岩手フロンティア産業人座談会(平成19年12月27日)

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ページ番号1000953  更新日 平成31年2月20日

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対象地域:県央広域振興圏
開催場所:盛岡市

県政懇談会「岩手フロンティア産業人座談会」懇談記録(県央広域振興圏)

  • 日時 平成19年12月27日(木曜日)10時30分から11時50分
  • 場所 盛岡地区合同庁舎 8階 大会議室

開会

宮舘局長
皆さん、おはようございます。ただいまから県政懇談会「岩手フロンティア産業人座談会」を開催させていただきます。
本日は、年末でお忙しいところ、お集まりいただきまして大変ありがとうございます。私は、本日の進行役を務めさせていただきます盛岡地方振興局の宮舘と申します。どうぞよろしくお願い申し上げます。

知事あいさつ

宮舘局長
それでは、開会に当たりまして達増知事からごあいさつを申し上げます。

達増知事
皆様、おはようございます。日ごろより岩手県政、大変いろいろお世話になっておりますけれども、今日のこの県政懇談会「岩手フロンティア産業人座談会」といいますのは、一種の作戦会議でございまして、今年は岩手が直面する課題をみんなで確認する年だったと思います。知事選挙、県議会議員選挙初め統一地方選挙があり、また参議院議員選挙、国政選挙もありまして、今我々の暮らしや仕事がどういう課題に直面しているのか、どうやって課題を克服していけばいいのか、そういう国で言えば国民的な議論、県で言えば県民的な議論、そしてその結果、いろいろ選挙の結果が出たという1年であったと思います。そういう中、岩手としてはやはり経済の低迷、雇用の低迷、人口の流出、そして医師不足問題など、医療体制の問題、そうしたことが緊急の課題であるということが共有されてきたと思いますし、またそういう課題を克服していくために、みんなで力を合わせて頑張ろうという思いも共有されてきたのかなと思っておりまして、来年はいよいよ年明けから個々の課題にそれぞれ取り組みながら、岩手全体を良くしていく、県民の暮らしや仕事の現場を着実に良くしていくということを着実に進めていく1年というふうになるのかなと思っております。そのための一種の作戦会議でございまして、今日は皆様のそれぞれ暮らしというより主として仕事の現場でございますけれども、そうしたところで感じていること、また岩手としてこういうことを進めたほうがいいのではないかというふうに思われていること、そうしたことをどんどん提言していただきたいと思っております。
また、フロンティアという言葉、県政懇談会の題に使っておりますけれども、これは県央広域振興圏というエリアを1つのフロンティアと位置づけているからでありまして、県、市町村、それぞれ今までもやってきたし、これからもやっていくわけでありますが、県でも市町村でもない広域というエリアを1つのビジネスチャンスのフロンティアとしていろんなことをやっていけるのではないかという思いから、こういうタイトルにもしてございますので、広域振興という観点からの意見もいただければ幸いと考えておりますので、よろしくお願いいたします。

宮舘局長
それでは、本日ご出席の皆様をご紹介いたします。
株式会社イーアールアイの代表取締役であります水野節郎様です。
そのお隣が八幡平市からおいでいただきました株式会社ニュートンの代表取締役の田面木哲也様です。
そして、紫波町からおいでいただきました有限株式会社月の輪酒造店の常務取締役、そしてまた杜氏でもあります横沢裕子様です。
それから、株式会社ホテルロイヤル盛岡代表取締役社長の村上振一朗様です。
それから、岩手町でいきいき農場を経営しておられます代表の三浦正美様です。
そして、葛巻からおいでいただきました葛巻林業株式会社代表取締役社長の遠藤保仁様です。
今日はこの6人の方々と知事と懇談をしていただきます。

懇談

宮舘局長
それでは、懇談に入らせていただきますけれども、本日の懇談は、ただいま県で策定をしております新しい地域経営の計画の県央広域振興圏の地域編をもとにいたしまして、この振興策などを私のほうから説明を申し上げまして、その後皆様からこれらを中心といたしまして幅広くご意見をお伺いしていきたいと思います。
それでは、お手元にA3の資料があると思いますので、これをごらんいただきたいと思います。新しい地域経営の計画案の概要というものでございます。この表のほうの左側の方にこれまで県がいろいろな取り組みをしてきたこととその成果、そしてまた最近の社会経済情勢の変化について簡単にまとめてございます。
岩手県は、立ち遅れておりました社会資本の整備に努めてまいりました。そして、これを活用して県民生活の質的な向上とか、あるいは地域産業の振興に向けたさまざまなソフト施策を展開してまいりました。その結果、北上川流域を中心として自動車産業が集積してきているとか、あるいは結いの精神を生かした福祉の取り組み、それから岩手型ペレットストーブなど、地域資源を活用した新しい取り組みが普及してきているということでございます。
しかし一方、本県を取り巻く社会経済情勢がさまざま変化してきてございまして、グローバル化の進展とか、あるいは人口が減ってきている。それから、高齢化が進んでいる。そしてまた、地域コミュニティーが変わってきているということ、そしてまた全国的にも分権改革が進んできていると、こういった流れがございます。
そういう中で、本県の現状と今後の課題というところですけれども、本県の現状を見ますと県民所得が落ち込んできているということがございます。平成12年には260万台でございましたけれども、これが17年度は240万を切っておりまして、年間で1人当たり20万円台の経済的な損失が出ているということでございます。それから、雇用情勢を見ますと、有効求人倍率が直近では岩手県は0.75倍ということで、全国は1を上回っておりますので、全国との雇用の格差も出てきているということであります。また、人口が流出してきております。最近では社会減、外に出ていく人と入ってくる人との差が6,000人ぐらいになってきておりまして、これはやっぱり大変大きな課題であるというふうに考えております。それから、医師の問題、医療資源の偏在の問題、あるいは財政状況が県市町村ともに逼迫してきているというふうな現状がございます。
今後の課題といたしまして、分権が進んでいく中で地域の自立を実現していくためには、特に今日お集まりの皆様にもいろいろ関わってくることでございますけれども、力強い産業経済基盤の構築、産業振興が大変重要でございます。それとあわせまして、安全、安心な暮らしを支えるセーフティーネットの充実、あるいは県北、沿岸圏域、県内の地域間格差の解消、こういったものが大きな課題になってきているわけでございます。
右の方にまいりまして、地域経営というふうな言葉をいたしておりますけれども、今まで行政が中心となってさまざまな施策を展開してきているわけでございますが、今後におきましては行政だけでなくて県民全体、そして企業、NPO、県内のさまざまな方々の力を結集いたしまして、地域の資源を有効に活用しながら地域の価値を高めていくと、こういった取り組みが必要になってまいります。そして、県民一人一人が確かな希望を抱く県土づくり、こういったものを目標として努めていく必要があるというふうに考えておりまして、先ほどの課題の裏返しでございますけれども、県民所得の向上とか、雇用環境の改善、人口流出の歯止め、地域医療の確保、こういったことに取り組んでいく必要があるというふうに考えております。
特に危機を希望に変えるために今2つの大きな戦略を掲げております。1つは、新地域主義戦略というものでございまして、4つの広域振興圏、それは地域編の下のところに書いてある県央、県北、県南、沿岸、この4つの広域振興圏でございますけれども、これを明確な顔を持った圏域として取り組んでまいりたいと。そしてまた、地域コミュニティーの機能についても充実強化をしてまいりたいというふうに考えております。それから、もう一つは、岩手ソフトパワー戦略というものでございます。岩手の非常に優れた文化や伝承、そういったものを積極的に県内外に発信していくと。そしてまた、定着させていくことによりまして、岩手の文化的な魅力、それから論理的信頼を高めていくという取り組みが必要でございます。具体的な取り組みにつきましては、政策編、地域編、改革編というふうに分けて書いてございます。ごらんいただきたいと思います。
そして、特に地域編の県央というところが盛岡地方振興局が所管している地域でございますけれども、この取り組みにつきまして裏のほうに詳しく書いてございますので、そちらをごらんいただきたいと思います。裏に県央広域振興圏の目指す将来像といたしまして、盛岡を中心といたしました都市と、それから周辺の農山村が広域的に連携し合いながら、北東北の拠点としての機能を担う地域にしていきたいというふうに考えておりまして、この圏域は学術研究機能とか高次の都市機能、さまざまな県央としての県のまさに中心部としての機能が集約されております。そういったものを生かしながら、自然景観、あるいは観光、農業、林業、こういったものにもしっかり取り組んでまいりたいなというふうに考えております。将来展望といたしましては、北東北の拠点圏域にふさわしい職、住、遊、学近接の魅力ある圏域にしていきたい。そして、特に産業面では観光、それから人、物、情報の交流拠点、こういったものを役割として十分意識しながら取り組んでまいりたいというふうに考えております。
右の方にまいりまして、今日お集まりの皆様に関わるところでございますけれども、大きく地域の自立を支える地域経済基盤の確立ということで書いておりますけれども、IT産業とか、物づくり産業、これらを推進するとともに、農林業についても十分振興してまいりたい。また、地域資源を生かした地場の産業の振興も図っていきたいというふうに考えているところでございます。重点施策としていろいろと掲げておりますし、またもう一つの大きな柱といたしまして、快適で安全、安心な地域社会の形成ということで、保健、医療、福祉、そしてまた循環型地域社会の創造、こういったものについても取り組んでまいりたいというふうに考えておりますので、どうぞ皆さんよろしくお願いいたしたいと思います。今日は忌憚のないご意見をどうぞよろしくお願いします。
それでは、これから知事を中心といたしまして、皆さんからの自由な意見交換をお願いしたいと思います。進行は知事にお願いいたします。

達増知事
それでは、水野さんから順番に、自己紹介を兼ねながら岩手について、あるいは盛岡広域、県央広域振興圏のあり方について思うことなどもお願いをしたいと思います。

水野節郎
自己紹介を、社名は先ほど紹介あったように、我々は何をやっているかというと、開発会社でございまして、5年目で、今30名ちょっとの社員です。大手のセットメーカーからDVDドライブとか、プリンターの関係のハードウエアという回路設計と、そこに入っている組み込みソフトの開発をしている会社でございます。私自身の紹介をしますと、私、県南の住田町出身であります。生まれがですね。大学を卒業して、横浜に就職しましたけれども、縁あって、家内が盛岡の出身でして、89年に戻ってきましてアルプス電気に入りまして、2002年に工場撤退がありましたので、それを機にやめまして、会社をつくりました。元アルプス社員が11名います。そんなことをやっている会社でございます。
県政に対しての意見というところでいうと、このご案内があって少し、日ごろあまり考えていないというのが正直なところでございまして、ただ自分で会社をつくったのは、アルプス電気も企業誘致の一つの会社でございまして、中央資本というのですか、その会社が事情があればやはり地域から撤退していくというのを見ていたわけで、その中である意味では少しですけれども、仕事と人は少し残ったかなという気はします。我々はこの地で創業しましたが、県政の中で企業誘致が本当に、1つの手段ではあるのですが、永続的に続くものではないということです。そういう意味では、県内企業なり、北東北の企業なりを県としては育てていくことが必要であるというふうに思います。そのために何をしなければいけないかということになるかと思うのですが、企業側からすると、いずれにしても人を残す施策が必要と思うのですが、大学が5大学ぐらいありますけれども、県立大ができて、情報、そういう形の学科がありますけれども、なかなか小さい企業には入ってくれなかったり、県の優秀な次の担い手たちが、人が残らないと県全体、北東北含めて、いずれ発展性とか成長性がなくなるということだと思います。ですから、私の思いとしては、今企業を始めたばかりですけれども、やはり地元の担い手たちがそこに入りたいという企業にしなければというのは思っています。どこまでできるかわかりませんけれども、そのためにはやはり若い人たちが成長できる仕事ができるような環境づくりとか、我々ものづくりなので、ものづくり達成感とか、そういうところができるように努力はしているのですが、そういうところに例えば優遇措置として税制とか、そういうことを少しは考慮する必要があるかもしれません。ただ、いずれそこに甘んじていないで国内、世界に通じるような企業にするためには、やはり切磋琢磨する環境がないと強い企業にはなれないし、強い基盤の地域性を活かすのが良いと思っています。
私が感じていることは、89年に地元に戻ってきて、岩手のいいところがあるのではないかなと思います。例えば広いということはいろんな意味で逆転かもしれませんけれども、そこを、広いという意味を強みに生かすというのは土地があるということですね。これを使えるような、例えば大きなものづくりというもの、小さなものづくりではなくても大きなものづくりもできるだろうし、広いということでいろいろできるようなもの、そのことを活かす。あと感じることは、ものづくりで加工する企業さんが結構ありますので、そういうところをうまく連携というか、コラボレーションというか、うまくスキームをつくって、いろんな要素で、農業にしろ、食品から加工するという中で、いろんな機械加工なり、材料加工できる会社がありますので、そういうところとうまく結びつけて、岩手ライクなものづくりができるといいなと思います。
あとは、ITという産業に対して私の思いなのですが、ITはインフォメーション・テクノロジーという略称だったのですけれども、今はITという我々の言うソフト技術者というのは、非常にこれから余っていくだろうと。皆さんご存じのように、インドとか、中国の技術者とか、そういうところが使われていくのではないかと言われる中で、今不足しているのはETという、エンベデッドという、組み込み技術者といいますか、エンベデッド・テクノロジー、こういうところが不足すると言われていますし、組み込み機器というのがナビゲーションとか、いろんな機器を組み込み機器と言いますけれども、その中で非常にいいところは、今組み込み研究会というのが県の中でも、県庁のものづくり課が推進したり、その中で非常にいい関係で進んでいる。
それとあと、東北組み込みクラスターというのに今年から参加していますけれども、山形県、宮城県、岩手県ですけれども、岩手県が一番後に踏み込んだわけですが、県庁の方を含めて盛岡地域の方、もしくはあと一関の辺りも入って、組み込み関係の連携をしていこうという動きがあり、企業紹介とか、セットメーカーの紹介とかありまして、いずれ仕事をこちらで持ってくるという活動が、自動車産業中心ですけれども、開発の仕事が少しずつではあるけれども、来そうな感じがしています。ただ、私自身は、県庁の方からお話があったのは、愛知に派遣してくれないかという話がありまして、その後、トヨタの子会社に行ってきましたけれども、私どもは派遣しませんという話をしてきました。仕事をくださいと、虫のいい話なのですけれども。いずれにしても、地域で育って、地域の強みを持って、安心してこちらで暮らしながらいい仕事をさせるということに私は徹したいなと思っています。いずれものはどこかでつくるということもあるかもしれませんけれども、岩手発のものづくりをしたいなと思っていますので、そんなところで、ちょっとまとまりない話になりましたけれども、お話しさせていただきます。
以上です。

達増知事
では、田面木さん、お願いします。

田面木哲也
ニュートンの田面木です。お手元にありますけれども、これに沿ってお話しします。実は、私も今から30年前にUターン組というか、関東で仕事をしてきて戻ってきたのです。何か仕事をしたいなと思って、30年前ですから仕事は当然ないから自分でつくった工場で、今会社はプラスチック部品をやっていまして、場所は八幡平市、昔の西根町にあります。現在、工場は日本は八幡平市、海外は深セン、あとはフィリピンに200人、それから上海に200人。なぜ海外に工場をつくったかというと、日本で物をつくっているだけでは人は育たないだろうと、海外を見ることによって岩手の人が育つのではないかと思って会社を海外につくりました。そのとおりになっているかどうかちょっと疑問ですけれども。つくっている品物は、OA機器、プリンターとか、それから自動車部品と、その他いろいろやって30年たちまして、30年のうちに松下通信さんは帰ってしまうし、アルプスさんは帰ってしまうし、アイワさんは帰ってしまうし、誘致企業、それでいいのかなということは感じています。それから、別の企業も閉鎖するし、そのはやめてしまうし。
岩手のことをどうするかというと、要するに自分の子供、孫、ひ孫の時代をどうするかということをきちんととらえなければならないのかなと。それを話してしまうと長くなりますので後にして、以上で自己紹介と会社の概要です。

達増知事
横沢さん、お願いします。

横沢裕子
紫波町の有限会社月の輪酒造店の横沢です。私どもは、社名のとおり酒をつくるということを仕事としてやっております。会社にしましたのは3年前になりますでしょうか、そのぐらいなのですが、それまでは個人商店としてやっておりました。今どこの会社も社長は社長であって、仕事は社員がするものというのがほとんどです。酒屋も、酒屋の社長というのは酒はつくらずにでんと座って杜氏さんが酒をつくる。そうやって代々続いてきたというところがほとんどなのですが、私どもは創業者は違いますけれども、2代目からは自分で酒をつくって残してきたという会社、蔵です。やはり蔵の味を守り伝えていくのは当主であるという考えで、現在は私が父親の後をやって、杜氏として酒をつくっております。会社としましては、伝統の継承、それから技術の発展ということで、代々続いてきた技術を受け継いでいくこと、それと新しいことに何か挑戦をして、その伝統をまた新しく引き継いでいくということを社員全員と一緒になってやっております。
酒づくりだけではなくて、現在は酒かすから焼酎をつくるということもやっておりますし、自社の農園、リンゴ園があるのですけれども、それを使ったリキュール等も考えております。
酒屋全体としての悩みではありますけれども、やはり地酒屋として地元の米を多くいいものを使いたいということでやっておりますけれども、なかなかいい米が入ってこないというのが現在の悩みではあります。他県と比べますと、非常にレベルが高いとは言えないような米が多い。酒造好適米に関しましては、開発されたものがありまして、現在使っておりますけれども、また全国の中から見ますともっといい米があってもいいのではないかなという希望もあります。酒をつくる私たちは、農業の方、農家の方があってお米をつくってくれて酒づくりができるわけですけれども、現在は農家の方も高齢化になってきておりまして、紫波町で契約してつくってもらいたいという話をしていますけれども、農家の方々は、私があと30年酒をつくりますので、私が元気に30年酒をつくっている間に一緒に米をつくってくれる方を探しているというお話をしましても、そういう人はいないだろうということを農家さんからは言われました。ですので、やはり酒屋が続いていくためには農業が盛んでないといけないなということは十分感じておりますし、農家の方ともっと連携をしていかないと私たちも残っていけないなということを考えております。
あとは、日本酒は醸造食品、発酵食品なのですけれども、今子供たちも醸造食品、発酵食品というものを食べない食生活というのが多くあると思います。子供と酒は関係ありませんけれども、発酵、醸造という分野の産業に力を入れていただきたいなというのと、やはりそこから食育というのにつながっていくと思いますので、今CMなんかでも殺菌、除菌、滅菌、抗菌いろいろありますけれども、とにかくカビ、菌をシャットアウトするようなCMが多いので皆さんも神経質になると思うのですけれども、私たちはカビと一緒に共存して仕事をしていますし、カビが悪いことではないということを教えていくというところでは教育にもつながっていくのかなというふうに感じて、小学生なんかの工場見学も受け入れたりしております。
ちょっととりとめなくなってしまうのでこの辺で終わりにしたいと思います。

達増知事
はい。

村上振一朗
おはようございます。きょうは声をかけていただきましてありがとうございました。私は、ホテルロイヤル盛岡の村上と申します。ホテルですので、当然観光にかかわる仕事でございます。
私の父が昭和48年に盛岡駅前で盛岡シティホテルというビジネスホテルを始めたのが原点でございまして、今のホテルロイヤル盛岡というのは平成5年にご縁がございまして経営を引き継いでいるというものでございます。当然各会社さんも一緒だと思うのですけれども、まちの歯車として地域のお役に立てるというのが私どもの目的だと思っておりますし、また県内外、また地元のお客様に満足をご提供するというのが我々の使命だというふうな形で仕事をさせていただいております。
事前に資料をいただいておりますので、どういうお話をすればいいのかなということで本日資料を持ってまいりましたが、これは盛岡のホテル協議会というものが組織としてございます。現在市内の17ホテル、13社が加入している団体でございまして、観光振興であったり、地域経済の発展、そして地域に貢献するということを目的に事業を行っております。といいますのも、一言で観光と言っても、一地方の一ホテルが声を張ってぜひ盛岡、岩手に来てくれと言っても、なかなか限界があるのが現状でありまして、特に今は地域間競争というもので、エリアが一丸となってお客様を呼び込むと、そしてファンをつくってまた来ていただくというふうに最後していかなければならないという時代でございますので、当然今までは各ホテル競争相手だったり、ライバルとはいかなくても、お互いちょっと腹を割ってなかなか話す関係ではなかったのですけれども、このホテル協議会の会長を去年から私がさせていただいておりまして、その辺からまずは変えていこうということで、いろいろここにも書かせていただきましたけれども、事業、3本柱を通してお互い手を取り合うことで、一ホテルの効果よりも相乗的な効果を生むと。これだけ身近にいて、また我々ホテル業の目的というか、本質と言えば、泊まったお客さんに満足をしていただくという目的は全く一緒でございますので、手を組めばこれほど強いパートナーはいないということで、その辺から意識を変えて事業を進めているというのが現状であります。これからは、特に地域間競争ということで、我々のような同業者であったり、また商店街のような異業種の集まりのような面でお客様を取り込むというのが必要になってくるというふうに考えております。
研修事業、これは盛岡に集中してしまうのですけれども、研修事業として、特に2番、市内散策研修会というのでは、データでウェブ上にお客様に事前に盛岡の観光ルートを線で結んだルートを提案するとか、あとは4番の盛岡の市街地の飲食店ガイドというものをつくって、ただ来てもらうのではなくて食も楽しんでもらおうという、取り込みというのですか、そういった事業を行っています。
あとは、要望というか、今横沢さんもお話ししたように、期待したいという部分につきましては、観光というのはかなりこれからの産業ではないかなというふうに考えております。特に1,000万人を超える団塊自由人というものの囲い込みというのがこれからとても重要な部分になってくると思うのですけれども、では一言観光と言っても非常に難しい面も実際あると思います。専門家の目から見ても、よっぽどまちであったり地域に強烈な人を取り込むインパクトがないと観光地としては厳しいし、また全国を見てもそういうふうに言い切れる都市というのは非常に少ないという意見もございますので、盛岡に関して言っても新幹線が開通して25年以上たつのですが、これといった観光策の目玉というのが見出せないでいるという現状もございます。ただ、だからといって何もしないというわけにはいかないので、いずれ実行へ移すといったことが大切になってくると思いますし、また行政の方にお願いしたいのは、ぜひ岩手地域を全国にPRしていただいて、これだけの先人、偉人を生んだ場所でもありますし、また食というキーワードにおいても、三陸であったり、また小岩井とか、葛巻とか、遠野とか、さまざまあるので、大会とか学会、コンベンションをぜひ誘致していただいて、多くの方にまずは訪れていただきたいなというふうに思っております。これによって見込まれる波及、経済効果というのも当然宿泊だけではなくて飲食、お土産であったり、あと交通という面でも効果はありますし、何よりも営業先が明確であるということと、あとは目標設定しやすいということもございますので、その面で取り組んでいただければなというふうに考えております。
以上でございます。

達増知事
では、三浦さん、お願いします。

三浦正美
いきいき農場の三浦です。日ごろ思っていることをちょっとお話しさせていただきたいと思いますけれども、私どもいきいき農場というのは、岩手町の農業者15名で、いきいき農場というブランドで販売をさせていただいているグループなのですけれども、主に取り組んでいることは、環境保全型農業を進めていこうということで、エコファーマーですとか、あるいは特別栽培農産物、そういったものの野菜を作らせていただいています。それと、もう一つは、岩手町の資源である発酵堆肥、これを使って土づくりからくる野菜のおいしさというのを目指していこうということで、取り組まさせていただいております。
資料のほう2部ほどありますけれども、いきいき農場の簡単なパンフレットと、こちらのほうの資料は実は県の活性化調整費を使わせていただき岩手町認定農業者協議会で作成いたしました。これは、今どういった使い方しているかといいますと、この後ろに自分の売りだとか、あるいは出荷数だとか、出荷時期そういったのを一緒にしてご提案させていただくというふうにして使わさせていただいています。特に初対面の方と商談したときに、視覚でとらえることができますので、非常に助かっております。
我々主に県内の量販店さんを中心に取引させていただいているのですけれども、その中でこの5年ほど、お客様に来ていただいて産地での交流、年1回なのですけれども、250名ほどのお客様にいらしていただいて、収穫体験をしたり、あるいは我々の取組みの説明をさせていただいたり、コンサートあり、あるいは奥さん達の手作りの野菜料理あり、1日交流させていただくのですけれども、その中で非常に感じたことは、幾ら岩手県の人であっても、やっぱり自分らが日ごろ食べている農産物がどういうところでどういうふうにつくられているかを知りたいというニーズが非常に強いなと。逆に言えば食と農の距離が随分離れ過ぎたなという感じは持っています。農業ってわからないことが多いですから、そういった意味では、これを通じてやはり我々のファンになっていただくという取り組みが非常に良かったかなというふうに思っています。というのは、あるお店の主任さんに聞いたのですが、いきいき農場さんの野菜を買う大体3割の方は値札を見ないで買っていくというのです。値段が幾らか見ないで買っていくと。3割ぐらいはそういうお客さんですよと言われたときには、私はやっぱりそういうことを続けてよかったなというふうに感じています。
私たちが今考えているのは、岩手県内だけではなくて、例えば東京の生協さんのお客様を、何百人とはいかないですけれども、何十人か呼んできていただいて、そこに出荷している農家と交流体験をしていただいて、あるいは観光を結びつけていくような、八幡平の湯煙、あるいは盛岡の食文化、そういったものとタイアップさせていただいて、岩手のよさをトータルで交流させていただくような、そういう機会をこれから持てればいいのかなというふうに感じています。
さまざまあるのですけれども、また後ほど発言させていただきたいと思います。よろしくお願いします。

達増知事
遠藤さん、お願いします。

遠藤保仁
葛巻の遠藤と申します。よろしくお願いします。きょうは、葛巻林業の社長というよりは、林業の従事者としてまいりました。
今お手元に配られているのは、うちの会社のものではなくて木質バイオマス研究会のパンフと、あと岩手県作成の資料でございます。時間ないものですから木質バイオマスという点に絞ってお話ししたいと思います。
岩手は、今さら言うまでもなく森林県と言われまして、いろんな話が全国に知られております。北海道がナンバーワンですけれども、北海道を除く日本で一番だと言われています。昔は木炭も日本一でした。西暦2000年に岩手では正式にバイオマス研究を始めたというふうに私は解釈しております。2000年に岩手・木質バイオマス研究会というのができました。現在約200名の会員がいます。この研究会は、文字どおり産学官で構成しています。当時は「環境」というのが京都議定書の影響で強く出ていまして、「経済」ではなかったのです。それが今灯油もどんどん値上がりしまして、環境に対する意識がどんどん変わってきた。環境には興味がなくても経済には興味あることから、環境に優しい安いエネルギーを使いたい。岩手・木質バイオマス研究会活動は、当初は環境への啓蒙普及でやってきたのですけれども、今、環境プラス「経済」がついてきました。これを地域振興、経営基盤を強めるという意味で、経済効果を出せるようなシステムの構築をこれからやっていきたいと思っています。もちろん産業というのはいろいろあるのですけれども、今皆さんがおっしゃっていた農業の分野に何とか岩手独自のシステムを使っていただけないかなというふうに私個人的には考えています。岩手の場合、スイミングスクール、学校、老人福祉施設等で木質バイオマスエネルギーを使用していますが、農業は弱いです。これは、農業用の燃焼機器がなかったということもありました。しかし、やっと今年ぐらいから農業分野で使用できるボイラーが出てきました。これからは、環境にいいだけではなくて、経営上もプラスになることを紹介していきたいと思います。三浦さんのパンフにもあったように、有機とかいろいろあるのですけれども、エネルギーはまだ多分灯油なのです、油なのです。これを地域の資源を活用したエネルギーで使っていくべきです。岩手が全国に誇れるものはいろいろあるのですけれども、その中の一つが環境分野です。これはもう紛れもない事実なのです。それを広域圏でもいいですし、農業分野に特化してもいいですけれども、経済効果を出せるような仕組みを全国に発信していきたいなというふうに思います。そうすると、これまでも連携事業でやってきたのですけれども、ますます県庁各部の横の連携というのが必要になってきます。この仕組みの問題です。これを地域振興という視点でもって進めていきたいし、また進めていってほしいというように思っています。
そういうことで、今日は作戦会議についてなものですから、知事さんにお願いがあるのです。知事さんは時間がこれまでなかったせいか、いろんな講演を私ども聞いているのですけれども、残念だったのはなかなか森林という言葉がないのです。それと、もう一つは、環境という分野に、余り時間をとってくれない。これを今後何とか知事さんの口から発信してほしいということが今日のお願いの一つです。そして、思想的には、岩手はやはり地産地消、地域の資源循環を図り、岩手は地産地消で物をつくっていくということを、姿勢として発信していただければ幸いだと思っております。
以上でございます。

達増知事
一通りまずご発言をいただきましたけれども、言い残していること、あるいは他の方の発言を聞いて言いたくなったこととかあればお願いしたいと思います。これは、順番というよりは自由にご発言いただきたいのですけれども。

田面木哲也
この表を見て感じるのですけれども、結局は本県の現状、対応が遅れているから県民所得の減少に歯どめがかからない。全国との格差が開いている。これってみんな産業が成り立たないということに1つははっきりしているのではないかなと。
次の今後の課題で、力強い産業経済の基本がないと安全、安心な暮らしができない。
もう一つの見方とすれば、これ戦略会議でしょうから、あと50年、100年とたつと当然エネルギーはどうなるかという話を正面に置かなければならない。エネルギーと食料。産業振興という話になっていまして、先ほど話したのは誘致企業だったらどうせいなくなってしまうよと、そういえばうちの会社だってどうなるかわかったものではない。そうすると、もうちょっと基本はどうなのかとなると、岩手ではどういうことがあるか、北東北で何があるかというと、エネルギーで考えた場合に、徹底的にやる必要がありませんか。例えばエネルギーをつくる。既に葛巻の風力発電もありますし、水力もあるし、本当にそれだけでいいのか。地熱発電もありますし。つくるだけではなくて、それを貯蔵するにはどうするのだと、蓄熱もあるし、電池もあるし、水素もあるし、エネルギーに交換すると。それから、さらにどうやって輸送するのだと、送電線もあるし、液体として出すかという問題もあるし、そうするとエネルギーの供給というのは大変です。例えば家庭だとか何かでは省エネ住宅とか、使用する場合には、すごく問題だと、エネルギーロスから勘案すれば。それこそ産業に使えば、このエネルギーは有効に使える。ということで、何が言いたいかというと、このエネルギーの開発を北東北の基盤事業に持っていかないと、孫たちは困ってしまいませんかという話、徹底的にやらなければ。長期ビジョンでやっていかないと、今1年、2年の話ではなくて、50年先、100年先、本当にそれでいいのかというのが気になっていて、金のあるやつはではどうするのだ、金のあるやつは、エネルギーは何年たっても買える金がある。金がないのは買えないだけの話であって。
ただし、ここにありますように、学術ということになってしまうと、やっぱり最先端の研究をしたいというのが当然。そうすると、エネルギー変換にしたって、エネルギー貯蔵にしたって学術的な話になってくる。それに集中した基本の事業をつくらない限り、スローガンを上げない限り若い人たちはそれに対して燃えません。燃えないとどうなるか。自分がやりたいことが東京にあれば東京に行ってしまうし、海外に行ってしまう。ここに生涯をかけて私はこれをやりたいのだというスローガン、ビジョンを上げない限りは、余り意味がないのではないかな。外の会社を、いっぱい連れてきたって、どうせ都合が悪ければ帰ってしまうし、私30年間ここで工場やってみて、それは感じます。経済効果が上がらなければ撤退するよね、それは極めて当然だよねと。徹底的な方法は何かというと、スローガンを、例えばドイツが重化学工業からソフト産業に変わった、例えばカリフォルニアのシリコンバレーだってそうだと思う。意図的に何かやらないとだめではないですかと。1年、2年、3年、5年の話だとそれは呼んできたほうがいいかもわからないですけれども、呼んできたって意味ないではないですか。プライドがあるから人が来る。ということの基本戦略をやらない限り、幾ら呼んできてもしようがないのではないか。
あとそれから、孫の代で心配なのは食糧事情です。岩手県は幸いにして、米は余りおいしくないと言っていましたけれども、食糧自給率が100%超しているのは日本全国でも何県かしかないので、それをどうするかという問題がある。
あと、もう一つは、若いときにやる仕事と中高年、高齢でやっている仕事ということを分けて考えなければならない。要するに一生涯働くシステムをどうつくるかということが必要。高齢者はゲートボールやっていればいいという話ではなくて、高齢者だからこそ、高齢者でできる仕事、例えば事務の仕事でもあったら、事務の人に怒られるかもわからないですけれども、そういう仕事もあるし、例えば、今機械があるから農業を機械だけで出来るのは高齢者にやってもらう。その選択をきちっとやっておけば、高齢者は死ぬまで働く。死ぬまで働ければ医療費が少なくなるからいいのではないかというご都合主義もあるかもしれない。そこまでの全部を考えた基本戦略をやらないといけないのではないかと考える。個々のことをやったって、最終的に会社本位ではどうしようもないのではないですかという話になりませんかという、非常に勝手な話を言わせていただきました。

達増知事
ほかにございませんでしょうか。はい。

三浦正美
さっき食糧の問題も出ていましたけれども、基本的には、特に最近感じるのは、長期戦略ということではないのでしょうけれども、まさに農業後継者ですね、経営指導というのですか、普及センターさんなりの今までの技術指導というのは、そこそこ我々農業者のほうも大体クリアできつつあるのではないかなと、足りない部分、新しい取り組みの部分は別ですけれども。そういった意味では、若い後継者を育てていくという意味では、生産者から経営者への資質向上が非常に必要な時代です。農業現場に最初から入ってしまえば、経営感覚というのはなかなか出てきづらいのです。外へ出て研修すればいいのでしょうけれども、そういう点では経営指導のプロというのも、やっぱり各普及センターさん単位当たりで農業従事者から相談受ける方、お一人いれば非常にいいのではないかなというふうに感じています。
それと、我々もそうなのですけれども、地域の資源をどう宝にしてやっていくのかということです。最近相談を受けているのは、スーパーさんの食物残渣、これらをどう堆肥化して、三浦さんのところのいきいきグループで試験でもいいからやってみてくれないかと。ただ、我々農業従事者が投資してやるとなると莫大な経費がかかって、それを例えば地元の畜産農家の方にお願いして堆肥と一緒に発酵させて、それで我々が引き受けると。それが今度は産業廃棄物何たらの法律の規制があって、お金のやりとりってなかなか難しいみたいなのです。ですから、その辺をうまく循環しやすいようにある程度考えていただきたいなというふうに考えています。
それと、もう一つは、特に今お米が非常に価格が低迷していると、あるいは米余り状態ということなのですけれども、正直言って大豆、麦でのいろんな品目横断はあるのですけれども、岩手町あたりは麦の収穫時期がちょうど梅雨末期の雨に当たって、品種のいいものがなかなかとれづらいという地域特性があるのです。ですから、むしろこれをえさ米なり、そういったものに組み入れていただいて、畜産と水田のえさの循環をつくっていくような、そういった活用をしないと水田がだんだん、だんだん寂れていってしまうのではないかなと。それこそ将来の食糧、海外ではもう食糧の争奪戦が始まっているにもかかわらず、国内では何かまだ割とのんびりしているというのが正直なところではないかなというふうに感じますので、その辺は県のほうとしてぜひお考えいただいて、地域の適地適作に合ったような施策を考えていただければ、地元としても取り組みやすいのかなというふうに思っています。
以上です。

達増知事
私、知事になって改めて思っているのは、岩手の農産物のクオリティーの高さですよね。キャベツなどまさにそうですし、ただなかなかそれが高所得につながらないということで、やっぱり経営というところが1つ大きい課題なのだと思います。岩手は、そういう地域資源は多いですし、また人材もいるわけなのですけれども、お金を払って雇う存在が少ないので、地域にも定着しない、人も人口流出してしまうというところがあるので、やはり企業の支援ですよね、岩手に社長さんをふやしていくことが大事なのではないかなというふうに思っております。何か人口当たり社長さんの数、福井県てすごく多いのだそうで、朝ドラが今「ちりとてちん」で、岩手から福井に朝ドラが移っているのですけれども、よく岩手に働く場がないと言うのですが、働く場というのはないことはなく、働ける人たちが体を動かし、物をつくったり、サービスを提供したりすれば、そこにちゃんと稼げる要素はそこにあるはずなのですが、ただそれを指揮する経営というところが足りないのです。そういうときには、伝統的には行政が経営をするということで、公営企業みたいな感じでばんばんやるというのが伝統的なやり方なのですが、そこは国の方針としては行政はそういうことはやるな、今やっていることも民営化せよということで、岩手の県の予算はひところは9,400億ぐらいあったのが今もう7,000億ぐらいだから、25%減であってほとんど、エネルギー産業もお金があればやりたいのですけれども、なかなか県営では難しい。私が生まれた昭和39年ころの千田知事の知事演説を最近見たのですけれども、当時企業局の発電量というのは岩手のエネルギーの4割を賄っていたそうですね。だから、県営発電が当時は県の4割を賄っていて、だからそういうのがあり得るのだと思うのですが、国の方針ではエネルギーはどんどん規制緩和、自由化をして、コジェネレーションだの何だのとちっちゃい単位でどんどん発電して売ったり、発電して自分のところで使うとかというのを推奨しているところではありますが、木質バイオマスもだからそういう採算とれる軌道に乗ればいいのですけれども、どの辺が今採算とれない原因になっているのでしょうか。

遠藤保仁
経済性については、大体今ですと採算がとれています。ストーブが普及しましてもペレットが高いのではないかとかいろんな話があります。ところが、今灯油が1リットルあたり90円を超えていくと、それは過去の話になっています。業務用については完全に黒字を出せる状況です。それがまだまだ知られていない。
もう一つは、需要側と供給側の接点がちょっとないのです。例えば農業関係と接点はないのです。これは、我々も考えていかなければいけない。そういう場を振興局さんにお願いしてつくってもらって、どんどん理解を深めていきたいのです。例えば今日、ホテル協議会の方が出席されています。ホテルさんにペレットストーブをフロントやどこかに置いて、岩手に来るお客さんが必ず見るようにして、観光分野でも活用してほしいです。単にエネルギー、CO2というのではなくて、岩手のイメージづくりにも活かしていってほしいなと思っています。ですから、今知事さんのおっしゃった木質バイオマスの経済的な問題は、どんどん解消されて、追い風になっています。木質バイオマス関係というのは日本全国に発信できる県です。岩手県は、まだまだできる県でありますので、もっともっと木質バイオマスの普及推進を進めていきたいと思います。環境と食育という話ありますが、それと健康というキーワードで今後進めていければ、さらに発展していくのではないかと思っています。

達増知事
あと、横沢さんのお米の件ですけれども、あれは酒米がいま一つということなわけですね。よく県南産ひとめぼれは、食味検査で魚沼コシヒカリと同じ特Aだとか言われるのですけれども、でもそういう県南産ひとめぼれはお酒の原料のほうには来ないし、また向いているのかどうかはどうなのでしょうか。

横沢裕子
私たちが食用米を酒づくりに使うときには、加工用米として入ってくるのですけれども、その年によって品種が違ってきます。ことしはひとめぼれが多いのですが、去年はひとめぼれがないということであきたこまち、毎年品種が安定しないというのもあります。お酒づくりに向いているか向いていないかといいますと、向いていないわけないけれども、酒米と比べるとやはり落ちるというのがあります。ただ、それは食用米と酒米の違いですから、その差がはっきりしていていいと言えばいいと思います。
さっきお米が余りよくないとお話しさせていただいたのですけれども、それは品質がよくないというのも多少ありますけれども、やはり農家さんがやる気を持てるような農業政策がないために品質のいいのが上がってこない。どうせ安いから適当につくるみたいなことが、つくれば買うのだろうみたいなことで言われると。やっぱりやる気を起こすような農業政策をしていただかないと農家さんもやってくれない。
それから、ソバなんかも欲しいなと思うのですけれども、減反するとソバを植える。私、ソバのことちょっと詳しくはわからないのですけれども、何となくソバを植えて何となくソバをとるという感じのところが多いのですが、そうではなくて、一生懸命使ってもらおうとしてつくっている方とそうでない方の差もやっぱり大きいですし、その辺のところでやる気を起こさせるような農業政策をしていただきたいなというのが思いとしてあります。酒に向くか向かないかは、私たちつくるほうで何とか試行錯誤しながら、加工米として与えられたものを使っていきます。
そして、さっきもちょっとお話ししたのですけれども、私どもでリンゴをつくっているのですが、蔵で酒をつくると酒かすというものが副産物として出てくるのですが、その酒かすを肥料にしてリンゴをつくっております。非常に肥料としていいものなのです、酒かすは。やはり農家さんにその話をさせていただきますけれども、肥料にするには高過ぎるということを言われます。ですので、そういう意味でもお米の、私たちが買う値段も下げていただいて、農家さんに払うほうは高くしてもらいたいなというのがあります。そうしますと、自然と酒かすも安くなりますから、肥料として使っていただくと農作物も品質がアップしてまた高く売るということもできると思っています。
あとは、知事の質問とちょっと違うかもしれませんけれども、私ども酒屋、あるいは農業というところも、その場所にいてしかできない産業で、ITの方に失礼になるかもしれませんけれども、ここではなくてもできるものというのもあるのですけれども、ここではないとできないものというのもやっぱりありますし、先ほど社長が少ないというふうにおっしゃいましたけれども、農家はたくさんいますから、農家さんは社員がいないけれども、社長さんだと思いますし、そういう方たちにやっぱり希望を持てるようなことをやっていただくとよりいいのかなという気はします。

達増知事
意欲が出ればやっぱり消費のされ方、あるいは加工でもいいのですけれども、どうなっていくのかというのがわかった上でつくると多分意欲が出ると思うのです。だから、もっともっと消費の側と生産の側をちゃんとつなぐような仕組みを考えないとという感じはしています。
ほかに何かございませんでしょうか。

水野節郎
先ほどからのご意見の中で、例えば今日の新しい地域経営の計画の内容で言えば、4年間の基本政策であるという内容ですよね。短い時間軸でなく、あと10年あるいは20年というスタンスで見たときに、いずれにしても他の地域なり岩手として、もしくは北東北としての特徴を生かした産業政策になるのだと思うのです。やっぱりそこでしかできない特徴あるものをつくっていく必要がある。ですから、先ほどの田面木さんの提案とか、例えば月の輪さんみたいな、米を原料にして2次加工する。食品もそうだと思うのですけれども、それをいかに付加価値を上げる施策をしていくか、農業経営者にも例えばそれらにかかわるような事業をやっている方もプライドを持って、成長性のあるような、特徴あるような商品づくり、要は岩手ブランドですよね。それが北東北ブランドになるかもわからないですけれども。ただ、私がやっている事業というのは、そういう意味では電子とか、ものをつくるとか、ソフトというようなものなのですが、ただなぜここにこだわっているかというと、極端に言えば逆もあるのですけれども、私どもが、例えば今の会社が横浜、東京で何か仕事をやっても、逆に言えば資源が集まらない、人が集まらない。では、いずれどこへ行ったって勝負はしなければいけない、東京にいても。技術的にどこでも磨かなければ、結局いいものでないと採用されないわけだから、どこへ行ったって同じならば、環境のいい岩手、土地も安いし、極端に言えばそういう人材が残れるような環境があれば、プライドを持ってやってくれるのではないかなと、そういう思いもあります。ですから、せっかくこんな地域でもいいし、こんなという卑下した言い方になるかもわからないけれども、プライドを持ってやれる場があれば僕は成長するのだと思うのです。それは、やっぱり農業もそうだと思うし、どんな産業でも、岩手ライクな、さっきビジョンと言いましたが、岩手としてこういうビジョンがあって10年先を見るという、この行き着く先というのですか、やっぱりもうちょっと前に、大きな柱を立てるべきではないのかなと。今、ですからこのような政策であればそれは理解できるし、どうつながるのだろうか。これは会社経営と同じだと思うのです。10年先どういう会社にしたいのだと、どういうビジョンにしたい、それは県、もしくは北東北という地域の経営というか、自立をどうしていくかということだと思うので、キャッチフレーズで夢県土いわて、あれいい言葉だと思うのです。それをどうしていくかというところにもっと柱があって、今後検討していけばいいのかなと。いずれにしてもいろんな課題は個々にあると思うので、農業課題でも、例えばお一人お一人が、農家が社長、でも今は機械化されて一人でやる時代でないならば、それは組合なり、協同組合なりで、例えばいきいき農場さんみたいな、地域の人たちが集まって共同して生産性を向上するとか、品質を上げるだとか、そういうことがある程度集まってくればいいのではないのかなと思いますので、そんなところに視点を置く方が非常にいいのではないのかなと。いずれにしても付加価値がないと収入が上がらないというのであれば、これは地域性を高めて価値ある岩手ブランドの食品なり、エネルギーなり、特徴ある製品に仕上げ、そういうことを、世に発信していくしかないのではないかなと思います。

勝部室長
計画ですけれども、これは当面4年間これでやっていきましょうということで考えている実施計画でありまして、基本計画の方はもう現に岩手県総合計画があるわけです。それは平成22年度までのかなり長期の計画があって、その実施計画として、後期実施計画として位置づけてありますので、ですから先ほどおっしゃいました夢県土いわてを掲げた基本計画の部分は今の計画につながっているのですけれども、その下の前期後期に分けて実施計画というのをつくって、それの後期分として残り4年間、達増知事のマニフェストに盛り込まれているものを取り込んだ形です。これからの基本計画の次の基本計画をどうしようかということもこれから議論していかなければならないと。いずれ10年先までなかなか見通すことは難しい時代でございますので、その辺もあわせてどういう計画のあり方がどうあればいいのかということで議論していただきたい。

田面木哲也
1つ、人を育てるというの、何の産業でもそうなのですけれども、10年かかりませんか。だから、10年先の話をするか、20年先の話をしないと、バッタ商法みたいな話になってしまって、それは当たるも八卦当たらぬも八卦、それも1つの商売だからいいと言えばいいのだけれども、100人、200人と人を雇っていて、それはないよね、そんないいかげんな話。例えば金型工、IT産業でも、それから自動車産業でも、簡単に自動車産業と話していますけれども、自動車産業の物をつくるには5年や10年でできたらラッキー。10年、20年かかります、人を必死になって育てても。農業だったらもっとかかっている。したがって、10年先、20年先どうしますかという話を私の会社では出している。20年先といったら、私今60だから、80だから生きているかどうかわからないという話をすると、若いのは真剣に考えます。私のことだけで会社が変わったって意味ないのだから、おまえたちどうするのだよという話、20代の人、30代の方、40代の方、そのときによかったかという話をしないと、これもそうなのですけれども、基本設定がそれではないのですかと、これは作戦会議だと言ったからそのとおりだなと思って。そうすると、そのビジョンをはっきりさせなければならないのではないですか。ビジョンがはっきりすれば若い人が走りますよ。はっきりしないから走れないのです。逆だと思う。優秀な人がいるのではない。ビジョンがないから優秀なやつがだめになってしまうし、だめなやつは本当にだめだろうし、実は目的がはっきりすると優秀ではない者ってものすごい優秀になります。それは目的があるからです。いきいき農場だって、ペレットだって、これ世界にないからと話せばやっぱり開発する側もこれはエネルギーになる。そのときに1つのエネルギーとして岩手県ですごいのありますよねと、地熱発電です。地熱発電がなぜさっぱりぱっとしないのだと、地熱発電のあれはもうちょっとなぜそうなのかと、あのエネルギーといったらすごいエネルギーのはずなのです。それを利用したものが盛岡にもあって、地熱発電ではなく、地下の発電エネルギーを持って住宅を維持しているところもある。そういうエネルギーのあり方の、金ではなくて、基本はどうするかと、具体的な話がないと突っ込めないのではないですかという話。と常々思っています。そうでないと、自分の息子も結局岩手県で働くところがないのではないのかと。今東京でやっていますけれども、おかしいなと、自分の息子さえ連れてこられないから、こういうことを言う資格はないかもしれませんけれども。エネルギーを保存するということだけでも大変な仕事なはずなのです。それは別に電気に変えるだけではなくて、深い話がいっぱいある。そういう学術的なもので一気通貫した戦略がないといけない。

知事所感

宮舘局長
ありがとうございました。そろそろ予定した時間になりましたので、この辺で最後に知事からお願いします。

達増知事
あっという間に時間になってしまいまして、でもこれで終わりではございませんので、またいろいろご意見を伺いながらやっていきたいと思います。
実は、今岩手が直面している時代は、非常に特殊な時期だと思っていまして、といいますのは県の予算が一気に25%減るなんていうのは戦後なかったことなのです。それで、政府のシナリオでは、そうやって公がどんどん撤退していけば、その分民間のビジネスチャンスが増えて、自由に民間ビジネスをやってもらえば日本経済はより強くなる、経済はより成長する、経済を成長させるためには公部門を縮小すればいいのだということでやってきたわけですけれども、実は西暦2000年、岩手の県民所得が260万円だったのが1年で240万にがくっと落ちて、1年で2,800億の富が失われ、それが毎年続いて、今でも2000年に比べると2,800億円岩手の中にお金が足りない状態なのです。やっぱり2,800億円もしあれば、それだけ物が買われるし、お客さんが来るし、給料も払えるという状態なのですが、その2,800億円というのは今実は県の予算が減った額と市町村の予算が減った額と全部合わせると大体2,800億円ぐらいになりまして、もしそういう地方の予算をどんどん増やすのは無駄遣いにつながるかもしれませんが、増やさないにせよ、減らさずに横ばいのままでいたら、今ごろ岩手県の県民所得は2,800億円分プラスアルファになっていて、1人当たり260万という目標は黙っていても達成されているわけであります。
その失われた2,800億円、これは日本全体として公部門からお金を引き上げて、それが地方経済の疲弊につながっているわけですけれども、昔であれば公共事業とかいろんな補助金とかで地方に回していたお金が今どこに行っているかというと、インド株を買ったりとか、そういう対外投資に向かっているわけです。アメリカの国債を買ったり、あとはサブプライムローン絡みの投資信託を買ったりとか、であれば日本全体として考えれば、そういうところにお金が流れるくらいであれば、国なりなんなりが日本国民のお金を借りて日本の中で事業をするというのもそんなに悪いことではないのではないかと私は常日ごろから言っているのですが、ただいかんせん日本政府、政治の信頼というのが非常に悪化しているがために、日本政府が日本国民からお金を借りるということに対して世論がやっぱり強く反対している状態なのです。そういう意味では、日本政治をきちっと立て直さないとそういうまともな経営を政府ができる状態にないというところがございます。そういう中で、岩手としてそういう危機を突破して生き残っていくためには、岩手の県がそういう信頼をかち得て、外国からお金を借り入れるくらいまで、そういう能力を身につけられればそれが1つだと思います。あるいはそういう企業が岩手の中に出てきて、国からのお金が期待できないのであれば、外国からお金を借りてやるようにする。あるいは日本国民の、国民の資産はたくさんあるわけです。国や地方の財政赤字はもう1,000兆円に達しようとしているというのは、実は日本国民が1,000兆円貸すくらいの余力を持っているということであって、そういうお金を集めることができれば、いろんなビジネスをやっていけるわけです。
1つ象徴的な話で、大連の岩手県事務所のほうで上海のプーアル茶を取引している会社に岩手の南部鉄器をセットで売ってもらうということに今成功しつつあります。中国では、プーアル茶ブームがあって、本当にワインみたいな、何年物は幾らというプレミアがついたりして、投機の対象になっているそうですね。ゴルフ券みたいなもので、そういう高額プーアル茶を買って、値上がりを待って売るみたいな、日本料理店ですき焼きコースを夜食べるくらいの値段でプーアル茶1杯とかというくらいのプーアル茶が出ているそうであります。というふうに、世界、あるところにはお金があると、そのお金をどう岩手に引っ張ってくるかという中で、今中国の金持ちに向けて南部鉄器を売り出すという新しい事業をやったりとかしております。ということで、いろんな手があるのだと思っております。そうしたことを来年から片っ端からやっていきたいと思っておりまして、そういう中で一人でも多くの人が岩手で働けて、一円でも多く稼げるようにしていきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。本日はまことにありがとうございました。

閉会

宮舘局長
それでは、以上をもちまして県政懇談会「岩手フロンティア産業人座談会」を終わらせていただきます。本日は大変ありがとうございました。

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