令和4年2月県議会定例会知事演述

ページ番号1050159  更新日 令和4年3月24日

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1 はじめに

 本日ここに第19回県議会定例会が開会されるに当たり、今後の県政運営について、私の所信の一端を申し上げます。

 冒頭、本年1月15日にトンガ王国で発生した、大規模な海底火山噴火に伴う地震、津波により、お亡くなりになられた方々を悼み、被災された皆様に、お見舞いを申し上げます。

 本県においても、火山噴火に伴う津波により、定置網など水産関係に被害を受けました。

 地球規模の巨大な自然現象によって思わぬ災害が起こり得るということを、東日本大震災津波を経験した私たちは、改めて胸に刻まなければなりません。

2 新型コロナウイルス感染症対策

 新型コロナウイルス感染症が世界中で流行を続けています。

 令和2年1月に、WHOが新型コロナウイルス感染症について、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言して以来、2年以上が経過し、これまでに、全世界で4億人を超える方々が感染、5百万人を超える方々が亡くなっています。

 国内では、令和2年の春以降、流行の波が繰り返され、本年2月15日現在の感染者数は約4百万人、死亡者数は20,494人となっており、県内においても、7,028人の方々が感染し、55人の方々が亡くなっています。

 新型コロナウイルス感染症で、未知の症状に不安を感じながら、あるいは何が起きたのか定かでないまま、お亡くなりになられた方々に、哀悼の意を表します。そして、感染を経験された皆様に、心からお見舞いを申し上げます。

 本県では、感染拡大の第5波が収まって以降、感染リスクの低い状況が続きましたが、本年1月8日にオミクロン株による市中感染が複数確認され、かつてなかった水準にまで新規感染者数が増え、感染防止対策が喫緊の課題となっております。

 医療関係の皆様、介護・福祉関係の皆様、教育関係の皆様をはじめ、日々新型コロナウイルス感染症の治療や感染防止に当たられている皆様に、深く感謝いたします。

 県民の皆様におかれましては、感染対策の徹底、地元消費を中心とした消費拡大など、対策に御協力いただき、本県の感染リスクを全国で最も低い水準に保ちながら、社会活動や経済活動を行っていること、改めて感謝申し上げます。

(これまでの対応)

 新型コロナウイルス感染症は、新しい感染症であり、病状の進行などに不確実な部分が多いことから、感染した方が適切な医療を受けられるよう、本県の強みである公的医療機関ネットワークを生かし、検査体制の拡充や病床の確保を行ってきました。

 ワクチン接種については、市町村や、県医師会をはじめ関係団体と連携し、市町村が行う接種を加速するため、市町村支援チームを設置して、医療従事者を確保しました。

 また、団体単位での接種のニーズにも対応できるよう、県による広域的な集団接種を実施しました。

 社会活動・経済活動を支える対策については、急激な消費の落ち込みに対し、令和2年3月には、関係団体と連携して、「買うなら岩手のもの運動」を開始し、県産農林水産物や県産品の消費拡大に取り組みました。

 宿泊業などの売上回復に向けては、GoTo事業も活用して、「いわて旅応援プロジェクト」や「いわての食応援プロジェクト」を実施し、令和3年10月には、県内の方の延べ宿泊者数が、令和元年同月より多くなりました。

 経済的な打撃を受けた方々には、生活資金の貸付け、住居確保のための給付金、ひとり親家庭への支援など、生活を支える対策を継続してきました。

 ワクチンの安定供給や地方創生臨時交付金の増額など全国的な課題の解決には、全国知事会において、国への提言を行い、必要な制度の新設や変更を実現しました。

(第6波への対応)

 国内では、感染力が強いオミクロン株が猛威を振るい、一日当たりの最大の新規感染者数が10万人を超え、第5波をはるかに上回る感染規模の第6波が起きています。

 本県においても、「岩手警戒宣言」と「岩手緊急事態宣言」により、感染リスクの高い場所への外出の自粛、感染が拡大している地域との往来の慎重な判断、学校行事や部活動における対策の強化など、県民の皆様の行動抑制を含む強い感染対策をお願いしています。

 また、救急医療などの一般医療への影響を最小限にとどめるためにも、入院等の必要がないと判断された方を対象に、自宅療養を実施しています。

 自宅療養に当たっては、県医師会や看護協会などの協力のもと、地域における健康観察や医療支援を行うほか、県庁に「いわて健康観察サポートセンター」を設置して健康観察を行い、自宅においても適切な療養ができるようにしています。

 引き続き、医療提供体制の拡充、検査体制の強化、3回目のワクチン接種の円滑な運営支援など、必要な対策を講じて参ります。

 新型コロナウイルス感染症に関する差別や誹謗中傷を防ぐための対応を今後も行っていきます。

 感染拡大を防ぎ、感染リスクを低く抑えていくことで、社会活動・経済活動を行うことができます。県民力を合わせて感染防止対策を徹底して参りましょう。

3 東日本大震災津波からの復旧・復興

 東日本大震災津波から11年を迎えようとしています。

 この間、全国や海外から多くの御支援をいただき、国内外の方々との絆に支えられてきました。

 こうしたつながりを大切にしながら、犠牲になられた方々のことを忘れず、その故郷への思いを引き継ぐ覚悟をもって、「いのちを守り 海と大地と共に生きる ふるさと岩手・三陸の創造」に、県民一丸となって取り組んできました。

 被災された方々の御努力と、御支援くださった方々の御尽力に敬意を表し、感謝申し上げます。

(東日本大震災津波からの復旧・復興の成果と課題)

 今年度は、県立野外活動センター「ひろたハマラインパーク」や、砂浜の再生工事が完了した海水浴場がオープンしました。

 昨年12月18日には、復興道路が全線開通し、三陸沿岸がより強く一つに結びつき、さらに、三陸沿岸と内陸もより強く結びつきました。

 釜石港におけるガントリークレーンの活用、釜石港及び大船渡港における新たなコンテナ定期船の航行など、震災前にはなかった産業基盤も整備されています。

 一方、被災地は、平成28年台風第10号や令和元年台風第19号などにより大きな被害を受けました。また、主要魚種の不漁、新型コロナウイルス感染症による打撃を受けています。

 被災者一人ひとりの状況に応じたきめ細かい支援や、なりわいの再生に、引き続き取り組んでいく必要があります。

 また、「東日本大震災津波を語り継ぐ日条例」の趣旨にのっとり、震災の事実と教訓の伝承、復興の姿の発信を続け、風化を防ぎ、国内のみならず世界の防災力向上への貢献を目指したいと思います。

(これからの取組)

 このような成果と課題を踏まえ、引き続き、「誰一人として取り残さない」という理念のもと、「三陸のビルド・バック・ベター(より良い復興)」を進めて参ります。

 防潮堤や水門など、建設中の社会資本を早期に整備します。

 引き続き、被災者のこころのケアや新たなコミュニティの形成支援に取り組みます。

 事業者の販路回復や従業員確保の支援、主要魚種の不漁等への対策を進めます。

 復興道路の効果を生かし、ジオパーク、世界遺産、豊かな食文化や景観などの資源を活用した観光産業の振興に取り組みます。

 防災活動に取り組む団体のネットワークの構築、防災学習プログラムの作成など、三陸地域を「防災を学習する場」とする仕組みをつくります。

 開館から3年を迎える東日本大震災津波伝承館を拠点として、伝承施設や震災遺構のネットワークを生かし、震災の事実と教訓の伝承・発信に努めます。

4 政策の展望

(「いわて県民計画(2019~2028)」に基づく政策の推進)

 令和4年度は、「いわて県民計画(2019~2028)」第1期アクションプランの最終年度であり、令和5年度を始期とする第2期アクションプランの策定年度であります。

 人口減少、デジタル、グリーン、この3つを重点課題とし、3つのゾーンプロジェクトやILCの推進など、県民計画に基づく施策を着実に展開します。

(人口減少社会への対応)

 本県の人口は平成9年以降減少を続け、令和3年10月時点では119万6千人となり、社会増減は、3年連続で社会減が縮小したものの2,738人のマイナス、自然増減は出生数の減少などにより11,128人のマイナスとなっています。

 一方で、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が繰り返され、地元志向・地方志向が強まる中、令和2年度の高卒者の県内就職率が20年ぶりに7割を超えました。

 また、感染症に対する大都市のリスクの高さが際立ち、東京圏への人口集中を是正すべきということが改めて浮き彫りになりました。

 このような中、地方への移住に対する関心が高まり、東京圏の転入超過の傾向に変化が見られ、テレワークをはじめとする多様な働き方が加速するという、個人の意識・行動変容が起きています。

 さらに、学校におけるICT機器の前倒し整備、介護施設における介護ロボット等の導入をはじめ、各分野においてデジタル化が加速し、社会環境も変化しています。

 この機を捉え、「第2期岩手県ふるさと振興総合戦略」のもと、人口減少対策に更に力を入れて参ります。

 自然減対策として、昨年12月に設置した「いわてで生み育てる支援本部」を司令塔に、結婚支援の強化や、産前・産後サポートの拡充を行い、子どもを生み育てやすい社会を目指します。

 社会減対策としては、県外の皆さんに岩手に関心を持っていただく取組を強化します。また、本県出身の皆さんと岩手とのつながりを深める取組を進め、本県へのU・Iターンを促進します。

(デジタル化による地域課題の解決)

 デジタル化の進展は、個性豊かで活力に満ちた地域社会の可能性を広げます。

 昨年7月には、産学官金で構成する「いわてデジタルトランスフォーメーション推進連携会議」を設立しました。

 全ての県民がデジタル化の恩恵を享受できるよう、「行政のDX」「産業のDX」「社会・暮らしのDX」「DXを支える基盤整備」の4つの取組方針のもと、商工業、農林水産業、建設業をはじめとしたあらゆる産業のデジタル化の促進、デジタル技術を活用した教育・介護・子育て・医療分野における利便性の向上、情報通信インフラの整備、市町村の取組への支援を進めます。

(グリーン社会の実現)

 本県は、全国第2位の森林面積を有し、2つの国立公園が存在するなど、優れた自然環境に恵まれ、また、全国トップクラスの再生可能エネルギーのポテンシャルがあり、電力自給率が上昇しています。

 一方、地球温暖化に歯止めがかからず、世界の気候は非常事態に直面しており、本県としても、国際社会の一員としての役割を果たすことが求められます。

 昨年2月には、気候変動に対する危機感を共有し、県民総参加で気候変動対策に取り組むため、「いわて気候非常事態宣言」を表明しました。

 その後、3月に「第2次岩手県地球温暖化対策実行計画」を策定し、2030年度の温室効果ガス排出削減目標として、2013年度比で41%を目標に掲げ、「温室効果ガス排出量の2050年実質ゼロ」に向け取り組んでいます。

 地域経済と環境に好循環をもたらすグリーンの視点で、森林整備・県産木材の利用促進などの森林資源の循環利用、省エネ住宅の普及、水素の利活用、再生可能エネルギーの導入を促進します。

(3つのゾーンプロジェクト)

 3つのゾーンプロジェクトに関し、北上川流域は、自動車関連産業の集積が更に進み、半導体製造メーカーの工場の増設、IT企業の本店移転などもあり、新たな雇用が生まれ、成長が続いており、産業集積、都市型の生活環境、豊かな自然、歴史と文化を生かした地域づくりが進んでいます。

 このような北上川流域の強みや特徴を生かし、働きやすく、暮らしやすいエリアとしての発展を促すため、一層の産業振興と生活環境の充実を進めます。

 また、北上川バレーに「残ってもらう」「帰ってきてもらう」「来てもらう」ために、地域の魅力を発信します。

 三陸地域においては、復興を通じて、まちづくりや交通ネットワークの形成が進み、港湾機能などを生かした地域産業が発展しています。

 防災やジオパークで世界とつながる三陸、多様な交通ネットワークで国内外とつながる三陸、食やスポーツでつながる三陸として、様々な地域や主体と連携しながら、持続可能な三陸地域を創造します。

 また、「三陸防災復興プロジェクト2019」「ラグビーワールドカップ2019岩手・釜石開催」「防災推進国民大会2021」の成果を継承し、三陸ジオパークや豊かな食材・食文化などの地域資源を活用して、交流人口を拡大します。

 北いわてにおいては、豊富な再生可能エネルギー資源を産業活動に導入しながら、食産業やアパレル産業、漆関連産業などの特色ある産業が発展しています。

 また、「北海道・北東北の縄文遺跡群」が世界遺産に登録され、交流人口の拡大に期待が高まっています。

 これら北いわてのポテンシャルを最大限に発揮するため、北いわて13市町村など産学官で構成される「北いわて産業・社会革新推進コンソーシアム」を昨年8月に設立しました。

 この組織を活用し、北いわての資源や産業を生かして持続的に発展する地域づくりを推進します。

(ILCの推進)

 昨年6月に、世界の研究者コミュニティの組織であるILC国際推進チームが「ILC準備研究所提案書」を公表し、国においては、7月に文部科学省がILCに関する有識者会議を再開して、この2月、議論を取りまとめるなど、ILC実現に向けた取組が進展し、重要な時期を迎えています。

 県としては、国内外の動向に臨機に対応しつつ、関係団体と連携し、研究者の活動を支援します。また、政府主導の国際的な議論の推進について、国に働きかけます。

 併せて、外国人研究者の受入環境の整備や、県内企業の加速器関連産業への参入促進など、ILCの実現に向け、地元の取組を進めます。

(行財政運営の改革)

 一方、人口減少に伴う一般財源規模の縮小や、高齢化の進行に伴う社会保障関係費の増加などにより、本県の財政状況は中長期的に厳しさを増すことが見込まれます。

 人口減少などの重点課題に対応し、県民福祉を増進しつつ、基本的な行政サービスを将来にわたって提供していくためには、安定的で持続可能な行財政基盤の構築に努める必要があります。

 このため、有識者で構成する「持続可能で希望ある岩手を実現する行財政研究会」を開催し、県の行財政の構造的・中長期的な課題の分析を通じて、抜本的な行財政運営の構造改革の方策について、提言を頂きます。

(第2期アクションプランの方向性)

 令和5年度から4年間の第2期アクションプランの策定に当たっては、新型コロナウイルス感染症対策を通じて培われた、県、市町村、企業、団体、個人など、様々な主体の協力関係を生かしながら、広く意見を伺い、新しい時代を切り拓く県の役割を構築して参ります。

(主要行事の開催に向けた対応)

 去る1月8日、本県は「盛岡県」から「岩手県」に改称されて150周年となり、令和8年5月25日には、現在の県域が確定されて150周年の節目を迎えます。

 この令和4年度から8年度までを「県政150周年記念期間」として、岩手のことをよく知り、岩手の在り方を考える機会とし、県民の皆様と共に、記念事業を行います。

 令和4年7月から9月にかけては、青森県、秋田県と連携し、「北東北三県観光キャンペーン」を実施します。

 北東北の世界遺産やユネスコ無形文化遺産などの地域資源を生かし、北東北への人の流れを大きくしていきます。

 東日本大震災津波からの復興に取り組む中、多くの皆様から御協力をいただき、大成功を収めることができた「希望郷いわて国体・希望郷いわて大会」や「ラグビーワールドカップ2019岩手・釜石開催」を契機に、復興及び地域振興に貢献するスポーツの力に理解が深まっています。

 このレガシーの上に、令和4年9月に「日本スポーツマスターズ2022岩手大会」、令和5年2月には「いわて八幡平白銀国体」を開催します。岩手からスポーツの感動を全国に伝えながら、岩手のおもてなしや、食、歴史・文化などの魅力を発信します。

 令和5年春には、天皇皇后両陛下の御臨席のもと、高田松原津波復興祈念公園において、「第73回全国植樹祭」を開催します。

 本県の豊かな森林環境を継承し、林業の持続的な発展に向けた機運を醸成します。また、復興の姿を伝える機会でもあり、関係機関・団体をはじめ、県民一丸となって準備を進めます。

5 令和4年度の主要施策の概要

 令和4年度は、「いわて県民計画(2019~2028)」第1期アクションプランの最終年度であり、引き続き、新型コロナウイルス感染症対策に取り組みながら、先に述べた重点的な事項をはじめ、計画に掲げる施策を着実に推進します。

 はじめに、東日本大震災津波からの復興です。

(1) 復興の推進

(安全の確保)

 「安全の確保」として、水門・陸こうの自動閉鎖システムの整備、整備済みの社会資本の維持管理を行います。

 また、防災知識の普及や自主防災組織の組織化・活性化など多重防災型まちづくりを推進します。

 防災集団移転促進事業に伴い生じた「移転元地」の利活用の促進、放射性物質に係る風評被害の払拭に向けた放射線影響対策を引き続き実施します。

(暮らしの再建)

 「暮らしの再建」として、「いわて被災者支援センター」において、関係機関・団体と連携し、恒久的な住宅に移った後の生活の安定など、一人ひとりに寄り添った支援を実施します。

 被災者の見守りやコミュニティ形成支援のための相談員などの配置、「心の復興」の活動を行う民間団体への支援を引き続き行います。

 「岩手県こころのケアセンター」や「いわてこどもケアセンター」において、被災者や子どもの心のケアに中長期的に取り組みます。

 郷土に愛着や誇りを持ち、岩手の復興・発展を支える人材を育成するため、地域や関係機関・団体と連携し、「いわての復興教育」を推進します。

(なりわいの再生)

 「なりわいの再生」として、近年の主要魚種の不漁等に対応するため、大型で遊泳力の高いサケの稚魚生産等による資源回復、マイワシをはじめ増加している資源の有効利用、サケ・マス類の海面養殖やウニの二期作など新たな漁業・養殖業の導入を推進します。

 また、水産加工事業者が行うデジタル化や人材確保、商品開発・販路開拓への支援、漁港施設の機能強化に取り組みます。

 原木しいたけの産地再生のため、出荷制限の解除に向けた取組を継続します。また、需要拡大・販路開拓を促進します。

 事業を再開した事業者の経営の安定化のため、商工指導団体等と連携し、金融面や売上増加に向けた支援を継続します。

 復興道路や三陸鉄道等の交通ネットワークと観光資源を生かし、三陸地域を振興していくため、三陸DMOセンターの活動拠点を沿岸部に置いて、機能強化を図り、観光事業者と一層連携します。

(未来のための伝承・発信)

 「未来のための伝承・発信」として、復興フォーラムや復興未来塾などの開催により、多様な主体が復興について幅広く教え合い、学び合う機会の創出や、次世代への継承に取り組みます。

 また、復興支援への感謝と復興の姿を継続して発信します。

(2) 10の政策分野の推進

 10の政策分野については、政策評価に基づくマネジメントサイクルを機能させ、取組の成果と課題を県民の皆様と共有し、計画の実効性を高め、施策を着実に推進して参ります。

(健康・余暇)

 「健康・余暇」分野では、「健康いわて21プラン」や「岩手県循環器病対策推進計画」に基づき、健康寿命の延伸のために優先的に取り組む必要がある脳卒中などの循環器病の予防や早期発見に向け、生活習慣の改善や検診受診率の向上に取り組みます。

 令和3年の本県の自殺者数は、速報値ではありますが、初めて200人を下回り、自殺死亡率も全国平均を下回りました。引き続き、「岩手県自殺対策アクションプラン」に基づき、包括的な自殺対策プログラムを推進し、職域団体等におけるゲートキーパーの養成や相談体制の充実に取り組みます。

 地域医療構想の実現に向け、医療機関の機能分担や連携体制の構築を促進します。また、医師の確保と地域偏在の解消、看護職の県内定着を図ります。

 周産期医療については、周産期母子医療センターの機能強化や、分娩取扱施設から遠隔地に居住する妊産婦の移動に係る支援の充実を進めます。

 「地域包括ケアシステム」を推進するため、市町村の取組を支援します。また、福祉・介護職の人材確保に取り組みます。

 障がい者の地域生活を支えるサービス基盤の整備、就労支援や相談支援体制の充実に、市町村や事業者等と連携して取り組みます。

 会場以外での鑑賞・観覧も可能となるよう、イベントなどのオンライン配信に取り組み、文化芸術やスポーツに親しむ機会を広げます。

 障がいの有無にかかわらずスポーツを楽しむ機会の充実を図るため、誰もがスポーツを楽しむことができる環境を整備し、共生社会型スポーツを推進します。

 「(仮称)盛岡南公園野球場」について、全国初となる県と盛岡市とのPFI方式により、令和5年4月の供用開始に向けて整備を進めます。

(家族・子育て)

 「家族・子育て」分野では、安心して妊娠・出産できる環境のため、新たに、産後ケア事業利用者の経済的負担を軽減するなど、産前・産後のサポートの充実に取り組みます。

 市町村が、必要な保育サービスを提供できるよう、施設の整備や運営に対する財政支援、保育人材の確保に取り組みます。

 子どもの貧困対策やひとり親家庭等への支援のための施策を総合的に推進します。

 「児童虐待防止アクションプラン」に基づき、児童相談所や地域における見守りの体制を強化します。

 ヤングケアラーについては、実態を把握し、包括的な相談支援体制を強化します。

 障がい児とその家族の多様なニーズに対応した療育が受けられるよう、地域療育ネットワークの機能の充実を支援します。

 また、「医療的ケア児支援センター」を設置し、地域における医療的ケア児等の支援体制の充実を図ります。

(教育)

 「教育」分野では、「岩手県総合教育会議」を開催し、教育委員会との連携を深め、地域の教育の課題やあるべき姿を共有し、本県教育の振興を図ります。

 「いわて幼児教育センター」における幼児教育の一層の推進に取り組みます。

 高等学校と市町村、地元企業、大学等が、教育活動を協働して展開することにより、持続可能で魅力ある地域づくり、人づくりを推進していきます。

 特色ある私学教育の振興、地域の国際化に貢献する人材の育成、ものづくり産業、農林水産業、建設業などの産業人材の確保・育成に取り組みます。

 スポーツ指導において、映像分析などのデジタル技術を活用し、指導者の資質や競技力の向上を図ります。

(居住環境・コミュニティ)

 「居住環境・コミュニティ」分野では、市町村との連携のもと、住宅の耐震化や空き家の利活用を促進します。

 水道広域化推進プランを策定し、水道事業者の広域的な連携を推進します。また、汚水処理事業の広域化・共同化計画を策定し、汚水処理の効率化を推進します。

 広域バス路線と地域内公共交通の維持・確保に向け、市町村や交通事業者等と連携し、持続可能な地域公共交通ネットワークの構築を進めます。

 本県の幅広い産業基盤や豊かな自然環境をはじめとした、岩手で働き・暮らす魅力の発信の強化や、岩手で就職を希望する若者への移住支援金の支給などを通じて、移住やU・Iターンを促進します。

 地域おこし協力隊のOB・OGのネットワークと連携し、地域おこし協力隊の受入拡大、活動の充実、定着の促進に向けた支援を総合的に実施し、本県への定住につなげていきます。

 「岩手県における日本語教育の推進に関する基本的な方針」に基づき、日本語教育の総合的な支援体制の構築など、外国人県民が暮らしやすい環境づくりに取り組みます。

 本年8月に、伝統と格式を誇るイギリス屈指のパブリックスクールであるハロウ校のインターナショナルスクールが八幡平市に開校の予定です。同校との間で、地域振興に関する連携協定を締結するなど、地域振興、国際化の取組等を推進します。

(安全)

 「安全」分野では、自助・共助・公助に基づく防災体制づくりに向け、県民一人ひとりの防災意識の向上、住民同士が助け合う体制の強化、関係機関が連携した防災体制の整備を推進します。また、市町村の消防団の充実強化を支援します。

 大船渡市、陸前高田市、住田町を会場に、地震及び津波の発生を想定した「令和4年度岩手県総合防災訓練」を実施します。

 本県最大クラスの地震・津波被害想定調査結果を踏まえ、「岩手県津波避難計画策定指針」を改訂し、市町村の津波避難計画の見直しを促進するほか、「岩手県広域防災拠点配置計画」の見直しを行います。

 効果的な広報や世代に応じた安全教育による交通事故防止対策の推進、「子ども110番の家・車」をはじめとするスクールガードリーダーや防犯ボランティア団体等への支援を引き続き実施します。

 「いわて飲食店安心認証制度」を継続して運用します。また、生活衛生営業指導センターと連携し、関係事業者の取組を促進します。

 令和6年度を始期とする次期医療計画の策定に当たり、新興感染症等の感染拡大時における医療提供体制の確保に向けた検討を進めます。

 「岩手県消費者施策推進計画」に基づき、消費者被害の防止、相談への対応の充実、成年年齢の引下げに対応した若年者への啓発などの消費者教育の推進に取り組みます。

(仕事・収入)

 「仕事・収入」分野では、「岩手県自動車関連産業新ビジョン」「いわて半導体関連産業振興ビジョン」に基づき、ものづくりのグローバル拠点の形成を推進します。

 また、北上川流域における関連企業の立地や拡張に対応するため、新たな浄水場の整備を進めます。

 「いわてで働こう推進協議会」を中心として、若者や女性の県内就職の促進や、「いわて働き方改革推進運動」の展開にオール岩手で取り組みます。

 中小企業の経営継続に向け、新しい生活様式に対応した経営への転換を行う事業者への伴走型支援体制の強化や、事業承継の促進に取り組みます。また、「岩手イノベーションベース」の体制を強化し、起業家の育成を推進します。

 商談会や県産品フェアの開催、ECサイトの活用促進などを通じた販路の拡大により、地場産業や食産業の成長を促進します。また、付加価値の高い新事業の創出を支援します。

 全員参加型社会の実現に向け、「第11次岩手県職業能力開発計画」に基づき、個々の訓練ニーズに応じた施策を実施し、IT人材やものづくり人材の育成を強化します。

 令和4年3月に就航1周年を迎える神戸線の維持、関西圏との交流人口の拡大、国際線の再開に向けた働きかけなど、いわて花巻空港の利用促進に取り組みます。

 農林水産業の持続的な発展と農山漁村の活性化を図るため、地域コミュニティ活動をリードする人材の育成や、生産基盤の着実な整備に取り組みます。

 農業者の所得確保に向け、主食用米から高収益野菜等への作付転換の促進や、県産米の需要拡大に取り組みます。また、令和4年10月に開催される第12回全国和牛能力共進会での上位入賞に向け、関係団体と連携して生産者の取組を支援します。

 県産木材の需要が高まる中、公共施設や住宅、民間商業施設等における県産木材の更なる利用促進に向け、官民一体となって取り組みます。

 米や牛肉など本県が誇る高品質な農林水産物の輸出拡大に向け、輸出先の市場ニーズを的確に把握し、戦略的な取組を進めていきます。

 野生鳥獣による農作物被害を防止するため、有害鳥獣の捕獲や地域ぐるみでの被害防止活動への支援に取り組みます。

(歴史・文化)

 「歴史・文化」分野では、昨年11月に開館した「岩手県立平泉世界遺産ガイダンスセンター」を拠点とし、平泉の価値を広く伝え、交流人口の拡大や後世へ継承するための取組を推進します。

 「平泉の文化遺産」「明治日本の産業革命遺産」「北海道・北東北の縄文遺跡群」の3つの世界遺産とそれぞれの地域が有する文化遺産のネットワークを構築し、世界遺産を生かした人的・文化的交流を促進します。

 幅広い世代において、民俗芸能に対する興味・関心を高めるため、魅力の発信や交流機会の創出に取り組み、後継者の育成や文化資源を活用した地域活性化につなげていきます。

(自然環境)

 「自然環境」分野では、循環型地域社会の構築に向け、3Rの推進や海岸漂着物対策等に加え、「岩手県食品ロス削減推進計画」に基づき、食品ロス削減の普及啓発に取り組みます。

 公共関与型産業廃棄物最終処分場について、令和6年度の供用開始に向け、着実な整備への支援に取り組みます。

 「いわての森林づくり県民税」を活用した森林環境の保全に取り組みます。また、温室効果ガスの削減など、環境にやさしい農業を推進します。

 再生可能エネルギーによる電力自給率の維持・拡大に向け、令和7年度に「入畑発電所」、令和8年度に「胆沢第二発電所」の運転開始を目指し、再開発を進めます。

 本県の希少な野生生物の保護対策の基礎資料である「いわてレッドデータブック」について、令和6年度の改訂に向け、生息状況調査を実施します。

(社会基盤)

 「社会基盤」分野では、近年頻発する集中豪雨や台風による洪水被害に備え、あらゆる関係者が協働して行う「流域治水」の推進など、ハード・ソフトを組み合わせた防災・減災対策を進めます。また、市町村のハザードマップ作成等の基盤となる洪水浸水想定区域や土砂災害警戒区域の指定に取り組みます。

 災害に強い道路ネットワークの構築、救急搬送ルートの整備、産業や観光振興の基盤となる道路の整備、社会資本の維持管理を行います。

 港湾の利活用を促進するため、外国船社クルーズ船の寄港の拡大などに取り組みます。

(参画)

 「参画」分野では、「いわて男女共同参画プラン」に基づき、一人ひとりが尊重される社会の実現に向けた取組を進めます。

 「いわて女性活躍企業等認定制度」の普及拡大などにより、女性が活躍できる職場環境づくりや若年女性の県内定着を推進します。

 「いわて若者カフェ」や「いわてネクストジェネレーションフォーラム」を通じ、若者の活躍を支援し、交流やネットワークの拡大を促進します。

(新しい時代を切り拓くプロジェクトの展開)

 「新しい時代を切り拓くプロジェクト」については、先に述べた3つのゾーンプロジェクトやILCプロジェクトに加え、小集落における、第4次産業革命技術を活用した日常生活の利便性向上、人と人とのつながりを守り育てる仕組みの構築に取り組みます。

 また、県外の方々や企業が、複業や地域課題の解決などの形で本県との関わりを深める取組を展開し、関係人口の創出・拡大を図ります。

 先端技術の導入による農林水産業の高度化、ビッグデータの活用による健康寿命が長くいきいきと暮らすことができる社会の実現、ICTを効果的に活用した新たな学びの充実に取り組みます。

 文化芸術やスポーツの力を発揮するための環境づくりに向け、官民一体による文化芸術とスポーツの推進体制を整備します。

(地域振興の展開)

 持続的な地域社会を築くため、市町村をはじめ、地域社会を構成するあらゆる主体との連携・協働のもと、地域が置かれている状況や地域資源の特性をしっかりと捉え、各圏域の持つ強みを伸ばし、弱みを克服する施策を講じて参ります。

 全県と比べ、人口減少が進行している県北・沿岸圏域においては、優れた地域資源や新たな交通ネットワークなどの社会資本を最大限に生かした産業振興を推進します。

 また、過疎・山村などの条件不利地域については、「岩手県過疎地域持続的発展方針」に基づき、振興を図ります。

 人口減少をはじめとする市町村を取り巻く環境の変化を踏まえ、市町村と方向性を共有し、各市町村に共通する重要な課題に関する情報交換や広域連携など、県民に必要なサービスが持続的に提供されるよう、市町村相互や県と市町村との一層の連携・協働を進めます。

6 質の高い行政経営の推進

 政策の実効性を高め、県民サービスを安定的・持続的に提供していくため、働き方改革の取組を一層進め、より質の高い行政経営を推進して参ります。

 CIO補佐官など外部人材を活用し、デジタル技術の活用による業務の効率化や県民サービスの向上に取り組みます。

 また、「自治体DX推進計画」に基づき、市町村が行うデジタル化の取組を支援します。

 先に述べた「持続可能で希望ある岩手を実現する行財政研究会」では、将来を見据えた歳入歳出の水準の在り方や財政目標について議論いただき、その成果を次年度以降の予算編成など今後の行財政運営に反映して参ります。

7 むすび

 今年、岩手県は県政150周年を迎えました。

 これまでの150年、本県では、厳しい自然環境や社会的諸条件のもと、多くの先人が努力を重ね、明治三陸地震や東日本大震災津波など数々の災害や困難を乗り越え、郷土の産業や県民の暮らしを発展させてきました。

 新型コロナウイルス感染症の流行の波が繰り返され、対策が講じられる過程を通じ、都道府県の役割が注目され、感染リスクとの関係で生活や仕事の場の在り方をみつめ直すことで、都道府県に対する関心が高まっています。

 新型コロナウイルス感染症の流行が続く一方で、大谷翔平選手がアメリカンリーグでMVPを受賞し、小林陵侑選手が北京オリンピックで金銀2つのメダルを獲得し、黒沢尻北小学校合唱部と盛岡第四高等学校音楽部が、全日本合唱コンクール全国大会で最高賞を受賞しました。

 東京2020オリンピック競技大会においては、岩手県ゆかりの選手が過去最多の7名出場し、北京2022オリンピック・パラリンピック冬季競技大会では10名が出場しています。

 こうした若者たちの活躍は、改めて、県の潜在力、県の可能性を感じさせます。

 今年度、いわて希望塾の関連事業として、県内の中学校や特別支援学校中学部の生徒に、岩手の良いところや希望する岩手の姿を表現する、「わたしの一押し・わたしが思う未来のいわて」を募集したところ、819点の応募がありました。

 その中に、

 「岩手の山、岩手の川、岩手の人、すべてがつながっている。大自然に囲まれて、岩手という家の、家族だから。」

 「いわて県民も自然も笑顔が絶えない未来をめざそう!そんな未来を作れるかは私達若者次第!」

 という作品がありました。

 未来を担う子どもたちとともに、これまでの150年の歩みを基に、岩手県を更に前進させましょう。

 新型コロナウイルス感染症対策に全力で取り組み、それを人口減少対策につなげ、さらに、県民の幸福度を高め、ふるさと岩手を希望の郷にすることにつなげましょう。

 ここにおられる議員の皆様、そして県民の皆様の深い御理解と更なる御協力を心からお願い申し上げ、私の所信表明といたします。

添付ファイル

令和4年2月県議会定例会知事演述全文

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