岩手フロンティア懇談会(平成19年8月23日)

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ページ番号1000945  更新日 平成31年2月20日

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対象地域:県南広域振興圏
開催場所:奥州市

県政懇談会「岩手フロンティア懇談会」懇談記録(県南広域振興圏)

  • 日時 平成19年8月23日(木曜日)午後6時から7時30分
  • 場所 奥州地区合同庁舎 1階 B会議室

開会

酒井局長
それでは、ただいまから県政懇談会「岩手フロンティア懇談会」を始めさせていただきたいと思います。
この懇談会は、達増知事になられまして一番最初の第1回目の岩手フロンティア懇談会ということでございます。今日は、産業界の方々と懇談をするというものでございます。本日ご出席いただきました皆様には、本当にお忙しいところ、しかも時間が6時ということでございまして、ご多忙の方々にこういう形でお集まりいただきましたことに対して、心から感謝を申し上げる次第でございます。
私、今日の進行役を務めさせていただきます県南広域振興局長の酒井でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げたいと思います。

知事あいさつ

酒井局長
それでは、開会に当たりまして知事から一言ご挨拶を申し上げますが、その前に知事も私も服を脱ごうと思っておりますので、ぜひ皆さんも上着を外していただきまして懇談に臨んでいただければと思います。どうぞよろしくお願いをいたします。
それでは、知事の方からご挨拶をよろしくお願いいたします。

達増知事
今日は、皆様、岩手フロンティア懇談会ということでこちらにお集まりをいただきまして誠にありがとうございました。日頃より岩手県政に大変お世話になっておりますが、私、知事就任以来、市町村長との意見交換会、また市町村要望など、現場の声を聞きながら仕事を進めているところでございますが、県民の皆様とも直接意見交換を行う機会を設け、県政運営に生かしていきたいと考えておりまして、様々な形で県政懇談会の実施を予定しております。今日は、その中でも第1回の県政懇談会でございまして、広域振興圏単位で県政運営や広域振興圏の重要課題等について意見交換を行うところの岩手フロンティア懇談会をまずは奥州市において開催させていただくこととなりました。
県政運営の基本戦略として、私ども掲げております新地域主義戦略と岩手ソフトパワー戦略を中心に広域的な課題も含めて自由に意見交換をお願いしたいと思います。この基本戦略は、グローバル化により環境が大きく変わりつつある中、岩手の心を失わず、必要な改革を力強く進め、希望王国岩手と呼ばれるようなふるさとづくりを行っていくための基本的な考え方を示したものでございます。特に新地域主義戦略については、岩手四分の計とも言っておりまして、四つの広域振興圏が自立していくことと、県と市町村が協力して草の根地域を守っていくという、これはコミュニティの振興でございますが、そういう二つの考え方を示しております。県南広域振興圏でご活躍の皆様から、日頃感じていらっしゃることなど、忌憚のないご意見、ご提言をいただければと思います。
私は、知事就任時に知事補佐官でありますとか、そういうブレーンといいますか、スタッフといいますか、そういうものは制度上設けなかったんでありますけれども、それはそれにふさわしい方が岩手にはたくさんいらっしゃるので、その都度こちらから出向いて、ご意見を伺うを超えて、やはり岩手をよくするための戦略会議をその都度開かせていただいて、すぐ県政に反映させていかなければと思っておりますので、今日も実はそういう会議でございますので、ぜひぜひよろしくお願いをいたします。ありがとうございました。
それから、県議会の方からは郷右近県議にご参加をいただいております。よろしくお願いいたします。

酒井局長
それでは初めに、本日ご出席の皆様をご紹介いたしたいと思いますが、今日お集まりいただきました皆様は、県南広域振興圏の地域協働委員ということでお願いしている方々でございますので、それぞれの皆様はおわかりだと思うわけでございますが、知事は初めての方もいらっしゃると思いますので、一応皆様を私の方から紹介をさせていただきたいと思います。
私の向かって右側の北山さんの方からご紹介申し上げます。北山博文様でございますが、半導体装置等を製造しております東京エレクトロン東北株式会社の代表取締役社長という方でございます。
それから次に、久保田浩基様でございます。志戸平温泉株式会社の代表取締役ということでございます。
それから次に、佐々木弘志様でございまして、株式会社トーノ精密の代表取締役、樹脂等の成形関係の精密の部品等を製造されている企業でございます。県の高校入試改善検討委員、あるいは遠野商工会の会長さんをされております。
それから次に、佐藤晄僖様でございます。世嬉の一酒造株式会社の代表取締役社長でございまして、多数役職をお持ちでございますが、一関観光協会の理事、あるいは一関商工会議所の副会頭等の要職を歴任されてございます。
それから次に、丹野浩一様でございます。独立行政法人国立高等専門学校一関工業高専の校長先生をなされております。
それから次に、福田正一様でございますが、県認定農業者組織連絡協議会の会長ということでございます。県の農政審議会の委員、あるいは県の農業公社の理事等も現職としてご活躍の方でございます。
最後になります。谷村久興様でございますが、谷村電気精機株式会社の代表取締役会長ということでございまして、北上商工会議所の副会頭、北上工業クラブの副会長、それから県の中小企業団体中央会の方も副会長をされてございますし、北上川流域ものづくりネットワークの代表も務めていただいている方でございます。
それから、ここで県の方の出席者を紹介させていただきますが、県南広域振興局本局の両副局長でございます。それから、各総合支局、花巻、北上、一関ございますが、そちらの方からも出席してございます。あとは県南広域振興局の本局の職員もおりますし、総合政策室の方の職員も参っています。
以上、紹介をさせていただきました。
失礼しました。先ほど知事からありました、県議会の方から郷右近先生がご出席をいただいております。大変ありがとうございます。

懇談

酒井局長
それでは、早速懇談に入りたいと思いますが、まず最初にお配りしております資料に基づきまして、県政運営の方向性と二大戦略につきまして知事の方からお話をしていただいた後に自由な懇談という形で進めさせていただきたいと思っております。懇談につきましては、基本的に知事が中心となって懇談を進める形になるということでございます。
それでは、知事よろしいでしょうか。どうぞよろしくお願いいたします。

達増知事
それでは、お手元の資料、懇談資料というものに沿って、まず私からお話をさせていただきたいと思います。県政運営の基本戦略について、1、岩手が直面する危機と取り巻く環境の変化、2、二大戦略の展開という構成でございます。
まず、岩手が直面する危機と取り巻く環境の変化。私、危機を希望に変えるということをスローガンにしているんですけれども、ではしからば危機とは何かということでございますが、端的に危機が表れているのが県民所得だと思っております。全国に比べ回復が遅れている県民所得、雇用情勢、広がる地域間の格差とありますけれども、この県民所得、まず最初のグラフで岩手の県民所得がじわじわ下がってきているような図でありますが、12年から13年にかけて260万円くらいから240万円に、20万円落ち込んで、率にすると7.6%県民所得が下がっているんですね。全国的にもこのときマイナス成長になっていますが、全国の落ち込み以上に岩手は落ち込みました。マイナス7.6%の所得の落ち込み、これはイコール経済の落ち込み、景気の落ち込みでもあるんですが、普通先進国にはあり得ないことであります。こういうことが起きれば、もうそれは内閣総辞職、大統領の首が飛ぶような話でありまして、先進国は一、二%でもマイナス成長になれば退陣みたいな話になる。それは、やはりマイナス成長の恐ろしさということがあると思っております。格差の拡大ということで、全国の方は国民所得としては緩やかな回復をして、最近になってようやく平成12年水準くらいまで戻ったんでしょうか。その緩やかな回復をいざなぎ景気を超える回復、いざなぎ景気を超える景気の上昇局面などという向きもあるんですが、本来あってはならない景気の落ち込みから回復をしたということに過ぎず、またその回復も二、三年で回復すべきところを五、六年以上かかってようやく回復したということでありまして、全国的にもこれはひどいことが起きていたと言っていいと思いますが、深刻なのは全国が回復している間に岩手は回復していないということでありまして、平成16年の県民所得は236万円ということで、平成13年よりさらに下がっているんです。それで、白丸が全国との差ということで、格差がどんどん生じてきている。昔も格差はあったわけで、「ALWAYS三丁目の夕日」という東京タワーが建築中の時代の映画がございまして、やっぱりもの凄い大金持ちが出てきて、貧乏な町との間の落差などが描かれていましたけれども、あのころ当然東京と岩手の経済の格差はあるんですが、ただその時点での東京の経済水準、東京の所得水準にもう少しすれば岩手の所得も追いついていく、時間がたてば追いつく、そういう格差だったので、希望につながる格差と言ってよかったと思います。高度成長時代の格差は希望につながる格差なんですけれども、マイナス成長が引き起こす格差というのは、先に行けば行くほど広がっていく、希望を奪う格差ということで、そこが今の格差と昔の格差との違いだと思っております。そういう意味もあって、希望を失わないようにしよう、格差に対する対抗という意味で私は希望というのをスローガンにしたところもあるんですけれども、そういう格差拡大的な状況が出てきているわけであります。それが有効求人倍率の低迷、また全国との差の拡大にもつながり、あと医師数も全国との差が広がってきている。医師不足問題もかなり経済情勢によるところがあって、やはり儲かるところで働きたいというドライブがかかることと、あとは経済の集中もあり、大きい病院、設備も充実、人もたくさんいるところに入ってゆとりのあるお医者さん生活、学会にも時々出られるくらいのそういうゆとりがあるところで働きたいということで、地方の医師不足はより深刻になっていくという情勢があります。
そして、四つ目の人口流出のグラフでありますが、白丸が社会増減でありまして、私はやはり経済情勢が人口減に大きな影響を及ぼしていると思います。平成12年から13年への7.6%の県民所得の落ち込みに引っ張られるように人口もガクッと減って、平成14年も同じくらいガクッと減り、その後県民所得の横ばいに合わせてやや横ばいになるんですが、県民所得が膨張していかないという中、17、18、さらに減ってきている。30年後の岩手の人口が100万を切るとかという統計が厚生労働省からちょっと前に出ているんですが、あれは西暦でいうと2000年から2005年に大きく落ち込んだ人口減少率という意味では率が増えた、人口減少率を延長するとそんなことになってしまうよというような数字になっています。ですから、2000年から2005年の人口減少率というのは、それ以前に予測していたよりはるかに大きいんですね、岩手の人口減少率。これは、やっぱり西暦2000年というのは平成12年でありまして、この13年度の落ち込み、2001年の落ち込みという経済の落ち込みが人口減少にもつながってきていると思います。
これは、岩手の県民所得の落ち込みは、岩手県民が急に怠け者になったからこうなったとか、急に変なものをつくり出したとか、おかしな経済活動をするようになったとかということでは全然なく、ある意味岩手県民は全く悪くないのに、やはり国から地方への財政予算を通じてのお金の流れが大きく減ってしまったということと、国が厳しく貸し渋り、貸しはがし的な金融政策を進め、財政は財政再建、金融は不良債権処理、そういう大義名分のもと、地方に回るお金をゴソッと減らしてしまったわけですね。平成12年から13年、2000年から2001年にかけての7.6%の落ち込みというのは、県全体では2,800億円の落ち込みでありまして、岩手から2,800億円が奪われてしまった。これは、例えれば2,800億円ですから、2,800人から1億円ずつ奪う、あるいは2万8,000人から1,000万円奪うというような、そういう……私はこれはアテルイの時代、中央から軍勢が来て田畑を荒らして去っていったぐらいのことが起きたと言っていいと思うんですけれども、これをやられると岩手の中で物が売れなくなるとか、お客さんが来なくなるとか、そういう事態が発生してしまうということなんだと思います。ですから、国から地方へのお金の流れを国が政策転換をして、財政政策あるいは金融政策で転換をしてくれればいいのでありますが、それが引き続きない場合にどうやって岩手の生き残りを図っていくかということがこの後の二大戦略に繋がっていく話であります。
なお、国がこういう財政再建最優先でありますとか、不良債権処理という、そういう大銀行をとにかく守るような金融政策をとったのは、グローバル化への対応という側面があります。これがいい対応か悪い対応かは議論があると思いますが、そういうグローバル化のあおりが地方に来てこうなっているということがありますが、ここにも書いてありますが、グローバル化は脅威である一方、得意分野が世界に直結し、地域の価値を高めていく好機でもあります。世界の中の岩手といった観点を強く意識しながら、グローバル化の進展に適切に対応していく必要があり、今世界に直結するものを持っていればそこが栄えるというふうになっていると思います。格差問題も、単に都会と田舎の格差ということではなく、人が多ければいいというものではなくて、ちゃんと世界に通用するものを生産して輸出している地域でありますとか、トヨタの自動車とかがそうなんですけれども、あるいは東京が調子がいいのは金融面で世界と結びついている。金融業、保険業、証券、銀行、そういった面でやっぱり東京が世界と直結しているからあそこが景気がいいということでありまして、何かそういう世界と直結しているところがあれば、世界から、これは日本の国内も含めてですけれども、お金や人は流れ込んでくる。ですから、国からの今までのようなお金の流れがない分をそういった新しいところから補っていければいいんじゃないかということで、この二大戦略の展開ということを提言しております。
2ページ目、二大戦略の展開でございますが、グローバル化の中で世界と直結し、競争・共存しながらこれまで以上に岩手の特性を生かし、世界市場の中で競争力を高めていくことが重要であります。もう一つ、また一方においては、お互いに助け合い、地域や住民の暮らしを守り、自立した特色ある地域として発展していくことが重要です。この2番目は、セーフティーネット的なことであります。というのは、グローバル化の中で世界市場で勝ち組になっていくというのはなかなか容易なことではありません。なかなか勝機が見えてこなくても、共生の論理、お互い助け合い、地域を守るんだという、そういうことで、所得がそう簡単に上がらなかったとしても、何とか地域と、そしてそこに住む人を守っていく仕組みをつくりながらチャンスをとらえて所得を引き上げていくという、そういう戦略をしていく必要があるのではないかということであります。
それで、新地域主義戦略、住民に身近な基礎自治体である市町村の体質を充実強化する。その上で、より広域的な視点で地域特性を最大限発揮しながら、4広域振興圏が国内外と直接的に繋がり、自立していく取り組みを展開する。特に県南広域振興圏は、その人口と経済力を合わせますと、東北では仙台に次ぐ東北第2位の経済圏、都市圏になるわけでありまして、そのアピール力、求心力というものを最大限生かしていくといいのではないかと思っております。
3番目のマルで、同時に、地域で安心して共に暮らしていくことが出来るよう、市町村と協力しながら、生活の原点、よりどころである地域コミュニティを支援、町内会、自治会、あるいは行政区というようなコミュニティを県としても支援していく。この新地域主義戦略というのは、一つは広域という大きなエリア、もう一つはコミュニティという小さいエリア、どっちも今の県とか市町村という地方自治法上の地方公共団体にはなっていない、法律上の自治体ではないエリア、地域を一つの勝負の場にしていくということで新地域主義戦略と呼んでおります。図にすると下のような感じになります。
次に、3ページ目、岩手ソフトパワー戦略、ソフトパワーという言葉はもともと国際政治学者のジョゼフ・ナイさんが提唱している、文化的魅力と道義的信頼で相手を動かす力のことであります。私がこれを県政の二本柱の一つにしようと思ったきっかけは、平泉の世界遺産登録が見込まれるということであります。これは、まさに世界に通用するそういう平泉。世界が平泉、そして岩手に目を向け、今まで来なかったような人やお金が地域に来ると、そういう文化の力で経済的にも、あるいは社会的にも力を得ていく、こういうことを平泉以外のいろんなことでも岩手の中でやっていこうということで、平泉文化など本県の持つ普遍的価値を源泉とした魅力を地域発の商品サービスと結びつけ、岩手ブランドとして発信する。ソフトパワーというのはブランドのことでもあります。経営論とか広告論の世界で言うところのブランドですね、その魅力で引きつけるブランドであります。
そして、国内外からの高い評価や信頼を獲得し、ブランドとしての新たな価値を付加して、外貨獲得や雇用創出など、地域産業の振興や県民所得の向上といった経済的な効果を期待。同時に、県民が伝統芸能や祭りといった地域活動に参加。そして、地域に対する誇りや心豊かに暮らすことのできる満足感、地域への帰属意識などを高める効果も期待。ですから、このソフトパワー戦略も実はそう簡単に所得が伸びなかったとしても、誇りを持って地域の中でみんなで一緒に生きていこうという、そういうセーフティーネット効果もねらっておりまして、そしてチャンスがあれば所得の向上につながるようにやっていこうという、世界市場で勝っていこうという、その両方、攻めと守りと両方が含まれた戦略でございます。
という二大戦略を、今日お集まりの皆様には、まず県南広域圏というステージを念頭に置きつつ、さらに岩手全体や県外、あるいは外国にも視野を拡大しつつ、要はやっぱり県民所得の向上ということが目標であります。ですから、そのために日頃からこうすれば県民所得の向上、県民経済の向上でもありますが、いいんじゃないかというアイデアがあればそういうアイデアもいただきたいと思いますし、いろいろご自由にご発言をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

酒井局長
今知事の方から今回の懇談会の開催目的で、その導入といたしまして2大戦略について説明をしていただいたわけでございますけれども、これから本題に入るということでございます。それで、冒頭言いましたとおり、知事が中心になって進めるわけでございますが、今知事のお話をお伺いして、聞いた上で、まず導入として皆様の方から自己紹介といいますか、そういったものを兼ねながら、あるいは今の知事の話と絡めながらお話をまずスタートとしてそれぞれお一人ずつしていただいてから懇談に入った方がいいかなと思います。いずれこれだけの人数でございますし、少し裃外してざっくばらんにお話をしていただければ大変ありがたいなと思っておりますので、余り裃つけないお話をざっくばらんにしていただければ、今日の懇談が生きたものになるんじゃないかなというふうに思っております。
それでは、恐縮ですが、北山様の方からよろしいでしょうか。

北山博文
今知事に丁寧なご説明をいただきました。私の認識が甘いものがあるので、この資料の中でまず1点教えていただきたいと思います。県民所得の減少のお話、それから人の流出のお話がありますよね。これは例えば産業分野別に見た場合に、どこの分野、ここの流出に関してはどの層、東北6県で、大卒で東北6県以外に就職なりで出ていくというのは大体2万人弱ぐらいの規模で自分は受けとめています。私どもの会社で採用する場合に、その人間をいかに戻してくるかということも追うようにしています。もう少しその辺のところの補足をいただければ、この後の協議に参加しやすくなると思います。

達増知事
社会的移動というのは、3,000人くらいの流出が大体続いていたのが、最近は5,000人ぐらい。

(政策推進課)藤代主任主査
全圏域で関東圏への転出が一番多いんですけれども、その中で高校を終えて大学に入った方が戻ってこなくなってきていることが大きな要因です。

北山博文
岩手県以外のところへ行って戻ってこないということですよね。

藤代
はい。

(広聴広報課)齋藤総括課長
以前は、大学に行くのに県外に出ていって、卒業するあたり22歳くらいで戻ってきていたんです。このため、22歳頃は社会増だったんですけれども、それが戻れなくなって、就職口がなくて。それからあと、以前はそれを過ぎても徐々に戻ってきていたのですが、そうした年代、30歳過ぎた方々も社会減となっています。

北山博文
わかりました。ちょっとピント外れなことを言うかもしれませんけれども、1人当たりの県民所得を上げるというその意味合いは非常に大切だと思っています。岩手が工業製品で世界と戦うとした場合に、ベーシックな品質というのは当たり前の話なんですけれども、本当にそのスピードとコストが重要です。私どもが直面している課題でいうと、当然欧米との競合から今度はアジアとの競合に入って来ています。そこにはさらなるコスト競争というのが目の前に来ているわけですけれども、そういったところを考えると押しなべて本当にマクロ的な県民所得を上げるということは、ちょっと何か掴みづらいものがあります。それはもう少しブレークダウンした方がいいのかなというふうに思います。あとはちょっと皆さんの意見を聞きながらまた改めて。

久保田浩基
今の話の一部を先日某銀行の若手経営者の会で達増知事にご講演いただいて、私あの話を聞いて、非常にある意味でショック、冒頭あった県民所得が落ちているという、雪崩現象的に落ちているという話を聞いて、すごいショックというか、ショックというよりもなるほどなと思ったのですが、岩手県の温泉旅館、うちを含めてですが、岩手県内に結構強いんですよね。県内のお客様から支持されているというか、うちの場合ですと大体35%から40%は岩手県内のお客様でずっと推移しているんですよ。要は今までは県内に強いというのが下支えになっていたんですね。要するに観光客というか、首都圏から呼ぶというコストを考えると、岩手県内のお客様をきちっととっていく方が経営的にも安定するし。ですから、今まで比較的老舗の旅館、歴史のある温泉地は、県内に結構顧客を持っているから強い中で来たのですが、最近県内のお客様が動かなくなってきているなというか、この間もお話を聞いて実感として感じてきますし、その中でも所得が落ちてきているということが宿泊料金の下落にも非常に影響しているのかなということで、今日の資料もそうですし、先日の話を聞いていても、やはり流れとすれば宿泊単価が下がり、そして岩手県内のお客さんが減り、その中でじゃあ県外のお客様が増えているかというと、なかなか県外のお客様も増えて来ていないという中での減少傾向がある。そういう構造の中で出て来ているんだなということを実感しました。
この資料に、世界に直結しということですが、岩手県の温泉と世界を直結するというのはなかなか難しくて、私はやっぱり地域の連携だろうなというふうに思っています。二、三日前に新聞に載ったんですが、花巻温泉郷が今度ISO14001を地域でとろうということで動いて、地域が一体化した取り組み、ブランドですね、まさに花巻温泉郷としてのブランドづくりをやっていこうということで、私が音頭をとって始めました。来年の5月を目指して、平泉が文化遺産になる前に全国に発信しようというふうな、これはまさに民間レベルでの動きなんですが、そういうことをやりながら、そして地域地域が連携していって、今四つの広域振興局で、あと岩手県があって、それから北東北、今デスティネーションキャンペーンを北東北でやっていますけれども、実は観光の括りで考えると、地域での割り振りというのは全く意味ないですね。むしろ邪魔な時があるんです。例えば北東北キャンペーンといっても、宮城県と組みたいよねという時もあるわけですね。そうすると、キャンペーンは北東北だからそのコースは組めない。そしてまた、岩手県のキャンペーンでも、十和田と組みたいよねというと、岩手県の観光キャンペーンには入ってこない。お客様の立場からすれば、十和田だろうが、八幡平だろうが、田沢湖だろうが一緒でしょうと、繋ぐものは一緒なんだから、そういうのをもっと柔軟にネットワークを組むことが何か今求められているんじゃないかなと。私は、やっぱりコアとなる観光組織は、例えば温泉地の旅館組合だったり、あるいは市町村の観光協会がコアとなって、臨機応変に、場合によってはどこかの他県と組むとか、そういうキャンペーンをやるとかという、そういうネットワークをどんどん、どんどんつくることの方が観光からすると有効だろうなと。案外地域に縛られると、かえって観光促進を阻害されるという面が一面あるなというふうに最近思っています。とりあえずそんなところで。

佐々木弘志
私、30年前に岩手に戻ってきまして、製造業を始めました。当時オイルショックの後でして、非常に景気が、今と変わらないですけれども、非常に悪い時代で、結果的に帰らざるを得なかった状況ですので、ゼロといいますか、そこからスタートしたので、ある意味では上にしか上がるところがなかったわけです。

達増知事
復興後初のマイナス成長になった時ですものね。

佐々木弘志
ですから、そういう意味では当時はまだ今ほど物のない時代ですから、カメラにしろ、デジカメも全然ない時代ですし、ウオッチもデジタルじゃないという時代から徐々にいっていましたので、岩手県の場合、樹脂を扱う業者さんが少なかったものですから、非常にそういう意味では環境的にはよかったんですけれども。
最近、先ほどおっしゃったように、我々も今アジア価格という、お客さんから言えば、要するに品質はもう同じなんだと、納期も同じなんだと、あとは価格だけなんだという、そういうスタンスで注文とか、それから折衝をせざるを得ない状況ですから、どんな企業でも最終的に物は、直接は行かないでも、結局はどんどん中継して、最終的には輸出とかそういった形の工業製品が多いのです。最終的にはそういった世界に自分の品物が行くということを前提に物をつくらないと、やはりそれは商売にならないという気がします。
今日北上で物づくりの講演会がございまして、県の黒澤課長が30分ほど県の政策等話されたんですが、結局はやっぱり物づくりの原点は何かということをもう一遍真剣に考えないと、例えばそれが人をつくるとか、それから科学をやれる子供を育てるとか、そういった底辺からものづくりには必要かなと思いますし、また先ほど県民所得の話ですけれども、何十年も前から岩手県では言われてることなんですけど、たぶん地方都市でも、首都圏を除いた県は、北海道も含め、沖縄も、全部そういう課題を抱えているわけです。ですから、先ほど知事がおっしゃった、例えば平成12年から13年に岩手は2,800億の予算が減ったと言いますけれども、他の県もたぶん同等にやられているんでないかなと思って、そこで頑張れる県と頑張れない県が今、現実全国で伸びている県と伸びていない県の差が少し出ているのかなという気がします。それは、実態がどうかわからないですけれども。例えば県民所得を上げるとすれば、人という、人を入れ込まないと消費につながらない、それからいろんな面でお金を使ってもらえないということがありますので、やはり人集めの算段をどうやってつけるかということをやらないといけないと思うし、あとまた製造業とすれば、いかに中央なり外国に対して納期、品質、コスト、きちんと合わせられるものをつくる努力をするべきか。私も最近でこそそう言っているのですけれども、当時はある程度つくれば買ってくれた時代でしたが、ここ10年、15年ぐらい前から、やはりそういった海外との競争というのは顕著になってきましたので、それはやっぱり製造業としても非常に難しい時代になってきているかなという気がします。

佐藤晄僖
私のことを申し上げる前に、知事さんに御礼を申し上げますが、昨日でございましたか、郡山でのサミットにお集まりのときに、岩手の食として県南の餅のことに言及していただいたそうで、一関地方といいますか、大変ありがたいことということで御礼を申し上げます。

達増知事
お酒にも言及しました。

佐藤晄僖
私は、自分の仕事柄、食とかそうしたものの切り口、若干観光的なこともやっておりますので、その切り口のことなんですが、久保田社長さんよりは若干私らの方が都会地に依存する割合が多くて、55ないし60%、コンサルの先生は久保田社長と同じように地元6割、そっち4割にしろという指導を受けておりますが、いずれそういうことで、そういう影響を大いに受けやすいということであります。
最近の私どものクラスにまで食のことで感じるのは、私、知事さんがご説明くださったソフトパワー戦略というのは非常に期待しておりますし、ああ、いいなと思って受けとめておるわけでございますが、食の方のブランド化というのが今後ますます大切なんではないかと思います。もちろん国内のいろんなメーカーの不祥事の問題もございますし、中国の安全の問題もございますけど、そういうのが消費者の方に、あるいは消費者ならず、例えば大手の流通業者の方に影響があるんですね。ですから、例えばこれはお菓子屋さんで聞いたんですけれども、ああいう北海道の問題が出たときに、おまえのところの管理はどうなっていると、いきなりそういうふうな、何か証明を出せみたいなのが来るようになったということですし、私どもの場合も例えばビールとかお酒の原料の中に、こうした農薬、もしくは薬は使っていないという証明書を出せと、酒にそんなもの使っているかという気はするわけでありますが、そういうものまで求められるようになっているということであります。ということになりますと、当たり前のことなんですが、安全で良質な食を供給するということがベースで、逆に言うとそれがきちっとしっかりしていればかなり岩手の食というのはブランド化し得る要素があると思うわけであります。
その中で、一つ非常にこれからの課題ではないかなと思いますのは、例えば今言いましたように、こうした農薬、もしくはこうした薬剤があるかないかということでの分析値を求められたりする場合がある。そうした場合の公の証明書とでもいいますか、それを手軽に発行できる機関がないんですね。もちろん民間の検査機関に依頼すればできないことではないんですが、信頼性の問題が一つと、何しろ1品目の農薬を出すのに、何を出せと言われるんですが、数万円ずつかかるわけです。これ20品目もやったらとてもじゃないが商売やってられないというような感じになりますので、県内にはいろいろな公の施設もありますが、そういうようなところでベーシックなところをきちっと押さえられるような仕組みができないかということです。北上に農業試験場もございますし、一関の場合には例えば、今校長先生いらっしゃいますが、高専さんとか県南技術センターとかありますが、そうしたところでそうしたベーシックなものをきちっと、例えば証明書が出せるような、そういう仕組みができると安心だなというふうに思っております。
それと、やはり平泉文化、これは我々も地元として大いに期待しているんですが、同時にバッファゾーンとでも申しますか、コアゾーンのみならずそうしたものが観光的な要素からは必要ではないかと思っています。例えば一関の駅前に降りたときに、世界遺産の町に来たんだけど、何だ、この町はと、こういうふうになったんでは、平泉はすばらしいけど、あとは一回行ったらいいよという話になるわけでございまして、そういう世界遺産をきっかけに来たときに、岩手というのはすばらしいところだ、どこに行ってもいいところがあるというような、そういう環境づくりをする。
それから、やはり旅は何といってもおいしい食でございましょうから、そういう食事の環境を整えるということが必要ですし、これには時間がかかりますので、世界遺産は来年ですけれども、10年、15年をかけてつくり上げていかなければいけないんじゃないかなというふうに考えます。そのために私ども、餅、餅とやっているわけでありますが、県南地区は餅のあれなものですから、喜多方のラーメンとか、盛岡の冷麺のようにあちこちで食べられる、なおかつそれが他所にも売れると、そういうふうにしていきたい、育て上げたいと思っているわけで、他の地域との競争の場合にいろいろな要素はあると思いますけれども、そこの地域の歴史とか風土に根差したものが最終的には磨き上げたときに一番強いというふうに考えておりますので、そんなことを地元としては取り組んでおりますし、振興局の方でも数々ご支援をいただいておりますので、時間はかかりますが、これはものになるんじゃないかなと思っています。そうしますと、ちょっと時間はかかりますけど、そうしたものを磨くことによって第1点の、東京に追いつくのは個人的感想としては永遠に無理だろうと思っておるんですけれども、しかし少なくとも先ほど知事さんがおっしゃったように、そんなに大金持ちじゃないけど、誇りを持って、そこそこのゆとりを持って暮らせる、そういう岩手県になれる、それが本当の意味での豊かさに繋がっていくんではないかなと、そんなふうに感じております。
そんなことで、ソフトパワー戦略の今後の展開に非常に期待しているところであります。以上です。

丹野浩一
今日は、こういった貴重な場を用意していただきまして本当にありがとうございます。私は高専の校長になりましてまだ2年半ですので、この地域のいろんな事情を今、勉強中ということもありまして、理解不足のまま話をすることになると思いますが、今知事にご説明いただきました二つの戦略の中で、我々は工業系ですから、技術系の人づくりということでお話しします。もう一つは門外漢ですけれども、ソフトパワーについて、今佐藤さんもおっしゃいましたけど、私も旅行する側として考えますと、岩手に本当に足を運びたいなという形をどうつくるかだと思うんですね。食と観光地が繋がっていることが大事です。我々が地図であそこへ行きたいというときに、どこを探すかというと、最近は皆さん豊かになってまいりましたから、観光名所だけあっても何度も行かないんですね。そのそばにいい食があって、雰囲気のいい店屋さんというか、街があるとか、そんな所を探して足を運ぶと思います。例えば私どものところに来たお客さんを、名前を言って失礼なんですけれども、世嬉の一さんにご紹介しますね。そうしますと、街に来て、いろいろ経済的に大変な街ですねと言いながら、あの通りに入って行きますと、いい雰囲気ですねと皆さんおっしゃられるんですよ。帰るときには、今日はいいところを紹介していただきましてありがとうございました、今度はこの近くにも足を運びたいですねと、こういう話をするんですね。私は点だけでは、多分うまくいかないだろうというふうに思います。私、実は宮城県の人間なものですから、外からここを見ますと幾らでも活用できる財産が眠っているような気がするんですね。
話が飛びますけれども、あるときにイタリアの、ある温泉地に行った時なんですが、本当に片田舎の温泉地です。ただ有名な温泉なんです。どうしてこんな片田舎に人が集まるんだろうと思うと、そのそばに瀟洒な店が並んでいるし、レストランも点在しているんです。それが1軒じゃなくて数軒あるんですね。そこを温泉の後に散歩するんです。そこに女性の方が集まってくるんですね。そういった総合的な設計が必要なような気がします。今世の中は経済が落ち込んでいますけれど、精神的には質の高いいい時代になってきたなと思いますので、そういったところに応えるような何かあるといいかなという感じがします。
もう一つは、我々の専門である人づくりということになりますと、経済活性化というか、所得を上げるとなると、開発型の企業さんを増やして、層を厚くしていかないとなかなか、大変失礼ながら組立型の企業群だけでは所得は上がっていかないだろうなという感じがします。この間もある組立型の大手の企業さんと話しているときに、人づくりと言うけれども、組立型だと短い期間で人は育てることが出来る。ところが、物づくりとなった時、あるいは素材型の場合は、それは出来ないと、これはもう何カ月もかかったりする場合もあるということですから、やっぱり将来はそういった企業群を育成し層を厚くしていくことが、いずれは所得を引き上げることになるだろうと思います。それに向けて、学校と官と地域が連携して進めていくことが大事という感じがいたします。産学連携を我々もやっておりますけれど、まだ層が薄いような気がするんです。というのは、上辺だけではなく、本当に所得を上げ、経済活性化を目指すようもう一歩踏み込んでいかなければいけないだろうというふうに感じております。
私どもも、高専としてどんな人づくりで、お役に立てるのかなということを考えているところです。ある特定の何々産業という人材を育てるということではなくて、高専の役目としては、県内の技術者の層を厚くするために、実践力のある本当の技術屋を育てようと考えています。開発型の技術者を育てるためには、これはいろんな考えがあるんだと思いますけど、私は科学、サイエンスの方ですね、それから技術と、それから技能と、この三つに素養を持っていないと開発型の技術者にはなれないだろうと思うんです。往々にして人づくりというと、技能だけとか、あるいは科学だけとか、あるいは技術だけとか、断片的に考えられがちなんですね。ところが、世界競争を意識するならば、三つのバランスがとれた技術者を育てなければいけない。OECDの調査でも評価いただきましたように、高専は唯一バランスのとれた学校だと評価されていますので、これを生かしてこの地域にいい人材を育てたい。そのための仕組みづくりとして、今回我々文科省の、広域型現代GPの採択を受け、県南広域振興局のご支援をいただいて動かすことになりましたので、3年間で約7,000万ほどのお金を使って、企業さんの力も借りながら、いい人材を育てて行きたい。人づくりは時間かかりますから、あまり急いていっても、これはいけませんので、じっくりと本物を育てたいなというのが私どもの考えでございます。いずれそういったことをしていけば所得も上がってくる地域になるだろうなというふうに淡い夢を抱いているんですが。

福田正一
所得が下がったということは、要するに一般的には、知事さんのおっしゃっている所得の格差、低下というのは、農村の場合には、特にも県南地方は米依存型であったものですから、長い間食管法で、つくれば売れるというような、そういう形でもありましたし、自主流通米制度が出たときも非常に安心感があったんですね。したがって、圃場整備もしなかったんですよ。ところが、ここに来てようやく、45年頃の米価から見たら半分以下になっているんですね。今年の相場なんかも幾らになるんだか、1万超えたら良いんじゃないかなと思うんだけれども、そういう形になってきまして、徐々に認定農業者の仲間たちが情報交換しながら契約栽培の方に走っているんですね。特色ある、特に食の安全、安心ということで食の問題なんか出たものですから、低農薬なり、あるいはさまざまなセールスポイントを持ってやっておったんですが、ただ残念ながら流通に関することとか販売戦略ということに対して非常に未知の世界だったということで、今非常に勉強しておりますし、それから、今年度から岩手大学と県の方でアグリフロンティアということで人材育成に力を入れていただくということで、大変あれも岩手の農業にとっては発展する重大な機会ではないのかなと、そういうふうに思ってございます。
あと、それから米依存型から皆さん目覚めましたし、そのままでやっていけない、食べていけないということがわかりましたし、今年度から施行されます品目横断、あるいは集落営農の話が出て、集落で話し合いをしているんですけども、品目横断はいいんだけれども、集落営農は、これは次の段階までの過渡的なものであって、集落営農は最後まで発展するわけはないなということで、今担い手の方々と勉強中ということで、決して下がったからだめだということじゃなくて、今まで気づかなかったというだけで、決して手遅れという感じはございませんから、農業に対しても夢がないわけではございません。
それから、よく出てくるのは平泉の世界遺産ですね、あれについてですが、よく新聞なんか見ますと宮城県の観光圏内だと言う方もおるんですが、そうではなくて平泉に来たらば志戸平さんにお泊まりになるとか、県内の観光地なり、あるいは三陸に行けばおいしい海産物もあるわけですから、私たちもそれにのっとって県内の農業生産者が食材供給ができて、岩手県全体が、岩手に行くと食べ物が楽しみだというような、そういう岩手県になってほしいなと、そういうふうに思ってございます。

谷村久興
皆さんいろいろお話ししたので、ちょっと視点変えたいと思っているんですけど、格差というのはしようがない、先ほど佐々木さんもおっしゃっていたように、10年前からもこの問題をいろいろ話し合っているんですけど、実際に格差はますます開いていくというのが現実だと思います。では、それは是認して、じゃあその中で我々どうやって生きていくのかということを考えなきゃいけないと思うんです。縮めようというんじゃなくて、この中で今あることは事実として認めて、その中でどうやって生き延びていくか。先ほど研究開発型の企業が必要だろうと、それはそうだと思います。はっきり言いまして、東京方面の大手さんの企業が北東北3県に仕事を出すときに、極端に言いますと自分たちの半分だよという言い方です。ですから、所得上がるわけないんですよ、そういう発想で来られたらば。一生懸命QCで頑張って物づくりやっても、最初から出される価格が半分であれば、もうそれだけしか所得は上がらないわけです。そうすると何をやっていくかというと、やっぱり中小企業でも、地元の大企業でも、岩手でしかできないものを探していくしかないんですね。そのために物づくりという観点から見て、やっぱり人材育成しかないんですね。
開発型の企業なり、あるいは研究施設というのは、残念ながら北上川流域の中で非常に少ないわけです。例えば医療機器、あるいは薬品メーカーさんもたくさん来ているんですけれども、地元では大卒は要らないと、例えば研究者は要らないと、それは本社の方でやっていると、ここは薬をつくっているだけだと、極端な言い方しますとね。例えば岩手大学の応用化学を出た人間が地元に就職できないんです。あるいは県立大のソフトの学生がこの地域にソフトウエアの大企業が非常に少ないので、せっかく県費でできた学校を出た学生が地元に就職できないという現実があるんです。そのために企業側もしっかりやらなければいけないんですけども、そういう企業をやっぱり誘致してくると。地元に子供たちが残れる環境づくりをしないと、一生懸命教育しても最終的には40%から50%が県外へ出てしまうと。先ほどのお話のように、最近は出た人がなかなか戻って来てもくれないと。逆に戻ってくると賃金格差がありますので、なかなか地元の企業は雇うことができない。それを補う助成なり、インフラの整備があればまた若干条件は変わるんですけども、いろんな問題点があるので最終的に、私ども医療機器等もやっているんですけど、物づくりでただ物をつくるだけでは生きていけないです。それから、人口が先ほどのお話で30年後には100万を切ると、岩手県ですね。そうなってくると、この岩手の中で本当に物づくりできるのという話まで、あるコンサルにお宅はやめた方がいいんじゃないのと、だったら中国へ行って物づくりやったらどうですかと、そういう、半分冗談なんですけど、そういう話まで実は出てきています。そうすると、いかに地元に、100万になってもそれが増えるような状況にしていかないと、今北上川流域、いいですね、県内で一番いいわけです。あるいは東北でも非常に優秀な地域になっているんですけど、いずれ何も手を打たないとどんどん、どんどん製造業も成り立たないと、そういう感じをしております。
以上です。

達増知事
全体に共通する一つのテーマとして、品質あるいは質の高さということがあるのかなと思いました。アジア価格で物をどんどんつくっていくという、そういう低コストで物をつくれるということも含めたクオリティーといいますか、質というか、そして観光の魅力としても精神的なものも含めた質の高さということですね。来年、平泉世界遺産登録になったという瞬間に、世界が平泉、岩手に目を向けたその瞬間、いろいろ知事の感想とかも聞かれるわけですよ。それで、何かしゃべればそれが世界に流れる一大チャンスなので、そこで何を言うかということを今から考えているんですけども、このクオリティーが岩手だとか、そういう岩手全般の底上げにつながるものをたった一つだけで言うとすれば何かみたいなことを考えているんですけれども、やはり質の高さというのは一つあるのかなというふうに思いました。
あとは、物づくり関係はいろいろ、製造業関係は課題を出していただいたと思いますが、所得の低さや、それによる有効求人倍率の低さなどは、実は賃金が安くて済むというメリットでもあって、まずとにかく地元で働くということには一つ有利な材料だとは思うんですね。ただ、丹野先生おっしゃったように、だんだんにやっぱり開発型企業もということで、つまり大卒の人たちが残れるようなそういうところにも繋げていかなきゃならないんですが、そういう低賃金でとにかく物づくりに従事するというところから始めて、地元に残って、そこから大卒の人にも働く場ができるというような成長というか、発展というか、そういう物づくりの一つの企業の成長でもあるでしょうし、また地域としての発展ということの見通しや可能性について、もう一回ここは北山社長、佐々木社長、そして谷村会長にちょっと伺いたいんですけれども、いかがでしょう。まず、北山社長。

北山博文
ちょっとその前に、私どもの会社に関しては、少ないながら先ほどご指摘された開発ということに関しては、ことしの4月、山梨から要素開発部隊を東北へ移動しました。実際に量産設計だけという形のエンジニアリングと新たなものを創造するというようなところは違うと思うので、物をつくるところで開発も一緒にやろうということになっております。
今のご質問は、非常に難しい質問です。我々の商品価値が高いものに関しては、それなりの原価でつくることを依頼できます。商品のライフサイクルの中で当然市場価格のレンジがあります。我々は新製品創出期だけでビジネスがやれればいいのですが、それは成り立ちません。開発で、とにかく他がやれないものをどう創りきるかといったところはチャレンジしなくちゃいけない。だけども、ベースの部分に関して、要するに成熟な商品になっても稼げるという仕組みをつくらない限り、ここの部分というのは外に出ていかざるを得ない。

達増知事
みんながつくるようになっても、稼げると…。

北山博文
そう。要するに成熟な製品になっても、利益率は低いかもしれませんが、ベーシックにつくれるということがこの地域でやれないのであれば、それはやっぱり我々は再考せざるを得ない。そこをいろんな仕組みを使って、いろんなロスをつぶし込み、徹底的に安く仕上げる。先ほどソフトパワーという言葉を使われましたけども、岩手のプランドとして、「地域でとにかくいいものが安くできるということ」で仕事を引っ張ってくるパワーにはなるんじゃないかなと。それだけで本当に1人当たりの高収益に繋がるといったら、無理だと思います。「高付加価値製品の創出」と「低コストでの製造能力の向上」を継続的に追求することが必要です。ただ国内から見たときに恐らく九州はやっぱり東南アジアを見ていると思います。東北を見るよりも東南アジアを見ていると思うんですね、距離的にも、時間的にも。こっちに向けるためには、やっぱりそういったところというのは必要だと思います。
すみません、回答になっていないかもしれないんですけれども、そんなことを考えました。

佐々木弘志
先ほどの話とちょっとダブるのですけれども、昼の物づくりネットワークで、中小企業基盤整備事業のご報告があって、関東地区の大企業が東北に何を求めるかというと、やはり先ほど谷村会長がおっしゃったとおり、土地が安い、人件費が安いという、これがもう9割ぐらいだと、アンケートですね、そのような回答なようです。やはり東北地方、北海道も含んでなんですが、北海道までは余りいかないようなんですが、東北というのは安いというイメージがつきまとうんですね。この辺ある程度打破しないと、それじゃなくて質が、先ほど知事がおっしゃったように、質がいいんだということを売り込む方が私は先決じゃないかなと思いますし、それともう一つは、たまたま先月ですか、新潟の地震で、ちょっと災害のところに非常に申しわけないんですが、岩手は地盤が厚い、風水害に強いんだという、そういう何か自然の強さをアピールして、そういった形で企業誘致するとか、そういったのをとれないかなとちょっと考えたんですね。新潟の場合は、TDKもそうですし、サンヨーさんもそうですし、地震で移転とかいろんな障害あったところでもあるので、岩手の場合それほど大きい災害というのはほとんどない。台風はない。地震も四、五年前ちょっとありましたけれども、崩壊するまでというのはほとんどないわけですから、その辺の自然の良さとか強さをもうちょっとPRしてもいいのかなという気がしますね。先ほどの安いというのをやめて、質、人の良さとか頑張れるというのをイメージで出して、それで東京のせいぜい9割ぐらいの人件費並みを出していただけるような誘致をするのも一つの手かなという気がします。
先ほど丹野先生がおっしゃった開発型という、非常に私どもも重要な項目だと思っていますけれども、中小企業というのは開発に対して非常に費用を使えない立場でして、我々は県とか国から大分補助金でずっとやっていますけれども、それだってこれからそれほどいただけるものではないと私は認識していますので、やはりある程度岩手がそういった企業とか育てようとするのであれば、それに重点的な予算配分をしていただければありがたいのかなという気がします。

谷村久興
やっぱり賃金格差、絶対あるので、これを克服するためには開発型というか、これに頼らなきゃ絶対だめなんだというぐらいの力を持たない限り生き延びていかれないと思います。これは、県の力、あるいは大学の力をかりて、そういう意味の形に会社を変えていかないとなかなか、ただ単の物づくりであれば東南アジアに行った方がよっぽどいいんですね。我々のレベルでも、今東南アジアでやっているわけなのですけれども、やはりここで生き残るためにはそれだけの力を中小企業でも持たなければ生きていけない。それは、親企業さんとの連携が不可欠ですね。ですから、技術屋さんを出すなり、研究者を出してそこで育ててもらって、その見返りに仕事が来ると、ギブ・アンド・テークでやっていくという一つのやり方があるんですけれども、それを徹底していないから、仕事をください、そのかわり低賃金ですよと、いいですねと、それでは岩手としても伸びていかれないだろうし、先ほどの東京近辺の方はほとんどこっちは安いよという、もうその時代は終わっているはずなんですね。これだけインターネット等々あるし、交通網もしっかりしているわけだから、ただ安いのは土地だけです。あとは逆に東京より地方の方が高いです、ほかは、見方を変えますと。じゃ賃金が格差がありますよ、でも公共料金は東京の人とこっちの人も同じです。だから、向こうの人は楽にこちらへ来れるけど、こちらの人は工面して東京に学校に出したり行くわけですね。その差をどうやって埋めるかということを考えているんですね。ですから、ますます格差が出れば出るほど地方から優秀な人間が行かれないし、育たないという環境が出てくるだろう。本当にマイナスになると思います。これを早く手を打たないと、やっぱりいい子供たちを育てるということですね、これを主眼にしないとだめなのかなと思っています。そうすれば、おのずから解決できるかなと思います。

北山博文
自分はまだこちらに来て1年半で、山梨に7年ぐらいいました。おそらく新聞でお読みになっていると思いますけれども、山梨のNECテクノサービスという会社が「中国に勝つ」ということで、サーバーを中国生産から日本に引き戻すということにチャレンジされましたよね。実際に私はある機種を日本で生産するというところまでのお話を直接何回か聞かせて頂きました。私どもが今担当している仕事の中で本当にできないのかということをチャレンジしてみたいと思っています。

達増知事
農業について、先ほど福田会長が集落営農は過渡的だという話をされたんですけれども、それはその先にあるのはやっぱり本格的な認定農業者がビジネスとしてずんずん先に進んでいくようなイメージがあるんでしょうか。

福田正一
この集落営農が出る前に認定農業者制度ができて、さまざまな形で支援していくことになった関係で、米価が下がってくるということといろんな社会背景があって、規模拡大がどんどん、どんどん進んでいったのです。そこへ持ってきて、例えば集落営農だからということで、面積に関係なく一区切りにして集落に入っているんですね。そうすると、当然自立しようとして設備投資もし、規模拡大もしてきた農家が、それやらない農家と一つになって同じ考えで組合を運営しようとしても、当然差がありますよね。それから、先ほども言いましたけれども、農業試験場と言った時代と農業研究所と言ったときと全然時代が違いますよね。というのは、農家の方々が、あれは県の施設だということで研究機関だとかで持っていただくものが、今出向くでしょう、農家の方々が。そうすると、インターネットでも何でもとにかく研究所の職員の方は親切丁寧に、場合によっては出向いても来ますよね。そういう形になって変わってくる。大口の農家の方は、肥料、農薬にしても大量購入するから安いわけですよね、後から金が返ってくる。ところが、そうじゃない方には入ってきませんよね。それを一つにやろうと思っても、認定農業者とか規模拡大する方々は当然学歴って高いですよね。大学出てもUターンして農業やっていますよね、そういう方々は。それが自分の子供は勤めに行っていて、おやじがやっている、そういう家庭の人と一つに組むといっても、全体の発展は難しいと。ただ、これはここの場所だから言えたので、私も地元に行くと圃場整備の実行委員長でもあるから、なかなか口には出せないんですが、勇気持って言えばそういうことです。ですから、集落営農は助成金もらうための過渡期のものであって、その先に別なものがあるんだよということは皆さんわかっているはずです。

達増知事
私も、県は県の方針があるのでここで余り立ち入った話はできないんですけど、非常に参考になる意見でしたので、ちょっと持ち帰りたいと思います。
じゃ、そろそろ終盤戦に時間的に差しかかってきましたので、また自由にさらにご意見ある方に発言をしていただければと思います。

丹野浩一
話を戻して失礼なことになるかもしれませんが、先ほどのところでちょっと知事のお話の中で気になるのは、まずは現状からスタートしてという話があったわけですが、今の早い社会情勢の変化、あるいは国際化の中で、いずれレベルの高い人材の奪い合いになると思うんですね。そういったことを考えたときに、やはり自治体といいますか、行政がある方向性をきちっと見据えて、この地域にとにかく質の高い人材をいかに育てるかを打ち出していただきたい。質の高い人材育成の努力は、学校だけ頑張ってもだめですし、企業だけでもだめなんですね。そういった仕組みをつくっていただきたいと思います。我々もそれが出来てくれば、頑張って地域との連携で、学校を高い目標に向けて仕上げることができるわけですね。その辺を一つお願いしたいと思います。
それから、もう一つ、地元になかなか残らないと言うんですけれども、所得や仕事の魅力が低ければ子供たちは残りませんね。どうしても中央を向きます。少子化傾向の昨今、人材を東北に求めてきますから、どうしても卒業生は中央に行きますね。しばしばいろんなところから、お宅は20%しか岩手県に残らないじゃないかとよく言われます。しかし、地元に就職させるのは我々が指導すれば学生も向いてくれる可能性は十分あります。ただ、私がいつも心配するのは、地元に就職し、将来とも質の高い人材に育っていけるんだろうかという別な問題があります。この点から見れば、一度中央と言ったらいいんでしょうか、競争に揉まれてくるということが非常に大事だと思います。情報化の世界、スピード化の世界、そういった中で揉まれ刺激を受けて帰ってくる。その帰ってくるときに、帰ってきたいなと思うような環境づくりをしておかなくちゃいけないですね。ある大手企業さんが従業員を戻したいと思うんだけれども、住環境、あるいは病院の話も出ていましたが、医療環境に不安があると戻せないという話が出てくるわけです。ですから、産業活性活動にそういった居住環境、ある程度給料もらえるようになった層が少し豊かになって戻ってきて、この街はいい街だなと思える街づくり、周りに自然はいっぱいあるわけですから、そういったところで子供を育てたいなというような環境も併せて必要かなと思います。要するに広い意味での質の引き上げですね、その辺をぜひお願いしたいなという願いを持っています。

酒井局長
時間もあと10分ぐらいになってきましたが。

久保田浩基
じゃ、観光をもう少ししゃべらないと。先ほどマーケットということでちょっと話したんですけれども、もう一つ、我が業界、劇的に変わったのは客層の変化なんですね。これは、団体から個人。わかりやすい例でいけば、我々一番いいお客さんは実は簡保旅行だったんですね。これがバス10台とか15台つなげて全国走っていたんですね。これが民営化によって劇的になくなりました。恐らく泊数にすれば何十万泊という数の団体客が減った。ですから、10年ぐらい前に比べると今3分の1かそのぐらいになっているかと。その中で、やはりエージェントさんも団体客はとれないということの中で個人型商品をつくるようになってきたんですね、どんどん、どんどん。昔の個人型商品というのは、東京で情報をとって、東京でこういう商品売れるんじゃないかなということでつくったものを首都圏で売ったり、あるいは全国展開していたんですが、今は着地型商品という言い方をするんですが、要するに地方の情報を地方で上げてもらって、それで商品をつくっていこうというふうにどんどんシフトしていっていまして、要は地方の情報が欲しい。
もう一つ、その中で非常に重要になってくる、個人が動くという中で大事なのが、これ何回も言いますけれども、2次交通なんですね。個人が来るのに2次交通なくして個人は動けないと。ですから、エージェントがつくる商品の中にも2次交通をどうするんですかというのは必ずテーマとしてのってくるし、JRと直結している地域はいいでしょうけれども、JRから何らかの足が必要なところは、非常に2次交通どうするかで各地域地域が苦慮しているというのが結構、全国がそうなんです。私は、やっぱり岩手はこれだけ広い県土ですので、ある程度凸凹はつけなきゃならないんでしょうけども、2次交通をどうするかで、私は全ての2次交通、クモの巣のような2次交通というのは非常に無理なので、ハブをつくりながら、例えば今度は来年の平泉ですよね。平泉に着いてまでの2次交通は、花巻は花巻市観光協会と観光課で来年度に向けて、花巻温泉郷と直接結ぶ2次交通をつくろうよということはやっているんですが、じゃ平泉から一関の駅とか、あるいは観光地の中をぐるぐる回る何か、たぶん考えていらっしゃるかもしれませんけれども、ぜひこれはお願いしたい。要するに花巻温泉郷に泊まったお客様が平泉まで来たときに、ここで中尊寺は見れるけど、毛越寺までどうやって行くんだよとか、じゃあ足はと言ったとき、タクシーですとなると、これでもう商品にならないんですね、エージェントさんだと。そうすると、2次交通を含めた商品づくりをきちっと整備していくということが必要になってきますので、これ県南振興局さん、あるいは一関との絡みもあるんでしょうけれども、我々もこの間観光協会と話しした中で、平泉に来たお客様を中で回す、シャトルバスとか、あるいはルート、ぐるぐる観光地を回っているようなものをきちっと整備していただいて、そこに来るアクセスはぜひ各地域でいろいろ工夫してやるというような形にするのが現実的じゃないかなと。それをエージェントさんに持っていって商品化してもらうということが今近々に必要なことじゃないかなというふうに思います。先ほど福田さんが言ったとおり、これは黙っていると宮城県に、平泉は宮城県の観光地ですとなりますので、やっぱりこれは岩手県の観光地だということをきちんと、そのためにはやっぱり2次交通が大切。今までは2次交通といっても、どうしてもコストかかるようになって、人が動く、動かないか。だから、もう少し例えばタクシーをうまく使うとか、今タクシー業界も大変みたいなので、タクシーをうまく使う商品を多少助成しながらやるとかということ、それから中長期的に見れば、間違いなく個人が動きますので、2次交通をきちんと整備した地域には、個人のお客様が入ってくると思うんです。そこに遅れている地域は、おそらく幾ら魅力ある地域があっても、個人の人が入ってこれないところになって置き去りにされる。今非常に端境のときに観光協会来ているんじゃかなというふうに、そっちの面からもこれは県と、あるいは市町村、自治会と我々観光業者と一緒になってぜひ整備をやっていただきたいなというふうに思いますので、よろしくどうぞお願いいたします。

酒井局長
今のバスの2次交通の話ですけど、知事にかわってお話ししますけれども、本当に今、大変重要です。この間ちょっと白神の方に行ってきたんですけど、白神といっても本当に個人のトレッキングする人たちというのはもの凄く増えていますよね。白神だけじゃなく、どこに行ってもトレッキングして、家族、夫婦とか多くて、やっぱりああいう方々の足をどう確保するかというところについては、それをきちんとやれたところがすごくよくなるというのは、今おっしゃられたとおりだと思うんですね。そのときに使えるバスとか何かも、今いわゆる交通事業者、県交通だとか交通事業者がやっているバスもありますし、いわゆる市町村がやっているコミュニティバスというものもありますよね。コミュニティバスの本数は少ないですけれども、あれは結構その市町村の中をきめ細かく回っているんです。ですから、こういうコミュニティバスをうまく観光客の方が使えるようにする方法だってあるんじゃないか。それは、やはり情報は全然提供されていないですね、コミュニティバスについては。間違いなくされていないのです。そういうところをきめ細かくやって、交通事業者がいるところはターミナルにして、そこにコミュニティバスが必ず接続するようにしていってやるとか、何かそういう方法もあるんじゃないかということで、今ちょっと私の方でその調査を指示をしているところです。

久保田浩基
コミュニティバスという発想は、たぶん地域の人たちのためという発想ですよね。ところが、あれをうまく使えば観光客も利用できるんですよね。ということの発想。

酒井局長
そこにちょっと目はつけております。

達増知事
あと、佐藤社長にももう一度発言をいただいて、ラストとさせていただければと思いますが。

佐藤晄僖
観光とか食の場合ですけど、岩手県の場合にはまだまだ県内の人すら知られていない資源がいっぱいあるように思います。自分のことを申し上げて恐縮なのですが、私の方で三陸のカキを使った黒ビールというのを出しまして、最初はそういう提案を受けてつくったときに、際物だろうと、一回つくって出せば終わりだろうと出したところが意外と定番商品になりまして、カキの獲れる季節性があるんで、獲れないときはお待ちいただいて、ご予約いただいて売るというふうに、我が社にとってはヒット作になったわけです。そのときにびっくりしたのは、広田湾のカキというのは築地市場ではブランド物なんだそうですね。我々は知らなかったんです。それを県の方のご紹介でコラボレーションというか、繋げていただいたおかげでそこへいったわけなんです。そのせいかコストが高いんですが。それは別としましてですね。
それから、今盛岡と、今度は仙台でも始めましたけれども、地元のいい食材を一生懸命つくっている方とビールのコラボレーションということで、一種の飲み会ですね、それをやっているんですが、やっぱり県内の方自体が県内のいろいろな食材をご存じない。あっ、こういうものもあるの、というような形でお集まりいただいているということがあるわけなんです。ああいうものをもうちょっと拾い上げて、そしてそれぞれのところに広めるようにしますと、幸いなことに皆さん岩手県内の、私ら含めて小規模なんですね。小規模というのは、余りインパクトはないかもしれませんけど、逆に外からのインパクトにはもの凄く大きく響くわけで、例えば大手の企業さんでは1億売り上げが伸びたって大したことないと思うんですが、我々1億も売り上げが伸びればもう大万歳です。というように、県内のそういう小さな企業で小さな売り上げが伸びることによって活性化する。それがいっぱいあると、県の振興局でやっておられる食の産業クラスター、あれの粒は小さいけれども、いっぱいできてくるということになるんではないかなと思うんですね。たまたま私どもはそういうわけで振興局のお世話になってご紹介いただいたんですが、お役所の役割というのは割とそういうところは多分余り自覚はしていないかもしれないけれども、非常に大きな力を持っているということですね。
それで、同じようなことで今久保田社長のお話を伺っていたんですが、2次交通のことについては前の前でしたか、東日本の盛岡支社長だった、NREの社長さんをやっておられる……荻野社長さん、一生懸命2次交通を安くやろうと思ってご努力なさったんです。ところが、やっぱり業界団体がネックになったということを言っておられました。やっぱり既得権といいますか、余り安いのはだめだとか、こういう手続が必要だとかということがあるわけで、ですから久保田社長のご提案を広げる場合の、これは一つの思いつきの提案なんですが、既設のそういう団体に働きかけてやることも必要ですが、それと同時にこの指とまれ方式で広く一般にそういう組織と関係なく呼びかけることによって、新たな仕組みをつくることができるんではないかと思います。私、小さな貸し切りバスの会社もやっているので、その業界のことよくわかるんですが、自由化によってもの凄く大変なんですね、経済的には。ですから、コストはどんどん下がっているんです。しかし、コストは下がってもやれるような体質のところは多いですから、うまく回る仕組みさえあれば元気が出るわけなんですね。そうすると、さっきおっしゃった観光地の2次交通というものも比較的、簡単ではないかもしれませんけれども、比較的組みやすいのかなという感じがします。
最後にもう一点、これはちょっと又聞きのことをお話しして苦言を呈するようで恐縮なんですが、平泉世界遺産に関して、おっしゃったように、宮城県は宮城県内を回って平泉をきっかけにそういうふうな、平泉をきっかけに宮城県のいろんな観光地を回るというプランを組んでおられまして、私どもにもそういったもののオファーがあります。ところが、これはうそか本当かわかりません。我が方の観光関係の人がぼやいておったんですが、盛岡に行くと、岩手県に来た場合にはまず盛岡に観光客が来て、しかる後に平泉に来ると、こういうような発想でのご提案が多いと、これはおかしいのでないかと言っているわけです。うそか本当かわかりません。でも、やっぱり世界遺産がきっかけでやるとしたら、そこを中心に盛岡に行くという発想の方がよりナチュラルではないかな。何かそういうので県内を結びつけるいろいろなプログラムができないかなというようなことが話題になっておりますので、多分にひがみもあるかもしれませんけれども、一応苦言といいますか、ご注文といいますか。

達増知事
貴重な情報です。

佐藤晄僖
ということでございます。

酒井局長
そういう話は聞いたことがございます。

佐藤晄僖
やっぱりそうなんですか。

知事所感

達増知事
ありがとうございました。非常に貴重なご意見、また情報をありがとうございました。
私、知事の仕事というのは、一言で言うと知ることに尽きるのではないかと思っておりまして、これは知事という字が知る事と書くことからなわけでありますが、岩手のどこがどうなっているのかをちゃんと知ること、どこでどういう人が困っているか、どうすればそれを解決できるか、そういうのを知ることで問題の解決、知行合一のそういう知ることでありますから、知ることイコール行動することということで、それを知事一人がそうなのではなく、県の組織全体が知って、そしてすぐ行動に移して問題を解決するというふうにしていければと思っております。経営論などではやっているナレッジマネジメント、知識経営というものを参考にしますと、140万県民全体でそういう知識経営がやれればいいと思っていまして、そういう知識、情報がやりとりされる中で、まさに県民も知らないことが多いというのじゃなくて、お互い何をやっているのか、何をしようとしているのか分かり合う中で、どんどん、久保田社長から地域の連携が大事だというお話がありましたが、そういう域内の連携、そして域外への情報発信という形で、最後には世界にもアピールできるような岩手を目指していきたいと思いますので、きょうは本当にありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

閉会

酒井局長
それでは、以上をもちまして岩手フロンティア懇談会、第1回目を終わらせていただきたいと思います。本当に今日はありがとうございました。

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