牛のブルセラ症について

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ページ番号1007931  更新日 平成31年2月20日

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本病は世界の様々な地域で発生しているが、本病の摘発検査と淘汰を継続的に実施しているわが国での発生は稀れである。ここでは、感染源、感染経路、診断法等を記載する。
本病の起因菌はBrucella abortus(グラム陰性通性細胞内寄生性の小桿菌または球桿菌)であり、雌牛への感染により妊娠後期(7ヶ月から8ヶ月)の流産、雄牛への感染により精巣炎が引き起こされる。主要な感染源は流産胎子とその胎膜である。一般的な感染経路は経口であるが、まれに眼結膜や創傷皮膚からも感染する。感染雄牛では精液が感染源となる。
感染後の同菌は感染局所のリンパ節で増殖し、血行性に脾臓、乳腺、乳房上リンパ節、妊娠子宮、精巣、副生殖腺に播種され、同組織に長期にわたり存在する。本病は性成熟後の牛に感染し易く、同時期以前の若牛への感染は少ない。これは成熟した生殖器に含まれるエリスリトール(糖)が同菌の細胞内増殖を促すことによる。同菌は感染牛の初乳にほとんど例外なく、その後の乳にも間欠的に排泄される。他方、感染牛の腎臓、卵巣、骨髄および腸間膜リンパ節から分離されないことから、同菌が尿および糞に排泄されることは稀れと考えられている。同菌は高温、乾燥、直射日光に感受性を有するが、低温、湿潤の条件下では外界で数か月間生存する。

診断の基本は菌分離であり、流産胎子では胃内容、肺、脾臓、胎膜、成畜では乳汁、流産後の子宮排泄物、精液、殺畜では乳房上リンパ節を含むリンパ節、脾臓、子宮(妊娠後期から分娩直後)、乳腺、精巣から分離する。
抗体検査による診断では、感度の高い平板凝集反応がスクリーニングに、感度と特異性に優れる補体結合反応が確定診断に用いられる。試験管凝集反応は特異性と感度において必ずしも十分でなく、最近ではS型LPSを抗原とするELISAが開発され、わが国でも実用化が進められている。
抗体検査ではYersinia enterocolitica 09との交差反応に留意する必要がある。同菌はS型ブルセラ菌のO抗原(A, M)のうちAと同一の抗原決定基を有することから、蛋白抗原やR型LPSにより識別される。

(注)ブルセラ菌は菌体表層の内毒素リポ多糖(LPS)の性状からS型とR型に分類され、前者の病原性は高く、後者では低い傾向にある。

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岩手県中央家畜保健衛生所 病性鑑定課
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