平成30年2月県議会定例会知事演述

Xでポスト
フェイスブックでシェア
ラインでシェア

ページ番号1011424  更新日 平成30年2月15日

印刷大きな文字で印刷

1 はじめに

 本日、ここに第12回県議会定例会が開会されるに当たり、今後の県政運営について、私の所信の一端を申し上げます。

 冒頭、今月6日に台湾東部で発生した地震により、貴い命を落とされた方々の御冥福をお祈りします。また、被害を受けられた皆様に心からお見舞い申し上げます。

 2011年3月11日、あの日から、間もなく7年になろうとしています。

 東日本大震災津波で犠牲になられた方々に対し、謹んで哀悼の意を表し、いまだ、応急仮設住宅等で不自由な暮らしを余儀なくされている方々をはじめ、被害を受けられた皆様に衷心よりお見舞いを申し上げます。

 また、平成28年台風第10号により貴い命を落とされた方々に対し、謹んで哀悼の意を捧げ、被害を受けられた皆様に心からお見舞いを申し上げます。

 本年は、平成20年に発生した岩手・宮城内陸地震から10年、昭和23年のアイオン台風来襲から70年でもあります。これらの災害で犠牲になられた方々の御冥福をお祈りし、また、困難を乗り越えて復興を果たした先人たちの努力に倣い、復興と防災に取り組み、強靱な県土づくりを進めて参ります。

2 東日本大震災津波・平成28年台風第10号災害から復旧・復興

(第3期復興実施計画前半の成果と課題、今後の方向性) 

 私たち岩手県民は、東日本大震災津波の発災以降、復興計画を策定し、一丸となって、復興に取り組んできました。

 第1期復興実施計画における基盤復興の成果を土台とし、第2期においては、第1期を上回る予算規模で本格復興を進め、第3期は、被災者一人ひとりの復興を成し遂げるべく、より良い復興、「三陸復興・創造」に、全力で取り組んでいます。

 土地の区画整理や高台への集団移転など、復興まちづくり事業は約7割が完了し、災害公営住宅については約9割が完成、公立学校施設は約97%が完成し、医療機関の約9割、事業所の約8割が再開しました。

 商店街や商業機能の再生も本格化し、昨年は、陸前高田市の「アバッセたかた」や、大船渡市の「キャッセン大船渡」が開業しました。復興道路の整備は、かつてない速さで進められており、来年度には、東北横断自動車道釜石秋田線の全線開通と、三陸沿岸道路の仙台・釜石間の約9割の開通が見込まれています。

 また、当初の復興計画には盛り込まれていなかった事業へと復興が進んでいる分野もあります。

 昨年、釜石港で、大阪府から寄贈のガントリークレーンが供用を開始し、外貿コンテナ定期航路も開設されました。本年6月には、宮古・室蘭間のフェリー定期航路が開設され、2019年度には宮古港に大型外航クルーズ船が寄港します。

 一方、先月末で7,758人の方々が応急仮設住宅等での生活を余儀なくされています。一日も早い恒久的な住宅への移行と、復興の長期化によるこころと体のケアや、新たなコミュニティ形成への支援が必要です。

 また、漁業や商店街の再生、中小企業における事業再開後の販路回復や人材確保が課題です。人口減や復興需要縮小の地域経済への影響も懸念されています。さらに、県や被災市町村において、技術系を中心に、職員の確保が課題です。

 平成30年度も、第3期復興実施計画に基づき、「安全の確保」、「暮らしの再建」、「なりわいの再生」を着実に推進して参ります。

 また、将来にわたって持続可能な新しい三陸地域の創造を目指す「三陸創造プロジェクト」の取組として、復興道路やフェリー航路などの新たな交通ネットワークを活用した産業振興や交流促進を図ります。

 これらの取組を進めるに当たっては、応援職員の派遣要請など、職員確保に、引き続き努めます。

 また、これまで培われたつながりや絆を交流へと発展させ、多様な主体との連携や県民みんなの参画により、復興を進めます。

 被災者一人ひとりに寄り添った支援を行いながら、ビルド・バック・ベター、三陸のより良い復興の実現に全力で取り組んで参ります。

(平成28年台風第10号災害からの復旧・復興の成果と課題、今後の方向性)

 平成28年台風第10号は、本県において25名の貴い命を奪い、1名の方が今なお行方不明となっており、また、被害総額は1,428億円にのぼり、甚大な被害をもたらしました。

 県では、速やかな生活再建のため、国の制度の対象とならない被災世帯に対し、市町村と連携して県独自の支援金を支給し、なりわい再生のため、サケ・マスふ化場の再開を支援し、県独自の交付金で商工観光事業者の再建も支援、さらに、被災3市町に対する自由度の高い交付金を創設しました。

 昨年3月には、復興の象徴である龍泉洞が再開、10月には岩泉ヨーグルトの販売が再開と、復興の動きが進んでいます。

 また、急峻な地形のため、復旧まで2年程度を要するとされていた主要地方道釜石遠野線笛吹峠は、昨年12月に全面通行止め規制が解除され、本格的な冬を迎える前に片側交互通行に移行しました。

 一方、災害公営住宅の建設など、被災世帯の住宅再建本格化に対し、引き続き市町村と緊密に連携し、被災者一人ひとりに寄り添いながら、支援していくことが必要です。

 また、公共土木施設や情報通信基盤の早期復旧のため、財源や人員確保など施工体制の確保、被災企業の販路の維持・開拓等の課題に対応した取組を強化していきます。

 さらに、ハード・ソフト両面による新たな風水害防災対策、健康支援やこころのケアなど被災者の生活支援、そして、なりわいの再生を進めて参ります。

(記憶と教訓の伝承、復興の発信)

 昨年7月、本県で初めて、全国知事会議が開催され、復興を成し遂げ、災害の教訓を次世代に継承し、あらゆる災害に負けないことを誓う「岩手宣言」が採択されました。

 また、立教大学と岩手大学が、昨年4月に共同で開設した陸前高田グローバルキャンパスでは、「学びを通してつなぐ、つたえる、つくる」をコンセプトに様々な事業が展開され、復興を多くの方々に伝え、国内外の新たなつながりを生み出す拠点となっています。

 県においては、復興を進める地域の姿を発信し、風化を防ぎ、教訓を伝え、新しい三陸を創造する、広域的・総合的な防災復興行事の2019年開催に向け、今年度策定する基本計画に基づき、市町村、関係団体と一丸となって、オール岩手で準備を進めます。

 東日本大震災津波の被災県として、記憶と教訓の伝承、復興の発信については、日本国内のみならず、世界の防災力向上に貢献することができるよう努めて参ります。

3 いわて県民計画に基づくこれまでの取組

 平成19年、2007年の知事就任以来、岩手が直面する危機を希望に変えるべく、「いっしょに育む『希望郷いわて』」を基本目標とする、いわて県民計画を策定し、取組を進めて参りました。

 国民所得に対する県民所得水準のかい離はおよそ9割まで縮小し、雇用環境は正社員の有効求人倍率が上昇しています。

 人口の社会減は、知事就任当時6千人台で推移していたものが3千人台に縮小したものの、昨年実績では拡大に転じています。地域医療は人口10万人に対する病院勤務医師数は増加したものの、医師数全体では全国とのかい離が拡大しています。

 産業分野では、自動車や半導体関連産業を中心とした産業集積の促進に取り組んできました。

 東芝メモリ株式会社や株式会社デンソー岩手の新工場建設は、これまでの取組が実を結んだものであり、ものづくり産業の集積や高度化を一層進め、県内ものづくり企業全体の持続的発展につながるよう取り組んで参ります。

 海外市場への展開と外国人観光客の誘客拡大も、いわて県民計画の重要な施策であり、昨年には、「いわて国際戦略ビジョン」を策定し、農林水産物等のブランド化の推進、継続的・安定的な販路の確保・拡大、各市場のニーズに合わせたプロモーションの展開などに取り組んでいます。

 平成23年、2011年に平泉の文化遺産が世界遺産に登録され、平成27年、2015年には、橋野鉄鉱山が明治日本の産業革命遺産として本県2つ目の世界遺産に登録されるなど、本県の文化遺産は世界的に価値が認められ、観光資源としても重要な役割を担っています。

 いわて花巻空港は、平成21年、2009年に新ターミナルビルをオープンし、更に増改築を重ね、国際線の受入れ機能の強化や国際チャーター便の運航拡大に取り組み、今年度、台湾からのチャーター便は、過去最高の158便が運航される見込みとなっています。先月には、タイガーエア台湾との間で「国際定期路線の実現の連携に関する覚書」を締結し、本県初の国際定期便の就航に向けて大きく前進しました。

 さらに、海外展開を継続的、安定的にするため、ネットワークの強化に取り組んでいます。

 特に、平成22年、2010年の上海国際博覧会出展を契機とした中国雲南省との友好交流は、経済、観光、農林業、青少年交流など多様な分野に広がり、本年4月には岩手県雲南事務所を設置します。

 食の分野では、コメ産地の確立に向け、DNA解読装置「次世代シーケンサー」を用い、最先端の技術を駆使しながら約10年にわたって品種開発に取り組んできた結果、これまでの米の常識を打ち破る食味が特徴の「金色の風」や、「銀河のしずく」をデビューさせました。

 医療・福祉・教育の一体的支援のため、先月、県立療育センターと県立盛岡となん支援学校を開所、開校しました。岩手医科大学附属病院や関係機関と連携し、様々な障がいがある児童生徒一人ひとりに応じた総合的な支援体制を強化します。

 平成28年、2016年の希望郷いわて国体・希望郷いわて大会は、県民の底力と様々なつながりの力を結集し、大成功を収めました。そこから得られた自信、誇りは、岩手の貴重なレガシーです。

 2019年のラグビーワールドカップTM釜石開催は、そのレガシーを生かしながら、スポーツの力を更に復興につなげる絶好の機会です。既にフィジー対ウルグアイなど、2試合の開催が決定しており、万全の体制で大会を迎えられるよう、組織体制を拡充して、ラグビーワールドカップ2019推進室を設置し、県民や関係団体とスクラムを組んで、開催機運の醸成や受入態勢の整備を進めます。

 今、熱戦が繰り広げられている平昌オリンピック冬季競技大会には、スキージャンプの小林潤志郎選手と小林陵侑選手、スノーボードの岩渕麗楽選手、ノルディック複合の永井秀昭選手、来月開催される平昌パラリンピック冬季競技大会には、アルペンスキーの高橋幸平選手やクロスカントリーの阿部友里香選手など、本県ゆかりの選手が10人出場しており、県内も大いに盛り上がっています。

 さらに、復興五輪を理念に掲げる東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会に向けて、市町村や関係団体と連携し、ホストタウン登録や事前合宿誘致、聖火リレーの体制整備を進めます。

 また、県産食材の活用促進や選手村ビレッジプラザ建設における県産材利用を通じ、復興の姿や農林水産物の魅力を国内外に発信します。

4 ふるさと振興の強力な推進とILCの実現

(「岩手県ふるさと振興総合戦略」中間年の成果と今後の取組)

 平成27年、2015年度に「岩手県ふるさと振興総合戦略」を策定し、3つの柱を立て、ふるさと振興の取組を進めてきました。

 今年度は、その中間年です。

 「岩手で働く」では、やりがいがあり、安定して働くことができる雇用・労働環境の整備促進や、首都圏の移住相談窓口の拡充などによるU・Iターン対策の強化を図ってきました。

 施策推進目標である「人口の社会減ゼロ」については、平成28年実績は3,708人と3年ぶりに縮小に転じたものの、昨年は再び拡大しています。

 引き続き、「いわてで働こう推進協議会」を核とした、産学行政一体となった全県的な働き方改革推進運動や、昨年開催した「いわてとワタシゴト展」などの若者の県内就職、職場定着に向けた取組、県内企業の成長支援や産業人材の育成を進めて参ります。

 「岩手で育てる」では、昨年、県内3番目の、いきいき岩手結婚サポートセンター、「i-サポ奥州」をオープンするなど、結婚支援や子育てしながら働きやすい労働環境の整備に取り組んできました。

 i-サポの会員数や、「いわて子育てにやさしい企業等」の認証数は増加している一方、施策推進目標である「出生率の向上」については、平成28年の合計特殊出生率は1.45と、全国値は上回るものの、概ね横ばいの状況が続いています。

 引き続き、結婚支援の充実や出産環境の整備、地域や企業における子育て応援推進に取り組んで参ります。

 「岩手で暮らす」では、医療・福祉や文化、教育などの基盤強化を進めながら、地域の魅力向上を目指し、特に、若者・女性の活躍推進を強化してきました。

 施策推進目標である「国民所得に対する県民所得水準のかい離縮小」については、目標値93.4以上に対し、平成26年は94.7と向上しており、ふるさと振興総合戦略を踏まえ、更に取組を強化しています。

 若者の交流、ネットワークの構築を後押しするため、「いわて若者文化祭」や、「いわて若者会議」を開催し、昨年は「いわて若者カフェ」を開設しました。また、女性が持てる能力を一層発揮し、活躍できる環境にするため、「いわて女性の活躍促進連携会議」に5つの部会を設置し、さらに、県独自の「いわて女性活躍企業等認定制度」や「いわて働き方改革AWARD」を実施してきました。

 引き続き、若者の活躍に向けた取組の促進や、働く女性・働きたい女性への支援などに取り組んで参ります。

 今から44年前の昭和49年、旧松尾村の県民の森において、昭和天皇・香淳皇后の御臨席のもと、「自然と産業が調和する豊かな緑の創造」をテーマに開催した「全国植樹祭」は、岩手において豊かな森林環境が今日まで引き継がれてきた土台となりました。

 この豊かな森林環境を更に次の世代に引き継ぐために、県民理解の推進や、林業の持続的で健全な発展を図り、また、東日本大震災津波からの復興の姿を発信し、さらに、ふるさと振興を一層進める上での原動力にもなるよう、4年後の2022年、本県で2回目となる「全国植樹祭」を招致します。今後、関係団体と連携し、準備を進めて参ります。

 現在、全国的には東京圏の転入超過数が依然として約12万人に達する勢いであり、人口減少に歯止めをかけ、岩手への新しい人の流れを生み出すためには、国による東京一極集中の是正に向けた抜本的な対策が不可欠です。

 国に対し、東京一極集中の是正と、そのためにも地方重視の経済財政政策を実施するよう、全国知事会とも連携しながら、引き続き強く訴え、地方側の政策と合わせ、国と地方が一体となった取組を進めて参ります。

(ILCの実現)

 ILC・国際リニアコライダーを、世界的に安定した地質などの好条件を有する北上山地に実現することは、岩手の使命と言えるでしょう。

 ILCの実現を目指しながら、新産業の創出やグローバル人材の育成、多文化共生社会の推進など、世界に開かれた地方創生のあり方を発信していきたいと思います。

 世界の研究者の皆さんが日本政府の決定を期待しており、県としてもこれまで以上に関係機関や関係団体と一致団結しながら、ILC受入れに万全を期し、国に対する積極的な働きかけを行って参ります。

5 岩手の未来を支える行財政運営

 平成30年度当初予算は、第3期復興実施計画に基づく東日本大震災津波からの復興と平成28年台風第10号災害からの復旧・復興を最優先としながら、ふるさと振興総合戦略を強力に推進し、県民の明日への一歩と共に進む予算として編成しました。

 他方、中期財政見通しでは、公債費が大幅に低減する一方で、社会保障関係費の増加などにより、厳しい財政状況が続くことが見込まれています。あらゆる手法で歳入確保を図りながら、事業効果が高い施策への一層の選択と集中を進め、財政の健全化に努めて参ります。

 東日本大震災津波や平成28年台風第10号災害からの復旧・復興、様々な行政需要や新しい行政ニーズに対応していくため、専門的知識を有する人材の確保に引き続き取り組みながら、一層の効率化や重点化を図り、柔軟かつ適切に対応できる体制を構築して参ります。

 また、復興やふるさと振興の推進に当たっては、県民、企業、NPO、市町村など、地域社会を構成するあらゆる主体が、共に支え合い、連携・協働しながら、総力を結集して地域づくりを進めていくという地域経営の視点が不可欠です。

 県民の期待と信頼に応えられるよう職員の資質向上を図り、組織体制を整備しながら、県と多様な主体との連携・協働により、県民・行政が一体となって地域課題の解決に向けて取り組んで参ります。

 今後も厳しい財政状況が見込まれ、職員体制も限られた中ではありますが、引き続き、予算と人的資源を最大限に生かし、必要な施策を着実に推進して参ります。

6 平成30年度の主要施策の概要

以下、平成30年度の具体的な施策の内容について申し上げます。

(復興計画に基づく施策の推進)

 はじめに、東日本大震災津波からの復興の取組であります。

 まず、「安全の確保」として、数十年から百数十年に一度の頻度で起こり得る津波に対応するため、国による湾口防波堤の整備と併せ、防潮堤や水門等の津波防災施設の早期完成に向けた整備を進めます。また、水門・陸こうの自動閉鎖システムの整備を推進し、管理体制の構築を図ります。

 災害時における確実な緊急輸送や代替機能を確保し、水産業などの復興を支援するため、災害に強く信頼性の高い道路ネットワークの構築に向け、復興道路等の整備や緊急輸送道路における防災対策、橋梁の耐震化を進めます。

 また、来年3月の、三陸鉄道株式会社による久慈・盛間の一貫経営に向け、車両等の整備を支援し、沿岸市町村と連携しながら、三陸鉄道「リアス線」の活性化に取り組みます。

 市町村における面整備事業の進捗に併せ、宅地供給を2020年度までに完了し、また、早期の住宅整備に向けた住民等によるまちづくり活動を支援します。

 安全で安心なまちづくりに向け、釜石警察署の整備など、被災した警察施設の復旧を進めます。また、被災地支援隊による一人ひとりに寄り添った活動を継続し、治安情勢の変化や地域の実情に即した適切な治安対策を進めます。

 放射線の影響による各種課題の解決のため、農林業系副産物の処理加速化に向けた技術的支援や、農林産物の生産環境の回復、測定結果に基づく食品の安全性や空間線量率の状況に関する情報発信に、引き続き取り組みます。あわせて、原発事故による損害が十分賠償されるよう、市町村等と連携し、東京電力ホールディングス株式会社に対する交渉を継続して行います。

 また、災害に強いまちづくりを進めるため、防災拠点への再生可能エネルギー設備導入や、被災住宅の再建時における太陽光発電設備導入支援などにより、自立・分散型エネルギー供給体制の構築を図ります。

 復興を象徴し、失われた命への追悼・鎮魂、津波被害と教訓を、確実に次世代に伝承するため、ラグビーワールドカップ2019TM釜石開催までの開館を目指し、陸前高田市の高田松原津波復興祈念公園内に、国が整備する追悼・祈念施設と併せ、「仮称・震災津波伝承施設」の整備を進めます。

 さらに、平成28年台風第10号災害を踏まえ、洪水災害に対する安全度の向上を図ります。

 浸水被害が発生した河川の改修、河道内の堆積土砂の掘削や立ち木の伐採などを、関係市町村と連携しながら、緊急性や事業効果を踏まえ、集中的に実施します。また、水位周知河川や洪水浸水想定区域の指定、ホットラインやタイムラインの運用、水位監視カメラの設置などのソフト対策を進め、警戒・避難体制の充実強化を図ります。

 次に、「暮らしの再建」として、一日も早く安定した生活を取り戻すことができるよう、県と市町村が一体となって、内陸部も含め、2019年度の完了を目指し、安全で良質な災害公営住宅の整備を進めます。また、生活再建住宅支援事業等の補助制度により、持ち家再建・確保の支援を、引き続き進めます。

 恒久的な住宅への移行が速やかに図られるよう、「いわて内陸避難者支援センター」における支援や、「被災者相談支援センター」における生活設計相談への対応を強化します。さらに、再建先でのコミュニティ形成が円滑に進むよう、コーディネーターによる支援対象地域の内陸部への拡充や、被災者の「心の復興」に取り組む民間団体等への支援を実施します。

 県立高田病院が来月開院予定となり、被災した県立病院は全て再建されます。一人ひとりが安心して心豊かに暮らせる生活環境を実現するため、引き続き、地域の医療機関や社会福祉施設の再建、地域包括ケアシステムの構築を支援します。

 また、応急仮設住宅での生活の長期化や、災害公営住宅への転居による生活環境の変化を踏まえ、「岩手県こころのケアセンター」における相談対応や、生活支援相談員による見守り活動など、きめ細かなこころと体のケアに取り組みます。

 岩手の復興・発展を担う子どもたちを育成するため、「いわての復興教育」を進め、また、安全で安心な教育環境の確保・充実を図ります。

 被災した児童生徒等が経済的理由により進学を断念することがないよう、いわての学び希望基金奨学金の拡充や、通学費の負担軽減などにより、修学を支援します。さらに、多様化する被災児童のこころのケアや相談に対応するため、「いわてこどもケアセンター」による中長期的なサポートや、スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカーの配置を継続します。

 次に、「なりわいの再生」として、地域に根ざした水産業の再生を図るため、担い手の確保・育成、高度衛生品質管理体制の構築による水産物の高付加価値化や、漁港施設の耐震・耐津波の強化対策に取り組みます。

 原木しいたけの産地再生を図るため、引き続き、出荷制限解除に向けた取組を進めながら、意欲的な生産者の規模拡大に対する支援や、新規参入者の確保に取り組みます。

 また、首都圏でのフェア開催に加え、中京圏におけるプロモーション活動の展開などにより、安全・安心で品質に優れる県産食材の魅力を発信します。

 被災地域の経済を支える中小企業の本格的な再生・復興に向け、本設事業所への移転や、販路拡大による収益性の回復を支援します。

 特に、市町村のまちづくり計画の進捗に伴い、商店街や商業施設の整備が本格化していることから、仮設店舗から本設への円滑な移行の促進と持続的発展に向け、専門家の派遣などを通じた支援を行います。さらに、賑わいのあるまちづくりに向け、被災地における起業や新事業の展開など、新たなチャレンジを促進して参ります。

 また、事業再開後の経営安定を図るため、商工団体と連携し、経営・金融両面からのフォローアップ支援を継続します。さらに、新商品の開発や新分野への進出など、企業の意欲的な取組に対し、国や金融機関と連携した「いわて希望応援ファンド」により、支援して参ります。

 三陸地域の観光振興を図るため、「三陸DMOセンター」と連携し、観光人材の育成や、地域資源を生かした高付加価値旅行商品の開発を促進し、観光地域づくりを推進します。

 また、国内外からの観光客の誘客拡大につなげるため、本年6月に開催される「東北絆まつり2018盛岡」への支援に加え、三陸地域への誘客促進に向けた三陸復興・絆観光キャンペーンに取り組みます。さらに、三陸ジオパークと自然公園の一体的な活用による交流人口の拡大を図るため、国内外からの来訪者の受入態勢の強化に取り組みます。

 また、観光交流やにぎわいの再生に資するため、高田地区海岸の砂浜再生に取り組んで参ります。

 これらの取組に当たっては、東北電力株式会社と連携し、県内企業等を対象とした割安な価格での電力供給と、復興とふるさと振興関連施策への財政支援を一体的に行う「いわて復興パワー」の仕組みを十分に活用いたします。

(いわて県民計画に基づく7つの政策の推進)

 次に、いわて県民計画に基づく取組について、申し上げます。

 まず、第1には、「『産業創造県いわて』の実現」であります。

 自動車関連については、世界的なコンパクト車の生産拠点を目指し、基盤技術を持つ企業の集積拡大、地場企業の競争力強化を支援します。また、製造・技術部門に加え、物流などの関連部門や本社機能も視野に入れた関連企業の誘致促進、半導体関連産業の新設・増設事案の円滑な推進に取り組みます。

 さらに、ものづくり産業における国際競争力の向上に向け、IoTなどの第4次産業革命技術の導入を促進し、また、異業種間連携を支援し、岩手発の新製品、新サービス、新産業の創出につなげて参ります。

 産業人材の確保・育成・定着のため、関係機関が連携し、高校生・大学生を対象としたインターンシップの実施やU・Iターンの促進、奨学金の返還支援などに取り組みます。また、先端技術を身近な生活や生産に生かすメイカームーブメントを推進します。

 科学技術によるイノベーションを創出するため、地域資源を活用した新たな価値の創造や次代の科学技術を担う人材育成に取り組みます。また、釜石市沖の海洋再生可能エネルギー実証フィールドの利活用促進や海洋エネルギー関連産業の創出、洋野町沖合の洋上ウインドファームの事業化を推進します。

 商品開発や販路拡大の取組への支援を通じ、地場産業の振興を図ります。特に、生産量日本一を誇る漆の生産拡大や関連産業の振興を図るため、全県的な推進体制の強化や国内外への漆文化の発信に取り組みます。

 日仏友好160周年を記念して、本年7月から来年2月にかけ、パリを中心に、大規模な日本文化紹介行事「ジャポニスム2018」が開催されます。

 これまでの欧州との交流を更に促進するため、各種企画に参加し、コルマール国際旅行博覧会やミラノ国際博覧会への出展実績を生かした県産品の販路拡大や、岩手の多様な文化を生かした人的・文化的交流の拡大に向け、いわての魅力をまるごと世界に発信して参ります。

 第2には、「『食と緑の創造県いわて』の実現」であります。

 地域の農林水産業の中核となる担い手を育成するため、経営の高度化や生産の効率化、生産基盤の整備による経営体質の強化を図ります。特に、次代を担う人材を養成するため、昨年開講した「いわて林業アカデミー」に続き、漁業の基礎知識やICT等の先端技術を駆使した高度な経営手法の習得を支援する機関となる、「仮称・いわて水産アカデミー」の開設準備を進めます。

 また、農林水産業における女性の活躍促進を図るため、女性の感性を生かした新ビジネスモデルの創出や、多様な交流機会の提供によるネットワークづくりを推進します。

 米政策が見直される平成30年産以降、水田を最大限に活用し、体質の強い水田農業を確立することが不可欠です。主食用米等の需要に応じた生産を推進しながら、新たに、高収益な土地利用型野菜を水田へ導入するため、必要な機械・施設の整備を支援し、野菜産地の創造に取り組みます。

 また、消費者から信頼される食料・木材供給基地の確立に向け、超省力で高品質生産を実現するスマート農林水産業や、農業者自らの経営改善にもつながる農畜産物のGAPの取組を支援します。

 食を起点とした地域経済の活性化を図るため、生産者と商工業者の連携による、発信力のある商品開発に対する支援や、健康の維持・増進に着目した、機能性成分の活用による県産農林水産物の高付加価値化を推進します。

 また、国際定期便の就航実現と連動したプロモーション活動の展開や、本県畜産振興の中核拠点である株式会社岩手畜産流通センターに対する国際的な衛生管理基準に対応した食肉処理施設整備の支援など、戦略的な海外市場の販路開拓に取り組みます。

 さらに、優れた農林水産物を育む活力ある農山漁村の創造に向け、地域資源を活用した農山漁村ビジネスの振興や交流人口の拡大を図って参ります。

 第3には、「『共に生きるいわて』の実現」であります。

 誰もが社会の中でつながり、支え合う、ソーシャル・インクルージョンの観点に立ち、取組を推進して参ります。

 医療を担う人材の確保・定着のため、奨学金による医師の養成と適切な配置調整による偏在の解消、看護職員の県内定着や復職支援に取り組みます。

 また、地域医療構想を踏まえ、医療機関の機能分化と連携体制の構築を進め、岩手医科大学附属病院における高度救命救急医療等拠点の整備を支援するなど、質の高い医療サービスの提供に取り組みます。

 今年度に策定する次期岩手県保健医療計画に基づき、周産期母子医療センターの機能強化による総合的な周産期医療体制の充実や、ドクターヘリの安全かつ円滑な運航による救急医療体制の確保、DMAT等の災害医療人材の育成による災害時医療提供体制の強化を行います。

 さらに、全国高位の生活習慣病による死亡率を改善するため、働き盛り世代を対象に、生活活動量の増加や食生活の改善など、健康増進の取組を新たに展開し、また、「岩手県脳卒中予防県民会議」を中心に、県民一体となって、健康寿命の延伸に向けた取組を進めます。

 国民健康保険の財政運営が市町村から県に移行されることに伴い、保険税負担が増加する市町村に対して、激変緩和措置を講じるなど、制度の円滑な実施を図ります。

 安心して子どもを生み育てられる環境の整備に向け、結婚、妊娠・出産、子育ての各段階を切れ目なく支援します。結婚サポートセンターを中心とした結婚支援や、妊娠・出産を望む方々の願いに応える特定不妊治療費助成の実施、保育人材の確保や就労形態の多様化に対応した各種保育サービスの充実に取り組みます。

 子どもたちが、生まれ育った環境に左右されることなく将来に希望を持てるよう、教育・生活支援などによる子どもの貧困対策に資するため、「子どもの生活実態調査」を実施し、また、子どもの支援に取り組む団体のネットワーク化を進めます。

 障がい児が、乳幼児期から青年期まで一貫した支援を受けることができるよう、関係機関の連携による地域療育ネットワーク機能の充実を支援し、さらに、障がい特性に応じた支援が行えるよう、老朽化した、みたけ学園・みたけの園の改築整備を進めます。

 高齢者が地域で安心して暮らすことができるよう、介護サービス提供体制の充実を図り、また、障がいのある方が安心して生活できるよう、グループホーム等の住まいの確保や、農福連携の取組などによる就労の場の拡大を図ります。

 自殺死亡率の低下に向け、相談支援体制の整備や人材養成、普及啓発を総合的に推進し、官民一体となって自殺対策に取り組みます。

 第4には、「『安心して、心豊かに暮らせるいわて』の実現」であります。

 東日本大震災津波や平成28年台風第10号災害を経験した私たちの責務として、同じ悲しみを繰り返さないという決意のもと、大規模自然災害が発生しても、「致命的な被害を負わない強さ」と「速やかに回復するしなやかさ」を持った安全・安心な地域社会の構築に向け、「岩手県国土強靱化地域計画」に基づく施策を進め、岩手の強靱化を推進します。

 自助、共助、公助それぞれの災害対応能力の向上を目指し、関係機関・地域が連携・協力して、地域防災力の強化を図ります。

 安全で安心な県民生活を実現するため、県民・事業者・行政の連携による犯罪防止や犯罪が起きにくい環境づくりに取り組みます。また、悪質巧妙化する特殊詐欺への抵抗力の向上や、少年を加害者にも被害者にもさせない地域社会の構築、子どもや高齢者をはじめとした交通弱者を守る交通事故防止対策に取り組みます。

 さらに、消費者被害を未然に防止するため、市町村の消費生活相談体制に対する支援や消費者教育など、消費者行政の充実に引き続き取り組みます。

 多様な主体の連携・協働により、地域課題の解決に取り組むため、担い手の中心となるNPO等の人材育成や運営基盤の強化に取り組みます。また、地域コミュニティの再生・活性化に向け、「元気なコミュニティ特選団体」の認定・紹介や、地域おこし協力隊のネットワーク構築を行います。

 さらに、本県への移住希望者を増やすため、全県的な推進体制により、東日本大震災津波を契機につながりを持った若者や本県出身者などに対する、きめ細かな移住・定住施策を展開します。

 男女が共に尊重し合い、個性と能力を発揮できる地域社会の形成に向け、男女共同参画の意識啓発や女性に対する暴力の根絶、性犯罪・性暴力被害者ワンストップ支援体制の維持強化に向けた取組を進めます。

 第5には、「『人材・文化芸術の宝庫いわて』の実現」であります。

 岩手の未来を担う人材の育成に向け、「岩手県総合教育会議」を活用し、教育委員会との連携を深め、地域における教育の課題やあるべき姿を共有しながら、教育を振興します。

 私立学校の安定的な教育環境の確保を図り、特色ある教育活動を引き続き支援し、また、私立高校等の生徒が安心して修学できるよう、新たに、就学支援金の国の交付額を超えた授業料の負担軽減を行います。

 さらに、児童生徒の学ぶ環境の充実のため、老朽化した学校施設の改築や県立釜石祥雲支援学校の移転、新たな特別支援学校の整備を行います。

 国際的視野で、世界と岩手をつなぎ、地域における国際化に貢献する人材の育成のため、学校教育における外国語教育の充実や、コミュニケーション能力の向上を図る「イーハトーブ・グローカル・キャンプ」を開催します。

 若者の地元定着に向け、高等教育機関や市町村、関係団体と連携し、地域における大学の振興に関する国の新たな動きにも対応しながら、「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業」CОCプラスの取組を進めます。また、沿岸地域における産学行政の連携を推進し、水産業を中心とした高度専門人材を育成し、産業基盤を強化するため、その拠点となる岩手大学釜石キャンパスの整備を支援します。

 県民の心を豊かにする、岩手の魅力を生かした文化芸術の振興を進めます。本県最大の文化芸術イベントである「岩手芸術祭」を一層充実させ、全県的な盛り上げを図ります。

 また、沼田真佑さんと若竹千佐子さんが連続して芥川賞を受賞するなど、近年、本県の才能豊かな人材が全国を舞台に活躍しています。本県ゆかりの作家による講演会の開催など、県民の文化芸術活動の活性化に取り組みます。

 本年は明治元年から起算して150年の節目の年でもあります。本県には、日本の近代化に尽力した先人たちや、世界遺産の橋野鉄鉱山、日本の20世紀遺産20選に選ばれた小岩井農場など、明治と関係の深い資産が数多くあることから、これらの価値を発信します。

 また、一戸町の御所野遺跡を含む北海道・北東北の縄文遺跡群の世界遺産登録、平泉の文化遺産の拡張登録に取り組みます。

 さらに、いわてマンガプロジェクトにより、マンガを通じて国内外へ本県の魅力を発信します。

 「仮称・岩手県スポーツ推進計画」を策定し、スポーツ振興施策を総合的かつ計画的に推進します。希望郷いわて国体・希望郷いわて大会で高められた本県選手の競技力の維持・向上を図り、オリンピックやパラリンピックなど、世界のひのき舞台で活躍するトップアスリートの育成に取り組みます。

 また、昨年10月に設立した「いわてスポーツコミッション」を中心に、本県の多様なスポーツ資源を生かし、スポーツイベントの誘致に取り組みます。さらに、国内最高水準の県営スポーツクライミング施設を生かし、国内初の複合種目の全国大会として、本年6月に開催される「スポーツクライミング第1回コンバインドジャパンカップ2018」が成功するよう取り組みます。

 第6には、「『環境王国いわて』の実現」であります。

 低炭素社会の実現に向け、「温暖化防止いわて県民会議」を中核とした、温室効果ガス排出削減に対する全県的な取組を推進します。

 また、再生可能エネルギーによる電力自給率の倍増を目指し、一戸町の高森高原風力発電所の本格稼働や盛岡市の簗川発電所の建設、再生可能エネルギー関連産業への参入に向けた取組を進めます。さらに、災害時のエネルギー確保策や熱需要への対応として期待される水素の利活用構想の策定を進めます。

 自然公園を核とした環境資源の魅力発信・利活用による、環境保全意識の高揚と併せた地域振興の促進を図りながら、人と様々な動植物が共存する持続可能な社会に向けた取組を進めて参ります。

 第7には、「『いわてを支える基盤』の実現」であります。

 平成28年台風第10号や昨年の台風第21号など、本県は近年、頻繁に集中豪雨災害に襲われており、県民の生活を守るためには、治水対策、土砂災害対策が不可欠です。整備効果が早期に発現されるよう、河川や砂防堰堤等のハード整備を進め、あわせて、住民の円滑かつ迅速な避難を促すソフト施策を推進します。

 また、物流の効率化や地域間交流の促進、観光客の利便性向上に資する道路の整備や港湾の利活用を推進します。

 公共交通の活性化に向けた施策を総合的に企画・推進するため、本年4月、交通政策室を設置し、効率的で利便性の高い持続可能な公共交通ネットワークの再構築や、いわて花巻空港の国内路線の維持・拡充、国際定期便の早期実現に向けた受入態勢の強化に取り組みます。

 県民サービスの向上や業務効率化、地域課題の解決に向け、IoTやAIなど、新たな技術革新の動向も踏まえ、「仮称・ICT利活用推進計画」を策定し、県全体としてICT利活用を推進します。

 社会資本の老朽化への対応は全国共通の課題です。「岩手県公共施設等総合管理計画」に基づく個別施設計画の策定を進め、計画的に、予防保全型の維持管理に取り組みます。また、空き家を有効活用した公民連携によるリノベーションまちづくりを促進します。

 さらに、建設業の担い手を育成するため、「けんせつ小町ネットワーク」の充実・強化などにより、女性も若者も働きやすい職場環境の整備を進めます。

 いわて県民計画の7つの政策に加え、各広域振興圏において地域の創意が発揮された取組を進めます。特に、県北圏域においては、多彩な食や伝統の漆、基幹産業であるアパレルの振興や、御所野遺跡などの地域資源を活用した体験・交流型観光を推進し、若者の定着や交流人口の拡大につなげて参ります。

7 むすび

 本県では、東日本大震災津波からの復興に当たり、被災者一人ひとりの「幸福追求権の保障」を基本方針としてきました。

 県政全般においても、県民一人ひとりの幸福を追求する権利を保障するということが重要であると考えます。

 昨年7月の全国知事会議「岩手宣言」では、復興の「興」(おこす)の字を幸福の「幸」(さいわい)とした「復幸」という言葉で、一人ひとりの住民が幸福を実感できる真の「復幸」を成し遂げると宣言されました。

 この「復幸」という言葉は、そもそも、復興の現場で生まれたものです。

 平成23年、2011年に、大槌北小学校の校庭にオープンした仮設商店街「福幸きらり商店街」や、全国青年市長会により設置された「陸前高田市復幸応援センター」が、フッコウのコウに幸(さいわい)の字を用いた実例です。

 このようなことも踏まえ、県では、有識者で構成する「岩手の幸福に関する指標研究会」を設置し、経済的要素に加え、岩手の風土や文化、暮らし、また、地域や人のつながりにも着目した施策の展開に向けて、幸福に関する指標の検討を進めてきました。

 昨年11月、「岩手県総合計画審議会」に対し、次の10年の岩手県政の道しるべとなる次期総合計画の基本的方向について「諮問」を行いました。

 今後、幸福指標研究会最終報告書も参考に、計画策定に向けた議論を本格化させて参ります。

 岩手の先人、宮沢賢治は、「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない」という言葉を残しました。

 こうした言葉が生まれる岩手の地であれば、幸福をキーワードに、人や社会のあり方を深く考え、「県民の、県民による、県民のための計画」として、必ずや誇れる総合計画を作り上げることができると信じます。

 ここにおられる議員の皆様並びに県民の皆様の深い御理解と更なる御協力を心からお願い申し上げ、私の所信表明といたします。

添付ファイル

平成30年2月県議会定例会知事演述全文

PDFファイルをご覧いただくには、「Adobe(R) Reader(R)」が必要です。お持ちでない方はアドビシステムズ社のサイト(新しいウィンドウ)からダウンロード(無料)してください。

このページに関するお問い合わせ

政策企画部 政策企画課 政策担当
〒020-8570 岩手県盛岡市内丸10-1
電話番号:019-629-5509 ファクス番号:019-629-6229
お問い合わせは専用フォームをご利用ください。