令和3年2月県議会定例会知事演述

ページ番号1037539  更新日 令和3年2月22日

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令和3年2月県議会定例会知事演述の動画

1 はじめに

 本日ここに第12回県議会定例会が開会されるに当たり、今後の県政運営について、私の所信の一端を申し上げます。

 冒頭、新型コロナウイルス感染症でお亡くなりになられた皆様に、心からお悔やみ申し上げます。そして、感染された方々に、お見舞いを申し上げます。現在、療養中の方々には、一日も早い御快復をお祈りいたします。

 医療関係の皆様をはじめ、県民生活に不可欠なサービスの提供に従事されている皆様には、強い責任感と使命感のもと、感染リスクのある現場で日々奮闘されていること、感謝の念に堪えません。

 経済的な打撃を受けている皆様に、心からお見舞い申し上げます。引き続き、生活の下支えや事業継続の支援に取り組んで参ります。

 進学や受験、就職活動に苦労されたり、日常の学習や部活動に制限を強いられた学生、児童生徒の皆さんには、進路の実現や学校活動の充実が図られるよう、県として応援していきます。

 そして、全ての県民の皆様、マスクの着用、手洗い、3密の回避など、日々の感染防止対策に御協力いただき、心から感謝申し上げます。

 昨年12月からの記録的な大雪により、お亡くなりになられた方々に、心からお悔やみ申し上げます。また、被害を受けられた皆様にお見舞いを申し上げます。県南部を中心に、農林関係など多くの被害や影響を受けました。今後、必要な対策を講じて参ります。

 令和3年、西暦2021年、あの東日本大震災津波から10年になろうとしています。

 改めて犠牲になられた方々の御冥福をお祈りいたします。

 被災者の方々をはじめ、県民の皆様には、これまでの復旧・復興への多大なる御尽力と御協力に深く感謝申し上げます。

 また、これまで全国、そして海外からお見舞いや多大な御支援をいただきましたことに、改めて御礼申し上げます。

 

2 新型コロナウイルス感染症対策

(1) これまでの経過

(世界、国内の状況)

 昨年は、世界中で新型コロナウイルス感染症が猛威を振るい、人々の仕事や暮らし、学びが大きく影響を受けた1年でありました。

 新型コロナウイルス感染症の流行は、瞬く間に日本を含む全世界に広がり、令和3年1月までに1億人を超える方々が感染し、2百万人を超える方々が亡くなっています。

 国内では、昨年春の第1波、夏の第2波、そして11月からの第3波が起きており、先週までの全国の感染者は約41万人、死者は6,912人となっています。

 

(岩手の状況)

 この、いわゆる「コロナ禍」に、県民の皆様の驚きや不安は、とても大きいと思います。

 県では、市町村、国、関係団体と一体となり、新型コロナウイルス感染症という未知の困難に対処して参りました。

 まず、昨年2月には、県医師会や医療関係者との日頃からの協力関係を生かし、国の専門家会議設置に先立ち、「岩手県新型コロナウイルス感染症対策専門委員会」を設置するなど体制整備を行いました。

 3月には、全国的なマスク不足等の状況を踏まえ、医療機関等向けにマスクや消毒液を配布しました。急激な消費の落ち込みに対しては、中小企業の資金繰り対策や事業者、民間団体と一体となった「買うなら岩手のもの運動」を展開するなど、緊急的な対策を講じました。

 また、首都圏との往来に注意喚起を行い、県独自の取組として、一部首都圏から来県される方へ2週間の行動制限を要請しました。

 4月には、県の基本的対処方針を決定し、関係団体等との情報共有や、感染リスクの低減措置、感染者の速やかな把握と治療、感染拡大を防ぐ体制の構築など、対策の基本を定めました。

 県医師会や医療関係者の協力を得ながら、県内10箇所に「地域外来・検査センター」を設置し、より身近な場所でPCR検査を受けられる体制を整備しました。

 

(感染者ゼロの状況)

 このような中、本県は、7月29日に感染者が確認されるまで、都道府県の中で唯一、いわゆる「感染者ゼロ」の状況が続き、国内外から多くの注目を集めました。

 この要因については、人口密度の低さや真面目で慎重な県民性、国に先立った対策、復興の経験に基づく危機管理の高さなど、様々な議論がありました。

 震災時に全国初の体制として、避難所等の感染制御対策に当たり、震災以降、常設しているICAT、「いわて感染制御支援チーム」の適切な指導等の効果も指摘されました。

 

(誹謗中傷への対応)

 一方、感染者ゼロが続く中、県民の間に感染者第1号となることに対する緊張の高まりが見られました。

 新型コロナウイルス感染症は、誰もが感染しうる病気であり、感染することは「悪」ではありません。

 このため、これまで記者会見や知事メッセージを通じて、感染者ゼロの段階から「たとえ感染者第1号になっても、その人を責めないこと」、「新型コロナウイルス感染症対策の基本は、思いやりの心を持つこと」と申し上げて参りました。

 誹謗中傷は、人権擁護の観点から決して許されるものではなく、また、症状のある方の受診や検査控えなどにつながるおそれがあることから、厳に慎むべきことを、改めて県民の皆様にお願い申し上げます。

 

(9月以降の状況)

 感染拡大の第2波が収まった9月には、インバウンドを除く県内の延べ宿泊者数が、前年比で約9割になり、10月には100%を超えるなど、観光分野の回復が見られました。

 全国的に感染者が増加して第3波が形成された11月と12月には、それぞれ飲食店や医療機関を中心とする大きなクラスターが発生しました。

 県民の皆様には御心配をおかけしましたが、積極的疫学調査に広く御協力をいただき、「ステージ3」の感染急増には至りませんでした。

 年末年始においても、本年1月1日から7日までの1週間の10万人当たりの新規感染者数が、全国最少の1.6人を記録するなど、全国と比べて低位で推移し、先週末時点においても520人の感染者にとどめることができています。

 

(今後の対応)

 医療提供体制については、重点医療機関の病床確保や設備整備、入院等搬送の調整、「地域外来・検査センター」の設置と積極的疫学調査の徹底などの対策を講じておりますが、感染拡大の状況に応じて強化して参ります。

 新型コロナウイルスワクチンの接種については、市町村、県医師会等と連携して、まずは医療従事者等への接種体制を整備します。また、県民の皆様に対し、迅速で円滑な接種が提供できるよう、市町村を支援して参ります。

 経済的な打撃を受けた県民の皆様には、生活資金の貸付や住居確保のための給付金など、生活の下支えに引き続き取り組みます。

 経営に影響が出ている事業者には、更なる資金繰りなどの直接的な支援を講じ、また、地元消費を中心とした消費喚起の取組を併せて実施します。

 

(2) アフターコロナを見据えた岩手の方向性

(地方への関心の高まりを生かした移住・定住の推進)

 コロナ禍を契機に、地方への関心が高まっています。

 過密な都市部の感染拡大が著しいことなどを背景に、地方の良さが再認識され、ふるさとづくりにおける大きな転機となっています。

 改めて岩手を見つめ直すと、感染リスクの低さに加え、豊かな自然環境、食べ物の美味しさなどの優れた基本条件や、農林水産業、ものづくり産業、観光産業等の幅広い産業基盤を有しており、岩手には安全に働き、暮らし、学ぶ、安心できる環境が備わっています。

 このような岩手の良さを生かしながら、移住・定住の推進を強化して参ります。

 

(デジタル・トランスフォーメーションやSociety5.0の推進)

 テレワークをはじめ、身の回りのあらゆる分野でデジタル化が進展しています。

 また、近年の技術革新の流れの中で、様々な主体が「Society5.0」の実現に取り組み、5Gの実用化などが進んでいます。

 このようなデジタル化や5Gなどの先端技術の活用は、本県の第1次産業から第3次産業までのあらゆる産業の技術革新のエンジンとなり、企業の生産性を向上させます。

 また、県民生活の利便性が飛躍的に高まり、社会変革にもつながります。

 新型コロナウイルス感染症対策として実施するデジタル化や先端技術の活用が、未来の仕事、暮らし、学びの場を発展させるよう、オール岩手でデジタル・トランスフォーメーションやSociety5.0を進めましょう。

 

3 東日本大震災津波からの復旧・復興

(震災からの復旧・復興の10年の成果と課題)

 東日本大震災津波から、間もなく10年になろうとしています。

 震災の惨状を目の当たりにし、犠牲者のふるさとへの思いの継承と、幸福追求権の保障を2つの原則として、県民一丸となって復興を進めました。

 その後の平成28年台風第10号や令和元年台風第19号等の復旧・復興にも並行して取り組みました。

 復興まちづくりの面整備は完了し、海岸保全施設は8割が完成しました。

 復興道路は年内の全線開通を予定し、三陸鉄道は沿岸部を縦貫する「三陸鉄道リアス線」に生まれ変わり、港湾整備はコンテナ定期航路の開設など経済効果をもたらしています。

 災害公営住宅は全地区で整備が完了し、3月までに応急仮設住宅等の全ての入居者が恒久的住宅に移る見込みです。

 沿岸部の医療施設は計画どおり復旧し、被災した公立学校は86校が全て復旧しています。

 被災した農地や漁港の復旧も完了しています。

 「キャッセン大船渡」や「アバッセたかた」などの大型商業施設が開業し、被災事業所の再開も進んでいます。

 日本を代表するような震災津波学習拠点「東日本大震災津波伝承館(いわてTSUNAMIメモリアル)」が開館し、これまでに来館者数が29万人を超えるなど、教訓の伝承や復興の姿を発信する体制も強化されました。

 昨年度の三陸防災復興プロジェクト2019やラグビーワールドカップ2019日本大会、岩手・釜石開催では、復興に力強く取り組んでいる地域の姿や東日本大震災津波の記憶と教訓、三陸地域の多様な魅力を国内外に発信できました。

 一方で、完成していない一部の社会資本の早期整備や、被災者のこころのケア、新たなコミュニティの形成支援、水産業における水揚げ量の回復や担い手の確保、商工業における販路の回復や従業員の確保など、引き続き取り組むべき課題があります。

 また、震災の風化を防ぎ、国内外の防災力強化につなげていくため、伝承・発信にも引き続き取り組んでいく必要があります。

 

(これからの取組)

 このような復興の成果と課題を踏まえ、今後においても、「いのちを守り 海と大地と共に生きる ふるさと岩手・三陸の創造」を目指す姿とし、「誰一人として取り残さない」という理念のもと、被災者一人ひとりが復興を果たしていくよう、取り組んで参ります。

 復興の推進に取り組みながら、震災で得た知見や教訓を生かし、自然災害への対応や、新型コロナウイルス感染症など県民生活に大きな影響を及ぼす危機管理事案に対応するため、「復興防災部」を新たに設置します。

 復興防災部では、復興と防災の司令塔として、「第2期岩手県国土強靱化地域計画」の推進を含め、事前の備えから復旧・復興までの災害マネジメントサイクルを強化します。

 また、今議会に提案されております「東日本大震災津波を語り継ぐ日条例(案)」の趣旨を踏まえ、市町村や関係団体と連携して、震災の事実と教訓の発信を強化し、未来へ伝承します。

 令和3年は、10年間の復興支援への感謝の思いを国内外に発信します。

 本県で開催される「防災推進国民大会2021」や「三陸TSUNAMI会議」等を通じて、震災の教訓や復興の姿を発信し、世界の防災力向上への貢献を目指します。

 また、復興五輪として開催される「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会」を通じて、復興が進む地域の姿や三陸地域の魅力の更なる発信、交流の活性化を図ります。

 4月から9月に東北6県で展開される「東北デスティネーションキャンペーン」では、より多くの観光客に復興に向けて歩む岩手の姿を見てもらうため、プロモーションを強化し、広域周遊を促進します。

 

4 政策の展望

(いわて県民計画(2019~2028)に基づく政策の推進)

 昨年は、「いわて県民計画(2019~2028)」の2年目であり、10の政策分野に基づく施策を本格展開し、計画初年度の「いわて幸福関連指標」の達成状況や県民の幸福感の状況等を踏まえ、評価を行いました。

 本県の幸福を目標に取り入れた政策体系は、昨年の国会で好事例として取り上げられ、政府においても研究が行われており、全国に先駆けた取組として注目されています。

 今後も、10の政策分野ごとの評価結果を踏まえ、次年度の予算に適切に反映させることで、政策を推進して参ります。

 3つのゾーンプロジェクトにも引き続き取り組みます。

 北上川流域においては、自動車・半導体関連産業を中心に、企業立地や増設が相次ぎ、雇用が拡大するなど、我が国においては例外的な成長を続けています。

 また、コロナ抗体検出キットの開発など、産学官連携による医療機器等関連産業の集積と高度化も進んでおり、コロナ禍においてもものづくり産業が力強く発展しています。

 今後も、北上川流域の豊かな自然や恵まれた生活環境との調和を図りながら、産業を振興して参ります。

 三陸地域においては、縦軸・横軸の復興道路整備に伴う企業立地、港湾整備に伴う過去最大のコンテナ取扱貨物量など、復興のハード整備の波及効果が現れています。

 また、三陸復興国立公園や三陸ジオパークを生かした観光誘客、三陸の豊かな食材、食文化の発信や大型イベントの開催による交流人口の拡大など、震災前をしのぐ産業の発展や交流の活発化が、三陸地域にとどまらない広がりを見せており、「より良い復興」、ビルド・バック・ベターが進んでいます。

 こうした復興の進展を生かしながら、岩手と国内外をつなぐ海側の結節点として持続的な発展を目指して参ります。

 北いわてにおいては、食品関連産業や造船業等の業容拡大、農林水産物のブランド化、アパレル産業や漆関連産業など特徴ある地域産業の振興が図られています。

 特に「漆」については、二戸市の「日本うるし掻き技術保存会」を含む「伝統建築工匠の技:木造建造物を受け継ぐための伝統技術」が昨年12月にユネスコ無形文化遺産に登録され、国内外から大きな注目が集まっています。

 地域資源豊かな北いわてのポテンシャルを最大限に引き出し、活用できるよう、持続的に発展する先進的な地域社会の形成を目指します。

 

(ふるさと振興の推進)

 「第2期岩手県ふるさと振興総合戦略」のスタートとなった昨年は、新たに「岩手とつながる」を加えた4本の柱のもとで、人口減少対策を総合的に展開しました。

 令和2年の人口の自然増減は、マイナス10,475人と前年並みであったのに対し、社会増減はマイナス3,872人となり、ものづくり産業の集積やコロナ禍の影響等で2年連続の縮小となりました。県外転出の中心は、若年層であり、特に女性が多い傾向が続いています。

 また、東京圏の転入超過数は、7年ぶりに10万人を下回ったものの、依然としてその規模は全国の中で突出しており、新型コロナウイルス感染症の感染拡大や大規模地震時のリスクなどの観点からも、東京一極集中の是正が必要です。

 若者や女性を支援するため、若者の自立と県内定着に資する住宅支援や、女性の県内就職・定着促進、子育てと仕事の両立支援に分野横断で取り組みます。

 

(ILCの実現)

 ILC、国際リニアコライダー計画については、アメリカと欧州の協力姿勢が明確に示され、昨年8月には、世界の研究者コミュニティによるILC国際推進チームが発足し、ILC準備研究所の設立に向けた活動が進められるなど、計画は新たな段階に移行しています。

 このような中、日本政府は、国際会議の場でILCへの関心を表明し、アメリカ、欧州各国とILCの推進に向けた意見交換を行っています。

 県としては、国内外の動向に臨機に対応しながら、関係団体と連携し、日本政府の早期の意思決定とILC準備研究所設立に向けた積極的な対応について、国へ働きかけていきます。

 また、「ILCによる地域振興ビジョン」に基づき、受入環境の整備や加速器関連産業の振興を進めるなど、ILCの実現に向け、引き続き全力で取り組んで参ります。

 

(温室効果ガス排出量2050年実質ゼロに向けた施策の推進)

 近年、日本を含む世界各地で、地球温暖化など気候変動が一因と考えられる異常気象が頻発しています。

 世界の気候は、今まさに非常事態に直面しており、気候変動に対する危機感を県民の皆様と共有し、共に行動していくため、本日、県として「いわて気候非常事態宣言」を発出しました。

 気候変動を食い止める「温室効果ガス排出量の2050年実質ゼロ」の達成に向けて、今議会に提出しております「第2次岩手県地球温暖化対策実行計画」に基づき、オール岩手で気候変動対策に取り組んで参ります。

 

(主要な大会等の開催に向けた対応)

 今年は、平泉世界遺産登録10周年です。

 平泉の価値や理念を広く発信し、未来へ継承するとともに、世界遺産を活用した地域振興を進めるため、登録10周年記念事業を行います。

 また、本県3件目となる「御所野遺跡」を含む「北海道・北東北の縄文遺跡群」の世界遺産新規登録や、平泉の世界遺産拡張登録に向けて取り組みます。

 「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会」を契機とした様々な文化イベントを活用して、本県の魅力を発信します。

 10月には、東北ブロックにおける「東京2020大会・日本博を契機とした障害者の文化芸術フェスティバル」を本県で開催します。

 フェスティバルの開催を通じて、障がいのある人もない人もお互いに尊重しあいながら、共に学び共に生きる社会への理解を広めます。

 令和4年には、「全国高等学校総合体育大会スキー競技会」及び「日本スポーツマスターズ2022」が、令和5年には「特別国民体育大会冬季大会スキー競技会」が本県で開催されます。

 関係団体と連携しながら、大会に向けた準備を進め、トップアスリートの育成やスポーツの振興による交流人口拡大に取り組みます。

 令和5年には、高田松原津波復興祈念公園において、天皇皇后両陛下御臨席のもと、「緑をつなごう 輝くイーハトーブの森から」を大会テーマに、「全国植樹祭」を開催します。

 岩手の豊かで多様な森林の素晴らしさや復興の姿を発信する絶好の機会であり、関係機関をはじめ、県民と一丸となって、着実に準備を進めて参ります。

 

5 令和3年度の主要施策の概要

 令和3年度は、「いわて県民計画(2019~2028)」の3年目です。

 新型コロナウイルス感染症対策も、「東日本大震災津波の経験に基づき、引き続き復興に取り組みながら、お互いに幸福を守り育てる希望郷いわて」という県民計画の基本目標に資するものです。

 県民計画のもとで、新型コロナウイルス感染症対策に取り組みながら、必要に応じて事業の追加、変更を行います。

 また、アクションプランにおける数値目標等についても、必要に応じて見直しを図るなど、臨機に対応しながら計画を推進して参ります。

 

(安全の確保)

 はじめに、東日本大震災津波からの復興です。

 第1に「安全の確保」。

 水門・陸こうの自動閉鎖システムの整備や自主防災組織の組織化・活性化など、多重防災型まちづくりを推進します。

 防災集団移転促進事業に伴い生じた「移転元地」の利活用や、風評被害の払拭など放射線影響対策に取り組みます。

 

(暮らしの再建)

 第2に「暮らしの再建」。

 「(仮称)いわて被災者支援センター」を設置し、再建後の生活の安定など、一人ひとりに寄り添った支援を最後まで実施していきます。

 「岩手県こころのケアセンター」や「いわてこどもケアセンター」において、被災者の心のケアに引き続き取り組みます。

 郷土を愛し、その復興・発展を支える人材を育成するため、引き続き「いわての復興教育」を推進します。

 7月に開所する岩手県立野外活動センター「ひろたハマラインパーク」を活用し、被災地での野外活動や復興・防災教育を推進します。

 

(なりわいの再生)

 第3に「なりわいの再生」。

 近年の漁獲量の減少を踏まえ、サケの回帰率向上に向けた取組や、マイワシ等の増加している資源の有効活用、サケ、マス類の海面養殖などを推進します。

 「いわて水産アカデミー」による人材の育成や、漁港施設の機能強化、水産加工業の人材確保や職場環境の改善、経営力の強化への支援に取り組みます。

 原木しいたけの産地再生に向け、出荷制限の解除や生産拡大・需要開拓を支援します。

 本設事業所へ移転後の被災事業者の課題等に対応するため、商工団体等と連携した経営・金融両面でのフォローアップに取り組みます。

 

(未来のための伝承・発信)

 第4に「未来のための伝承・発信」。

 東日本大震災津波伝承館における普及事業や、いわて震災津波アーカイブの活用促進、復興フォーラムの開催等により、震災の事実や教訓を伝承します。また、復興支援への感謝と復興の姿を発信します。

 

(10の政策分野の推進)

 10の政策分野については、分野ごとの評価結果や社会経済情勢の変化を踏まえ、感染防止対策を徹底しながら、施策を推進して参ります。

 

(健康・余暇)

 まず、第1に「健康・余暇」では、「健康寿命が長く、いきいきと暮らすことができ、また、自分らしく自由な時間を楽しむことができる岩手」を目指します。

 関係団体等と連携した特定健診・がん検診受診率の向上や、食生活、運動習慣の改善など、県民の健康づくりを進めます。

 また、「(仮称)岩手県循環器病対策推進計画」を策定し、循環器病の予防や医療提供体制の充実に取り組みます。

 新型コロナウイルス感染症の影響によって、将来への不安や困窮により自ら命を絶つことがないよう、引き続き官民一体となった包括的な自殺対策プログラムを地域特性に応じて推進します。

 「医師確保計画」に基づき、医師の地域偏在・診療科偏在の改善に取り組みます。

 「地域医療基本法」制定の提言と併せて、「地域医療を担う医師の確保を目指す知事の会」において他県や関係団体等と連携し、国に対し実効性のある施策の実施を強く働きかけて参ります。

 地域包括ケアシステムの深化・推進のため、関係団体と連携を図りながら市町村等を支援します。

 介護事業所等と求職者とのマッチング支援や、介護ロボット等の導入支援など、総合的な介護人材確保対策に取り組みます。

 市町村や事業者等と連携し、障がい者支援施設等の生活基盤の整備や、就労支援、相談支援体制の充実を図ります。

 コロナ禍においても文化芸術やスポーツに親しむ機会を提供するため、デジタル技術を活用して映像を配信します。また、活動費の助成などにより、文化芸術団体の活動を支援します。

 老朽化した県営野球場と盛岡市営野球場を集約し、多目的に活用できる屋内スポーツ施設を備えた「(仮称)盛岡南公園野球場」を、令和5年度の供用開始に向けて盛岡市と共同で整備します。

 

(家族・子育て)

 第2に「家族・子育て」では、「家族の形に応じたつながりや支え合いが育まれ、また、安心して子育てをすることができる岩手」を目指します。

 結婚を希望する県民の願いをかなえるため、「“いきいき岩手”結婚サポートセンター」の広報の強化や、市町村と連携した新婚世帯の住宅支援を行います。

 ICT等を活用した周産期医療機関の機能分担と連携、救急搬送体制の確保や、国と連携した特定不妊治療費の助成に取り組みます。

 多子世帯向けの子育て応援パスポートの利用拡大や、アプリ等を活用したプッシュ型の子育て支援情報の発信に取り組みます。

 待機児童を解消するため、国の「新子育て安心プラン」に対応した保育の受け皿整備に加え、修学資金貸付による保育士の育成や潜在保育士の再就職支援を実施します。

 子どもの居場所づくりやひとり親家庭への包括的な相談支援など、子どもの貧困対策を推進します。

 今年度策定する次期「児童虐待防止アクションプラン」に基づき、関係機関と連携して、児童相談所や地域の見守りの体制を強化します。

 

(教育)

 第3に「教育」では、「学びや人づくりによって、将来に向かって可能性を伸ばし、自分の夢を実現できる岩手」を目指します。

 「岩手県総合教育会議」において、教育委員会との連携を深め、地域の教育のあるべき姿を共有し、課題に取り組みます。

 コロナ禍においても計画的で効果的な学校教育を推進するため、県立学校におけるICT機器等を活用した学びの保障の充実に取り組みます。

 特色ある私学教育の振興や、高等教育機関と連携した地域の人材育成と課題解決、国際的な視点を持って地域で活躍する人材の育成に取り組みます。

 

(居住環境・コミュニティ)

 第4に「居住環境・コミュニティ」では、「不便を感じないで日常生活を送ることができ、また、人や地域の結びつきの中で、助け合って暮らすことができる岩手」を目指します。

 住宅の省エネ性能の向上や耐震化の促進、空き家の活用促進に取り組みます。

 広域バス路線と地域内交通の維持確保に向け、市町村、交通事業者等と連携し、持続可能な地域公共交通ネットワークの構築を進めます。

 持続可能な地域コミュニティづくりに向けて、地域運営組織の形成を支援します。また、地域おこし協力隊の活動を支援し、定着を促進します。

 外国人県民が暮らしやすい環境づくりに向けて、「いわて外国人県民相談・支援センター」における外国人県民の相談支援や、市町村・関係機関と連携した日本語学習支援や学習支援者の育成に取り組みます。

 「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会」のホストタウンや事前キャンプを通じて、相手国との相互交流を促進します。

 ラグビーワールドカップ2019で中止となった「ナミビア対カナダ」戦の実現や、ラグビーを通じた人的交流などにより、「ラグビー県いわて」の定着を図ります。

 

(安全)

 第5に「安全」では、「災害をはじめとした様々なリスクへの備えがあり、事故や犯罪が少なく、安全で、安心を実感することができる岩手」を目指します。

 自助・共助・公助による防災体制づくりや、市町村の消防団の充実強化等の取組を継続して支援します。

 コロナ禍における災害発生に備え、避難所の密集を防止するため、県ホームページにおける避難所の混雑状況の見える化や、避難所運営に必要な物資の備蓄による市町村支援に取り組みます。

 効果的な広報による交通安全の啓発、体験型の安全指導など、交通事故抑止対策の推進や、「子ども110番の家・車」の活動促進など、地域の防犯力の強化に取り組みます。

 今議会に提出しております「岩手県食の安全安心推進計画」に基づき、食品の安全性の確保や信頼の向上に取り組みます。

 「第16回食育推進全国大会inいわて」の開催を通じて、県民運動としての食育を広く展開します。また、岩手の多様な「食」の魅力や復興支援への感謝を発信します。

 「岩手県消費者施策推進計画」に基づき、消費者行政の充実に引き続き取り組みます。

 

(仕事・収入)

 第6に「仕事・収入」では、「農林水産業やものづくり産業などの活力ある産業のもとで、安定した雇用が確保され、また、やりがいと生活を支える所得が得られる仕事につくことができる岩手」を目指します。

 「いわてで働こう推進協議会」を核として、県内就職やU・Iターン、働き方改革を進めます。

 岩手で働き・暮らす魅力を紹介する情報誌の発行、SNSの活用による県内企業や岩手の魅力の発信、岩手で就職を希望する若者への移住支援金の支給など、U・Iターンの段階に応じた切れ目ない支援を実施します。

 起業支援拠点「岩手イノベーションベース」を核とした民間の起業家グループ、企業、団体等と連携した起業支援や、中小企業における事業承継の促進に取り組みます。

 自動車・半導体関連産業、医療機器等関連産業の集積を一層促進します。また、ものづくり人材の育成や、県内企業の生産性・付加価値向上を支援します。

 食の商談会や物産展を開催し、特色ある本県の食や日本酒、伝統工芸品等の魅力の発信を通じて、県産品の販路拡大を図ります。

 いわて花巻空港の国際線の早期運航再開に向けて、航空会社への働きかけを行います。また、3月に開設する神戸線等の国内線の利用を促進します。

 農林水産業においては、核となる経営体の育成や将来を担う新規就業者の確保に取り組みます。

 「金色の風」、「銀河のしずく」を核とした県産米のブランド力向上や、先端技術を活用した「りんどう」の新たな品種の育成、冬場でも出荷できる「ウニの二期作」などに取り組みます。

 需要に応じた米の生産を進めながら、水田を最大限に活用し、主食用米から収益性の高い野菜等への作付転換を促進します。

 畜産の産地力を更に高めるため、「いわてモー!モー!プロジェクト2021」を展開し、情報発信によるブランド力強化や、牛肉、乳製品等の消費拡大などに取り組みます。

 県産木材を活用した住宅新築やリフォームを支援し、県産木材の利用を促進します。

 海外の市場から求められる品質等に対応した産地づくりを進め、農林水産物の輸出拡大を戦略的に推進します。

 

(歴史・文化)

 第7に「歴史・文化」では、「豊かな歴史や文化を受け継ぎ、愛着や誇りを育んでいる岩手」を目指します。

 平泉の文化遺産のガイダンス施設を整備し、世界遺産平泉の価値を広く伝えます。

 年度内に策定する「岩手県文化財保存活用大綱」に基づき、市町村の地域計画の策定を支援し、文化財の適正な保存と活用を図ります。

 本県の民俗芸能の保存・継承に向け、幅広い年代に民俗芸能の魅力を発信し、民俗芸能に携わる若い世代の誇りや意欲の向上を図ります。

 

(自然環境)

 第8に「自然環境」では、「一人ひとりが恵まれた自然環境を守り、自然の豊かさとともに暮らすことができる岩手」を目指します。

 今議会に提出しております「岩手県環境基本計画」に基づき、環境施策を分野横断で展開し、環境・経済・社会の一体的な向上を図ります。

 「いわての森林づくり県民税」を活用した森林環境の保全に取り組みます。

 3Rの普及啓発や海岸漂着物対策など、循環型地域社会の形成を推進します。また、次期産業廃棄物最終処分場の整備を進めます。

 再生可能エネルギーの維持拡大に向けて、令和3年度に運転開始予定の「簗川発電所」の建設や「稲庭高原風力発電所」などの再開発を進めます。

 

(社会基盤)

 第9に「社会基盤」では、「防災対策や産業振興など幸福の追求を支える社会基盤が整っている岩手」を目指します。

 コロナ禍を踏まえた各分野のデジタル化に対応するため、その基盤である第5世代移動通信システム「5G」の利用環境の整備を促進します。

 近年頻発する洪水等の自然災害に対して、流域全体のあらゆる関係者が協働して行う治水対策、いわゆる「流域治水」の考え方に基づき、ハード・ソフトを組み合わせた防災・減災対策を推進します。

 災害に強い道路ネットワークの構築や、今年度策定する「岩手県自転車活用推進計画」に基づく自転車通行空間の整備等を進めます。

 インフラ施設の計画的な維持管理や、建設業の担い手確保、建設現場の生産性向上に取り組みます。

 

(参画)

 第10に「参画」では、「男女共同参画や若者・女性、高齢者、障がい者などの活躍、幅広い市民活動や県民運動など幸福の追求を支える仕組みが整っている岩手」を目指します。

 「いわて若者カフェ」などを通じて、若者の主体的な活動の活性化を図ります。

 働き方の改善、仕事と子育ての両立支援、ワーク・ライフ・バランスの推進などにより、女性の職業生活における活躍を促進します。

 今議会に提出しております「いわて男女共同参画プラン」に基づき、女性の参画拡大や多様な性の理解促進に取り組みます。

 

(新しい時代を切り拓くプロジェクトの展開)

 10の政策分野の施策に加え、先導的で長期的な視点に立った「新しい時代を切り拓くプロジェクト」を戦略的に展開します。

 先に述べたILCや3つのゾーンプロジェクトに加え、小集落における先端技術の活用による日常生活の利便性向上、生産現場のイノベーションによる農林水産業の高度化、ビッグデータ等を活用した健康づくり、教育分野のICT環境整備と遠隔教育の推進など、第4次産業革命技術を生かした新たな価値・サービスの創造に取り組みます。

 また、各地域の特色を生かした文化芸術・スポーツによる魅力あるまちづくりや、水素を活用した低炭素で持続可能な社会の実現、本県の地域や人々と多様に関わる「関係人口」の拡大を図って参ります。

 

(地域振興の展開)

 持続的な地域社会を築いていくため、市町村をはじめ、多様な主体との連携・協働のもと、広域圏のそれぞれの特性を生かした地域振興を進めて参ります。

 特に、人口減少の進行や復興需要の減少が見込まれる県北・沿岸圏域の振興については、引き続き重要課題と位置付け、優れた地域資源や新たな交通ネットワークなどの社会資本を最大限に生かした取組を展開します。

 また、過疎・山村などの条件不利地域についても、新たな過疎法制定の動きを踏まえつつ、引き続きその振興を図っていきます。

 

6 質の高い行政経営の推進

 行政におけるデジタル化の推進は、事務事業の効率化のみならず、行政経営全般の質を高め、更なる県勢発展の契機となるものです。

 本県のデジタル化を一層推進するため、官民連携の推進組織と庁内推進本部を設置します。また、人材の育成や、地元企業、市町村のデジタル化の支援に取り組みます。

 私も率先してペーパーレス化やウェブ会議などを実践し、デジタル・トランスフォーメーションに取り組みます。

 本県の財政運営は、引き続き、あらゆる手法による歳入確保と「選択と集中」による歳出の重点化を図り、限られた財源の有効活用に努め、安定的・持続的な県民サービスの提供に取り組んで参ります。

 

7 むすび

 2018年、国連気候変動枠組条約第24回締約国会議において、当時15歳のスウェーデンのグレタ・トゥーンベリさんは、地球温暖化対策の必要性を訴えました。その訴えは、世界で大きな反響を呼び、賛同した多くの国の学生が行動を起こすなど、近年、世界では、若い世代が世の中を動かす力となっています。

 今議会に提出している「岩手県環境基本計画」、「第2次岩手県地球温暖化対策実行計画」の策定に当たっては、県内の大学生から多くのパブリック・コメントが寄せられ、計画に反映することができました。このように、岩手の若者たちも環境問題を自分の問題と捉え、その解決に向けて行動を起こしています。

 世界が大きく変化する中、若者の自発的で積極的な活動は、地域社会の活力となり、岩手の未来を切り拓き、日本、そして世界に影響を与える大きな力になると信じます。

 毎年、県内中学生を対象に、私が塾長として講義を行う「いわて希望塾」では、今年度、「『わたしの一押し・わたしが思う未来のいわて』つぶやき募集」と題し、岩手の良さや理想の岩手についての短文を募集しました。

 いくつか御紹介しますと、

 「盛岡の街の中心を流れる中津川は、川底がくっきりと見える綺麗な川です。 清流や 街を映して 流れゆく」

 「パドロンは、ピーマンそっくり!!だけど甘い!魅力がたっぷりパドロンの町!」

 「カイ、ホヤ、ホタテ、イシカゲガイ、アワビにウニに VIVA広田湾」

 「私の住む奥中山はレタスで有名ですが、キャベツをハローワークにコンテナで出荷している農家さんもいます。」

というように、大人でも気がつかない人がいるような、地域の良さをつかんでいます。

 また、「人の温かい岩手県。お互いを支え合い、共に前へ進んでいけるような人のつながりが深い自慢の故郷。」

 「守りたい。自然と共にいつもある岩手県民の笑顔と愛情。若者からお年寄りまで生涯笑顔の岩手へ!」

のように、岩手の良さを深いところで把握し、守ろうとする姿勢も見られ、希望を感じさせてくれます。

 このような若者や子どもたちに、できるだけ良い岩手を継承したいと思います。

 そのためにも、県民一丸となって新型コロナウイルス感染症を克服しましょう。そして、東日本大震災津波からの復興の新たな一歩を進め、「お互いに幸福を守り育てる希望郷いわて」を前進させて参りましょう。

 ここにおられる議員の皆様、そして県民の皆様の御理解と御協力を心からお願い申し上げ、私の所信表明といたします。

 

添付ファイル

令和3年2月定例会知事演述全文

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