平成23年6月13日知事会見記録

ID番号 N4890 更新日 平成26年1月16日

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平成23年6月13日 10時30分から10時56分

広聴広報課
ただ今から記者会見を行います。
最初に、知事から発表があります。
それでは、知事、お願いします。

知事
今日の発表事項は、岩手県自殺総合対策本部の設置についてです。
岩手県の自殺死亡率は常に全国でも高い水準にあり、深刻な状況にあります。本年度から自殺対策の専担職員を配置するとともに、全庁的な取組を行うための自殺総合対策本部を設置することとしていました。
しかしながら、3月11日の大震災発生によって、その対応を優先してきたために自殺総合対策本部については設置を延期してきました。
一方、6月1日、厚生労働省発表の平成22年人口動態統計月報年計(概数)では、本県の自殺率は人口10万人当たり32.2人ということで、全国第2位になっています。また、震災に伴う生活上の問題やメンタルヘルスの問題により、今後、自殺の増加ということも懸念され、適切な対処が必要という状況です。
そこで、総合的な自殺対策を一層強力に推進するために、岩手県自殺総合対策本部を設置します。今後は、一層、市町村や関係機関・団体と連携をしながら、県として全庁的に自殺対策に取り組んでいきます。

広聴広報課
以上で知事からの発表を終わります。
それでは、幹事社さんの進行によりまして、皆様方からのご質問にお答えする形で進めさせていただきます。
幹事社さん、進行をお願いします。

幹事社
それでは、ただ今の発表事項について、各社から質問があれば社名を名乗ってからお願いします。

記者
対策本部の設置で、先ほど知事がおっしゃった10万人当たりの数値を今後、何年間でどのくらい減らしたいというめどとか目標というのはありますか。

知事
数字ありきというよりは、お一人お一人、直面している課題に対するサポート、そして地域ごとにさまざま背景になる社会経済的問題を解決しながら、問題に取り組んでいこうという体制を作っていくというあたりが具体的な目標になっていくと思います。

記者
自殺対策本部についてですが、今回の震災が3月に起きて、それに関連して被災した方々に対する特段の配慮とか、そういった対策については、もちろんきちんとフォローすると思うのですが、そうするならばその内容についてお願いします。

知事
心と体の健康維持ということが、被災者支援でも重要な柱であって、そして心のケアに関して、発災直後からさまざま他の県、他県市町村の応援もいただきながら対応してきたところです。これをもともと県で自殺総合対策に取り組もうとしていたことと連動させながら取り組んでいこうということです。

記者
関連してなのですが、これまでも沿岸の地域というのは自殺が多かった地域かと思います。これから具体的に県内の医療資源の中でも、なかなか対応しきれないところがあるかと思いますが、他県からの応援、それから人的な拡充についてのお考えがあれば伺いたいと思います。

知事
震災対策ということで、かなり他県、他県市町村から応援に入ってもらっており、あるいは赤十字のような医療専門家のネットワークでも心のケア的なところに対応してもらっています。そういう災害対策としての支援、引き続きそういう連携を活かして行っていくということと、それに加えて県としても、もともとこの地域や、それからさまざま団体などと連携して取り組んでいくということを工夫を重ねてきていますので、それも合わせて対応していくということになります。

記者
知事は、被災者支援に際して、常々、被災者一人一人にフルセットで寄り添うとおっしゃっています。自殺対策でも同じようなことが言えるのだとは思いますが、自殺を思いとどまってもらうために、その人にどういう態度で対策に当たる方が接していくべきだとお考えでしょうか。

知事
基本は、傾聴ボランティアという言葉もありますが、耳を傾けて話を聞くという傾聴という姿勢がまず基本にあると思います。そして、地域の中で地域性、地域の特殊性を踏まえていろいろ対応するところ、そのように市町村やコミュニティーが力を発揮するところから、一方では最先端の医学とか、心理学とかの理論、そういうオールジャパン的なところでの最先端の知見が生きていくところもあり、そういうものをつないだり、コーディネートしたりするところで県の広域性、専門性が生かされるところもあります。そういう意味で、行政がフルセットで関係者に寄り添っていくということが、自殺対策についても大事だと思います。

記者
震災関連の自殺は、何人ぐらいいるか把握されていますか。

知事
手元の資料の警察統計によれば、今年3月、4月の県内の自殺者暫定値が66人、前年同月88人と比較すると22人の減少となっています。そして、被災の大きかった沿岸地域において自殺者が特に増えているという傾向は見られないというデータが今手元にあります。

幹事社
ほかに質問がないようなので、発表事項についてはこれで打ち切ります。
本日は記者クラブを代表しての幹事社質問の用意はございませんので、各社から質問があれば社名を名乗ってから、お願いします。

記者
福島原発の事故に関連してお聞きます。震災対応を一生懸命今やっているわけですが、その中で原発対応の遅れとかが、国、あるいは東電でいろいろ言われています。そういう中で岩手県として、国の原発対応についてどう考えているかという点。それから、離れてはいるのですが、農林水産物とか、あるいは県民生活に対して今後の気象状況の変化とか、そういう影響も懸念されるわけですが、そういうモニタリングを含めて、県の安全対策という点でどのようなことを考えているのか、お願いします。

知事
まず、福島原発の事故対応そのものについて、県として組織的にそれをフォローして何かコメントしていくとか、あるいはそこに何か参画していくということは、組織的には特に行っていません。県としては、そもそもは文部科学省が全国一斉にやっている放射能の測定について、そのスキームの下で岩手においても盛岡でモニタリングポストでのチェックを実施してきましたが、住民の要望などにも応じながら、盛岡での定点観測以外での観測、それは空気中の放射能の線量調査なのですが、それ以外にも水とか降下物とかを調査しているところです。
福島原発の対応については、個人的にはもう少し戦略的に、とにかく一日も早く封じ込めるということで、東京電力が実働部隊かついろいろ考えるラインとして動いているのですが、ほかにも日本には専門家がたくさんおり、政府にもいろいろな委員会があったと思いますので、そういうところがまずこのラインに対するスタッフ機能として、他にやり方がないのか、今のやり方でいいのかということを随時検討しながら、海外の意見なども参考にすれば、こんなやり方もあるとか、こうやった方がいいのではないかということがどんどん出てくるのではないかという気がしており、そのようにもっと攻めの姿勢で取り組んでいくべきではないかと個人的には思います。

記者
幾つかの調査で、牧草とか、少し暫定基準値を超えたりとか不安に思う結果も出てきたりしています。知事は、このまま今の状況の原発対応で、岩手県の県民生活に影響が及ぶのではないかとか、風評も含めてですが、あるのではないかという憂慮みたいなものというのは感じていますか。

知事
同心円上にきちんと放射能の影響が図形的に一定に出てくるわけではなく、大気中の線量なども数値の低いところより離れたところで数値が高くなっているとか、意外な数字が出たりします。その中で、基準値を上回る数字について、岩手でも発見があるわけですが、それに対しては迅速にその周辺の検査を行って、また基準値超え市町村の中もまた細かく分けて検査をして、そして岩手全体として大気中の線量とか降下物とかは、3月中旬にさまざまな爆発が原発であった時に若干増え、それ以降はゼロが続いている状態ですので、牧草についても今基準値を超えたものは刈ってしまって、その後生えてくるものの検査をきちんと行えば、これは先にいくほど基準値を超えないような安全な状態が確認できると思っています。
あと牧草については、今年生えてきたものは、まだ家畜には食べさせていないということですので、そういう意味では安全だと言っていいと思います。

記者
先ほどの自殺対策の部分と関連するところもあるかと思うのですが、避難所から仮設住宅への入居が今後増えてくる中で、自活、自立が求められて、その中では経済的なところも含め、不安を持っている被災者の方も多いと思います。なかなか法的なくくりの中では身動きとれない部分というものもあるかと思うのですが、それに対する県のケアのあり方とか、国に対してこうやって求めていきたいという部分があれば、お聞かせください。

知事
避難所に比べて仮設住宅は体には楽になりますので、そういう意味で早く仮設住宅に移って畳の上に布団を敷いてゆっくり休み、お風呂やシャワーも入りたい時に入り、そして食べたい時に食べたいものを食べたいくらい食べるような、そういう生活に早く移行してほしいと思っています。そして、基本的に市町村、県、国、行政の全体の中でおよそ日本国民あるいは国籍がなくても日本に住んでいる人たちは、基本的に食べるには困らないという制度になっていますので、そういう意味での安心、戦争や内乱で国がぐじゃぐじゃになっているわけでなく、政府から地方行政の機能もしっかりしていて、先進国水準の福祉の制度はきちんとありますので、そういう意味で絶対悪いようにならない、絶対変なようにはならないという確信は、それぞれ抱いていただければと思います。むしろ、メニューがさまざまあるがゆえに、当面どういう救済方法を受けていけばいいのかということで、かえって迷ったり、困ったりということが事態の本質だと思いますので、そこには市町村、県、国がそれぞれアプローチしていき、分からないことが分かり、できなかったことができるようになっていくというようにしていきたいと思います。

記者
震災から3カ月が過ぎて、まだ被災者への対応が続いている中で、検証というにはやや早いかもしれませんが、実際に今回の震災の特徴は広域的に被災をして、全国の都道府県から行政についての応援をいただいているという状況で、市町村に対してもまた全国の市町村から応援をいただいているという意味では、これまでの震災のパターンとしては初めてのケースではないかと思います。こういう広域的な連携というものを振り返って、知事の立場でご覧になってうまくいった点、あるいはこの点は改善すべきではないかというテーマがあれば。例えば阪神の場合だと、関西の周辺のエリアの行政が応援したわけですが、今回、東北全域が被災しているような状況なので、東北だけですべて完結できず全国に及んだわけですが、その点についての感想なり、あるいは思いがあれば。

知事
関西広域連合の府県の皆さんの支援は、本当にありがたかったし、あるいは名古屋市のような少し離れたところからの支援が、非常に助かったところがあります。そういう意味で、3.11以前には見られなかったような大変大規模な自治体間協力ということが3.11以降展開していて、これは日本の地方自治の新しい発展段階なのだと思います。
現場力という言葉がありますが、まず被災した市町村が本当に必死で住民に対応している。それを、それぞれ現場の経験がある他の市町村や都道府県が、岩手県も含めて支援していくという形は、個別的な課題については、それぞれもっとうまく要領よくやればよかったとか、いろいろな課題はあると思うのですが、全体としては大変良い形で進んできていると思います。

記者
先日の復興構想会議で素案が提示されて、復興財源に対して基幹税を中心とした、いわゆる増税検討も明示されて、知事はその場で反対の意見を述べられたということですが、改めて構想会議の財源案に対してどのように思われているのかということと、知事はどういった財源案があるのかと、個人的な考えで結構ですので、お願いします。

知事
一昨日の土曜日に会議の中で発言したのですが、ちょうど提出されていた資料の中で阪神・淡路大震災と今回の大震災の比較資料があり、その中で名目GDPが阪神・淡路大震災の頃の方が高いのです。平成22年の推測値が、今のGDPで出ていたと思うのですが、15~16年の間、日本はマイナス成長、少なくてもゼロ成長が続いていたわけで、この期間世界全体としては世界銀行やIMFが、人類が初めて経験する空前の景気拡張時代と言って4、5%ぐらい成長していて、中国とか新興国は8とか10とかすごい経済成長率でした。アメリカやヨーロッパのような成熟した先進国においても一定の成長を見ているわけであり、そういう中で日本だけがゼロ成長あるいはマイナス成長だったということは、やはり金融政策、財政政策が全体としては遠慮気味だったのかと。
例えば、財政政策、支出が多過ぎて、あるいは税金を取らなさ過ぎて赤字が拡大したというよりは、経済のゼロ成長、マイナス成長によって税収が増えずに国の赤字が増えたというのが実態であろうと、そう発言したし、そう思っています。その間、円はかなり高くなっています。阪神・淡路の頃の円相場、ドル相場、対ドルというのは1ドル120円から130円ぐらいだったと記憶しているのですが、それが今は70円から80円ぐらいになっていて、円の価値が上がっているということは、アメリカ、中国はじめ他の国がどんどん財政支出をしたり、あるいは金融緩和をしたりしたのに比較して日本の財政支出や金融緩和がモデレート、穏健だったということです。だから、今の局面においても、私は金融政策、財政政策はもっと積極的に行って良いと思っていて、その結果しっかりと日本の経済も一定の成長率で成長し、消費が拡大し、株価が上がり、そういう中で被災地支援や復旧・復興が行われていくということが基本戦略であるべきと考えているし、そう発言しています。
だから、そういう経済にマイナス効果を及ぼすような増税は、良くないのではないかと考えています。

記者
それに代わる財源として、知事はどのようなものを代替案としてお考えでしょう。

知事
積極的な財政金融政策という中で、それはさまざまあると思います。ただ、そこはアメリカや中国の出方を見ながら、いろいろな金融緩和の手法とか、いろいろな財政出動の仕方がありますので、そこはなかなか今のマクロ経済の生数字を持ってないとこれだとは責任を持った決め打ちはできないと思っています。

広聴広報課
それでは、以上をもちまして記者会見を終わります。

次の定例記者会見は6月20日(月曜日)の予定です。

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