作りました。この金物自体は、青森県田子町の中畑さんという方が作られているんですけれども、この方もやはり高齢で、どうしても後継者不足というふうにお聞きしました。この柄自体は、漆掻き職人それぞれが作ります。材質は桐となっています。では、続いて3枚目の写真に移ります。この(写っている)ケースも実は手作りで、こういった鎌用にすごく大きなケースを作ったりとか、あとは漆掻きに使っている蚊取り線香とか、そういうふうな物を写しました。
 4枚目から、ようやく漆掻きの仕事がスタートです。4枚目の写真は、この1本目の傷をようやく入れて、6月上旬で「目立て」っていう傷です。これは漆の木に対して、これから漆掻きを始めますよという合図であったりとか、そういった両側に傷をつけていくんですけども、そういった目印にもなっています。漆掻きは掻く本数とかを決めていくんですけれども、こっから2本目を、また次の傷の上に入れていきます。これを4日ごとに入れていって、大体漆掻きの年数の本数って200本ぐらいで、この四日山(漆掻きの原則で、一定の範囲の漆林を4等分し、それぞれ1日計4日にかけて漆を掻くこと)っていうのが、割る4をすると1日50本程度漆を掻くんですけど、これが4日に1回傷が増えていくっていうイメージです。ですが、傷の状態とか、天候とか、あとは木の状態とかを見て、5日空けたりとか、6日空けたりとか、その場で状況を変化させていて、とてもすごい繊細な仕事となっています。続いての写真、5枚目ですね。これは普通にいつもの装備(の写真)で、熊も多いんで熊鈴を付けて、あと動きやすいように足袋っていうふうにしています。続いて6枚目ですね。6枚目はちょっと写真が黒くって見にくいんですけど、はしごを掛けて(漆掻きを)やっています。職人によっては、こういった普段なら手の届く範囲までにするんですけど、やっぱり少しでも生産量を上げたいっていうことで、手の届かないところをはしごとか、やぐらを組んでとか、こういった形で掻いていきます。続いて、7番目の写真ですね。こちらは指導者の写真を撮らせていただきました。この木の状況ってあまり良くなくって、漆の木自体は、針葉樹の隣に生えているとあまり(漆が)出ないっていうふうに言われていて、やっぱり原木数が減っていっている中で、どんどん山奥、山奥へ現場が追いやられているという状況です。続いて、8枚目の写真ですね。この目立ての傷、一番最初の傷からどんどん増やしていった状態がこういった形になっていっています。最終的には、逆三角形というか、Vの字といった形になっていって、これが盛りの時期ですね。漆掻きっていうのは、採れる漆の時期によって性質が違うので、そういった形になってます。6月から「初辺(はつへん)」とか「初漆」とか言ったり、続いて「盛辺(さかりへん)」とか「盛り漆」、「末漆(すえうるし)」とか言っています。この盛り漆っていうのが、採取される時期ですごい生産量がとても採れる、生産量で約7割ぐらい採れるというふうになっています。質としてはすごい最高品質で、とても消費者の方にとってはすごい求められる漆になってます。続いて、10枚目の写真です。傷を入れて、にじみ出た漆を、こういった「たかっぽ」って言われる、ホウノキの皮を剥いで器を作るんですが、その中に入れて採取していってる、(写真の)この中にはチョロっとしか入っていないんですけど、こういった感じで採っていきます。漆の質も採れる時期によっても違うんですけれど、職人によってもまた性質が変わってきたりしています。11枚目の写真です。こちらは、はしごを掛けてやっていて、もう本当に終盤の(作業の)写真なんですけど、これもちょっと見にくいですが、こういった形でやっていっています。手前は、はしごを掛けずに、手の届く範囲だけでしていって、ある程度太い木を、はしごを掛けて今シーズンはやりました。続いて12枚目、漆の木の紅葉ですね。他の木と比べて、漆の木の紅葉って少し早いみたいで、今年は結構紅葉して落葉するのがとても早かったみたいです。これは、ちょっと原因はよく分かっていないんですけど、そういうふうに聞きました。13枚目ですね。こうやって掻き終えた木は、最後に漆掻きは伐採します。これを「殺し掻き」っていうんですけど。こういったふうに伐採して、玉切(たまぎり)をして、枝を切って、最後に片付けるっていう作業ですね。僕自身、この作業がすごく大変でした。1年を通して。やっぱり生木は重くって運ぶのが大変で、片付けるのがすごく大変なんですね。ワンシーズン通して200本っていう数を全部伐採して、運んで片付けてとかしていくんで、漆掻き職人の中でも、やっぱり伐採が大変なんで、本数自体を減らしているっていう方も実際にはいらっしゃいます。僕の考え的には、やっぱり林業機械の導入とかも考えていった方がいいのかなというふうに個人的にはすごく感じました。あとは電線のそばに生えているとかの、特殊伐採とかの資格も取れればいいかなと思っています。やっぱり高齢の方が多いので、代わりに切ってあげるとかそういうのをしてあげるべきだなとすごく思いました。太くて真っ直ぐな木は、材として出荷されるんですけど、それ以外はやっぱり林地残材として現場に残っているっていう状況にはなっています。
 その他にも課題があって、今現在漆掻きは平成27年度から、文化財の修復で使われる漆が中国産の漆から国産の漆に切り替わったことで、すごい需要が伸びていて、生産量が全然追いついていない状態です。原因としては、原木量の減少であったり、あとは職人の高齢化であったりします。原木数の減少の主な原因として見えるのが、(山林の)地主さんと交渉して初めて漆掻きができるんですけど、地主さんが亡くなっていたりとか、相続がうまくいっていないとか、あとは県外に引っ越していたりとかで、連絡がつかなかったりとか、そういった現状もあって、(漆の木を)見つけても掻けないと、そういったことにもなっています。これは、やっぱり森林経営管理制度とか、そういうふうなことも考えていった方がいいのかなとか、自治体との協力がすごく重要だなと感じていました。高齢化なんですけど、やっぱり若い職人の新規参入がすごく難しいと僕は感じました。漆の木は育つのに10年から15年かかるので、すぐに育たない、あとは冬場に仕事がないであったりとか、浄法寺で実際に職人されている方は、半分以上は高齢者で、あとはセカンドキャリア、定年後に漆掻きを始められているっていう方が多くいらっしゃるので、冬はやっぱり年金であったりとか、そういう生活をしていて、自分的にはすごいもっと頑張らないといけないなというふうに、他の仕事も考えました。自分としてはカメラマンという経験があるので、漆掻きの認知を広めていきたいのと、あとは生活の足しにしていければというふうに個人的には考えています。

達増知事
 この写真は、どれもすごく良い写真ですね。

新谷 武仁
 ありがとうございます。
 漆掻きはやっぱり伝統的なすごい技術で、すごくつないでいかないといけない技術だと思うので、僕自身こういうふうに発信とか、イベントとかのことを通じていって、あとは協力隊と自分の個人のインスタもあるので、是非フォローしてください。拙い説明にはなりましたが、僕からは以上となります。本日はありがとうございます。

西野副部長
 
新谷さん、ありがとうございました。今年いらっしゃって、このように1年を通しての漆掻きの作業を御紹介いただきまして、ありがとうございました。また、高齢化、原木量の減少などの課題の御提言も非常に参考になります。
 それでは、知事いかがでしょうか。お願いいたします。

達増知事
 
二戸市の浄法寺に来てもらい、私からも御礼を申し上げたいと思います。ありがとうございます。地域おこし協力隊の制度で、うまくこういう1年を過ごすことができていて、非常にいいなと思います。そうですね。なかなか、なりわいとして漆掻きで食べていければ、稼いでいければいいんですけれども、今は賃上げの時代になっているので、漆掻きの人の収入が増えるような価格転嫁とか、そういうところもさらに工夫していかなきゃいけないんだと思います。
 そして、原木というのは、地主の許可がいるということですね。地主の許可問題というのは、東日本大震災津波で、津波の被害を受けたところに、新しく何かを建てようとするときに、地主が誰か分からなくなっている問題や、(転居などで)近くにいない問題などがあって、結構、国の法律でも土地所有者が分からない、見つからないときには、自治体がそこを使えるようにするための法律ができたり、法改正が行われたりという流れがありまして、日本全体の中で漆というのは、国宝級文化財に使われるものとして希少資源ですから、漆の原木に関しては、漆原木確保特別措置法みたいな、半年以内に地主が名乗りを上げないなら、しかるべき団体がそれを使っていいみたいなくらいの法律を作ってもいいぐらいだと思うので、そのへんは県の中でも検討をしていきましょう。
 江戸時代に、結構多くの藩で漆を植えて増やすということは行われていて、当時は蝋を採るために(植樹を)行われていたんですよね。でも、今原木の植樹や育樹について、シカが芽を食べに来るというのは、有害鳥獣対策も漆の関係でもしっかりやらなきゃならないんだなと思いました。そして、この写真が本当に非常にいいので、是非この調子で頑張ってほしいなと思います。ありがとうございます。

西野副部長
 ありがとうございました。続きまして、大清水さんお願いいたします。

大清水 健治
 
大清水でございます。よろしくお願いいたします。
 経歴の方は載せていただいてるとおりですが、少し私の経歴を申し上げてからにしたいと思います。軽米町に生まれまして、叔母が書道教室を主催していた関係もありまして、小さい頃から書道を始めました。それから、後ほど申し上げますが、琴、三味線に関しましては、母が若いときに少しやってたので、家に楽器があったり身近な存在だったので、後にやることになります。書道を通じまして、県立軽米高等学校を卒業いたしましてから、岩手大学の教育学部の書道科というところに進みます。卒業してから帰郷をいたしまして、書道教室をしますが、先ほどの新谷さんのお話じゃないですが、それだけでは生計を立てられないので、飲食のパートの仕事をしながら、書道教室をやっております。大学時代から琴、三味線を盛岡市の土居綾子先生から30年習って、一昨年100歳で亡くなられたんですけど、先生から教わりまして、資格を取りまして、10年ほど前から自分でも、自宅で門人をとって教授活動を始めております。あとは土日を利用して、自分の出身サークルの岩手大学の三曲部の方に講師として指導に行っております。
 本日は、三つのことに関してお話申し上げたいと思います。まず一つ目は、自分がやっている書道を通じての活動です。自宅の書道教室は、小さいお子さんから80代のおばあちゃんまで、約30人ぐらい通ってきてくださっております。毛筆、手書きの文化を通して子どもたちに、今の子どもたちというのはデジタルネイティブという言葉があるように、生まれたときから、もうパソコンやスマートフォンというデジタル端末が使えるのが当たり前という世代で、それなりのスキルもすぐに身につけるんですけども、そうではない、少し習得に時間やそれなりの鍛錬が必要な書道なんかは、そういう技術を通して、根気よく物事に取り組む力とか、あとはものをよく観察する、見る力というのを身につけてもらいたいなというふうに思っております。あと、今年の10月から県立軽米高等学校の芸術科書道の方の非常勤講師をさせていただいて、週2回行っております。前任の先生の急な転出に伴う引継ぎだったんですが、軽米高校も生徒の減少が続いておりまして、私が在学していた30年前に比べますと、生徒数が3分の1になりました。3分の1ということは、3分の2の教室が空いているという状況なので、普通教室を丸々一つ書道室とか、美術室というふうに使うことができるので、あとは芸術は選択科目ですから、選択する生徒が10人ありなしなんですよね。ということは、一人当たりのスペースがとれますので、普通の40人学級でする書道の授業では、書くことがない大きなサイズに取り組んでもらって、表現を学んでもらっています。高校生には、学習指導要領にもあるんですが、知識や技能の習得だけではなくて、やっぱり自分が生み出したものとか、思考判断という力をつけてもらいたいということもあって、これだけ機械化が進んでますが、手書きの文化というのはなくならないものだと信じて、生徒たちにも教えています。
 二つ目は、和楽器の演奏を通じた活動です。先ほど申し上げましたが、大学時代に始めまして、教授活動も10年ほど前から始めています。伝統文化、伝統音楽に携わる人間というのは、自己の研鑽、自分の鍛錬ですね、自己の研鑽と普及というのが車でいうと両輪に当たります。自己の研鑽というのは、自分が演奏会に出演するとか、東京の講習会に出るとかということで進めていくことはできるんですが、特に軽米町、県北地区に関すると、普及の面が少し遅れているところがあります。ですから、そこをもう少し頑張ろうということで、二戸市にいらっしゃる先生とかと連携を取って、学校に出張の演奏に行ったりということもさせていただいたこともありますし、あとは私の地元の軽米中学校の音楽の授業に、毎年呼んでいただきまして、琴の実演と、実際に生徒さんに弾いてもらうという授業をしております。あとは、町民向けの普及活動としては、町の文化祭でありますとか、そういう場で発表して周知していくという活動を続けております。
 三つ目は、軽米町の文化協会で一応肩書きは副会長としておりますが、いつまでたっても一番の若手でありまして、高齢化と人口減少という、そればっかりを嘆いていては仕方ありませんから、何か方策を考えながらということを協会で取り組んでいます。軽米町は、昨年度、町民文化交流センターということで「宇漢米館(うかめかん)」という名前なんですが、中央公民館と町立図書館の機能を全部1か所に集約しまして、大きな建物を作りました。開館記念周年ということで、今年の12月1日で1周年を迎えました。その掉尾を飾る事業だったんですが、20年ぶりに町民劇をやりました。軽米町で12月8日でしたから、もう先日の日曜日に終わりまして、大盛況でございました。こういう建物が新しくなったりした、その年っていうのはいいんですよね。町の方からそれなりの予算もつきますし、新しさも手伝って、皆さんいらしてくださるんですけども、やっぱりこういうのは2年目からが勝負でして、建てても使わなければただの箱というのは、もう従来から言われていることですけれども、やっぱり町の文化協会が主体となって、町民講座、書道なら書道講座とか、童謡を唄う会とかいろいろあるんですけど、そういう方々が主に使って、町民の皆さんに利用してもらおうという計画で進めております。全体としては、県北、特に軽米町がそうなんですが、観たいもの、聴きたいもの、触れたいものというのが、すぐそこにあるわけではないので、機会が圧倒的に少ないんですね。これだけパソコンやオンラインとかというのが発達しても、やっぱり生のものには勝てないので、そこを町民に目にしてもらう、耳にしてもらうということを最優先に進めていきたいと思っています。課題は、先ほどから申し上げていますが、高齢化と人口減少ですが、それなりにやり方を模索していけば、まだまだ絶望的ではないと思って、悲観するものでもないと思っているので、そこは文化協会の皆さんと協力しながらやっていきたいと思っております。最後に、震災からの復興で、大きな災害が起きたときというのは、一は命の確保なんですよね、二が生活の再建で、やはり余暇、余技、娯楽というのは一番最後になってはしまうんですが、落ち着いてきた頃に、やっぱりそういう文化的なものが必要とされるときが必ずくるので、そこに向けて、心豊かなという、今回のテーマじゃないんですけども、そういうところに、目には見えない形ですけど貢献していきたいなというふうに考えております。以上です。

西野副部長
 
ありがとうございました。書道、和楽器、文化協会というような活動を通して、町民に文化的なことの種を植えるというようなお話だったかと思います。
 それでは、知事の方からいかがでしょうか。お願いします。

達増知事
 
大清水さんがいるおかげで、軽米町の文化や芸術が豊かになっていて、非常にありがたいと思います。私からも、御礼を申し上げたいと思います。
 今年の大河ドラマが、源氏物語、紫式部が主人公なので、大河ドラマで筆と墨で字を書くシーンが何度もテレビに映って、ロケ地の「えさし藤原の郷」が、毎週のように使われていて観ていたんですけれども、改めて書道といいますか、筆と墨で字を書くというのは日本人のたしなみといいますか、欧米の人でも興味を持ってやる人もいますし、中国とか朝鮮半島、アジアの方でも共通する文化でもありますし、何よりしっかりとした紙に墨で書かれたものというのは、千年以上保つというところがすごくて、いろんな記録媒体の中で一番長持ちしますから、そういうことも大事にしていくべきだなと思います。お琴や三味線というのも、これを教えていただいているというところが、また非常にありがたいことでありまして、実演を観たり聴いたりできる、軽米中学校の中学生も本当にいいんじゃないかなと思います。そして、高校の生徒数が減っている分、一人当たりが使えるスペースが広くなっているというのは、少子化のメリットが実はそういうところにあったりしますので、むやみに減っていくのは困るんですけれども、まず、今の人口でやれることをきちんとやって、都会ではできないようなことを、どんどんやるということに意義があると思います。
 そして、宇漢米館ができて、県北の文化、芸術の一大拠点にたりうる施設だと思いますので、そこは県も意識して、特に広域振興局としては、いろんな事業でそこを拠点に、あるいは、そこを活用するというのは考えていきましょう。ありがとうございます。

西野副部長
 
それでは、次に進ませていただきます。次は柾本さんでございます。お願いいたします。

柾本 伸悦
 はい。高倉工芸の柾本です。
 高倉工芸では、先ほど少し申し上げましたけれども、栽培からすべてをやっているということで、しかも農薬を使わずに(ホウキモロコシを)育てています。農薬を使わない方が、いろんな健康の害も少ないですし、化学物質過敏症といった方なんかも、安心して使えるということもあって、すべて農薬を使わずにやっているんですけども、その分すごく手間がかかって、種まき、そして雑草もすごく出るので、雑草を取らないとホウキモロコシが育たないので、それもすべて手作業で取っていますし、収穫もバーッと(一気に)刈るんじゃなくて、一本ずつ穂先だけを抜き取っていくんですよね。それはずっと天井を見なきゃいけないんで、もう慣れないと目が回ってしまうんですけども。それを8月、9月にやって、10月からは選別ということで、このホウキモロコシはどれに使うというのも3回、4回ぐらい選別をして、やっと商品になるというところで、実際は12月ぐらいから4月までは製造。と同時に、年間を通して全国の百貨店で実演販売をしております。
 僕がなぜこの仕事をすることになったかっていうと、ちょうど5年前に、今の社長のお父さんと、あとベテランの職人さんが引退することになって、残りはもう社長含め3人ということで、これじゃちょっと、伝統文化の箒の技術が廃れる可能性があるなと思って、社長から声をかけられたこともあって、お手伝いすることになりました。おかげさまで、今は地域おこし協力隊の人も来てくれていますので、何とかぎりぎりまわせている状況で、特に若い人が来てくれているので、私たちもモチベーション高く、今は張り切ってやらせていただいております。
 今、主力商品は主に四つありまして、この(お配りしている)パンフレットを御覧いただければと思うんですけども、一番右上は「和洋服ほうき」といいまして、これは主にセーターとかのお手入れに使っていただいていまして、これでやる(掃く)と毛玉とかができにくくなって、すごく滑らかになります。こういったスーツにもすごくいいんですね。あと「小ほうき」なんですけども、今特に都会の方では、(住居の)上下の騒音トラブルというか、電気掃除機だと真夜中(掃除が)できないということで、意外と夜中に帰ってきてからお掃除したいという方からお求めいただいたりしております。あとペット用です。もともとは、洋服とかについたペットの毛がよく取れますよということで、お客様に買っていただいたんですけれども、そうしたら、直接ペットをこれでなでてくれた方がいまして、そうしたらすごく喜んだよというお客様の声から作った商品で、今もこれ結構売れております。

達増知事
 「なでいぬ・なでねこ」ですね。

柾本 伸悦
 
はい、そうですね。「なでいぬ・なでねこ」というペット用癒し箒ということで、ペットも癒されて、それを見て飼い主さんも癒されるという、ダブルの癒し効果をねらっております。四つ目が「長柄ほうき」ということで、130センチぐらいありますので、立ったまま(掃除が)できるので一軒家の方とかに結構重宝されております。特に今力を入れているのは、ここ(パンフレット)にはない商品でして、これらの(箒の染糸の)特に色が、岩手県の特産物でできていまして、これは岩手の木炭、炭染めで作っております。これはたかきびという、軽米町も雑穀は力を入れていらっしゃいますけども、タカキビの種子の皮で染めると、こういう紫のような茶色っぽい色に染まります。これは、漆染めで、新谷さんも頑張ってくださっています漆の原木をチップにして染めると、こういうふうに黄色になります。こういったものが今非常に売れていまして、僕らもやっぱりストーリーを作りやすいということもあって、ついつい話がこっちの方に行くと、お客様も引き寄せられてっていったらあれですけど、御理解いただいて、岩手の物が欲しいという方が結構いらっしゃって、これも3色あるんですけども、今日倉庫に行ってみたら、もうこっちの炭染めがないよということで、今日持ってこられなかったんですけども、そのぐらい結構売れ行きも良くて、頑張って大分もう知られてきたので、特に1本100万円の箒もあって、よく番組なんかにも取り上げていただいていることもあって、知っていただいている方が結構多くなっていますので、あとは、こっちが商品を作る、生産できるかっていうところにかかっております。
 おかげさまで、今何とか、地域おこし協力隊の人が、30代と40代の2名が来てくださっていて、本当に頑張ってくれていますので、何とか僕らとスタッフ何人で頑張っていますけれども、一番の課題は、やっぱり協力隊の期間中はいいんですけども、(協力隊の)卒業後に残りたいっていったときに、仕事はあるんですけども、なかなかこの岩手の県北っていうのは、アパート事情というか、住むところがないんですよね。あっても結構高かったりして、協力隊を卒業してすぐアパート代を払ってというのは結構難しいので、そこらへんを村民として考えていかなくてはならないと思いますし、現在でも、県の(公営)住宅を卒業後に貸してもらっていて、活動している協力隊もいるんですけども、すごくそれはありがたくて、住居があんまりなくて、もう泣く泣く居たくても居れなくなった協力隊の人も知っていますので、そこらへんを、是非県の住宅の方を、卒業後もある一定期間でもいいので貸していただければ、またすごくうれしいなと思っております。同時に、その期間中にやっぱりずっと県の持ち物をお借りするのも、また申し訳ないというか良くないんでしょうから、民間で協力隊のためにリフォームをしたいという人がいれば、ちょっとそこに補助なんかあると、それが一つのきっかけになって、リフォームしてみようかなと、(村民)皆さんやっぱり(協力隊に)居てほしいとは思うんですけども、事業者も居てほしいし、住居も建ててあげたいんですけど、なかなか賃上げもあってそこが厳しいので、そこらへんは皆さんでサポートしながら、卒業後のサポートを周りの人たちがやっていくことが一つの課題かなというふうに思っております。以上です。

西野副部長
 
ありがとうございました。本当に箒が有名で、私もお聞きしたことありますが、今は地域おこし協力隊の方が2名入っていただいて、ただその方たちの卒業後の住まいというところが一番課題であるというふうなお話をいただきました。
 それでは、知事の方からコメントをお願いいたします。

達増知事
 
(箒を)洋服に使うとか、ペットに使うとか広がりも出てきて、非常にいい感じで軌道に乗っているんだなと思います。岩手を代表する工芸品の一つとして、いろいろテレビなどで取り上げられることも多く、たまたまテレビで日曜日の夕方に笑点(日本テレビ系列番組)を見ていたら、座布団10枚の賞品として使われたこともありましたよね。たまたまそれを見ることができて、びっくりしました。そのくらい、もう有名だということだと思います。この箒を生産からやっているというところで、上を見ながらの作業など、なるほど大変なんだなと思いました。
 そして住宅の問題ですね。これはやはり、岩手全体の共通の問題で、若い人たち向けの手頃な住宅がないという問題は、沿岸の方でも言われておりますし、あちこちで言われているのですが、やはり二戸エリアで顕著かなというところがあります。せっかく仕事もあって、住宅のせいで居られなくなるというのは余りにもったいないことでありますので、県としても若い人向けの住宅の確保というのは、いろいろ工夫しているところなんですけれども、空き家問題というのが別にありますので、そういう空き家をリフォームして使えるようになれば、なお良いということがあるんだと思います。いろんな県営住宅はじめ、既存の公営住宅の活用でありますとか、空き家活用でありますとか、若い人向けの手頃な賃貸料で住める住居の確保というのは、県としてもさらに力を入れていきたいと思います。ありがとうございます。

西野副部長
 
ありがとうございます。それでは、最後に戸来さんお願いいたします。

戸来 雅美 
 
始めさせていただきます。私、先ほど紹介させていただきましたが、岩手県の食の匠をさせていただいております。去年認定をいただきまして、ちょうど1年活動して参りました。食の匠になったきっかけというか、どうしてこの匠をいただいたかということをお話しますが、私は平成20年から、一戸町の小繋地区にありました「里やま市場」というところで働いていたんですけれども、そちらで串もちを製造、販売させていただいて、12年、13年と串もちを作ってきました。惜しまれながらも、そのお店は閉店したんですけれども、やはり作り手としての経験を生かす場として、食の匠になってほしいということでお声がけいただきまして、去年、食の匠に認定していただきました。なので、この里やま市場の原材料をそのまま使って、今は普及活動というか、伝承活動を行わせていただいております。なので、この味を覚えてくださっている方が本当に喜んでくださっていて、この1年、一戸町民セミナーの講師でしたり、地域の福祉施設の手作り体験であったり、お店をやられている方の紹介でワークショップを開いていただいて、そこで地域の方に来ていただいて体験していただいたりしてということで、いろいろなところで作らせていただいたんですけれども、皆さん本当に喜んでくださって、ただ単に味がおいしいからというのもあるんでしょうけれども、やっぱりこれは本当に郷土の味、昔から食べられてきた味を、喜んでくださっているんだろうなっていうのを感じることが多いもので、本当にそういう部分で携わらせていただけていることに、私自身も本当にやりがいというか喜びを感じながら、やらせていただいております。
 課題がやはりありまして、食っていうところで、今飽食の時代で食べ物に困ることがないんですね。どうしても、郷土料理っていうのが今食べられなくなってしまっているのは、食のグローバル化が進んで、皆さんがいろんな物を食べられるようになったので、ちょっと郷土料理っていうものが選ばれなくなってきてしまっているのかなと感じますし、あと食べる機会がなくなると、作る人も、作る機会もなくなりますので、だんだん作る人もいなくなって、高齢化も進んでいますので、この郷土料理を昔から作ってる方がいなくて食べることができないっていう、もう本当に悪循環というかそういう負の連鎖になっているんだなというふうに感じて、すごく残念に思っています。これから、作る人がいないからといって、そういう理由でなくなっていくっていうのは本当に寂しいことですし、これまで培われてきた歴史っていうか郷土の味が途絶えていくっていうのは、本当にその土地らしさっていうものが失われていってしまうことなので、やっぱり寂しいなと思います。なので、こういう時代だからこそ、私は子どもたちにこそ食べてほしいなと思っています。この串もちなんですが、悪いものを本当に使っていなくて、小麦粉、味噌、砂糖、醤油、塩ぐらいで、あと一戸町の炭を使って焼いているんですけれども、これだけで作っています。なので、今いろんな食べ物がありますけれども、添加物がたくさん入っている物でしたり、ちょっと体に悪い、健康被害が起こりそうな食べ物もたくさんある中で、こういう食べ物を残していくのは子どもたちにとって、本当に大切なことだなと思いますので、子どもたちがおやつ代わりに食べるような時代というか、流れになったら嬉しいなと思って、私は子どもが3人いるんですけれども、みんな小さい頃から食べて育ちましたので、みんな串もちが大好きです。あと、もう一つ、郷土料理っていうのは、先人の方の知恵と苦労の上ででき上がってきた郷土料理です。受け継がれてきた郷土の味を、子どもたちが味わうことで、子どもたちが郷土を愛するふるさとの味ということで、郷土を愛する気持ちが養われていくんじゃないかなと思います。懐かしいなと大人になってから感じてもらえるように子どもの頃から食べるっていうことが、やっぱり大事かなと、自分の住むまちを大切に思う気持ちを持った大人になってくれるんじゃないかなと思います。あと、その土地で作られたものを、その土地でいただくっていうところ、地産地消でしたり、今世界共通目標のSDGsにも貢献できるのが郷土料理だと思いますので、やっぱり大事にしていきたいなと思っております。食文化に限らず考えていきますと、今岩手県は人口減少問題が、2050年問題といわれて大変な問題、喫緊の問題、課題になっているかと思うんですけれども、そういった中で文化を残していくということ、さっき大清水さんが、文化を大切にする時代があるっていう話をされたんですが、やっぱりその文化を残していくっていうことが大切だと思っていて、文化っていうのは、その土地の自然だったり、風土だったり、生活様式だったり、そこで作られる食べ物だったり、価値感とかルールとか全部含めて、文化ができていくわけなんですが、そういう文化っていうのは、その土地らしさの象徴になります。なので、その土地ならではの魅力が詰まっていると思います。そんな様々な文化が認められる社会っていうのは、何かいろんな人がいていいんだよっていうふうに認められる社会だと思うので、人が生きやすい社会だと思うんですね。なので、そういう様々な文化の多様性っていうところが、やっぱりある社会っていうのは、いい社会になっていいと思いますので、一人一人の個性が生かされていく社会になると思います。しかし一方で、そういう多様性がない社会っていうのは、どこに行っても同じような考え方とか、食べ物とか、着る物がどこに行っても同じものの中で過ごすと、やはりそこにはつまらないなとか、生きづらさがあったり、魅力がないなっていうふうになっていって、もっと魅力があるところに行こうかっていうことで、何か今では東京とか都市に人口が集中しているようですけれども、そういうことにもつながってしまいまして、さらに地方は人口が減ったりとか、人口が減ると復興も当然遅れてしまいますし、さらに、そこに住む人たちの暮らしが苦しくなってしまうということにつながってしまうと思いますので、そうならないために北いわての魅力を引き出そう、引き出したいというふうに思います。まず一つ目に、子どもたちに、やっぱり文化に触れる機会をもっともっと持ってほしい。ふるさとっていいなって、自分の住むまちっていいなというふうに思ってもらえるように、小中学校などで、文化に触れる機会っていうのをもっともっと増やしてほしいですし、もしお話があれば、私も串もちを焼くところに積極的に参加させていただいて、(子どもたちが文化に)触れる機会になればいいなと思ってますし、あと、もう一つ、道の駅がありますよね。市町村ごとに大体道の駅っていうのがあると思うんですけれども、そこは観光の拠点です。大体車でドライブすると、道の駅に寄ります。そうすると、そこにその土地らしいものが必ず置いてあって、こういうまちなんだなっていうのは、やっぱり道の駅で判断することが多いと思うんですが、道の駅歩きってすごく人気が高いと思うんですけど、道の駅でもっとそのまちらしさっていうのをPRできるような仕組みをもっとできたらいいなと思ったり、道の駅独自で頑張るんじゃなくて、あちこちにある道の駅が協力し合えるような、ネットワークの横のつながりがもっとできて、全部の道の駅が良くなって、その全部の市町村が良くなっていけるような形になっていけばいいなと思ったりしています。そうするとたくさんの方に足を運んでもらえるようになって、産業の活性化につながったり、移住、定住の促進につながったりということで、いいこともたくさん起きてくるんじゃないかなと思います。
 あと最後に、私、新潟から岩手に移り住んで、岩手のいろんないいところを見てきました。いいところを見ていくと、大体必ずそこを盛り上げようと頑張っている方がいらっしゃいます。そういう姿を見ていると、私も元気をもらって、応援したいっていうふうに思ったりします。なので、そういう頑張っている方たちに支援をしていただけないかなと。本当に、独自で頑張っていらっしゃるので、もっと点から線へといいますか、みんながこう良くなっていくようなシステムが、みんなが同じ方向を向いて頑張っていけるようなふうになっていけばいいなと思って、私もそういう活動がもしあれば、できることは何でもやりたいなと思っています。なので、今日お話を聞かせていただいたように漆だったり、そういう伝統の音楽であったり、箒だったり、北いわてにはたくさんの魅力が詰まっていますので、これからの時代を担う子どもたちに、岩手の魅力を残していきたいなと思っていますし、そのために文化っていうものを、今一度大切にすることで、今までの人々が、誇りを持って生きていけるような社会になっていけたらいいなと思います。私は、このことが豊かな暮らしへとつながっていくと信じています。長くなりました。以上で終わります。

西野副部長
 
戸来さん、ありがとうございました。私も二戸振興局に勤務したことがありまして、串もちの話を懐かしく思い出したところでございます。
 知事からコメントをお願いいたします。

達増知事
 
戸来さんには、この一戸町に移住、定住をしてもらってありがとうございます。串もちは、道の駅の産直などで、時々買って食べていますけれども、おいしいものだと思います。この素朴な形としては、私、盛岡で生まれ育っているんですけれども、キャンプとか遠足とかで、奥中山でキャンプをしたこともありますが、ひっつみを作って、ひっつみ用の練った小麦粉をとっておいて、木の枝の先にそれをつけて焼いて食べるとかいうこともやっていましたので、それに比べると、串もちはちゃんとおいしい味がついていて、非常においしいというのを思い出します。
 岩手は、もち文化のところもあれば、そば文化のところもあって、そして小麦粉の文化のところもあって、食文化というのは文化の中でも非常に大事だと思います。生活密着型文化と言いますか、生活文化と言っていいと思うんですけれども、そこに住んでいる人が普段暮らす中でやっていることが、そこからもう文化と呼べるようなものが出てくるということの典型が食文化だと思いますので、食の匠としての活躍を、ますますお願いしたいと思います。
 そして、子どもたちにできるだけ食べる機会を持ってもらうのが良く、子どもの頃に食べておくと後から思い出すとか、人に紹介したりとかもできていいんだと思います。今いろんな世界の料理が食べられるような時代になっていて、珍しい料理も時々食べることはいいんだと思うんですけれども、でもやはり郷土料理というのは、なくてはならないものだと思います。東京などの大都会は、首都機能というのを果たすために人工的に作られたところで、それで人がたくさん集まるので、消費経済が発達し、物が売れるからそれでまた人が集まるっていう、消費に関しては非常にいいところではあるんですけれど、でも首都機能にまつわる政治、行政、経済、銀行、金融とか、そういうのでまず働く場所という、やりがいと、あとはその消費が高度に発達しているので、世界のいろんなおいしい料理も東京に行けば食べられるということがあるんですが、ただ、それは非常に人工的な空間なので、言ってみれば、もう宇宙ステーションとか月面基地とか、あとスペースコロニーとかもありますけど、そういうところだと思うんですね。だから、そこは目的を持って行けば、やりがいのある仕事ができたりするし、あと消費をエンジョイしたいと思えば、そこでエンジョイができるんですけど、でも人間にとって本当に大切なものというのは、それ以外にたくさんあるはずであって、日々、山を見て、川を眺めて、あるいは海を見て生活するというのが、むしろ人間には基本で、第一次産業の農林水産業が行われているところの近くとか、あるいはその中に住んでいて、そこから採れるものを食べて、そしてそれに関してなりわいを発展させ、工業とか商業とかも、それをベースに発展していくというようなことが、人のあり方としては本流だと思いますので、今日本でも、さらに世界でも、本流じゃない都市生活、都市の方に人口が多くいるような状況になっていて、ちょっと人類全体として危うい状態になっているんじゃないかと思いますね。地方で生活し、地方で働くことの方が人類の本流なので、都会の人たちが気がついて、本流の暮らしをしたい、仕事をしたいと思って、いつでも岩手に来てもらえるように、その郷土料理も含め残していきたいと思っています。ありがとうございます。

西野副部長
 
ありがとうございました。皆様から、一通りテーマに沿ったお話を伺ったところでございます。
 残り時間が本当に少なくなってはいるんですが、是非言い足りなかったこと、他の方のお話を聞いて、聞いてみたいというようなことがございましたら、お願いしたいと思いますがいかがでしょうか。柾本さん、お願いします。

柾本 伸悦
 柾本でございます。私たちは南部箒展、単独でもやるんですけど、実は岩手県の物産展とか、東北物産展にも伺うことが結構ありまして、そうするとそこに在住する岩手県人会の方とかと御一緒することも多々あって。彼らに言われるのは、岩手県のいろんな観光を紹介するんですけども、盛岡と県南の方の観光マップはあるんだけれども、県北の方の観光マップがちょっと見当たらないんで、ちょっと確認してくれとかっていうことを言われて。僕が知らないだけかもしれませんけれども、確かにあんまりここら辺の観光マップはなくて、本当、岩手県っていうのは西日本の人にとっては、全く未知の土地でして、その中でも県北っていうのは全く白紙の状態のところで、そういったところに、観光に行くかっていうと、やっぱりなかなかそういうふうにはいかない状況で、でも来れば漆だって7割以上をここで生産していますし、すばらしい雑穀も育てていますし、豊かな食文化もいっぱいまだ残っているので、ポテンシャルとしては非常に本当、先ほど知事が言われたように、この日本の生活の本流といいますか、ここに本当はあって、もう都会行くと外国人ばっかりで、もうそのうち外国人も飽きてくるから、東北のこの日本の本当の生活スタイルというか、こういったものを見たいという、本物志向の方もいらっしゃると思うので、そこらへん、そうするとまた岩手の人たち、特に県北の人たちは外から評価してもらうと非常に嬉しいというか、自己肯定力が結構低いので、「外国や東京の人がいいって言ってくれたっていうんだったら、いいもんかな」とかって言ってくれるかもしれないので、そこらへんちょっと他から来ていただいて、またここの文化を再認識してもらえれば嬉しいかなと思って、是非そこらへんを、よろしくお願いいたします。

西野副部長
 それでは、是非現地の阿部副局長からお願いします。

阿部副局長
 実は、今年度から県北広域振興局の方で、地域の宝資源、漆であり、様々な伝統工芸を組み合わせた観光ルート、国の方でアドベンチャーツーリズム、冒険するわけじゃないですけれども、地域の歴史や文化を一つのストーリーとして組み立てて、観光ルートとして御紹介するという考え方もございまして、それを導入して県北広域振興局としていろいろ宝探しをして参りました。一つモデルコースということで漆をテーマに、源流化ということもやってみまして、そういった形を、あと2年間かけて一つのコース、あるいは複数のコースを作っていこうというふうに、今頑張っております。市町村の方々も単独の観光資源だけではやっぱりやっていけないという思いも強く、今四つの市町村、カシオペアが一つの方向を向いて進もうとしておりますので、今しばらくお待ちくだされば、素晴らしいコースを御紹介できるかと思いますので、もう少しお待ちくださいませ。

西野副部長
 また、県の広聴広報課などでも、インスタや様々なSNSを通じて、岩手の小さなトピックスから、普段の日常の美しいキラキラしたようなところも発信しておりますので、今日いただいたお話の一つ一つが、まさに県外に発信していくような岩手の宝なのだと思いましたので、本当に今日いただいたお話の中には、制度として改善しなければいけないものとか、支援を検討していかなければならないものも含まれておりますが、今日のいろんな情報を宝として、今後県外にも発信していきたいと思った時間でございました。

知事所感

西野副部長
 もう少しお話ししていただきたいところではございますが、最後の締めの時間となってしまいました。それでは、最後に知事からコメントをお願いいたします。

達増知事
 今日はありがとうございました。観光の視点からいきますと、夕べちょうど、岩手朝日テレビでニューヨーク・タイムズ紙が行くべきところと選んだ去年の盛岡市と、あと今年は山口市ということで、そこの両方を歩いて紹介するという番組が放送されて、そして記事を書いたクレイグ・モドさんも出てきていて、モドさんは、東京、京都、大阪などが、外国人観光客がまず来るけれど、もうオーバーツーリズム、人が多すぎて大変なので、だんだん地方の方にこれからは来るだろうし、そういうふうにしていくのがいいという話をしていて、そうだと思うんですね。まず、県庁所在地から始まってはいるんですが、本当の地方は、県庁所在地もその機能のために人工的に作られているところが結構多いので、そこに住んでいる人の日常を体験できる、そして、その四季の折々を体験できるという本当の地方は、県庁所在地じゃないところにありますので、岩手県北、北いわての方に外国人も来てもらえるような形で進めていきたいと思います。それは、外国人だけじゃなく、全国の日本の人たちが来るようになるということでもありますし、またそれは地元の人たちにとっても、どこがいいのか、何が魅力かというのを改めて確認することにもなり、あとは、岩手県内的にもそういう作業を進めることで、盛岡にいる30万人弱の人たちがどんどん北のほうに来るとか、そういう岩手県内における110万人台になっている岩手の人口ですが、もっとこの岩手県北、北いわてというところを利活用して、暮らしを豊かにし、仕事を発展させるようにしていきたいと思います。今日は、どうもありがとうございました。

閉会

西野副部長
 
皆様、本日は本当に貴重なお話をいただきまして、ありがとうございました。いただいた御意見は、県の関係部局に共有いたしまして、今後の県の施策に生かしていきたいと考えております。本当にありがとうございました。
 それでは、これをもちまして県政懇談会を終了いたします。

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