鶏の熱性ストレス

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ページ番号1007972  更新日 平成31年2月20日

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熱性ストレスによる鶏の死亡が、夏の高温多湿時あるいは季節に関わりなく換気・温度管理システムが故障した鶏舎でときおり発生するが、短時日に多数の鶏が死亡した際は高病原性鳥インフルエンザとの鑑別が求められる。ここでは、熱性ストレスにより影響された鶏の状態と診断法を述べ、県内の発生例を紹介する。

環境温度の異常な上昇により鶏が影響を受ける程度は、鶏の年齢、鶏舎環境、高温の程度と持続時間、高温に達するまでの経過時間および相対湿度により相違する。汗腺を保有しない鳥類は、環境温度が28度から35度の範囲では、放射、伝導および対流により熱を放出させて体温を維持するが、鳥類の体温に相当する41度に近づくに従い、呼吸数の増加と開口呼吸を示し、同環境温度が長時間持続したり、さらに上昇した際は沈鬱、昏睡に陥った後、呼吸、循環および電解質バランスの各障害により死亡する。
呼吸数の増加に伴い血液ペーハーの上昇と血液カルシウムイオン濃度の減少を招き、採卵鶏では菲薄な卵殻卵を産生する。開口呼吸は環境中の病原体を肺に直接的に吸引することとなり、気道感染を誘発する。熱性ストレスによる他の影響として、食欲の低下に伴う卵重量、産卵率および卵質の低下が含まれる。
診断は発生状況、臨床症状、病理学的、病原学的および中毒学的検査成績等を考慮して行われる。高温度と高湿度の環境下におかれた鶏に、持続性の高熱(41度以上、しばしば43度に達する)、活力消失、突然の死亡等が観察された際は本症が疑われる。顕著な鬱血が呼吸器系の臓器・組織に存在する剖検所見、発生状況や臨床症状から疑われる病原体や中毒物質の関与を否定する室内検査成績は、本症の診断を容易にする。

平成18年11月に、県内の1肉用鶏農場で1鶏舎(33日齢群)の7,250羽中2,983羽(41%)が急死した。死亡鶏は前夜に異常を示すことなく翌朝に死亡した状態で発見され、他の多くの生存鶏が沈鬱や昏睡に陥っていた。前夜の鶏舎内温度は18度であり、翌朝のそれは28度であった。当鶏舎の換気および温度管理システムは稀に故障し、以前にも同様の事態を招いていた。同システムが正常に機能していることを確認した翌日以降に異常鶏の新たな発生はなかった。
死亡鶏の剖検および組織学的検査により、顕著な鬱血が喉頭、気管および肺に観察され、心外膜と心筋間質の水腫を伴っていた。主要臓器から有意な細菌は検出されず、気管スワブから赤血球凝集ウイルス(ニューカッスル病、鳥インフルエンザ)も分離されなかった。異常鶏の発生状況、臨床症状および室内検査成績から、熱性ストレスによる死亡(熱死)と診断した。

(病性鑑定課)

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