賃貸マンションの敷金が返還されない

Xでポスト
フェイスブックでシェア
ラインでシェア

ページ番号1005068  更新日 平成31年2月20日

印刷大きな文字で印刷

質問(1)

4年ほど住んでいた賃貸マンションを退去することになりました。管理会社に確認してもらったところ、敷金10万円は返還されず、さらに原状回復費用として10万円の請求を受けました。支払わなければならないでしょうか。

回答(1)

結論から言えば、ケース・バイ・ケースです。

敷金とは、家賃が滞納された場合や建物を壊された場合に備え費用を確保しておくために貸主側が預かっているもので、正当な理由がなければ退去時に全額返金されるべき性質のものです。

一方借主は、借りていた物件の退去時に原状に回復する義務を負っており、その費用は敷金で精算されるのが一般的です。
ここでいう「原状回復義務」とは、国土交通省で示しているガイドラインによれば、「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善良注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損(きそん)等を復旧すること」と定義されています。

分かりやすく言えば、住まい方・使い方や、手入れが悪くて汚れたり、壊れたりした場合については、借主に原状に回復する義務がありますが、年数が経って劣化したり、通常の使い方で発生した汚れ等についてはこれに当たらないということです。つまり、借主が借り始めた当時の状態に戻すことではないということです。

したがって、敷金の返還額や精算額を決めるためには、こうしたガイドラインの考え方を踏まえた上で、貸主側と話し合うことが必要です。
この際は、入居時の契約内容においてどのように取り決めしていたか、一方的に借主に不利な特約になっていないか、借主が住む上でどのような使い方(管理)をしていたか、損耗・毀損の原因は何かなどを確認しておいた方がいいでしょう。

トラブルに遭わないためのアドバイス

  • 契約前に、原状回復の方法や費用についてよく確認すること
  • 入居時の記録(写真、貸主との確認書等)を保存しておくこと

     

質問(2)

賃貸借契約書では、原状回復に関して特別の契約条項がないのですが、どうすれば良いでしょうか。

回答(2)

契約時に原状回復について特別の取決めがなければ、国土交通省で示しているガイドラインが参考になります。このガイドラインには法的な強制力はありませんが、原状回復の考え方の指針となっています。

具体的には、次のように考えられます。

借主の使い方次第で発生したり、手入れ等が悪くて発生するもの(原状回復費用を負担する必要あり)

  • 引越し作業でついたキズ
  • 不注意で雨が吹き込んだことなどによるフローリングの色落ち
  • キャスター付のイス等によるフローリングのキズやへこみ
  • 飲み物等をこぼしたことによるカーペットのシミやカビ
  • 冷蔵庫下のサビ跡(床に汚損が出る程度)
  • 壁の下地ボードの張替えが必要な程のクギ穴やネジ穴
  • 台所の油汚れ(手入れが悪くて取れなくなった場合)
  • ガスコンロ、換気扇の油汚れ(同上)
  • 結露を放置したために拡大したカビ、シミ
  • クーラーからの水漏れを放置したための壁の腐食
  • ペットによる柱等のキズ
  • 不適切な手入れ等による設備の毀損
  • 手入れを怠った結果生じた風呂、トイレ等の水垢、カビ等

借主の通常の使い方で発生するもの(原状回復費用を負担する必要なし)

  • 畳の裏返し、表替え
  • フローリングのワックスがけ
  • 家具による床やカーペットのへこみ
  • 日焼けによる畳やフローリング、壁クロスの変色
  • テレビや冷蔵庫等の後ろの壁の黒ずみ
  • 壁に貼ったカレンダーやポスター等の画鋲の穴
  • エアコン設置による壁の跡やビス穴
  • 網戸の張替え
  • 自然に発生したガラスの破損
  • ハウスクリーニング
  • 鍵の取替え(破損、紛失等のない場合)
  • 浴槽、風呂がまの取替え
  • 経年劣化による設備の故障

判断が難しい場合は、宅地建物取引業協会に確認してみるのもいいでしょう。

質問(3)

賃貸借契約書やその特約において、「退去時にはすべて借主の負担で修繕するものとする」と記載があれば、やむを得ないのでしょうか。

回答(3)

このように、一般的な原状回復義務を超えた修繕義務を借主に負わせる旨の特約を設けている場合は、ガイドラインで定めている次の3つの要件を満たしているかどうかがポイントになります。

  1. 特約の必要性があり、かつ、暴利的でないなどの客観的、合理的理由が存在すること
  2. 賃借人が特約によって通常の原状回復義務を超えた修繕等の義務を負うことについて認識していること
  3. 賃借人が特約によって義務負担の意思表示をしていること

もし、これらの要件を満たしていない場合は、特約の内容が一方的に消費者に不利であるとして消費者契約法等に基づき無効を主張することはできますが、最終的には司法の判断に委ねられることになります。

PDFファイルをご覧いただくには、「Adobe(R) Reader(R)」が必要です。お持ちでない方はアドビシステムズ社のサイト(新しいウィンドウ)からダウンロード(無料)してください。

このページに関するお問い合わせ

岩手県立県民生活センター
〒020-0021 岩手県盛岡市中央通3-10-2
事務室電話番号:019-624-2586
消費生活相談専用電話番号:019-624-2209
交通事故相談専用電話番号:019-624-2244