黄金のウニ収益力向上推進事業

ページ番号1053159  更新日 令和6年3月13日

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目的

県北地区の水産業は県内他地区と比べ磯根資源への依存度が高い一方で、近年では餌料海藻の減少により漁獲が減少傾向にあります。餌料海藻の減少は、ウニの増加が原因の一つとされており、過剰なウニがコンブ等の大型海藻の芽を食べつくすことにより、藻場の減少を加速させていると考えられています。また、それらのウニは餌料が不足することから身入りの悪い「やせウニ」となり、漁場の生産力を落とす原因ともなっています。

この事業では、漁場においてウニの生息密度の適正化を図るとともに、「やせウニ」の有効活用を推進するため、年末需要期における出荷などを狙いとする新たなウニの蓄養・出荷モデルを構築しようとするものです。

試験の概要

県北地区では令和2年度から管内の2地区において、漁協・地区生産部・地区漁業研究会の協力のもと、漁港内におけるウニの移殖・蓄養試験を実施しています。

南侍浜地区

令和2年度

令和2年度の試験では、12月に漁港内にウニを移殖し、漁港内3定点に異なる種類の餌料(冷凍メカブ、塩蔵コンブ、干しコンブ)を鉄筋に巻き付け給餌しました。身入り調査を実施し、それぞれの給餌の効果を検証しました。身入りの増加は2月末時点で平均5.8%、最もよかった冷凍メカブで6.6%と、十分な身入りの改善は見られませんでした。

身入りの向上が進まなかった原因として、身入りが向上しにくい時期であったことに加え、加工海藻を餌料として使用したことが考えられたため、生の餌料海藻を安定的に供給する必要があると考えられました。また、鉄筋に巻き付けて給餌する方法は、採算が取れる規模に実施するのは難しいため、大規模な蓄養でも可能な給餌方法を検討する必要があると考えられました。

 

令和3年度

令和3年度の試験では、5月に漁港内に約1トンのウニを移殖し、冷凍メカブを給餌し、7月に出荷しました。また、9月にも再度1トンのウニを移殖し、12月に出荷しました。7月は16~22%、12月は15%といずれも良好な身入りであり、7月には蓄養経費と同程度の出荷額、12月には蓄養経費を上回る出荷額を確保できました。

加工海藻でも身入りの改善に効果的な時期に給餌することで、身入りが改善すると考えられました。一方で加工海藻は、安定供給ができない場合が考えられること、保管料などのコストがかかること、生海藻でないことから残餌が出ないよう毎週給餌作業を行う必要があるなどのデメリットがあるため、養殖生産した生コンブを給餌する方法などに切り替える必要があると考えられました。

7月の出荷は、他地区との差別化ができず単価が抑えられがちになり、また殻付き出荷に対応してくれる業者もないことから、むき身に係る人件費等の経費も増加しました。このため、収支を改善させるためには単価が高く、殻付き出荷が可能な12月の出荷を増やす必要があると考えられました。

また、ウニの排除を行った区画に藻場が再生するか調査を行いましたが、3月時点ではコンブ等の大型海藻の繁茂は確認されませんでした。藻場再生は一般漁場の価値向上として波及効果が大きいと考えられるので、継続的にウニの排除を行い、引き続きウニの排除による藻場再生が可能かどうかを確認する必要があると考えられました。

さらに、餌料の安定供給のため餌料コンブの養殖試験も実施しました。3月時点では良好な生育状況にありました。

角浜地区

令和2年度

令和2年度の試験では、8月に漁港内にウニを移殖し、12月から漁港内の1か所から生コンブ等を給餌しました。給餌開始から月に1回程度身入り調査を実施し、それぞれの給餌の効果を検証しました。給餌開始は2.9%の身入りでしたが、3月時点で給餌区7.3%と十分ではないものの若干の身入りの向上が見られました。

給餌開始が12月上旬となったため、最も需要の高くなる12月下旬~1月上旬までには身入りの改善はできませんでした。年末出荷を目指すには通常漁期終了直後から移殖・給餌を行う必要があると考えられました。

 

令和3年度

令和3年度の試験では、9月に約1トンのウニを漁港に移殖し、10月から生コンブを給餌し、12月に約454キログラムのウニを殻付きで出荷しました。12月時点の身入りは約11%であり、やや不十分だったことから単価もやや抑えられ、コストを差し引くとマイナスの収支となりました。

収支を改善させるためには、(1)移殖直後の9月から給餌を開始することにより、身入りをより改善し単価を向上させること、(2)一部の個体が港外へ散逸した可能性があることから、フェンス等による散逸防止措置などにより歩留まりを向上させること、(3)12月に寄りコンブが多く入手できたことから給餌量を増やしたものの、身入りの向上があまり見られずこの時期の餌料効率が悪いと考えられたことから、12月の給餌を減らし餌料効率を上げること、などの対応策が考えられました。

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