新中和処理施設

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ページ番号1025895  更新日 令和6年3月13日

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新中和処理施設

フロー図
新中和処理施設フロー図

鉄酸化バクテリアによる処理

写真2
鉄酸化バクテリア

 新中和処理施設の特徴は、坑廃水中に生息する鉄酸化バクテリアを活用し、炭酸カルシウムによる中和処理を行う、「バクテリア酸化・炭酸カルシウム中和方式」を採用していることです。
酸性の坑廃水の処理には、一般的に、消石灰が中和剤として使用されますが、松尾鉱山のように大量(18m3/分)の坑廃水を処理する場合、消石灰は比較的価格が高いため処理コストが上がります。
 一方、消石灰より安価な炭酸カルシウムは、2価の鉄イオンとは反応しにくく、3価の鉄イオンと反応しやすい特徴がありますが、松尾鉱山の坑廃水は、2価の鉄イオンを多量に含むことから、そのままでは適切に処理できません。そこで、鉄イオンを酸化する性質を持つ鉄酸化バクテリアを活用してあらかじめ鉄イオンを2価から3価に酸化するすることで炭酸カルシウムによる中和処理を行っています。
 鉄酸化バクテリアは鉄イオンを酸素で酸化する際に生じるエネルギーを利用して生育する細菌で、坑廃水中に1ml当たり25万個生息するとされています。新中和処理施設では坑廃水中に空気を送り込んで鉄酸化バクテリアを活性化して増殖させることにより1ml当たり1億個の高濃度に維持し、大量な坑廃水中の鉄イオンをを連続的に酸化しています。
 松尾鉱山の坑廃水は、強酸性で多量の2価鉄イオンを含み、大量の水を連続的に処理する必要があることから、「バクテリア酸化・炭酸カルシウム中和方式」は新中和処理施設にふさわしい処理方式と言えます。

恒久排水路トンネル

写真:恒久排水路トンネル

 恒久排水路トンネルは、坑内から流出する坑廃水を中和処理場へ導水するための設備です。
 坑廃水を安定して処理場へ導水するため、およそ1年半の工期と、約6億円の建設費を費やして、昭和59年3月に完成しました。
 総延長322mのコンクリート製のトンネルで、中には直径600mmの硬質塩化ビニル管が敷設してあります。坑廃水をこの管で原水受槽まで導き、そこから原水分配槽まで送水しています。

原水分配槽

写真:原水分配槽

 原水分配槽は、恒久排水トンネルから導水した坑廃水を各系列に均等分配するための設備です。
 処理施設では、1系列最大12m3/分の処理能力を有する第1系列~第3系列のほか、非常用の第4系列(最大処理能力9m3/分)を活用しつつ、坑廃水を分配により処理しています。

酸化槽

写真:酸化槽

 坑廃水中に含まれる2価の鉄イオン(Fe2+)を3価の鉄イオン(Fe3+)に酸化するための設備です。
 坑廃水に空気を吹き込むことにより、空気中の酸素を供給します。鉄酸化バクテリアは、その酸素を利用して2価の鉄イオンを3価の鉄イオンに酸化してエネルギーを得ます。
 鉄酸化バクテリアは、得られたエネルギーを利用して増殖するとともに、キャリア(着床担体)によって高濃度に維持されます。バクテリアのキャリア(着床担体)には、中和反応によって発生した殿物を利用しています。
 高濃度に維持された鉄酸化バクテリアの作用により、以下の反応が行われます。
【反応式】
   4FeSO4(硫酸第一鉄)+2H2SO4(硫酸)+O2(酸素) → 
                     2Fe2(SO4)3(硫酸第二鉄)+2H2O(みず)
 

バクテリア回収槽

写真:バクテリア回収槽

 バクテリアのキャリア(着床担体)である殿物を凝集、沈殿させて、酸化槽へ戻すための設備です。
 殿物はバクテリア回収槽の底から回収され酸化槽へ、上澄水は自然流下で中和槽へと送られます。
 中和槽へ送られる段階で、坑廃水に含まれる鉄イオンは、ほぼ完全に2価(Fe2+)から3価(Fe3+)に酸化されます。
 

中和槽

写真:中和槽

 炭酸カルシウムによって、酸化した坑廃水を中和するための設備です。
 ミルク状の炭酸カルシウム溶液を添加し、空気の吹き込みにより攪拌しながら中和します。
【反応式】
 Fe2(SO4)3(硫酸第二鉄)+3CaCO3(炭酸カルシウム)+3H2O(みず) →
  2Fe(OH)3↓(水酸化第二鉄)+3CaSO4↓(硫酸カルシウム)+3CO2↑(二酸化炭素)
 この中和反応により、鉄を含んだ多量の殿物が発生します。

固液分離槽

写真:固液分離槽

 中和槽から自然流下してくる中和処理水を殿物と上澄水に分離するための設備です。
 中和殿物の沈降を促進するため、中和処理水に高分子凝集剤を添加しています。
 凝集、沈殿した中和殿物は酸化槽と中和槽に送られて利用される分を除き、貯泥ダムへと送られ、上澄水は赤川へ放流されます。
 

貯泥ダム

写真:貯泥ダム

 中和反応によって発生した中和殿物を堆積するためのダムです。
 処理施設に隣接した旧日蔭沼を浚せつ、掘削し、東西の堤体は自然の地形を利用して、南北の堤体は西側の地山から採取した土石を利用し、傾斜コア型フィルタイプダムとして築造されました。
 また、波浪による提体の侵食を防止するために、堤体の内側法面は、表面に石を貼り付けるリップラップ工法で造られています。
 ダムの容量は200万m3で、これまでに、約50万m3の殿物が堆積されており、年間の堆積殿物量(湿泥量)はおよそ2万m3になります。

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このページに関するお問い合わせ

環境生活部 環境保全課 鉱業・水資源担当(鉱業)
〒020-8570 岩手県盛岡市内丸10-1
電話番号:019-629-5358 ファクス番号:019-629-5364
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