JICA海外協力隊 野邑 奈示さん(ベトナム派遣)
海外協力隊について教えてください
海外協力隊として活動しようと決めたきっかけを教えてください。
子どもの頃、ユニセフのテレビCMを通してアフリカの貧困状況を知ったことや、国境なき医師団に憧れたことから、途上国支援に興味を持っていました。
しかし、就職して仕事を始めてからは、まずは言語聴覚士としての専門性を高めることに夢中になり、目の前の仕事や経験を積むことに集中していました。
その後、経験を積んである程度自信がつき、転職を考えるようになったタイミングで、子どもの頃に抱いていた夢を思い出しました。そして、「日本ではなく、海外で言語聴覚士として働く」という道もあるのではないかと思い、海外協力隊への応募を決めました。
現在派遣先でどのような活動、または取り組みをされていますか。
派遣されてすぐの頃、「実際に訓練をして見せてほしい」と依頼がありました。しかし派遣当初の私は、ベトナム語を聞き取ることも話すこともままならない状態で、ほとんど訓練が出来ませんでした。
言語聴覚士が対応するのは、脳の病気によって、ぼんやりして話を聞いていられないなどの注意障害を含む“高次脳機能障害”や、言葉そのものを理解したり話したりすることが難しくなる“失語症”、顔や舌、喉などの麻痺によって声や言葉をはっきり話すことが難しくなる“構音障害”など、さまざまなコミュニケーション障害の患者さんです。失語症について、日本の患者さんから「まるで外国語で話されているみたい」と表現されたことがありますが、派遣当初の私は、まさにそのような感覚を自分自身が体験していました。
患者さんや同僚とほとんど意思疎通ができず、日本でできていたことの1割もできていないのではないかと、落ち込みや不安を感じる日々でした。その中で、失語症のある患者さんが感じている不安やもどかしさを、少し理解できたような気がします。
そこで、すぐに十分な訓練ができなくても、まずは患者さんや同僚とできるだけたくさん会話することを心がけ、ベトナム語の勉強に取り組みました。また、同僚が行う訓練に同席し、必要に応じてアドバイスをしたり、訓練に使用する教材や患者さん向けの資料を作成したりすることから活動を始めました。
その後、少しずつ、障害の程度が比較的軽い患者さんや、コミュニケーション障害ではなく、食べることが難しい嚥下障害の患者さんから訓練を始めました。
現在では、私が実際に行っている訓練を同僚に見てもらい、訓練の目的や方法について説明しながら、少しずつ技術を伝えています。また、知識面では、院内のスタッフを対象とした勉強会を開催しています。
またある時、街で声をかけられ振り向くと、患者さん同士でアイスを食べに来たとのこと。私も一緒に、店先でおしゃべりしながら食べました。
派遣先ではどのように夏を過ごしていますか。
私の住んでいるベトナム北部は夏の期間が長く、4月中旬から9月頃までは、30度を超える日が続きます。
リゾート地であり、漁業も盛んな街に住んでいるため、観光客で賑わっています。活動先の病院は海から徒歩5分ほどの場所にあり、仕事終わりに海で泳いだり、ココナツジュースやサトウキビジュースを楽しんだりしています。

夏限定の料理や行事があれば教えてください。
ベトナムでは、旧暦に合わせてさまざまな行事が行われます。旧暦7月は、「幽霊の月(Tháng Cô Hồn)」と呼ばれています。2026年は、カレンダーでは8月13日~9月10日にあたります。「Tháng」は「月」、「Cô Hồn」は「身寄りのない、さまよう霊」という意味です。
ベトナムの民間信仰では、旧暦7月になると、あの世とこの世の境が開き、亡くなった人やさまよう霊がこの世に戻ってくると考えられてきました。一方で、ご先祖を思い、親から受けた恩について考える時期でもあります。お墓やお寺を訪れたり、ご先祖にお供えをしたりするそうです。日本のお盆に似ていると感じます。
この時期は、夜に一人で出歩かないで、水辺に近づかないで、新しい服を買わないで、引っ越しをしないで、結婚はしちゃダメ笑(?!)と言われたのですが、さまよう霊がいることから、「縁起のよくない月」との言い伝えがあるそうです。
とはいえ、私の住んでいる地域では、夏の海水浴を楽しむ人も多く、夜に出歩くことも特に制限されているわけではありません。伝統的な考え方を大切にしながらも、現代の生活の中では人によって受け止め方が異なるようです。
そして、旧暦8月15日は中秋節(Tết Trung Thu)です。2026年は9月25日にあたります。ベトナムでは、日本の「子どもの日」のような意味合いもあり、ランタンや獅子舞など、子どもたちが楽しめる行事が行われます。この時期に食べる代表的なお菓子が「月餅」です。日本のお焼きのような見た目で、こし餡のような甘い餡にココナツやハスの実が入ったものから、塩漬けの卵が入った少し塩味のあるものまで、味も種類もさまざまです。この文章を書いている8月下旬には、すでに少しずつお祭りムードが始まっていて、街には月餅のお店も出始めています。どんな月餅に出会えるのか、これから楽しみです。
派遣先の夏は、岩手と比べて違いがありますか?
気温の高さ・日差しの強さはやはり違います。暑い時期では36度!昼間は暑くて外では活動出来ません。(元々、ベトナムは昼休憩が長く、昼寝をする方も多いです。)朝も6時半過ぎから暑くなるため、みなさん5時ごろから、掃除・体操・海水浴に朝ごはんと活動されています。暑い国ならでは、急なスコールでどしゃ降り、ということも多いです。
岩手の皆さんにメッセージをお願いします。
私は寒さが苦手で、子どもの頃はよくしもやけができていました。暖かい国に住んでみたかったこともあり、ベトナムを希望しました。実際は少し暑すぎるくらいですが、暑い国ならではの生活もなかなか楽しいです。よかったら、寒い季節は温まりに来てください!
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