岩手県食の匠 令和5年度認定

ページ番号1071126  更新日 令和6年3月13日

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昆野広子さんの「口内のもち料理(いかもち、わさびもち)」(認定番号297、北上市)

口内のもち料理(いかもち、わさびもち)写真

 北上市口内(くちない)は南部藩に接する仙台領最北の国境であり、伊達藩の食習慣を受け継いでいる。伊達藩時代には、農民がもち料理を日常的に食べることが許されていたと考えられ、青米等が原料の色や味が劣る「しなもち」をおいしく食べるために、もちは様々な味付けが工夫されてきた。
 正月と小正月、田植え作業完了後の「さなぶり」、4月と9月に女性が参加する「山の神講」等、大勢の人が集まる行事では必ずつきたてのもちでお祝いするのが慣習である。
 するめいかは、昭和初期には現在よりも漁獲量が豊富で、内陸部でも箱で入手できる貴重な海産資源であった。そのため、塩辛や干物に加工して保存するだけでなく、ごちそうとして正月や祝いのもち料理に使われてきた。
 山わさびは口内では各家庭の庭先でも栽培されており、ほぼ年中収穫できることから身近な食材となっている。各家々で自家産調味料(しょうゆ)が作られていた時代から、しょうゆだけでおいしく調味できる味付けとして、もち料理でも食べられてきた。
 口内では、丸めたもちを大皿に載せ、銘々がくるみ、小豆、ずんだ、納豆等、好みの味を付けていただくが、「いかもち」「わさびもち」は一人前ずつ盛り付けて提供される。

熊谷圭子さんの「じゅうねもち」(認定番号298、奥州市)

じゅうねもち写真

 胆江地方では、「えごま」のことを「じゅうね」と呼び、油が貴重でなかなか入手できない時代から自家用として栽培し、もちやはっとにからめる等、様々な食べ方をしてきた。
 香ばしい香りが立ってくるまで炒ったじゅうねをすり、砂糖と醤油で甘じょっぱく味付けをしたじゅうねもちは、秋の収穫のねぎらいを込めたごちそうとして喜ばれた。また、出荷できなかった自家消費用のもち米を美味しく食べる工夫の中で作られてきたものでもある。
 ひと手間かかるが、独特の香りと油分が特徴のじゅうねもちは、くるみもちと並んで当地方のごちそうもちとなっている。

熊谷英美子さんの「したみにぎり」(認定番号299、岩泉町)

したみにぎり写真

 「したみ」とはどんぐりのことで、地域では「しだみ」とも言われている。岩泉町では古くから灰汁(あく)抜きした「したみ」を稗や麦、粟などの雑穀と混ぜて主食としたり、澱粉を餅にしたり、麹で発酵させてあんことして利用してきた。また、乾燥した「したみ」は保存性があるため、農家の屋根裏等に保管され救荒食(異常気象や災害による飢餓に備えて備蓄し、利用する代用食物)としても利用されてきた。
 昭和30年代頃までは、岩泉町には水田がほとんどなかったため、米の生産はなく、また、砂糖は貴重品であった。
 畠山トキサ氏(元岩手県食の匠)によると、当時は炊いた大麦と自然の麹菌で麦麹を作り、ナラなどの木灰で灰汁抜きした「したみ」と湯を加えて、囲炉裏端の(かめ)で発酵させ、そこに仕上げ用の「したみ」を加えて練り上げ、「したみにぎり」としていた。
 現在、岩泉町で「したみ」を利用する場合は、砂糖を使うことが多いが、麹で発酵させたものは、自然で上品な甘味が特徴的である。

澤口ゆう子さんの「いげばっと(手打ちうどん)」(認定番号300、久慈市)

いげばっと(手打ちうどん)写真

 小麦は稗の収穫後に蒔き、寒冷に耐えて翌年実る大切な主食であり、昔は農家では欠かすことのできない食物であった。
 昔、正月やお盆、冠婚葬祭等、地域の人が集まる行事があった際には、たくさんのうどんを作り、旬の時期に採れた海藻などを乗せ、お振舞のお膳の最後の料理としていた。これは「いげばっと」と呼ばれる。「いげ」=「帰れ」、「はっと」=麺類を組み合わせた料理名であり、これを食べたお客は家路についたものである。
 なお、「いげばっと」とその場で名称を呼ぶことはない。これが出たらお膳は終了で家路につくという事が、暗黙の了解であった。

戸来雅美さんの「串もち」(認定番号301、一戸町)

串もち写真

 串もちは、昔から二戸地方で一般的に食べられている。
 一戸町では、戦前各家庭で植えた小麦を粉にして、串もちを作り、農作業の中休みのおやつとして食べられていた。
 味付けは、各家庭で少しずつ異なるが、味噌味が一般的に食べられてきた。

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