18道県知事による「感染拡大を防止しながら一日も早く経済・社会活動を正常化し、日常を取り戻すための緊急提言」

ページ番号1030113  更新日 令和2年5月26日

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新型コロナウイルス感染症は、昨 年末に中国の感染拡大が確認されてから瞬く間に世界中に拡大し、我が国においても本年1月、初めての感染者が確認されてから急速な拡大が進み、4月7日には一部都府県、さらに4月16日には全国に緊急事態宣言が発出された。緊急事態宣言に基づく外出自粛、一定の事業に対する休業要請等、人と人との接触を削減する戦略により、新規感染者は減少を始め、現在は緊急事態宣言からの出口がようやく見えてきた状況となった。

しかしながら、緊急事態措置は、経済・社会活動とトレードオフとなったことから、この間、宿泊・旅行業、飲食業を中心に消費が著しく減退し、波及的効果も影響して様々な業種に極めて深刻な経済的影響が発生しているのみならず、労働者の収入減や雇用の不安定化により、さらなる消費停滞の悪化スパイラルが現実化しつつあり、景気悪化の規模は大恐慌以来との見方も出つつある。

また、医療機関等においては、適切な防護用具等の不足ともあいまって、施設内感染が頻発し、新型コロナウイルスのみならず一般の医療についても崩壊の危機に直面した。

今後、緊急事態宣言が解除されたのちも、新たなワクチンが開発・普及されるまで1~2年程度が見込まれている。このため、宣言解除の後、感染が拡大し、再び緊急事態宣言が発出されるような事態は何としても回避しなければならない。その間、感染不安から、経済・社会活動が委縮し、日常生活でもずっと怯え続けるような状況も避けなければならない。新たなワクチンが開発・普及されるまでの間、我々は、新型コロナウイルスを完全に根絶させることは当面困難であることを前提に、政府のリーダーシップのもと日本全国での取り組みにより、ウイルスを抑え込みながら、一日も早く経済・社会活動を回復させ、日常生活を取り戻さなければならない。

そのためには、安全な医療体制を確保しながら、国として、感染拡大防止と経済社会活動を両立させる思い切った新たな戦略を構築し、その根拠となる法令を整備して断行することが必要である。

以上を踏まえ、緊急事態宣言解除後の経済・社会活動早期正常化のための戦略として、以下の項目について対策を講じられるよう緊急に提言する。

1.大規模な新型コロナウイルス感染者の早期発見・調査・入院等による積極的感染拡大防止戦略への転換

緊急事態宣言が解除された後は、適切な手指洗浄やソーシャルディスタンスなどの感染症対策を維持する「新しい生活様式」を実践しながらも、子供たちが安心して通学し、誰もが友人などと外食を楽しみ、地域は多くのお客様を自慢の観光地にお迎えするなど、感染リスクの高い活動を除き、できるだけ日常の活動を回復させることを目指さなければならない。

そのため、PCR検査を始めとする検査を大規模に拡大することにより、早期に感染者を発見するとともに、接触者を徹底的に調査して感染を囲い込みつつ、感染者の重症度に応じた適切な施設での治療・療養により、感染の拡大を徹底的に防止することが重要である。このことは有症者に対して受動的に検査を行うのではなく、発想を転換し、偽陰性者及び偽陽性者に配慮しつつ、感染者を効率良く発見するために、適切に検査対象者を設定して検査を大規模に行い、判明した陽性者との接触者を調査・検査し、感染者を適切に治療・療養することにより、先手を打って感染拡大を防止するものである。

我々は感染拡大に対して受け身で対処するのではなく、今や断固たる行動によって「感染拡大を封じ込める攻めの戦略」が必要となっている。

国民や企業の皆さまが将来について展望と安心を持てるように、こうした戦略を示すとともに、実現するために、大胆かつ集中的な政策資源を投入すること。

2.PCR等検査体制の早急な整備

上記1の戦略を実現するため、次の対策を講じ、新型コロナウイルス感染判定の検査数を劇的に拡大させること。

  • 迅速・簡易なPCR検査及び抗原・抗体検査などを用いた新たな技術開発や規制緩和を行うこと。
  • 多様な人材の活用、民間・大学の力の活用ができるよう国の政策を総動員すること。
  • 機器、試薬等の確保及び人員等の体制を早急に整備するための支援措置を講ずること。
  • 検査数を拡大するため、検体採取の方法や検査対象基準等について早急に見直すこと。

3.治療・療養のための施設確保

上記1の戦略を実行することにより、早期に無症状者・軽症者を発見し、療養させることが、感染拡大の抑止に繋がり、結果として、重症者・中症状者は減少すると期待される。上記1の戦略にともない、場合によっては多数発見される新型コロナウイルス感染者の治療・療養に必要な施設、特に軽症者や無症状者を適切に療養できるようホテル等の確保に向け、十分な支援措置を講ずること。

さらに、主要国に比べ弱いとされる重症者・中等症者対応のための医療機能を速やかに大幅に増強すること。

4.積極的疫学調査の徹底のための体制整備

徹底した積極的疫学調査実施のため、保健師等は陽性者の行動歴を調査することに集中させ、接触者にコンタクトして適切な自宅待機・経過観察と検査誘導等を行うための人員体制は、別途、大幅増強すること。

また、PCR 検査の受検や陽性者に対する行動歴の調査、さらには 自宅待機等に対して協力が得られないケースも多発していることから、要請・指示に従わず、調査協力を拒否する行為に対して、実効性を担保するため法的措置を設けるなどの改善を図ること。

同時に主要国で導入が進みつつある濃厚接触者追跡アプリの早期導入・普及拡大を含め、ICTを最大限活用すること。

さらに、感染症に、速やかに対応できるよう、常時においても国と地方に専門的な組織を整備・拡充し、これに必要な経費は、臨時の予算ではなく、地方交付税による財政支援を行うこと。

5.適切な目標設定と段階的な検査の拡大

上記1の戦略を実施するため、PCR検査や抗原・抗体検査の検査数と検査対象範囲について、安心して経済・社会活動に取り組むために必要な思い切った目標を定めること。その際、主要各国での取り組みや世界の有識者の提言を十分に踏まえた水準にするとともに、検査能力拡大に応じた段階的目標を設けること。

また、ごく軽症も含むすべての有症者やすべての接触者への速やかな検査を行うとともに、ハイリスク者の中でクラスターが発生することを防止し重要な社会的機能を守るために、症状の有無に関わらず医療従事者及び入院者、並びに介護従事者及び介護施設利用者等、医療・介護・障害福祉の機能確保に重要な関係者については優先的に検査を行うことを検討すること。

さらに、検査能力の拡大に応じ、順次、対象を拡大するなど、適切な検査拡大のためのロードマップを策定すること。

令和2年5月11日

北海道知事  鈴木 直道
岩手県知事  達増 拓也
宮城県知事  村井 嘉浩
茨城県知事 大井川 和彦
福井県知事  杉本 達治
山梨県知事 長崎 幸太郎
長野県知事  阿部 守一
愛知県知事  大村 秀章
三重県知事  鈴木 英敬
滋賀県知事 三日月 大造
和歌山県知事 仁坂 吉伸
鳥取県知事  平井 伸治
島根県知事  丸山 達也
岡山県知事 伊原木 隆太
広島県知事  湯﨑 英彦
山口県知事  村岡 嗣政
高知県知事  濵田 省司
宮崎県知事  河野 俊嗣

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