平成20年7月7日知事会見記録

ID番号 N11926 更新日 平成26年1月16日

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(平成20年7月7日 10時31分から11時02分)

広聴広報課
ただいまから記者会見を行います。
最初に、知事から発表があります。
それでは、知事お願いします。

知事
世界遺産委員会における平泉の審議結果についてご報告を申し上げます。
現在カナダのケベックシティにおいて第32回世界遺産委員会が開催されておりますが、日本が推薦しております平泉浄土思想を基調とする文化的景観の世界遺産登録について、本日早朝審議が行われ、登録延期と決定されました。

広聴広報課
以上で知事からの発表を終わります。
それでは、幹事社さんの進行によりまして皆様方からのご質問にお答えする形で進めさせていただきます。
幹事社さん、よろしくお願いします。

幹事社
今のお話で登録延期ということがありました。これについてのお気持ちをまずお聞かせください。

知事
登録を目指して様々な努力を行い、また県民の皆様、さらには県外の皆様からも熱意ある応援をいただいていたところですので、非常に残念です。しかし、これまでも申し上げているように、平泉には世界遺産にふさわしい価値があると思っていまして、その平和の理念、環境の理念、それを地方において実現した自立と共生という価値は、今の日本や世界にとって本当に必要なものだと思いますので、そういう意味では今回世界遺産委員会において登録延期という結論が出たわけですけれども、価値が否定されたわけではないと考えています。
また、先ほど近藤大使ご本人ともやりとりをしまして、近藤大使から直接登録延期という結果を伺ったところですが、登録延期という結果が出た会議の割には、非常に平泉に対して好意的な雰囲気が強くて、十四、五人の委員の人たちが登録に向けて前向きな発言をしてくれたということで、平泉は大変すばらしい、一日も早く記載、登録されることを期待するというような意見が相次いだそうです。
今回技術的な問題で登録延期になるわけですけれども、平泉の世界遺産登録を望むという声が会議の中でもたくさん出たそうですので、やはり引き続き世界遺産登録を目指していきたいということを私からも近藤大使に伝えました。今後外務省、文化庁と協議をしながら登録に向けた必要とされる作業に着手していくことになると思います。

幹事社
これについて各社から何か追加質問ございましたらお願いします。

記者
今回の結果について、知事はどのように分析されているのか、イコモス勧告では構成資産の部分について、価値の証明が不十分だとか指摘があったのですけれども、どのような課題あるいは反省点があったのかということをまず1点お伺いしたいと思います。

知事
分析はこれからです。会議の中で色々な意見が出て、登録延期という理由についてもイコモス勧告のときのまま変更がないのかどうかは、少し詳しい話を聞いてみないとわかりませんので、今の段階で私のところではどういう理由で登録延期とされたのかはまだ不明です。
したがいまして、そういった情報収集をしながら分析を始めていくことになりますけれども、ただそこも生兵法は大けがのもとでありまして、イコモスという専門家会議の勧告に依拠しながら国際的に結論を出していくという仕組みですから、そういう中で自治体としての役割をきちんと果たしていくことが重要と考えています。

記者
もう一点ですけれども、近藤大使にも引き続き世界遺産登録を目指していくというお話をされたということですけれども、登録延期ですと推薦書をつくり直す必要があります。再審査ということになるのですけれども、現段階で再審査をいつごろ目指すのか、お考えがあればお聞きしたいと思います。

知事
これはできるだけ早く、一方で確実に登録を目指していくのが基本方針だと思いますので、世界遺産の登録延期となった場合のスケジュールの基本に従ってできるだけ早くということだと思います。

記者
次に、登録延期は、決して登録の可能性が消えたわけではない、可能性としてはまだ十分にあると思うのですが、登録を待ち望んでいた県民に対して知事から一言お願いしたいと思います。

知事
その前に先ほどの質問との関係で、想定されるスケジュールという資料がありました。推薦書の作成を平成20年度に再スタートして国際専門家会議を複数回開催し、平成21年度中に推薦書を正式に提出して、そして22年度中にイコモスによる現地調査が行われ、平成23年7月ごろに開かれるであろう第35回の世界遺産委員会における審査というのが標準版として想定されるスケジュールになりますので、そういう意味では平成23年、3年後の世界遺産登録を目指すというスケジュールが一般的に想定されるということだと思います。
次に、県民の皆様への言葉ですけれども、もともと県として「いわて平泉年」事業を企画しています。これは登録になった暁には、まず県民が平泉の価値をしっかり理解し、そして対外的にも発信していこうということだったのですけれども、イコモスから登録延期という勧告が出たときから、むしろ登録を目指す中で、まず県民がしっかり平泉の価値を理解して、そして対外的にも発信しようという自主的な県民運動的な動きが非常に活発に行われたと思います。これは、本当にうれしい誤算でありまして、そういうイニシアチブをとられた皆様や、またそういう活動に参加して平泉世界遺産登録に色々な応援メッセージを寄せられた皆様や、またそれぞれの地域、仕事あるいは暮らしの中で陰ながら応援してくださったということを含めると、ある意味で140万県民が総力を結集して平泉世界遺産登録を目指す形ができてきたと思っています。これは本当に県が音頭とって何かやる前の段階から、県民の草の根の中からわき上がる力としてそういう運動が出てきたということは本当にありがたいことだと思っています。
今回は登録が先延ばしされたという、まさに登録延期という結論が出たわけでありまして、登録しないという結論が出たわけではありません。時間はかかりますけれども、その間、県民の内から出てきた平泉に対する理解と、そして対外的アピールということが大きな力となって登録の実現につながり、そして数ある世界遺産の中でも力強く地域に根差し、そして世界にまで広がっていくような、ただ世界遺産に選ばれるだけではなく、優れた世界遺産として登録されていくよう、さらに県も県民の皆様と一緒に頑張っていきたいと思います。

記者
先ほどのコメントの中で、技術的問題で登録延期となるという部分がありましたけれども、これについて詳しい説明をお願いします。

知事
それは会議の中でそういう趣旨の発言があったと近藤大使から伺ったところですので、具体的にどういう中身、どういう趣旨かはこれから伺って、あるいは調べていきたいと思います。

記者
書類手続上のこととかといった予想される部分というのはありますでしょうか。

知事
書類手続的なものはパーフェクトであったので、世界遺産委員会の審議の対象になっているわけでありまして、あとはイコモスの勧告の中にあったような、そういう世界遺産に認められる幾つかの基準と、それに対する推薦書の中での説明との理論的な関係について指摘されたということだと思います。

記者
推薦書の中身と説明書とのマッチングが不十分だったということでしょうか。

知事
基本は推薦書によって決まるのだと思います。その他の説明ということは、世界遺産のルールからすれば明示はされていなくて、そういう意味で推薦書だけ読んでもらえば何の説明もなくても合格みたいなものをつくっていくことがこれからの課題と思います。

記者
先ほどの技術的な問題とも絡むのですけれども、登録に向けて前向きな発言が委員国からあったということですが、これについても具体的な中身というのは近藤大使のほうからお話はあったのでしょうか。

知事
そこも先ほどお話ししたとおりです。具体的な中身についてはこれから伺い、また調べて対応していきたいと思います。

記者
技術的な問題で世界遺産の6つの基準にマッチしなかったということは、その技術的な問題は、多分プレゼンの仕方が悪いというか、平泉の価値としてアピールするポイントがずれていますよというやりとりがあったのではないかと思うのですけれどもいかがですか。

知事
基本はイコモスの勧告の中で、技術的というか、専門的というか、課題が指摘されていたわけであり、それが理由になって登録延期になったものである。そもそもイコモスの勧告自体が登録延期という結論であって、技術的、専門的な理由を幾つか挙げているわけです。そういう意味では推薦書に対するイコモスの勧告なわけですから、そういった問題をクリアできるような推薦書を作成して提出すればよいということだと思います。

記者
今後のことについて外務省、文化庁と協議していくということなのですけれども、登録を今後目指していくということに関しては、地元市町と県と国の機関の合意事項というか、共通認識と考えてよろしいかどうか確認させてください。

知事
正確には近藤大使に私から、登録延期といっても、これはもう登録しないということではなくて、それは延期された、つまり時間をかけて登録するという結論が出たということだから、その方向で登録に向けて努力するというのが県民の意思でもあると考えるということを伝えたのです。
手続的には、各ユネスコ加盟国、世界遺産条約加盟国、政府がそういう推薦書を国際機関に提出するということの意思決定をどのようにやっていくかということだと思いますので、そういう正式な協議とか手続は、今回の推薦書を出したときと同じようなプロセスがあると思いますけれども、まずはそのプロセスで進めていくという方向性について、政府側と県側が共通認識を今持っているということです。

記者
いわて平泉年ということで、登録を想定して色々なイベントなどの取り組みを予定されていると思うのですけれども、登録延期という結果がはっきりした段階で、どういった点を見直していかなければいけないか今の時点でお考えはありますか。

知事
いわて平泉年そのものは登録から1年間を予定していたので、いわて平泉年はやらないことになります。
一方で、先ほど申し上げたような県民の自主的な県民運動的な盛り上がりはあります。あとは、いわて平泉観光キャンペーンのような事業は既に行われています。こうした中で、近い将来の登録に向けたそういう県民運動的なものを県としても幾つか事業で推進していくという観点からどういう事業は残し、どういう事業は先送りするのかということは、これから詰めていきたいと思います。

記者
今後も世界遺産登録を目指すということで確認なのですけれども、実際には勧告を受けて、あるいは委員会の結果を受けて推薦書を取り下げる国は少なくないのですけれども、今のところ知事としてはそういう考えは全くないということでよろしいのでしょうか。

知事
推薦書の取り下げというのは世界遺産委員会に向けて登録延期とか情報照会とか受けた国がもうそれ以上議論しなくてよいと、特に登録延期というのはもう一回推薦書を出し直すという意味ですから、もうわかった、そうしますということで引き揚げるということがあったのだと思います。日本の今回の場合は、世界遺産委員会の議論の中で登録という結論になるかもしれないということで、最後まで登録をあきらめずに世界遺産委員会での審議まで案件をちゃんと残しておいて、ただ登録延期という委員会としての結論が出たので、あとはそれに従って推薦書の再提出というプロセスに入っていくということですから、そこは今から取り下げとかという言い方はしないのだと思います。再提出というような言い方をするのだと思います。

記者
現段階ではまだわからないかもしれませんけれども、3市町の構成資産の関係について勧告の時点でも色々取りざたされていましたけれども、今回こういう結果を受けて、どのような方向に持っていくのが望ましいとお考えでしょうか。

知事
そこは新しい推薦書をつくっていく中で議論されるのかもしれませんけれども、まずはイコモスにきちんと認められるような推薦書をつくっていくということが最大の課題だと思いますので、私として今の段階で資産の範囲についてどうこうということは考えていません。

記者
今後、教育委員会とか文化庁とか3市町とで協議しながら考えいくという解釈でよろしいですか。

知事
そこは行政の調整で決めることというよりは、専門的な議論の中で決める話で、専門家の専門的な議論の中で9資産が盛り込まれているわけですから、その延長上で作業が行われていくと思います。

記者
岩手・宮城内陸地震と今回の世界遺産登録延期勧告とちょっと残念なニュースが続いています。平泉観光キャンペーンが始まって、これからというときなのですけれども、地震の風評被害に続いて登録延期ということで、県民もかなり残念に思っています。今回の登録延期も含めて、今後、元気な岩手を県外に対してどのように発信していくお考えでしょうか。

知事
岩手・宮城内陸地震への対応ということについては、これは国の大々的な支援もあってですけれども、非常に迅速に対応できましたし、また復旧、復興に向けての地域の皆様の頑張りや周りからの応援ということも、プラスイメージの報道あるいは大概アピールと言ってもよいと思うのですけれども、そういうのがあると思います。
今回の平泉の登録延期をめぐる中でも県民の自主的な県民運動的な盛り上がりがあったこととか、そういう岩手のソフトパワーを高め、それを発信していくという面ではプラス要素が重なっていると思います。風評被害的なところの克服については、岩手・平泉観光キャンペーンをはじめ県の様々な関係の事業や、あるいは部署の対応もきちんとやっていきたいと思います。また「いわて希望創造プラン」という4カ年計画自体が様々な逆風や色々なマイナス要素があったとしても、それらを克服して県民所得を引き上げていこう、県民の暮らしや仕事をよくしていこうという、そういう方向性に向けての政策パッケージになっていますから、まずは「いわて希望創造プラン」を強力に推進していくということが色々な困難を克服していくことの基本だと考えます。

記者
結果は残念でしたが、昨夜から記者もずっと張りついて徹夜状態でいたわけですけれども、知事はどのようなスケジュールで昨日から今朝までいらっしゃいましたか。

知事
特にほかの用事は入れないで、県の教育委員会からの連絡や、またケベックからの直接の連絡に備えて待機をしていました。

記者
睡眠は十分とれましたか。

知事
寝たり起きたりで、ずっと寝ていたわけではなく、また、ずっと起きていたわけでもない感じです。

記者
それと登録延期ですので、今後登録に向けて頑張るという話で、今回近藤大使に終盤お世話になった比率が非常に高いと思うのです。逆に言うともっと前から近藤大使と色々な協議をしてやっていたほうが、結果としてはそういうのが足りなかったのではないかと思うのですけれども、例えば、これから新たに推薦書を書いて進める場合についても、今までと目線を変えてやるような取り組みというのは考えていますでしょうか。

知事
世界遺産委員会の前にきちんと資産を見ておくということは、去年の石見銀山のときには急遽行ったことのようで、しかもそれはイコモスの勧告が出た後に、これは見ておかなければということで、石見銀山を大使が視察されたことのようです。それに比べると、今回はイコモスの勧告が出る前の段階から平泉の視察をしていただいていましたし、今までの日本の世界遺産登録に対する対応の歴史からすると一番早い段階からケアしてもらい、またきめ細かく理論武装やそのための学習や、私とのやりとりについても今までのどの資産よりもそこは手間暇をかけてやっていただいたと思います。
そのことは、登録延期という結論ではあるのですけれども、平泉に関する理解をかなり多くの国に広める効果があったと思いますし、そういう平泉ファンというのが世界のそういう文化関係者あるいは外交関係者の間にかなり浸透したと思います。そういう意味では、先ほども申し上げましたように、世界遺産登録された暁にはほかの世界遺産と比べても特にソフトパワーの強いといいますか、そういう文化的魅力とか、それを守る住民たちの信頼感ということについて傑出した世界遺産という評価を勝ち取っていくことに大きくプラスになったと思います。

記者
各委員国の大使館にも知事は行かれましたけれども、改めてお礼のごあいさつとか予定していますか。

知事
お礼はそれぞれ自然な形で進めていきたいと思いますけれども、岩手にとって大きい資産になったと思います。そういう国際的な理解、認識が深まった、これは平泉だけではなくて岩手というもの、その地域や人についての理解、認識が国際的に深まったということは色々な方面に影響が及ぶと思います。今週は仙台の韓国総領事が地震の義援金を県庁まで持ってきてくださるのを受け取ることになっているのですけれども、そういう地震のお見舞いということについてもより懇切といいますか、より丁寧な対応をしていただいているのではないかとも思います。また大使や総領事と私との間の個人的な関係についても深まったと思いますので、こういったことを今後の岩手の色々な活動に生かしていきたいと思います。

幹事社
それでは、世界遺産関係以外のことで各社から質問があればお願いします。

広聴広報課
それでは、これをもちまして記者会見を終わります。

次の定例記者会見は7月14日(月曜日)の予定です。

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