平成25年1月24日教育長記者会見における質疑応答

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ページ番号1020127  更新日 令和1年5月8日

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平成25年1月24日(木曜日)
県庁10階  教育委員室

発表事項:

  • 心とからだの健康観察について

質問事項:

  • 体罰の問題について
  • 元県立高校職員の飲酒運転免職訴訟について

質疑応答

教育企画室
ただいまから、教育長記者会見を始めます。
最初に教育長から発表があります。

教育長
3月11日の東日本大震災津波の発災以降、特に被災した子どもたちの心のサポートということで県教委として三本柱で取り組んできました。
一つ目は、子どもたちと直接接する教員の対応力を上げていこうということで、教員に対する研修をずっと行ってきました。
二つ目として、通常学校に配置しているカウンセラーに加えまして、全国の支援をいただきながら特に被災地を中心にカウンセラーを配置してきました。これは子どもたちに何かあった場合、先生が即カウンセラーに相談できるよう、それから直接子どもたちのサポートをしていただけるようにという趣旨です。
三つ目として、今日ご説明申し上げる「心とからだの健康観察」というアンケート調査を昨年度から実施しています。今年度2年目になりますが、その結果がまとまりましたので、ご報告をさせていただきたいと思います。
実施期間は平成24年9月です。県内の全公立小中高等学校、特別支援学校を対象として行っていますが、参加は基本的に任意になっています。それぞれの学校や子どもたちの状況に応じて、アンケートに答えたくないという場合については参加いただかないということにしています。
集計した結果、県内645校で133,000人余りの子ども達にアンケートに参加していただいています。
その結果、県全体の中で、「要サポート」の人数と割合は、平成23年度は19,721人で全体の14.6%、今年度は16,671人で全体の12.6%と若干低下しています。
沿岸と内陸の比較では、小学校、中学校、高等学校とも、沿岸のほうが内陸に比べて少し高い傾向が見られます。これは昨年度も同様の傾向が見られまして、これが震災津波の影響があるのかどうかというのはこれだけでは判断しがたいですが、現実として沿岸のほうが若干高いという数値になっています。
この調査は経年変化を追っていけるので、毎年やることに意味があると思っています。
平成23年度、「要サポート」であったお子さんがその後どうなったのかというのもこの調査によって経年変化で見られます。昨年度調査で「要サポート」と判断されたお子さんが、今年度はどうなったかといいますと、全体で見ると、35.7%のお子さんが引き続き「要サポート」の状態である、64.3%のお子さんが「見守り」に若干回復しているということが分かります。
沿岸と内陸の状況はそういうことで、沿岸については、継続して「要サポート」が38%、「見守り」に回復が62%、内陸が継続して「要サポート」が35%、「見守り」に回復が65%です。
逆に平成23年度調査で「見守り」であったものが、今回の調査において「要サポート」になったお子さんは全県で7.6%、継続して「見守り」の状態のお子さんは92.4%という状況になっています。
現在これを受けて更に詳細な分析等は行っておりますが、基本的にはこのような状況でありますので、今このデータは学校にお返しして、「要サポート」として判断されたお子さんについては、それぞれの学校において、教員、もしくは臨床心理士、カウンセラーの支援をいただきながら教育相談を実施するよう、各学校にお願いしているところです。
私からの発表は以上です。

教育企画室
ただいまの発表事項に対する質問を含めまして、幹事社の進行で進めさせて頂きます。

幹事社
ただいまの発表事項について、各社から質問がありましたらお願いします。

記者
この結果を受けての教育長の所感をお願いします。

教育長
阪神淡路大震災の経験からすると、発災直後よりは、むしろ3~4年経過した時のほうが、心のサポートが重要だと言われています。そういうことも含めて、特に発災直後からこのような体制を取ったのですが、それが一定の効果を上げているのだろうと思っています。
ただ、先ほども申し上げましたとおり、これは長期にわたって対応が必要だろうと思っていますので、国の支援をいただきながら、このような体制を継続していくことが引き続き必要だろうと思っています。
去年と今年の調査で、「要サポート」のお子さんもこれだけいますので、それぞれの学校については臨床心理士、スクールカウンセラーの支援をいただきながら一人ひとりの子どもたちに寄り添っていただきたいと思っていますし、県教委としてもそれに対しての支援を継続していきたいと思っています。

記者
基本的にやっていく事業は、新規にやるというよりは継続事業でしょうか。

教育長
新規にやると言うよりは、先ほど申し上げた三本柱でやっていくということにしたいと思っています。ただどうしても、カウンセラー、特に臨床心理士さんの数が県内では限界がありますので、引き続き全国にお願いして支援をいただかないといけません。文科省や全国の臨床心理士の方々の団体等にお願いしているところでして、なんとか人的な厚みをもって子どもたちの支援をしていきたいと思っています。

記者
引き続きサポートが必要な子どもについてですが、前年度に比べて症状が重くなっている子どもの割合を教えてください。

教育長
昨年度調査で「要サポート」であったお子さんに対しては、学校において臨床心理士やカウンセラーの支援をいただきながら個別の対応を行っています。
順調に回復に向かっているお子さんもいるし、逆に回復の度合いが遅いお子さんもいらっしゃるということですので、結論としては、個々のお子さん毎に把握しながら丁寧にやっていくということだと思います。

記者
経年比較が大切だということですが、こういった調査あるいは心のサポート事業というのは県教委としてはどのくらいの期間をみて実施していこうと思っているのでしょうか。

教育長
状況を見ながら長期間に渡ってやっていきたいと思っています。何年で打ち切れるという状況ではまだ無いだろうと思っていて、現在、国の支援をいただきながらやっているのですが、阪神淡路大震災の際は10年後にPTSDを発症したお子さんもいらっしゃいますので、長きにわたって続けていきたいとお願いしています。
いつ止められるかということを言える状況ではないと思っていますので、今のところはやれる限り長くやっていきたいと思っています。

記者
数年で終わるものではなく5年以上ということでしょうか。

教育長
先ほども申し上げたように、阪神淡路大震災では10年後にPTSDを発症した事例も出ていますので、少なくともそのレベルだと思っています。

記者
大阪の市立高校の生徒が、部活動の顧問の体罰を苦に自殺した問題についてですが、この問題に対する教育長の見解をお願いします。また、本県の体罰の実態把握はどのようになされていますか。

教育長
体罰というのは学校教育法で明確に禁止されていますし、子どもたちの人権を侵害する行為ですので、教職員としてそういう行動があったということは許し難い事だと思います。教育に対する、保護者、県民の方々の信頼を裏切る行為だと思います。
本県でも過去に体罰の事例があり、平成21年度に6件処分を行っています。6件と非常に多かったこともありまして、そのときに改めて通知を出しています。また、平成23年度は4件の処分を行ったこともあって、懲戒処分の基準を改定しています。それ以前は体罰については訓告若しくは戒告という処分で、子どもがケガしたかどうか、どのような被害を受けたかなどで区分していたのですが、偶発的な1回のものか長期間にわたって継続的に行っているものかどうかなども勘案することとして、現在は体罰については処分の範囲を、訓告から停職までに拡大しています。
そういうことで23年度には体罰に対する懲戒処分の評価を変えたということです。
今年度について処分例はありませんが、いずれこういったことが起こらないように、各学校に対しまして、毎回コンプライアンスの徹底をお願いしていますが、コンプライアンスのマニュアルの中では体罰について一項目設けていまして、「教職員による体罰は児童生徒の人権を侵害する行為であり、絶対に許されるものではない」という一文を明記しています。
今回、先ほどお話のあった事案の発生を踏まえて、文科省から私立学校も含めて各都道府県及び各都道府県教委に調査の要請がありました。
対象は、私どもの所管では公立の小学校、中学校、高等学校、特別支援学校全てということになります。高等学校と特別支援学校は県教委が直接所管している訳ですが、小中学校については市町村教委が所管するところもありますので、どういう調査を行うか、どういった対応で行うのかということは早急に関係者と詰めさせていただきながら速やかな調査を実施していきたいと思います。

記者
大阪の問題では、体罰に関する通報があったにも関わらず、学校や教育委員会では適切な対応がとられていなかったとされます。体罰の防止徹底に向けた取組がありましたらお聞かせください。

教育長
先ほど申し上げたとおり、処分基準を厳格な方に改定しましたし、各教職員に配付しているコンプライアンスマニュアルの中に体罰という項目を設けて徹底を図っているところですが、さらに今回の大阪市の事案の発生を踏まえ、今後、県立学校長会議、市町村の教育長会議を予定しているので、改めて今回の調査とは別に、対応の徹底をお願いしたいと思っています。

記者
この問題に関しまして大阪市では桜宮高校の体育科の募集を見送るという判断をしました。
その理由の一つに橋下市長が教育委員会のほうにそのような対応を求めて発言してきた経緯がありましたが、首長が教育委員会に介入してくる事に関してどのような見解をお持ちでしょうか。

教育長
その地域を統括されている公選職の市長なり知事の思いは、県民、市民の代表の思いとして重く受け止めなければならないと思っています。
ただ、大阪市の事例においても権限的には大阪市教委の権限ですので、市の御意向や学校、お子さん、保護者の御意見を伺った上で市教委として判断されたと思っています。最終的には各都道府県の教委、若しくは市教委が判断する事項だと思います。

記者
今回の案件に関しまして、岩手県からご覧になって適切な判断だとお考えですか。

教育長
難しいですね、学校の状況を直接見ておらず、側で感じているわけでもありませんので。
当該学校の子どもたちの状況がどうだったのか、一番近くで見ている市町村教委が判断されたことだと思いますので、外部からその判断に対してどうこう言うのは難しいと思います。
いろいろな事案を考慮されて市教委が適切に判断されたのだろうと思います。

記者
大阪での体罰問題について、教育長の問題認識について教えてください。

教育長
体罰というのは子どもの人権を明らかに侵害する行為です。学校は子どもたちを育てる場であり、人権侵害行為によって子どもたちが育つかというとそれはあり得ないわけで、許されない行為だと思います。その行為に対して処分が科されるということは、絶対あってはいけないことだという評価に基づいて処分しているということですので、そこは言わずもがなと思っています。
体罰については、発憤させるためだとか色々な発言がされていますが、あくまでも学校体育は教育の場で行っている事であり、子どもたちを育てるという視点を抜いての学校体育はあり得ません。部活動にしてもそうです。そういった事では、そのような御見解というのは少なくとも学校体育には相容れないと思っています。

記者
今後、教職員に対してどのような指導、対策が必要だとお考えでしょうか。

教育長
今回は部活動という場面であのような事案が起こっているわけですが、それに対しては全国高体連、全国高野連からも絶対にあってはならないという指導をそれぞれしていて、思いは私どもも同じです。
ただ、体罰は部活動に限らず学校の全教育活動の場においてあってはならないので、会議等を通じてさらに徹底していきたいと思っています。コンプライアンスマニュアルの中でも明確に、体罰は子どもたちの人権を侵害する行為だということを書いておりますし、各学校にはそういう視点で取組をお願いしたいと思います。

記者
文科省の調査は、今年3月までの一年間、懲戒処分を受けなかったケースも含めて全て報告するものと聞いていますが、具体的にはどのような通知になっているのでしょうか。

教育長
調査内容については、実態把握の対象範囲については、国公私立の小学校、中学校、高等学校、特別支援学校、全てにおける体罰の状況について平成24年4月から平成25年1月までに発生したものを報告し、懲戒処分等については公立学校のみ報告することとなっています。
具体的な報告項目は様式を示されていますので、それに沿って報告をいたします。
さらに一次報告、二次報告と二段階に分けて報告を求められています。一次報告というのは今までに発生したものについて2月末日までに報告するというものです。二次報告は今回新たに実施する調査の結果、把握したものを4月30日までに報告するというものです。

記者
平成24年4月以前は調査されないのでしょうか。

教育長
まずは根絶することが目的ですので、現状がどうなっているのかはっきり調査した上で、どう対応していくのかという事です。ですから、懲戒処分というのは刑事事件と違って時効がありませんので過去のことでも事実が確認できれば個別の事案として対応していくことになると思います。

記者
保護者や子どもなど、対象はどこまで範囲を広げるのでしょうか。

教育長
文科省からそこまでの明示はありません。それを踏まえて、県教委だけではなく、小中学校を所管している市町村教委とも調整をしながら速やかに実施したいと思っています。

記者
赴任が10年以上に及んでいることも影響があるのではないかと橋下市長は発言されていますが、岩手県の場合もスポーツの強化指定校だと長期間にわたって同じところに赴任する先生もいるわけですが、それに関して岩手県としての見解はいかがですか。

教育長
競技力の向上の観点から、そのような制度を作るべきだということでやっていますが、それが今のところ弊害になっているという報告は受けていません。
一人ひとりの教員が学校体育の場を通じて子どもたちを育成しているという思いが大切だと思っていますので、その辺を改めて徹底していきたいと思います。

記者
元県立高校教員の飲酒運転免職訴訟についてですが、原告の男性と県教委は共に控訴しました。
その受け止め、理由について教えてください。

教育長
争点は二つあります。
一つは免職処分の相当性が争われています。地裁で免職処分については妥当と認められていますが、原告の方はそちらも争われているということだと思いますので、我々としても訴えるところはしっかりと訴えていきたいと思います。
もう一つの争点は、退職金の支給の関係で県の主張が認められなかったということです。
我々が県に入った頃は懲戒免職になれば退職金はゼロという理解でいましたが、途中で若干制度が変わりました。きっかけは退職後に職員の不祥事が発覚した事案で、もう辞めた方に退職金を返せという制度が当時はなかった。それはバランス上、変だということになりました。わかれば退職金を貰えないのに、たまたまわからないで辞めてしまえば退職金は貰いっぱなしというのは国民感情に合わないため、制度として、在職中の不祥事が退職後に発覚した際に必要と認められる場合は、退職金の全部又は一部の返還を認めることが出来るという規定が入りました。
それとのパラレルで、在職中の処分についても、場合によっては一部支給することが出来るという規定がそこに盛り込まれました。ただ、当時の制定権者である総務省からは、原則、退職金を支給しないという現行の考え方を変えるものではないという通知も入っていましたので、各県とも概ねそういう対応をしています。
ですから懲戒免職処分を受けて、退職金が一部支給されたという事例は全国でも極めて少ないです。今回は訴訟で退職金を支給しないという処分は取り消された訳ですので、それをそのまま受け入れるということになると、全国に対する影響も大きい。その制度に対する問題もありますので、上級審の判断を仰ぐべきだろうということで仙台高裁に控訴をさせて頂きました。今まで私ども含め全国が運用していた制度とはちょっと違う判断が示されたところもありますので、上級審の判断を仰ぎたいと思います。

記者
退職金の引き下げの前に駆け込みで退職する方が相次いでいますが、このことについて、岩手県ではないと聞いていますが、岩手県の状態と各県の状況への見解をお聞かせください。

教育長
岩手県では今のところ、1月末日とか2月1日で退職したいという希望があるという報告は受けていません。というのは、元々制度の差もありますが、本県ではまだ埼玉県のように退職手当の減額の条例が提案されておらず、知事部局のほうで検討中という状況ですので、そういう背景の差もあると思います。
他県の事案ですので、外部から同じ教育の立場として申し上げるというのは難しいと思います。いつ退職するかということについては、退職される方一人ひとりのお考えもあるとは思うのですが、実は昨日、谷川文部科学副大臣が被災地である陸前高田市の気仙小学校と長部小学校を訪問されました。その際、私も参りまして、副大臣には、岩手の教職員は自らも被災者でありながら子ども一人ひとりに大切に寄り添ってご苦労頂いていますと話を申し上げました。
気仙小学校の校長も全く同じようなお話を副大臣にされていましたので、そういう事だろうと思います。まず、子ども一人ひとりを大切にしてもらいたいというのが教育を担当する者としての思いです。

記者
制度についてお伺いします。人事課から今後2月定例会に改正案が出されると思うのですが、それが施行されて、3月末で退職する場合でも、今の時点で退職した場合と比べて給料と退職金の差額が出ない考え方もあるようなのですが、この辺はいかがでしょうか。

教育長
その辺は制度をどう作るかというところに関わり、我々も受ける立場なので、制度権者以外の者があれこれ申し上げるのはなかなか難しいと思います。いずれそういった勤務条件になりますから、制度権者において職員団体とも調整を加えた上でしかるべき判断をされるだろうと思います。そして最終的には県民の代表である議会の議決をいただいて施行される事ですので、検討審議の場を通じてあるべき姿が形成されていくだろうと思います。

教育企画室
以上をもちまして本日の記者会見を終了します。

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