(4)自然災害・沿岸域

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ページ番号1067623  更新日 令和6年3月13日

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【河川】

  ア 洪水

(現状)

 全国的に、過去30 年程度の間で短時間強雨の発生頻度は増加しており、本県においても、短時間強雨の発生回数に増加傾向が現れているとの報告があります。

  浸水面積の経年変化は高度経済成長期(1955(昭和30)~1973(昭和48)年)に比べれば全体として減少傾向にあり、この主たる要因として治水対策が進んできたことが挙げられます。一方、氾濫危険水位を超過した洪水の発生地点数は国管理河川、都道府県管理河川ともに増加傾向にあり、気候変動による水害の頻発化・激甚化が懸念されています。

(将来予測)

 2℃上昇シナリオ、4℃上昇シナリオなどの将来予測によれば、日本の代表的な河川流域において洪水を起こしうる大雨事象が今世紀末には現在に比べ有意に増加することが予測されています。                                    また、気温上昇に伴う洪水による被害の増大が予測されています。

 河川堤防により洪水から守られた地域(堤内地)における氾濫発生確率が有意に高まれば、浸水被害が増大する傾向が示されています。

 海岸近くの低平地等では、海面水位の上昇が洪水氾濫による浸水の可能性を増やし、氾濫による浸水時間の長期化を招くと想定されます。

  イ 内水

(現状)

 比較的多頻度の大雨事象については、その発生頻度が経年的に増加傾向にあり、5年から10年に1度程度の確率で発生する短時間強雨が過去50年間で有意に増大してきています。 これまでの下水道整備により達成された水害に対する安全度は、計画上の目標に沿って着実に向上していますが、引き続き取組が必要です。

 水害被害額に占める内水氾濫による被害額の割合(2011(平成23)~2020(令和2)年の合計)は、全国では約3割となっています。

(将来予測)

 4℃上昇シナリオを前提とした、日本全国における内水災害被害額を推算した研究では、2080~2099年において被害額が現在気候の約2倍に増加することを示しています。

 河川や海岸等の近くの低平地等では、河川水位が上昇する頻度の増加や海面水位の上昇によって、下水道等から雨水を排水できなくなることによる内水氾濫の可能性が増え、浸水時間の長期化を招くと想定されます。

 また、大雨の増加は、都市部以外に農地等への浸水被害等をもたらすことも想定されます。

【沿岸(高潮・高波等)】

  ア 海面水位の上昇

海面水位

(現状)

 潮位観測記録の解析結果では、日本周辺4海域の年平均海面水位が1960(昭和35)~2022(令和4)年の間では1.5〔1.2~1.8〕mm/年、1971(昭和46)~2006(平成18)年の間では0.9〔0.3~1.5〕mm/年、2006(平成18)~2018(平成30)年の間では2.9〔0.8~5.0〕mm/年上昇するなど、上昇傾向にあったことが報告されています。

(将来予測)

 1986(昭和61)~2005(平成17)年平均を基準とした、2081~2100年平均の世界平均海面水位の上昇は、2℃上昇シナリオの場合0.26~0.53m、4℃上昇シナリオの場合0.51~0.92mの範囲となる可能性が高いとされており、温室効果ガスの排出を抑えた場合でも一定の海面水位の上昇が予測されています。

 海面水位の上昇が生じると、現在と比較して高潮、高波、津波による被災リスクや海岸の侵食傾向が高まります。

 河川の取水施設、沿岸の防災施設、港湾・漁港の施設等の機能の低下や損傷が生じ、沿岸部の水没・浸水、海岸侵食の加速、港湾及び漁港運用への支障、干潟や河川の感潮区間の生態系への影響が想定されます。


注 感潮区間:河川の河口付近で水位や流速に海の潮汐が影響を与える区間。

  イ 高潮・高波

(現状)

 高潮については、極端な高潮位の発生が、1970(昭和45)年以降全世界的に増加している可能性が高いことが指摘されています。

 高波については、観測結果より波高の増大が確認されています。

(将来予測)

 気候変動により海面水位が上昇する可能性が非常に高く、それにより高潮の浸水リスクは高まります。

 また、台風の強度や経路の変化等による高波のリスク増大の可能性が予測されています。

 河川の取水施設や沿岸の防災施設、港湾・漁港施設等の構造物などでは、海面水位の上昇や、台風や冬季の発達した低気圧の強度が増加して潮位偏差や波高が増大すると、安全性が十分確保できなくなる箇所が多くなると予測されています。


注 潮位偏差:天体の動きから算出した天文潮位(推算潮位)と気象などの影響を受けた実際の潮位との差(ずれ)。

  ウ 海岸浸食

砂浜

(現状)

 現時点では、気候変動による海面水位の上昇や台風の強度の増加等が、既に海岸侵食に影響を及ぼしているかについては、具体的な事象や研究結果は確認できていません。

(将来予測)

 気候変動による海面水位の上昇によって、海岸が侵食される可能性が高く、具体的には、2081~2100 年までに、2℃上昇シナリオでは日本沿岸で平均62%(173km2)の砂浜が、4℃上昇シナリオでは平均83%(232km2)の砂浜が消失するとの報告例があります。

 気候変動によって台風の強度が増加すると荒天時の波高が増加します。一方、平均波高は長期的に減少するという研究成果もあります。荒天時の波高の増加と平均波高の減少の両方を考慮する必要がありますが、波浪特性の長期変動が砂浜に与える影響は、海面水位の上昇が与える影響よりも小さい可能性が高く、気候変動によっては砂浜がより侵食される可能性が高くなっています。

 気候変動による極端な降水の頻度及び強度の増大に伴い、河川からの土砂供給量が増大すると、河口周辺の海岸を中心に、侵食が緩和されたり、土砂堆積が生じたりする可能性があります。

【山地(土砂災害)】

(現状)

 気候変動の土砂災害に及ぼす影響を直接分析した研究や報告は、現時点で多くはありません。しかし、最近の降雨条件と土砂災害の実態、最近発生した土砂災害、特に多数の深層崩壊や同時多発型表層崩壊・土石流、土砂・洪水氾濫による特徴的な大規模土砂災害に関する論文や報告は多く発表されています。これらの大規模土砂災害をもたらした特徴のある降雨条件が気候変動によるものであれば、気候変動による土砂災害の形態の変化が既に発生しており、今後より激甚化することが予想されます。

(将来予測)

 降雨条件が厳しくなるという前提の下で状況の変化が想定されるものとして下記が挙げられます。(厳しい降雨条件として、極端に降雨強度の大きい大雨及びその高降雨強度の長時間化、極端に総降雨量の大きい大雨、広域に降る大雨などを表す。)

○ 集中的な崩壊・がけ崩れ・土石流等の頻発、山地や斜面周辺地域の社会生活への影響

○ ハード対策やソフト対策の効果の相対的な低下、被害の拡大

○ 土砂・洪水氾濫の発生頻度の増加

○ 深層崩壊等の大規模現象の増加による直接的・間接的影響の長期化

○ 現象の大規模化、新たな土砂移動現象の顕在化による既存の土砂災害警戒区域以外への被害の拡大

○ 河川への土砂供給量増大による治水・利水機能の低下

○ 森林域で極端な大雨が発生することによる流木被害の増加


注 降雨強度:ある一定時間に降った雨が 1 時間降り続いたとして換算したもの。

【山地(山地災害、治山・林道施設)】

(現状)

 近年、台風などによる局地降雨を原因として、山地災害が激甚化、頻発化する傾向にあります。

 過去30年程度の間で50mm/h 以上の大雨の発生頻度は約1.5 倍に増加しており、人家・集落等に影響する土砂災害もそれに応じて増加しています。また、長時間にわたって停滞する線状降水帯による集中豪雨の事例も頻繁に発生しており、それが比較的広範囲に高強度の大雨をもたらすことにより、流域に同時多発的な表層崩壊や土石流を誘発した例も多く見られます。

 山腹崩壊地に生育していた立木と崩壊土砂が、渓流周辺の立木や土砂を巻き込みながら流下し、大量の流木が発生するといった流木災害が頻発化しています。

(将来予測)

 大雨の発生頻度が増加することに伴い、崩壊する土砂量の増大、土石流の堆積・氾濫範囲の拡大などが想定されるほか、雨の降り始めから崩壊が発生するまでの時間が短くなることにより、十分な避難時間を確保できなくなることが懸念されています。

 森林には、下層植生や落枝や落葉が地表の侵食を抑制するとともに、樹木が根を張りめぐらすことによって土砂の崩壊を防ぐ機能があります。気候変動に伴う大雨の頻度増加、局地的な大雨の増加は確実視され、崩壊や土石流等の山地災害の頻発が予測されるとともに、これらの機能を大きく上回るような極端な大雨に起因する外力が働いた際には、特に脆弱な地質地帯を中心として、山腹斜面の同時多発的な崩壊や土石流の増加が予想されています。

 台風による大雨や強風によって発生する風倒木等は山地災害の規模を大きくする可能性が指摘されています。

【強風等】

(現状)

 気候変動に伴う強風・強い台風の増加等とそれによる被害の増加との因果関係について、具体的に言及した研究事例は現時点で確認できていませんが、気候変動が台風の最大強度の空間位置の変化や進行方向の変化に影響を与えているとする報告も見られています。 

 気候変動による竜巻の発生頻度の変化についても、現時点で具体的な研究事例は確認されていません。

 急速に発達する低気圧は長期的に発生数が減少している一方で、1個当たりの強度が増加傾向にあることも報告されています。

(将来予測)

 4℃上昇シナリオを前提とした研究では、21世紀後半にかけて気候変動に伴って強風や熱帯低気圧全体に占める強い熱帯低気圧の割合の増加等が予測されているものの、地域ごとに傾向は異なることが予測されています。

 また、強い竜巻の頻度が大幅に増加するといった予測例もあります。

【その他共通的な取組】

(現状)

 近年全国的に大規模災害が発生しており、災害廃棄物が多量に発生しています。                                  県内市町村では、平時からの備えとして、市町村災害廃棄物処理計画の策定に取り組んでおり、県では、計画ひな型の作成や助言等により、市町村による当該計画の策定を支援しています。

(将来予測)

 大規模災害に伴って災害廃棄物が多量に発生した場合、被災地の速やかな復旧復興を図るためには、円滑かつ迅速に災害廃棄物処理を行う必要が生じます。

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