鶏の尿酸塩沈着症(痛風)

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ページ番号1007971  更新日 平成31年2月20日

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鳥類において尿酸は肝臓で産生されるが、最終窒素代謝産物であることから、その排泄が障害された際に尿酸塩沈着症(痛風)が引き起こされる。本病は尿酸塩の主たる沈着領域により内臓型あるいは関節型に大別されるが、両型は病因や発生状況の観点からも相違する。

内臓型

急性疾患としてしばしば発生し、ときに鶏飼養農場に重大な経済的損失をもたらすが、慢性疾患としても起こり得る。雌雄に関わりなく1日齢以上の鶏に観察され、腎臓ならびに心膜、腹膜および気嚢の表面への尿酸塩の沈着により特徴づけられる。重篤例では、尿酸塩が筋肉組織の表面、腱鞘、関節滑膜あるいは肝臓、脾臓等の臓器の実質内にも沈着する。この沈着は尿管の閉塞、腎障害あるいは脱水による尿の排泄障害に起因する。家きんにおける本病の原因として給水不足による脱水が最も一般的であるが、腎炎型伝染性気管支炎、ビタミンA欠乏、重炭酸ナトリウムの過剰給与、マイコトキシン、腎クリプトスポリジウム症も知られている。

関節型

慢性疾患として4か月齢以上の雄鶏に、稀にあるいは散発性に発生し、農場に与える経済的損失は僅かに留まる。病鶏には脚の変形、跛行、脚の諸関節における可動障害と痛風結節等が観察される。尿酸塩は関節滑膜とその周囲組織に沈着し、関節腔、滑液包、腱鞘腔に貯留する。経過がさらに長い例では、尿酸塩は鶏冠、肉垂、気管にも沈着する。原因は腎尿細管の代謝障害に伴う尿酸塩の分泌障害であり、要因としてタンパク質に富んだ飼料の給与あるいは遺伝的素因が関与する。

本病(内臓型)の発生例

平成20年6月に県内の1肉用鶏農場で給水不足により本病が発生した。当農場では9鶏舎で60,000羽の鶏を飼養していたが、給水が不足した1鶏舎に発生し、21日齢および22日齢時に7,000羽中1,300羽が急死した。病鶏は活力を失い、異常に高い血清尿酸濃度(1デシリットルあたり150から500ミリグラム)を示した。死亡鶏の剖検により、白色泥状物質の貯留による尿管の拡張と腎臓の腫大ならびに心膜への同物質の沈着が観察され、組織学的に尿酸塩沈着を伴う尿細管上皮細胞の変性および壊死がみられた。給水不足は17日齢時に始まり、21日齢時の深夜以降に解消された。23日齢時以降、死亡数は著しく減少した。なお、病鶏から赤血球凝集ウイルスは分離されなかった。

(病性鑑定課)

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