日本記者クラブ記者会見 知事スピーチ「岩手県における新型コロナウイルス感染症対策と東日本大震災津波からの復興10年」

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ページ番号1041717  更新日 令和3年4月21日

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とき:令和3年2月1日(月曜日)
ところ:県庁3階 第一応接室(リモート会見)

はじめに

 昨年に引き続き、日本記者クラブの皆様にお話しさせていただきますこと、大変光栄に思います。

 新型コロナウイルスに対し、岩手県においても日々対策に追われています。

 今年の3月11日には東日本大震災津波から10年となります。全国の皆さん、海外の皆さんからこれまでいただいた多くの御支援や励ましに対し、改めて御礼申し上げます。

 本日は、この岩手県政の2つの重要課題、「新型コロナウイルス感染症対策」と「東日本大震災津波からの復興」についてお話しします。ちなみに、岩手県では東日本大震災の被害がほとんど津波による被害であったこと、東日本大震災が岩手県にとって明治の三陸大津波、昭和の三陸大津波、チリ地震津波に続く大規模津波災害であったことから、東日本大震災津波という言い方をよく使っています。

1 新型コロナウイルス感染症対策

(1)感染者数等の推移と感染拡大防止対策

 はじめに、新型コロナウイルス感染症対策です。まずは感染者数等の推移と感染拡大防止対策です。

 岩手県における新規感染者数の推移について、日本全体の新規感染者の推移のグラフと重ねてみました。岩手県では7月下旬まで感染者ゼロが続きましたが、全国の夏の「第二波」に沿う形で、まず、7月29日に県内初の感染者が確認され、8月26日には6人の感染者を確認しました。全国で1日500人以上の新規感染者が続くと岩手もゼロでは済まないという印象です。その後、全国の冬の「第三波」に沿う形で増加があり、11月20日と21日には15人、12月に入ると医療機関や高齢者施設でのクラスター発生もあり、12日には1日当たり最多の43人という感染者を確認しました。全国で1日1,000人や2,000人以上の感染が続くと、岩手県でも1日2桁となる日が出てきたり、大きなクラスターが出てくるということです。

 年末から先月にかけては全国の急激な増加の波から考えれば大きな増加はありませんでした。

 令和3年の年始最初の1週間の各都道府県における人口10万人当たりの新規感染者数を見ると、20都道府県が、いわゆる「ステージ3」の基準に当たる、1週間の人口10万人当たりの新規感染者数15人以上に該当する中、岩手県は全国最少の1.6人に抑えられています。その後、現在まで新規感染者数は日々増減していますが、昨日1月31日現在で人口10万人当たり0.7まで下がっており、岩手県の医療提供体制は直ちにひっ迫する状況ではありません。

 岩手県において、昨年7月29日まで感染者ゼロが続いたことについてなぜかということが話題になりました。

 1つ目には、岩手県には「全国的に見て感染リスクの低い条件」があることがあります。具体的には、まず密になりにくい生活環境、人口密度が低いということが挙げられます。岩手県は面積が広く、人口密度は1平方キロメートル当たり80人です。東京都が6,354人、大阪府が4,631人、宮城県でも316人ですので、この人口密度の低さというのが感染リスクの低さにつながっていると考えられます。

 ちなみに、フランスやスペインが国全体として岩手県と同じくらいの人口密度です。居住環境として、岩手県はフランス、スペイン並みの快適な環境であり、東京都や大阪府は人口密度が高過ぎるのではないかと言えると思います。

 また、「真面目で慎重な県民性」。もともとそのような県民性だったところに、東日本大震災津波の経験が、お互いに助け合う風土、危機管理への高い意識につながったと思います。

 医療関係者で構成される「いわて感染制御支援チーム(ICAT)」というのがありまして、東日本大震災津波の際に設けられました。震災以降、台風災害発生時などに感染症の未然防止や拡大防止に取り組み、また、様々な訓練や研修会を通じて感染症に対して備えていました。津波や洪水など、水が絡む自然災害に感染症はつきものです。水が引いた後、泥かきをしながら、まず石灰をまいたり、消毒するところから始まります。避難所も冬はインフルエンザ、夏はお腹に来る感染症ということで、規模の大きな自然災害には常にこの感染症のリスクが伴いますので、そういった体制が今回役に立っているところがあります。

 また、岩手県では「的確な初期対策」を行ってきたと言えると思います。2月11日、国が専門家会議を設置する3日前、医師会や医療関係者、保健所職員等を構成員とする「岩手県新型コロナウイルス感染症対策専門委員会」を設置しました。

 3月27日に知事メッセージとして、首都圏との往来に注意喚起をし、30日には一部首都圏から来県される方へ2週間の行動自粛をお願いしました。当時首都圏などとの往来の自粛については、大抵の県がお願いしていたのですけれども、あえて来県した人のその後2週間の行動自粛までお願いした県はあまりなかったと思います。県の新採用職員などに対しては、首都圏から来県した場合には2週間の自宅待機を指示しましたので、4月1日から働くことができない、そういう新採用職員たちもいました。この県庁のやり方を県内の多くの市町村や企業、団体でも同様に対応していただきました。「第一波」の感染のピークは3月の終わり頃だと分析されていますので、一番危ない時に比較的厳しめの移動や行動に対する自粛をお願いしたということが「第一波」での感染ゼロに効果的だったと考えています。

 「岩手県としての対策を工夫」。4月10日には岩手県版の基本的対処方針を決定しました。国の基本的対処方針に準拠したものですが、県としてこのくらい細かい対処方針を決めている例はあまりないのではないかと思います。これを市町村や各種団体と共有しながら取り組んでいます。

 4月16日に国が緊急事態措置を全国に拡大し、岩手県においてもゴールデンウイーク中、不要不急の外出の自粛や休業の要請などを行いました。しかし、休業の要請は、対象施設を接待の伴う飲食店と大型連休中、他県からの住民の往来につながる可能性を有する施設に限定し、例えば普通のバーやカラオケ店は対象にしませんでした。また、期間を延期する必要もありませんでしたので、全国最小レベルの要請範囲で乗り切ることができました。学校の休校は平日ベースで2日間だけでした。

 4月30日に補正予算を措置し、市町村や医師会と連携し、県内の二次医療圏を全てとする計10か所に「地域外来・検査センター」を設置しました。PCR検査の検体採取をする場所です。この10か所というのは、広い面積を持つ県が多い東北でも一番多い数です。

 また、PCR検査の速報や予防対策などの情報発信を行う県の公式LINEアカウント「岩手県新型コロナ対策パーソナルサポート」を開設しました。これは、感染者数が少なかった頃は、私がその日のPCR検査結果、今日は何人ですというのを知るのとほぼ同時に情報発信されまして、今でも知事への報告から半日と遅れずに情報発信されています。

 次に、「誹謗中傷対策」です。ゴールデンウイークの頃に緊急事態宣言の下、県外ナンバーの車に対する差別や偏見、嫌がらせ、いじめが出てきました。そこで、医療関係者の方々や県外から往来、転居された方々に対して冷静な対応を心掛けていただくよう、思いやりのある行動に配慮いただくよう県民に呼びかけました。感染者ゼロだからこそのプレッシャー、ストレスが県民の間に広がっていましたので、記者会見などで新型コロナウイルス感染症は誰もが感染し得るので、感染した方には共感を持っていただきたい、感染した方を責めないでほしい、感染者第1号の方には県として優しく接すると言い続けました。

 7月29日に岩手県で初の感染が確認されましたが、感染者への誹謗中傷は人権擁護の観点から決して許されるものではなく、さらに、症状のある方の受診控えや検査控えを招き、見えない感染拡大につながる可能性があるということで、「誹謗中傷に対しては鬼になる」というような言葉も使いながら記者会見などで訴え、県のSNS発信に対するリプライなどで誹謗中傷や偏見、差別的なものがあれば、それは県として保存するということも公表をしました。

 国内外から多くの取材を受けました。「ワシントン・ポスト」からもインタビューを受け、SNS上でどうしても攻撃する側の声ばかり目立つわけですが、誹謗中傷に反対する人の声に耳を傾け、誹謗中傷の抑止につなげる必要があると述べました。岩手県で最初の感染者が確認された当初、感染された方の会社には攻撃的なメッセージが100件ほどありましたが、その後、感謝や励ましも約100件あり、花も届けられ、「勤め先に届くのは中傷の言葉ではなく、花だと思いました」と書かれたカードが添えられていたということです。いわゆる第1号の方は、その後もこの会社で円満に勤められているそうです。

 「岩手県における医療提供体制」です。医師数が少ない岩手県ですが、公的医療機関ネットワーク体制については全国一のものがあります。岩手の県立病院は20あり、全国最多です。一般道路を利用して概ね1時間以内で移動可能な範囲を二次保健医療圏として、岩手県で9つの二次保健医療圏、その圏域ごとに基幹病院となる県立病院があります。さらに、各地域に主に初期医療等を行っている地域病院があり、高度医療が必要な場合には地域病院から基幹病院に患者を搬送できる形です。

 民間病院が全国と比較して少なく、医療提供体制の充実を図ることが岩手の平時の課題ですが、今回の新型コロナウイルス感染症対策については、県立病院を始め、国立病院、市立病院、赤十字、済生会などの公的医療機関ネットワークが岩手医科大学附属病院や民間病院、そして開業医とつながる体制があり、入院病床の確保や応援看護師の派遣などに迅速に対応できています。このネットワークは東日本大震災津波の際にも、けが人、病人の入院調整や被災地への医療支援に力を発揮したものです。

 岩手医科大学附属病院は、北東北最多の病床数1,000床を擁する特定機能病院です。作家の内館牧子さんと岩手医科大学の小川理事長が対談されています。内館牧子さんは平成20年に岩手県に来まして、盛岡文士劇に出演されたのですが、その後の打ち上げの席で突然倒れられ、岩手医科大学附属病院に救急搬送されました。心臓と血管の急性疾患で一刻を争う状態でしたが、緊急手術で一命を取り留めました。内館牧子さんは、岩手県における迅速な救急搬送や高度な緊急手術等の医療提供体制に驚いたことや、東京の医療提供体制は受入先の調整が脆弱で、後日、東京の医療関係者から、倒れた場所が岩手でなかったら死んでいたかもしれないと言われたことを語っています。

 東日本大震災津波直後には、被災地の情報を共有し、被災地への支援を調整するため、県、岩手医科大学、県医師会、国立病院機構、日赤等を構成員として、「いわて災害医療支援ネットワーク」を構築しました。これが今回の新型コロナウイルス感染症対策にも生かされています。

 感染防止対策として、岩手県では、まず国が定義する濃厚接触者に限らず感染が疑われる方に広くPCR検査等の調査を実施し、早期に感染者を確認できるようにしています。クラスターが発生した施設、例えば医療施設においては医療スタッフと入院患者全員をPCR検査するのはもちろん、一度陰性の結果が出た場合でも、同じ方に対して数日置きに複数回のPCR検査を実施しています。同じ人に8回行って、8回目に陽性と出た例があります。

 陽性と判明した方は全員軽症や無症状であっても必ず医療機関で肺のCT検査や血液検査を受けてもらっています。新型コロナウイルス感染症には、喉が痛くないし、咳も出ないのに血栓が肺胞の先に詰まって肺炎となり、突如重篤な肺炎で呼吸困難に陥るという例が報告されていますが、血栓による脳梗塞や心筋梗塞もあり、呼吸器疾患としてだけではなく、血管の病気としても見る必要があります。日本の大都市部では、陽性と分かっても医療機関での検査を受けずに、そのまま自宅待機となったり、直接ホテル等の宿泊療養施設に入るケースがありますが、岩手県では軽症者や無症状者についても、まず医療機関で診てもらうようにしているということです。ちなみに、入院に至らなくても宿泊療養施設には入ってもらい、自宅療養はなしにしています。

 現在11都府県に緊急事態宣言が発令されていることを踏まえ、岩手県では不要不急の帰省や旅行など緊急事態宣言が発令されている地域との往来に自粛をお願いし、緊急事態宣言が発令されていない地域でも感染が拡大されている地域、具体的には直近1週間の対人口10万人当たりの新規感染者数15人以上の地域、プラス不要不急の往来、外出の自粛のお願いなどを実施している地域との往来について慎重に判断するようお願いしています。各都道府県の1週間の10万人当たり新規感染者数というのは非常に大事な指標ですので、県独自に計算し、47都道府県の前日時点のデータを表にして岩手県ホームページに掲載しています。去年の12月4日に岩手県として1週間10万人当たり15人以上新規感染者がある都道府県との往来は慎重に判断という移動の自粛をお願いして以来、表を県のホームページに掲載しています。

(2)社会経済活動の落ち込みに対する対策

 社会経済活動の落ち込みに対する対策としまして、最大の経済対策は徹底した感染対策という印象を深めております。去年の9月から10月、全国的にも岩手県内でも感染者数が少なかった時期には観光業などで業績の回復が見られました。日本全体の感染者数が「第一波」のピーク約700人、「第二波」のピーク約1,600人を超えるような状態になると、岩手県でも感染者が増え、その結果、社会経済活動が落ち込んでしまいます。今、緊急事態宣言の下、国内の感染拡大が著しい地域での感染抑制に厳しく取り組まれていますが、これはできれば「ほぼゼロ」が続くくらいにまで持っていってほしいと思っています。

 岩手県では、県内中小企業者に市町村と連携して国に先駆けて家賃補助を行っています。去年の春、全国的に休業補償を巡る議論があり、休んだ事業者をどう支えるかに対して関心が高まったのですが、岩手県の場合、休業要請には至らず、開店はしているけれども、お客が来なくて苦しいという事業者がほとんどでした。これは今でもそうですし、地方部の県は大体みんなそうだと思います。そのような事業者を支援するためには休業補償ではなくて、減収補償が必要で、家賃補助が特に求められていましたので、市町村と連携し、家賃補助を開始しました。国もやっているのですけれども、延長についてはまだやると決めていない中、岩手県では市町村と連携し、今年1月から3月まで延長、追加支援も実施することを決めています。この間、国は持続化給付金を一度行っていて、今の緊急事態宣言下では緊急事態対象地域の時短要請に従った飲食店への協力金を行っています。しかし、地方ではお店が時間短縮しなくても消費者サイドの自粛、要請なしの文字通りの自粛が著しくて、その結果、感染者数が抑えられていて良いのですけれども、お店が収入減に困るのは都会のお店と同様ですので、協力金とは違う形の給付金の追加や拡充が求められています。

 飲食店には個別訪問による感染予防等のアドバイスを実施しています。私も担当の県職員とともに何件か訪問しました。これは、感染がまん延状態ではないからできることですけれども、日々の新規感染者数が少なくてもやるべき感染対策は感染拡大著しい地域と同じですので、徹底を図っています。

 消費喚起策としては、観光のリスタートとして、「いわての新しい観光宣言」を6月19日に行いました。まず、市町村と連携した宿泊助成を県として行い、そこに国の「Go Toトラベル」が重なって宿泊需要が喚起された形です。実は、観光庁の調査によると、岩手県における日本人の宿泊者数は去年の9月、前年同月比で9割程度まで回復し、全国で山口県に続いて第2位となりました。10月には前年同月比でプラス3%回復して全国では第4位となっています。9月、10月にはそのような回復があったということです。

 「買うなら岩手のもの運動」としては、「買うなら岩手のもの総合サイト」、「バーチャル物産展」などによるPRを行っています。

 岩手県には、大学のトップ、経済界の代表、そして県知事がラウンドテーブルメンバーを務める「いわて未来づくり機構」というのがありまして、そこからメッセージを発信したりもしています。

 去年、「ゆるキャラグランプリ」全国大会が岩手県でありまして、約1万4千人の来場があったのですが、感染防止対策を行って、来場者から感染者の判明はありませんでした。「三陸国際ガストロノミー会議」では、外国人出席者はリモート参加し、地元の人たちはリアルで集まりました。感染対策をしながら行っているイベントの例です。

(3)感染防止対策=地方創生

 新型コロナウイルス関係の話の最後に、地方創生との関わりをお話しします。

 内閣府の調査によると、東京23区に住む20代の約4割が、地方移住への関心が「高くなった」、「やや高くなった」と回答しています。

 令和元年と令和2年の7月~11月期の岩手と東京の人口の社会増減を比べると、岩手県では実際に社会増、岩手県への転入超過が続きました。東京都では5か月連続の社会減、転出超過が続いています。

 ブランド総合研究所が都道府県民の愛着度に関する調査をした際、岩手県が36位から4位に急浮上しました。ブランド総合研究所では、コロナ禍において感染者ゼロを最も長く維持したことが国内外から広く注目され、予防策を素直に受け入れ、真面目に取り組むなどの岩手県、岩手県民の良さを再認識したことによるものと分析しています。

 大都市部は、新型コロナウイルスのような新型感染症に対して極めて脆弱です。新型感染症に対する東京一極集中の脆弱性に直面した日本では、それを是正するためにも地方創生を進めていかなければなりません。

 地方においては、コロナ禍の状況変化を踏まえた取組が必要です。「新しい働き方」、「新しい暮らし方」の視点を加えた移住定住施策を、ICTを活用しながら推進していくことが必要です。

 新型コロナウイルス感染防止対策をしっかり行うことが地方創生にもつながり、東京一極集中の是正でもあるということで、移住、定住、ICTを強化していきたいと思います。

2 東日本大震災津波から10年、復興の今

(1)県土の縦軸・横軸の強力な結び付き~インフラ整備による地方創生効果~

 「東日本大震災津波、復興の今」です。

 首都直下地震から東京を守るためにも東京一極集中の是正が必要で、東日本大震災津波からの復興もそれに貢献するでしょう。

 復興道路の整備はようやくゴールが見えてきました。仙台―八戸間、その間のほとんどが岩手県沿岸ですが、震災前7時間35分かかっていたのが4時間25分となります。約3時間10分の短縮です。観光振興、物流の効率化、迅速な救急搬送の確保等が期待されます。

 この復興道路に沿って港湾機能の充実も図られています。

 そして、鉄道でも、三陸鉄道が宮古―釜石間、旧JR山田線も引き受けまして、久慈から盛まで一本のリアス線として利便性が向上しています。

 この復興によって、震災前より強化されたインフラを活用し、新しい物流が可能になっています。JR東日本グループでは令和元年6月、新幹線で魚介類を運ぶ鮮魚輸送の実証実験を行っています。復興道路と新幹線を組み合わせて行うというところが新しいところです。

(2)復興10年の発信、次世代への伝承~日本及び世界の防災力向上への貢献~

 次世代への伝承、そして発信。

 東日本大震災津波の犠牲者への追悼と鎮魂、震災の記憶と教訓を継承するとともに、復興への強い意思を国内外に向け発信するため、国、岩手県、陸前高田市が連携し、被災3県の復興祈念公園としては最大となる約130ヘクタールの面積を有する「高田松原津波復興祈念公園」が完成に向かっています。令和元年9月に、この公園の中核的な施設として「東日本大震災津波伝承館」が開館しました。県の施設であり、私が館長を務めています。来館者が既に28万人を超えていまして、コロナ禍でも修学旅行など多くの方々に来ていただいています。インドネシアのアチェ津波博物館やハワイ太平洋津波博物館との交流連携で世界の防災力向上にも貢献しようと努めています。

 この間、「三陸防災復興プロジェクト2019」、県内全ての市町村、官民関係団体、オール岩手で取り組んだ一連のイベントですが、6月から8月にかけて沿岸部の13市町村全体を主会場として、防災や復興をテーマにしたシンポジウム、三陸鉄道の企画列車、佐渡裕氏による「さんりく音楽祭」などを行いました。約18万3千人が参加して、推計35億円の経済波及効果がありました。

 そして、もう一つ「ラグビーワールドカップ2019TM日本大会」が釜石市でも開催されました。2試合目のナミビア対カナダ戦が台風19号で中止になりましたが、カナダ代表が釜石市内で泥かきを手伝い、ナミビア代表が市民との交流を行うなど地元との新たな絆が結ばれました。

 そういう意味で、今年の「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会」には、復興五輪として、東日本大震災、そして復興のPRの場となることを期待しています。今年は、「東北デスティネーションキャンペーン」という地方自治体とJRグループが共同で行う観光キャンペーンが予定されており、11月にはいわゆる「ぼうさいこくたい」、「防災推進国民大会2021」が釜石市で予定されており、このような日本、東北、岩手に注目が集まる機会を活用した、震災の、そして復興の発信を行っていきたいと思います。

 そして、「いわての復興教育」プログラム。人づくりが大事であり、東日本大震災津波の経験を次世代に伝承し、将来、国内外の防災力向上に貢献できるような人材を育てることができればと考えています。小、中、高で行っていますが、来年度には未就学児にまで広げる予定です。

(3)ビルド・バック・ベター~国土強靱化の推進~

 最後に、ビルド・バック・ベター、国土強靱化についてです。

 「より良い復興」と翻訳していますが、災害前と同じ状態にただ戻すのではなくて、被災の教訓を踏まえてより強靱な形で復興するということです。日本には、大規模自然災害や戦災からの大型復興を通じて発展してきた歴史があります。復興は地元の人たちのためであることに加えて、国民共有の財産である国土の活用でもあり、国全体の発展とも捉えるべきと考えます。復興道路についても、地元の人たちのためでもありますが、日本中の人たちが岩手沿岸、三陸地域にアクセスしやすくなり、そこには国立公園もあります。財やサービスを活用しやすくなる。また、「ラグビーワールドカップ2019TM岩手・釜石大会」のような国家的あるいは国際的なイベントにも活用、効果を発揮しています。

 また、復興は、持続可能な社会の実現にも貢献します。被災地においては、太陽光、風力等の再生可能エネルギーの活用として、公共施設や公共的施設を直したり、新しく建てたりする際、屋上に太陽光発電の施設を置くなどして467件の再生可能エネルギーの活用が行われています。岩手県だけで467件、3千キロワット以上のメガソーラー数基分の発電が可能です。それとは別に、洋上風力発電や波力発電などの研究プログラムも進んでいます。

 そして、人の移動について、先週末に重要統計が出ました。新卒者の就職状況、今年の春の就職について、岩手県の高校卒業予定者の県内就職内定割合が70.5%と出ています。今までずっと60%台、10年くらい前は50%台に近い60%台だったのですが、少しずつ増えてきて、70%台についに乗りました。これは、まず復興ということが若者の地元志向を促す効果があったことに加え、新型コロナウイルスの関係もあって、地元志向がさらに高まったと言って良いと思います。

 大学卒業予定者の就職内定状況についても、前年の40.5%から42.4%と地元就職内定割合が増えています。大学生については、コロナ禍の就職活動ということで、県としてもオンライン企業説明会、それから就活で移動する就活生への交通費支援など新型コロナウイルスの影響で就職活動に遅れを取ることがないよう、かなり積極的に支援した結果、就活前半戦は県外への企業への就職がどんどん内定し、今までで最大の内定率の高さが早め、早めに出ていたのですが、県内就職内定の割合も、当初は低かったのですが、卒業間近のこの時期になってぐっと増えて、前年比1.9ポイント増の42.4%になっています。

 復興は地方創生、東京一極集中の是正にもつながっており、新型コロナウイルス感染症対策と併せて、地方創生、東京一極集中是正を進められるような形で今後も取り組んでいきたいと考えています。

 以上で私からの話を終わります。ありがとうございました。

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