東日本大震災津波による岩手県沿岸部の希少植物に及ぼした影響の調査結果

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ページ番号1015882  更新日 平成31年2月20日

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岩手県環境保健研究センター地球科学部では、東日本大震災の津波による岩手県沿岸部の希少植物について、被害状況の把握等の調査を行っています。

今回は、「東日本大震災の津波による岩手県における海浜性植物の消滅」について、報告します。

調査の概要

いわてレッドデータブックに記載されている種を中心に、砂浜・礫浜、河口・塩性湿地、崖錐・磯に生育する植物の津波発生後の状況を確認しました。

調査の結果、海浜性植物の消失・減少は、その生育地である砂浜・礫浜が流失したことにより、引き起こされたと考えられました。
詳しくは、添付の資料をご覧ください。

なお、平成23年度の調査の結果、自生地保全の緊急性が高いと判断したエゾオグルマについて、保全対策を行いました。その概要は、次のとおりです。

調査方法

調査は、2011年7月と8月に岩手県沿岸全域で行った。

岩手県沿岸部24地域、36地点について、岩手県希少種情報データ及び有識者の記録をもとに、震災前に確認していた、いわてレッドデータブック記載種を中心として、砂浜、礫浜(小石でできた浜)、河口、崖錘(急な崖の下にできた円錐状の体積地形)、磯、に生育する海岸性植物の津波発生後の状況を記録した。

希少植物の被害状況

  • 調査を行った、36地点のうち19地点で、震災前に確認していた希少植物が消失していた。(消失率52.8%)
  • 津波発生前に確認していた砂浜海岸や塩性湿地の海岸性植物では、アズマツメクサ、トウダイクサ、ハマナデシコ、ハマハコベは確認できなかった。
  • ハマナデシコは、今回の津波により、岩手県内から消失した。
  • ウミミドリ、エゾオグルマ、エゾツルキンバイ、シバナ、ハマカキラン、ハマボウフウは激減していた。
  • 特にも、高田松原海岸は東西約2キロメートルの砂浜で、約7万本の赤松からなる防潮林があり、その中に約200株のハマカキランを確認していたが、砂浜とともに消失した。
  • 「砂浜・礫浜」、「河口・干潟」及び「崖錘・磯」の3つのタイプ区分し、消失した植物を調べたところ、「砂浜・礫浜」で、確認地点数が4、消失地点数が11となり消失した植物が多かった。

希少植物減少、消失の原因

本調査により、下記の原因が考えられた。

  1. 津波による生育基盤の侵食・喪失
  2. 森林消失により、周辺環境が変化している可能性
  3. 復旧工事による環境の激変

エゾオグルマの自生地保全対策

  • 津波によって自生地となる砂浜の大部分が流失し、エゾオグルマが減少した。(津波前後のエゾオグルマ自生地)砂を集め、掘り出された生存個体を植えつけた。
  • 大震災津波により、砂浜が削られる等の環境の変化があったため、その後の台風による波や流木の影響などにより、10月21日までに1株を残して消失した。
  • 最後の1株の種子・葉をサンプリングし、岩手県環境保健研究センターにて生育・培養を行うこととした。
  • 波による砂の侵食のおそれが小さい陸側の砂地に、採取した種子を播種した。

まとめ

  • 今回の津波は、植物の生育地に影響を及ぼし、希少植物を消失、激減させた。
  • 被災した沿岸域では、希少植物の生育環境が悪化しており、7、8月の調査後にも個体数の減少が確認されるなど、希少植物絶滅のリスクが高まっている。
  • 今後も、関係市町村や地域と連携し、回復が困難な希少種への継続したモニタリングと保全活動が必要となる。

小山田主査専門研究員のこれまでの研究成果は下記をご覧ください。

写真:ハマカキラン(震災前)

写真:消失したハマカキランの自生地

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このページに関するお問い合わせ

岩手県環境保健研究センター 地球科学部
〒020-0857 岩手県盛岡市北飯岡1-11-16
電話番号:019-656-5672 ファクス番号:019-656-5671
お問い合わせは専用フォームをご利用ください。