希望王国岩手キャンパストーク(平成19年11月28日)

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ページ番号1000963  更新日 平成31年2月20日

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訪問学校:岩手高等学校
開催場所:盛岡市

希望王国岩手キャンパストーク(訪問学校:盛岡大学)

  • 実施日 平成19年11月28日(水曜日)
  • 場所 盛岡大学

「就職実践講座2」特別講座として実施。ここでは、講義後の知事と学生との質疑応答の様子をご紹介します。

司会
ここから、皆さんとの意見交換ということで、時間も時間ですので、積極的に手を挙げて質問、意見を言って、若者の意見を達増先生に、岩手県知事さんにしていただきたいと思います。
それでは、ご意見、ご質問のある方は挙手、手を挙げていただけますでしょうか。

学生
私自身、就職活動を経験しまして、その観点から話をさせていただきたいのですが、超売り手市場と言われる現在ですが、私自身、地方では全くまず影響はないと感じました。その結果として、今大卒でも首都圏のほうに若年層が流れるという傾向がありまして、やはり地方を活性化するためには、若年層の定住ということが必須条件になると思います。そのため、今後岩手県に限らず地方ともですが、知事ご自身、今後の雇用状況、改善、対策としてどのようなことを考えているかというのをお聞きしたいのですが、教えてください。

達増知事
西暦2000年ころには、岩手から出ていく人の数というのは大体2,000人くらいだったのですね。ところが、去年の数字だと6,000人にまで増えてしまっていまして、そのかなりが20代の若者であります。西暦2000年よりちょっと前には、年間出ていく人の数が1,000を切って900人台だったこともあって、本来は1,000人、2,000人くらいがちょうどいいというか、岩手としては標準ではないかなと思って、今みたいな6,000人も外に出ていくというのはやっぱり異常事態だと思っています。最大の要因は、岩手の県民所得というのが西暦2000年のころに比べて今落ち込んでいまして、総額で2,800億円ぐらい少なくなっている。1人当たり20万円県民所得が少なくなっていて、総額で2,800億円ということは、それだけでお金が岩手から消失したのでそれだけ物が売れなくなり、お客さんが来なくなり、給料を払うことができなくなり、それは雇用の場がなくなるということにつながるわけです。
まず、県民所得をもとに戻さなければやっぱりだめだと思っていまして、そういう手をいろんな分野で打っていきます。これは、第1次産業もそうですし、第2次産業でも自動車産業とか、半導体産業とか、そういう工場誘致をさらに進めて、そこの雇用の場をつくり所得の向上につなげていこうと思いますし、また第3次産業関係でも観光というのがまだまだこれから伸びる余地のある分野ですので、そういうところに力を入れますし、またソフトウエア産業とか、そういう都市的な知的創造系産業といいますか、そういうところにも力を入れていこうと思っております。
それで、総合的なそういう雇用の場を創出する策を打っていきながら、あとは、これは補完的な話なのですけれども、お金の移動がなくても労働力をお互い提供し合って、お互い必要なものや必要なサービスが交換できるような仕組み、エコマネーというのですね、地域通貨というので映画館通りとか、実験的にそういうのを導入しているところがあるのですけれども、あと、昨日草の根コミュニティー訪問ということで浄法寺の門崎という集落に行ったのですが、そこは集落のコミュニティーセンター、集落の下水道、そして集落の側溝、排水溝とかを全部自分たちでつくってしまっているのですね。そこに普通であると補助金がついて、その補助金で建設会社に発注して物をつくるという、ある意味1銭のお金もかからずに働ける人が働いて、そしてそういう施設やサービスが必要な人たちがその恩恵を受けたということがあって、だからそういう現金のやりとりなしに何か働けて暮らせるというような仕組みを、小さいコミュニティーの中でならできるし、あと都会でだったらそういうエコマネーみたいな、地域通貨みたいなやつでできるし、そこまで手を打ちながら一人でも地元で働けるようにしていきたいと思っています。

司会
よろしいでしょうか。今の質問者は、ちなみに金融に内定をいただいた4年生です。拍手をお願いします。(拍手)頑張ってください。
続きまして、ご質問がありますでしょうか。

学生
本日は貴重なお話をお聞かせいただきまして、ありがとうございました。英米文学科の4年生です。就職活動をしてみて思ったのですけれども、県内で国際交流をする上で働くという場がすごく少ないなと思ったのですね。英米文学科に所属していますので、できるならば県内でそういう仕事をできる場をもっと増やしてほしいとか、あと学生でももっと国際交流に参加できるような行事などを増やしてほしいなと思いますが、どうお考えでしょうか。

達増知事
国際交流は、僕は大好きですし、国際交流をやる人に悪人はいないというのが私の今までの経験でありまして、変な人はいるけれども悪人はいないと。英米文学科の皆さんが変だと言っているわけではないですよ。悪人はいないと、変ではない人もいます、普通の人もいます。話を元に戻しますと、仕事がなかなかないというのは、そういう国際交流的なサービスにお金を出す人がいないということなのですね。そこまでお金を出す余裕のある人があまりいないということです。ただ、平泉が世界遺産登録されたり、外国の人が岩手に来るということは増えると思います。そういうただの物見遊山でなく何かいろいろ調べたりしたい観光というのには通訳が必要になりましょうし、そうした人たち向けのいろんなサービスの中で翻訳の仕事ということも増えていくでしょう。また、農林水産物を初め、あと工業製品ももちろんで、輸出を増やしたいとも思っていますので、輸出が増えていけばその手続で、英語で紙をいろいろ文章を書かなければならないという仕事も増えるはずです。そこを増やすには、そういう輸出に乗り出していこうとする企業や個人をふやしていかなければならないし、また観光などで外国人を受け入れていこうというところを増やしていかなければならないわけです。だから、そういう旅行代理店とか、貿易斡旋業、商社みたいなものとかを増やしていく必要があるのでしょうね。これについては県も既にそういうのを増やしていくためのアドバイスの体制とか、ジェトロという、そういう輸出振興の経済産業省の出先機関が岩手にも来ていたり、そういう関係機関と連携しながら、そういう仕事を増やしていくいろんな手は打っていこうと思います。究極的には、英語ができる人たち自らがそういうビジネスの方にまで乗り出すということができればいいのかなと思うのですけれども、なかなかそこはリスクもあるし大変なので、いろんな人と相談してください。

学生
ありがとうございます。

司会
ありがとうございました。よろしいでしょうか。ちなみに、サービス業のほうに内定をいただいています。拍手をお願いします。(拍手)続きまして、ご質問がある方は。

学生
失礼します。社会文化学科の学生です。団塊の世代の一斉退職、2007年問題というものがありますが、私はこれから就職活動を行う身でして、まだそういう、岩手ではどうかというような実情はまだ知らないのですが、その就職活動の過程において、例えば採用の場なんかでベテランの穴埋めということで、多少の能力の不足には目をつぶるよというような判断が実際現場で行われているのではないかと思うと不安になるのですが、知事としてはこの2007年問題というのをどうとらえているのでしょうか。

達増知事
まず、若い人がいるので聞きますけれども、団塊の世代のこの大量引退、そしてその分求職がふえるという、そういう基本的な構造は岩手にもありますよね、若い人がいるので聞きましたが。まず、そういう構造はあります。これは、嫌だからといって止められることでもなく、人は1年ごとに1歳ずつ年をとっていきますし、基本的にやめていって、そしてそこをやっぱり若い人で補っていくということかなと思います。それは、若い人たちが甘やかされるというよりは、より厳しさを求められるのだと思いますね、本質的には。今まで2人でやっていたことを1人でやれとか、代々手とり足とり教えられていたようなことも、1人で見よう見まねで、自分で身につけろみたいになっていくという厳しさがあると思います。そういうのをすっ飛ばして楽にやろうとする企業、会社もあるのだと思いますけれども、ただそういうのは競争の中でやっぱり不利になっていくのだと思います。そういう意味ではやっぱりしんどい時代になるのでしょうが、そうなってきたときにもう一回引退していく人たちのところに話を戻しますと、ただぶらぶらさせておくにはもったいない、まだまだ働ける人たちとかもいるので、岩手県でももう定年退職したOBの中で農業普及員やっていた人とか、農業の専門技術を持っている人とかにNPOを立ち上げてもらっていまして、ボランティア的に農協指導をして回るとか、そういうのをやってもらったり既にしています。だから、会社、企業の組織の中だけでは解決しないのだと思うのですけれども、引退した人が何か外から手伝うとか、そういう社会的な横の広がり、ネットワーク的な広がりの中で、世の中全体としては団塊世代にいろんなところで手伝ってもらう、助けてもらうという仕組みが工夫できると思います。

司会
続きまして、ほかに質問がございますでしょうか。

学生
英語文化学科3年の学生です。私は、岩手で生まれまして、また岩手で育ちました。就職もぜひ岩手でしたいと思っています。達増さんは、岩手で就職する若者たちに、ぜひこうなってほしいというような理想像はあるでしょうか。お願いします。

達増知事
スローガン的に言うと、とにかく希望を持ってやっていってほしいということなのですね。私が岩手県政を進めるに当たって、「希望王国いわて」というスローガン、それはすべての県民が、一人一人みんなが希望を持てる、そういう県をつくるというのを目標にしていまして、さっきの講演の中でも触れていたのですが、楽しくやってほしいなと思います。いろんな困難に直面し、つらいこととか、どうしていいかわからないこととかにどんどん遭遇すると思うのですけれども、それが世の中ですし、それが人間だというところもあります。一段高いところから考えれば、そういう本当に手ごたえのあることをやってお金をもらって食べていけるというのは、これほどおもしろいことはないわけでありまして、ぜひそういうおもしろい、楽しいという感覚で若い人たちが岩手を生み出していってくれるといいなと思いますね。
うんと大所高所の話で、先週の勤労感謝の日に小柴昌俊さんというノーベル物理学賞を取った人が岩手に来て、それでニュートリノの話をするというのを聞きに行ったのですけれども、そのときに出た話で、改めて、ああ、そういえばそうなのだなと思ったのは、私たちの体をつくっている原子、分子というのは、ヘリウムと水素以外、炭素とか、あるいは酸素とか、窒素とか、そういう体をつくっているものはすべてどこかの星の中でできているのですよね。宇宙が誕生したときには、できた物質というのは水素とヘリウムだけで、水素、ヘリウム以上に重い物質というのは、どこかの星の中で水素、ヘリウムが圧縮されて初めてほかの炭素とか、そういうたんぱく質を構成するような物質というのは出てくるわけでありまして、我々はみんなどこかの星の中に一度いた、はるかな星がふるさとだという、そういう存在なわけですよ。それが今地球上にこういうふうにいて、こうやって出会い、また仕事をすることで食べていけるというのは、もうそれだけで本当におもしろい、何でこうなっているのかという話だなと、こう思ったのですけれども、そういうそもそもこれ宇宙のある不思議さ、そこで人が一人一人生きていくおもしろさというのをみんなで確かめ合いながら岩手県内でやっていけるといいなというふうに思っております。

司会
ありがとうございました。ほかにはございますでしょうか。

学生
盛岡大学社会文化学科3年の学生です。きょうは貴重なお話をしていただきまして、どうもありがとうございました。知事に質問があるのですけれども、私は大学のほうで文化財の勉強をしていました。それで、平泉が今度世界遺産に登録されようとしているのですけれども、やはり平泉というのはいいところがたくさんあります。文化だとか精神だとか、だけれどもやっぱり文化財的に見て結構伝えにくいところというのがあります。建物がなかなか残っていなかったりとか、それは精神性のいいところではないですか、平泉の。そういうところをやっぱりアプローチすることが大切だと思うのですけれども、やっぱり岩手の人というのはアプローチ下手だと言われたりとかなので、県民として、または県として知事はどのように世界に発信しようと思っているのかなということ。
それから、外務省での働いてきた経験から、人にどうやったら伝えるということがうまくできるのかなということが聞いてみたいなと思いまして、どうぞお答えいただけたらばと思います。

達増知事
平泉については、平泉のその精神的価値というのを簡単に整理すると、共生、ともに生きるという、その共生の理念が平泉の価値と言っていいと思います。その共生というのには2つあって、1つは、人と人との共生、平和と言ってもいいのですけれども、前九年の役、後三年の役という、蝦夷と源氏の戦い、また蝦夷の中でも安倍と清原に分かれて、もうぐっちゃぐっちゃになった中で生き残った藤原清衡公が中尊寺建立の願文という文章の中で、もう敵も味方も区別なく、また鳥獣魚介、鳥や、獣や、魚や貝に至るまでその命あるもの全てを尊び、その死を悼むというような文章を書いていて、この徹底的な平和主義の理念というのが込められた建物というのは世界にそうないですよ。これは本当にすごい。もう一つ、平泉がすごいのは、人と自然との共生という理念ですね。これは、ユネスコに提出している平泉の文章のサブタイトルには、浄土思想に基づく景観と書いているのですけれども、この浄土思想というのはインド、中国から来たのですが、浄土というのはインド、中国では人工庭園のイメージでありまして、池も四角いプールみたいな池にハスの葉っぱや花が浮かんでいると、これが日本に入ってきて、自然の山や自然の川、池を、そのままそれを浄土のイメージにするという一大転換が行われ、それの一つの完成形が毛越寺の浄土庭園なのですね。
そういう人と自然との共生というのは、これは環境というふうに言ってもいいけれども、さっきの平和も環境も今の21世紀の人類にとって一番大事な理念だと思います。そのことが広まればテロとの戦いとかというのも終わってしまうのではないかと思うくらい大事なことなので、私はこれをもう機会あるごとに内外にアピールしますし、岩手県民だれもが今みたいなわかりやすい説明ができるような工夫もしようと思っています。県の方で何かそういうわかりやすい説明の文章も来年の登録が実現したらつくって、誰もが、自分がわかるし、人にも説明でき、子供や孫にも説明できるというようなふうにしたいと思っています。人に対してアピールしていくそのコツは、アピールするだけの価値のあるものを自分の中に持つということですよね。そうすると、やっぱり伝えたくなるし、相手も聞いてくれる。それは今みたいな、平泉ってすごいんだぜという話でもいいし、僕はスターウォーズという映画が好きなので、スターウォーズのことを話し始めたら止まりません。これはもういつまでもアピールし続ける自信があるのですが、そういうふうに、だから自分の好きなものをたくさん持つということですかね。自分の好きなものをたくさん持つ。これはこんなにすごいのだよというようなネタをいっぱい持っていると、それがアピール力につながると思います。

司会
ありがとうございました。ちょうど時間となりましたので、いろいろとまだまだ意見等言いたいかと思いますけれども、次回、何かの機会のときにまたということにしたいと思います。
そこで、就職センター、私といたしましていろんな企業を訪問した際に、盛岡大学の学生は非常に礼儀正しくてあいさつがすばらしいという評価をいただいています。そこで、皆さん、きょうは起立しまして、達増先生のほうにありがとうございましたで締めたいと思いますので、ご協力をお願いいたします。
それでは、ありがとうございました。もう一度大きな拍手をお願いします。(拍手)どうもありがとうございました。長時間にわたりご苦労さまでした。これで第10回目の就職実践講座を終了したいと思います。

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