平成20年2月12日の記者会見記録
ID番号 N11888 更新日 平成26年1月16日
開催日時:平成20年2月12日18時30分~19時39分
広聴広報課
ただいまから記者会見を行います。
最初に知事から発表があります。
それでは、知事、お願いします。
知事
まず、この記者会見は午後3時に行う予定でありましたが、県外出張のためこういう時間の記者会見となりましてご迷惑をおかけしたことをおわび申し上げます。
さて、今日の知事発表事項は、平成20年度当初予算、平成20年度の組織・職員体制、そして岩手県文化芸術振興基本条例案についてです。
平成20年度当初予算についてですが、お手元の資料の「平成20年度当初予算のポイント」のA4判横のものを参考にしてください。予算の呼称として、希望の芽を守り育てる「希望創造予算」といたしました。私にとっての初めての当初予算であり、また「いわて希望創造プラン」推進のための第一歩となる予算でもございます。この予算編成の方針でございますが、「いわて希望創造プラン」の推進のため、今後の3年間トータルで検討し、戦略的に地域づくりに取り組む予算として編成をしました。集中改革プログラムに取り組み、歳入歳出の徹底した見直しを実施し、真に必要な事業に重点化をしました。併せて中期財政見通しを策定し、今後3年間収支均衡の見通しとなったところです。平成20年度は前年度比マイナス4%になりますが、来年度の平成21年度以降はマイナス傾向に歯止めをかけ、政策的な事業が今年度とほぼ同規模で展開できる見通しです。
予算編成方法の見直しとして、すべての事務事業の総点検を実施しました。要求段階から創意と工夫で徹底した歳入歳出見直しをしながら、部局予算枠を廃止し、全庁的な調整の下で事業を重点化しました。
予算の規模としては、平成20年度予算6,584億円、前年度比でマイナス4%、平成14年度以降7年連続の減となります。
事務事業の整理統合、経費の節減、既存施設の活用など創意工夫で最大の効果が得られるよう事業を組み立てました。なお、平成20年度から公債管理特別会計を設置し、近年県債借り換えが増加し、実質の財政規模を明確に示す必要があるため、借り換え分の650億円程度を一般会計から分けることとしました。
資料の右上をご覧ください。特に重点的に取り組む事業については次のページで説明をいたします。なお、これまでの課題にもしっかりと対処するということでIGR新指令システムの構築、森のトレー償還金、緑資源機構からの林道事業の受入れなどの予算を組んでいます。
集中改革プログラムの取り組みと中期財政見通しということですが、持続可能な財政構造の構築のため行財政改革に取り組み、事務事業の総点検のほか、歳入の確保として平成20年度66億円、平成21年度102億円、平成22年度153億円の各種基金や未利用資産の売却促進などの財源対策を講じます。また、歳出抑制策としては職員数の削減、そして3年間の職員給与の特例減額によりまして、各年度約21億円の財源創出などを行います。こうした対策により中期財政見通しは、平成22年度まで収支均衡となり、政策的な事業が今年度とほぼ同規模で展開できる見通しとなります。資料2枚目、平成20年度に重点的に取り組む政策についてです。「いわて希望創造プラン」に掲げた4つの重点課題の解決に向けた取り組みの着実な推進を基本としています。そして、2つの基本戦略、政策の6本の柱について当初予算に計上した主な取り組みについて整理しています。具体の事業内容は、「平成20年度当初予算のあらまし」で説明します。次に、資料の3枚目、平成20年度当初予算の状況ですが、歳入は、個人住民税、法人2税の増収で県税収入が0.2%微増です。地方交付税・国庫支出金は、教職員給与費や公共事業の減などによりマイナス5%前後です。次に、歳出ですが、人件費は職員体制のスリム化や職員給与の特例減額により減となっています。投資的経費は3%程度のマイナスで、過去の北上山系開発に係る償還金などの減が要因でありますが、建設工事等の事業量については公共事業と大規模施設整備事業、県立高校や警察署等の建設事業及び19年度2月補正で追加する公共事業約15億円程度を平成20年度に繰り越す予定であり、総額で前年度水準を確保します。プライマリーバランスは一時的にマイナスになりますが、今後3年間平成22年度までのトータルでは黒字の見通しです。次に、資料「平成20年度当初予算のあらまし」のA4縦の冊子17ページをご覧ください。重点的に取り組む政策についてですが、平成20年度の政策展開の基本的な考え方として、地域経営の視点を強く意識、4つの重点課題の解決に向けた取り組みを着実に推進、平泉文化遺産の世界遺産登録の実現と効果を全県波及させる取り組みを展開することとしています。18ページに移りまして、4つの重点課題の解決に向けた取り組みとしては、まず第1に県民所得の向上です。産業振興の取り組みをより一層強化し、本県経済の力強い成長を目指します。ものづくり産業への集中支援、魅力ある観光資源、質の高い農林水産物を生かした取り組みを推進します。第2に、雇用環境の改善についてですが、雇用の場の創出、人材の育成、求職者と地元産業界の適切なマッチング、この3つの視点を重視した取り組みを推進します。第3に、人口転出への歯止めですが、人口の社会減が平成19年度で6,881人と前年より増加しました。特に若年層の占める割合が高い状況です。これに対して、産業振興による雇用の場の創出に向けた取り組み、医師確保や子育て環境など若い世代が安心して暮らすことのできる環境の整備、首都圏等に在住する団塊世代等の方々の県内への定住や交流を促進する取り組みをしてまいります。第4、地域医療の確保ですが、医師の絶対数不足や地域偏在、質の高い医療体制の確保などの課題に対応するため、医学生に対する奨学金制度の拡充や女性医師の就業支援、ITを活用した周産期医療ネットワークの整備やドクターヘリの導入の可能性についての検討などをします。次に、23ページの岩手ソフトパワー戦略として、平泉の文化遺産の世界遺産登録の実現と「いわて平泉年プロジェクト」の展開をすることとしまして、今年7月に見込まれる平泉の文化遺産の世界遺産登録を契機として平泉文化の自立と共生の精神を県民共通の認識とし、その価値を広く発信すること、遺産の保存と活用に向けた各種の事業を「いわて平泉年プロジェクト」として展開を進めます。41ページにまいりまして、県北・沿岸圏域の振興対策として、これまで産業振興に向け、県北・沿岸地域中小企業振興特別資金貸付金などを創設してまいりましたが、平成20年度においても、例えば今年度開通した早坂トンネルや仙人峠道路などの基盤を生かした食産業、ものづくり産業、総合産業としての観光などの重点的な取り組みを一層推進します。平成20年度当初予算については以上です。次に、発表事項の2、平成20年度の組織・職員体制の概要についてですが、これもお手元に配付しています資料を参考にしてください。今回の組織改正は、計画的な職員体制のスリム化を進めながらも、「いわて希望創造プラン」の推進や、その他直面する課題の解決に向け、必要な体制を整備するという基本的な考え方に立って体制の一部を見直したものです。
まず、2つの基本戦略の新地域主義戦略にかかわるものとして、4つの広域振興圏を基本とした地域経営を行うに当たっての重要なパートナーであります市町村を支援するため、中核市へ移行する盛岡市などへ権限移譲に伴う職員派遣等を実施します。
岩手ソフトパワー戦略の関係では、県議会2月定例会に提案する文化芸術振興基本条例に基づく総合的な文化芸術施策を展開していくため、地域振興部NPO・国際課をNPO・文化国際課に改めるとともに、新たに文化振興担当課長を配置します。また、大連市を基点とした県内企業のビジネス展開、さらには東アジア地域との共生的発展に向けた基盤を構築していくため、大連市との地域間連携推進の協定に基づき、大連市に職員2人を派遣します。さらに、平成28年国体の開催準備を進めるため、国体担当を課に改組し、国体推進課を設置します。政策の6本の柱の関係については、農業研究センターに分野横断的な研究を行うプロジェクト推進室を設置するほか、保健福祉部に公的医療改革担当技監を配置し、また自殺予防対策を担当する福祉総合相談センターの職員を増員するなど、これら施策推進のための体制を整備します。その他、重要な課題への対応等として、部局体制の見直しとして総合政策室を総合政策部に改めようと考えております。総合政策室は平成13年度に設置されたものですが、全庁的な政策を調整し、取りまとめる組織の部としての位置づけの明確化を図ろうとするものであります。また、併せて総合政策部を含む各部に部長を支える副部長を配置し、各部内における総合調整機能を強化します。また、岩手競馬は本年度の収支均衡が確実となったことから、平成20年度も存続することにしていますが、さらに民間委託の拡大など将来にわたり存続できるよう一層の経営改善に取り組んでいくこととしており、県としてこれを積極的に支援していくため、農林水産部に競馬改革推進室を設置します。最後に、職員数についてですが、平成20年度当初における知事部局の職員数は、本年度当初より120人程度少ない4,340人程度と見込んでいます。続いて、発表事項の第3、岩手県文化芸術振興基本条例案についてです。県では、文化芸術振興の基本理念や基本方策について明文化するとともに、その振興を宣言し、総合的な施策を推進していくため、岩手県文化芸術振興基本条例を2月定例会に提案します。条例案は、これまで実施した文化芸術振興懇話会やパブリックコメントによる様々な意見や提言を参考としながら策定しました。本条例案の特徴としては、まず前文において、本県における文化芸術の普遍的価値として自然との共生や文化芸術が結いの精神を基礎とするコミュニティーを形成したことを挙げていること、基本的施策として文化芸術の認識及び理解、文化芸術の総合的把握及び記録、民間活動等に対する支援を挙げていること。具体的な施策を推進するため、平成20年秋までに文化芸術振興指針を定める予定であること。岩手県文化芸術振興審議会を設置し、岩手県文化財保護審議会との有機的な連携を図ることが挙げられます。なお、文化芸術の振興に当たっては知事部局と県教育委員会が連携を図り進めることとしており、来年度の知事部局の組織体制についてNPO・国際課をNPO・文化国際課にして文化振興担当課長を設置する予定です。また、平泉の文化遺産の世界遺産登録と合わせ、本県の文化芸術を積極的に内外に向けて発信するため、平成20年度は新規事業として文化情報の発信サイトであるいわての文化情報大事典の拡充整備、県内の文化芸術資源の総合的把握及び発信を事業として計画しています。準備していた発表事項は以上ですが、その他としましてお知らせいたしたいことがございます。本日、2月定例会の日程に関しまして、各派代表者会議の場で執行部のほうから副知事選任関係の議案の提案期日等についてお知らせをいたしました。2月21日、2月議会の招集日でありますが、この日に副知事選任に係る議案を提案することとし、議会には同日の採決をお願いしたいと考えています。副知事には新任の者をと考えており、副知事の人員は1人としようとするものです。
広聴広報課
以上で知事からの発表を終わります。
それでは、幹事社さんの進行によりまして皆様方からのご質問にお答えする形で進めさせていただきます。
幹事社さん、よろしくお願いいたします。
幹事社
今日は発表事項が多いので、質問を区切って、まず平成20年度の当初予算についてから取りまとめたいと思います。当初予算について各社から質問があればお願いします。
記者
まず、1点目なのですけれども、知事が知事選のときに掲げたマニフェストがこの予算にどれくらい反映になっているのか、知事の自己採点をお伺いします。
知事
かなり反映されていると思いますので、反映の度合いについて言えば100点と言ってよいと思います。
記者
すべてが100点満点だとすれば、一番力を入れた点を教えてください。
知事
基本的にマニフェストについては全面的に「いわて希望創造プラン」を通じながら予算化していますので、全面的に反映されていると言えると思っています。
記者
今回のこの予算は、財政再建というよりは財政出動をかけて基盤づくりに力を置いている感じと見受けられるのですが、そのようなとらえ方でよろしいのでしょうか。
知事
今後3年間の中期見通しとして、非常に危機的な財源不足があったわけでありますけれども、それに対応する給与の特例減額を含むかなり身を絞るような行財政改革を進めながらも、地域振興、産業振興的なところについては、むしろ新規の事業も含めて積極的に対処しているというところが特徴だと思います。
記者
今後3年間の中期財政見通しを出されて、とりあえず1期目の任期中の政策は、今回の予算案の程度でこれからも続いていくという認識だと思うのですけれども、この程度の反映具合というか政策の打ち出し規模というのは、知事が知事選で考えていたときとほぼ同じなのか、それとも足りないのか、それともむしろ多いのか、どちらなのですか。
知事
危機を希望に変えるという観点からしますと、危機に向かって落ち込んでいく方向から、反転180度希望に向かって進んでいくという、その反転攻勢を今回セットできたということが非常に大きいと思っています。7年連続のマイナス予算ということで、7年間の当初は、ITバブルの崩壊あるいは金融の不良債権処理で非常に地域経済が金融的に逼迫した中で、県民所得が大きく落ち込んだのが2001年でありますけれども、その後民間経済は新たな誘致企業の拡大や民間経済の努力によって、一定の上昇はしていたわけでありますけれども、これを相殺する県の予算、市町村の予算の大幅な減額、それは国の財政政策によるものでもあるのですけれども、これが県民所得を結果、横ばいとして離陸できない形にずっと7年間してきているわけです。今回、県の予算の減額の底をつくることで、民間部門ががんばればがんばっただけ県民所得が上昇していくという新しい岩手のマクロ経済構造をつくることができましたので、これは非常に大きいと思います。これに加えて国の政策転換で、国から地方へのお金の流れが増えるとか、あるいは経済対策的なことが行われるとかというようなことが更に加わりますと、より岩手の県民所得は向上の方に急角度で向かっていくということになりますので、そういうことができたというのは非常によかったと思います。
記者
今回の予算は、知事にとって初めての当初予算編成になったと思います。歳出の状況を見ますと義務的経費が50%近くになっていまして、特に公債費の構成比が高くなっています。そういう中で、色々と予算編成にご苦労された点もあると思うのですが、この編成に際して一番苦労された点というのはどのあたりにあるのでしょうか。
知事
選択と集中ということで、一方では予算を絞り込みながら、一方では県民生活や県民経済により影響をもたらす分野については重点化していくというその加減が大変だったわけです。
記者
重点化した事業の中で、特に知事の思い入れが強い事業を二、三挙げればどういう事業がありますでしょうか。
知事
産業関係で色々とよい希望の芽があって、それぞれ農林水産業、製造業、観光などのサービス業、そういったところの希望の種のようなものに手当てすることに意を用いたわけですが、1つ象徴的なものはコミュニティー支援の予算です。これは290万円という予算規模でありまして、市町村関係の合併市町村自立支援交付金の13億3,000万円、市町村総合補助金の6億円、地域振興推進費の3億円とかに比べますと290万円というのは小さな額ではありますが、予算というのはオーケストラのようなものだと思っていまして、先ほど挙げた従来からの継続の大型な予算がストリングスの弦楽器の重厚な重低音とか、あるいはバイオリンの圧倒的な音色だとすれば、草の根コミュニティー再生支援事業費290万円というのはトライアングルの「チーン」みたいな感じです。ただこの「チーン」があるとないとでは、予算全体の趣が全然違ってくるところでありまして、草の根コミュニティー再生支援事業費の290万円の「チーン」という音色が気に入っているところです。
記者
今回策定しました中期財政見通しを見ますと、主要3基金が平成22年度末に51億円に減少します。これまでのように財源が不足した場合の財政調整という意味で財調基金を取り崩したりすることには、頼れない状況になってくると思います。今、コミュニティー支援の290万円の予算は、額は小さいけれども、意義が大きいというお話がありましたけれども、今後知事として財政運営をどのように取り組んでいかれるのか、基本的な考えをお聞かせ願います。
知事
行財政改革は今回で終わったわけではありません。きちんと「いわて希望創造プラン」の中でも集中改革プログラムという改革編が不可欠の要素として組み込まれていまして、これによってさらなる節約ができればその分を基金のほうに回していくことができます。基金をこれだけ減らすことについては、災害など万一の色々な不測の事態に対しても対応できる最低限は残すようにはなっているのですけれども、やはりできるだけそこに節約した分を積み増していきたいと思っていますので、そういう意味で行財政改革というのは更に続けていきたいと考えています。
記者
中期財政見通しの関係でお伺いしたいのですけれども、知事選の公約でプライマリーバランスの均衡を掲げていたと思うのですが、これに関して3点お伺いしたいと思います。
最初に、今回の見通しでは、3年間でトータル38億円の黒字となっているのですが、確かにこれを見ると公約と齟齬はないと思うのですけれども、その3年で基金の取り崩し額が126億円差し引きで発生します。家庭的な感覚からいうと実質的には赤字とも見えるのですが、その点について公約との整合性をどう考えているのか教えてください。
知事
私は、できればどんどんお金を借りて、どんどん事業をするという、必要であれば赤字を増やしてでも事業をどんどんやれるような財政をあらまほしき財政のイメージとしてあるのですけれども、藩の財政改革で有名な上杉鷹山公が、米沢藩が物すごい借金体質だったのですけれども、それをきちんと事業計画を立て、これからは産業化にも力を入れて、これだけ借りたらこれだけ返せるようにしますというのを明らかにした結果、大商人が、今までの借金は帳消しにして、今回もお金を貸しましょうとなったというのが一つ理想の姿なのです。そのために必要なのは財政規律というものをきちんとやっていける信頼でありまして、ただ借金を増やしていくというだけでは納税者あるいは岩手における主権者である県民の賛同は得られないと思っていまして、プライマリーバランスの均衡という、その線をみんなで守っていくことがそういう信頼できる財政への王道と考えて公約にし、また当選後も県財政の基本としているところです。今回の基金の取り崩しについては、かなり詰めて他の予算の削減、また歳出の削減については職員の給与の特例減額ということまで踏み込んでやることと同時に行われている基金の取り崩しであって、単に無計画に基金を取り崩しているのとは全然違うので、ここのところは県民の理解も得られ、むしろ信頼できる財政という評価を得られるのではないかと思っています。
記者
次に、今お話も出たと思うのですが、この見通しの結果、基金は最終的に51億円しか残らないことになると思います。県の活性化のためにある程度お金を積極的に出していくのも当然必要だと思うのですが、そうはいってもかなり厳しい状態だと思います。この事態についてのご認識を改めてお伺いします。
知事
1つは、先ほども申し上げたように、更なる行財政改革によって節約して基金に上乗せをしていくということはきちんと取り組んでいきたいと思っていますし、あとは県民経済が好転して所得が上昇してくれば県税収入も上がります。また国でもそういう地方再生の施策を進め、国自体の経済を底上げしていくような施策をとればそれが間接的に岩手の財政収入の増にもつながってくるわけですので、その節約と、そして働いて稼ぐというその2つで何とか中期見通し以降の、23年以降の上昇コースを確保していきたいと思います。
記者
3点目なのですけれども、対策は対策として当然あるとは思うのですが、国立の人口問題研究所とかの試算だと人口はこれから30年間で30万人ぐらい減り、高齢化率も10ポイントぐらい増えて35%ぐらいまで上がってしまいます。そういう中で恐らく人口が減って税収が減ったり、社会保障費が増大したりということなど逆風も予想されると思うのです。この見通しで最終的に劇的に財政事情が好転しなかった場合に、何らかの事業の廃止、サービス削減、料金値上げ、新税の創設とか、色々なことを検討しなければいけない段階がひょっとしたら来るかもしれないと思うのです。そうした事態になったときに、知事としてはどの辺に重きを置いて、ある意味では何を切り、何を守っていくのかというところを将来の話ではあるのですが、3年後というと結構近いことなので教えてください。
知事
まず、県民所得の向上は、1人当たりの県民所得の向上ということでありますので、そういう意味では人口減少であれば人口減少なりに1人当たりの所得水準とか、生活の水準といったものを見ながら政策を進めていきます。例えば県職員の数は人口減少にも合わせて減っていくというコースをとっているわけでありまして、そこのところは既に人口減少もにらみながら無駄の無いような、必要なサービスは提供できる体制を進めているところです。
一方、達増拓也の野望といたしましては、岩手の魅力、ソフトパワーでありますが、買うなら岩手のもの、働いてもらうのだったら岩手の人、また訪れるなら岩手というような、岩手の評価が高まっていけば日本のほかのところからの人口流入が実現する可能性もあるわけでありまして、そこは人口が増えるということもあきらめずに、また予測されている人口減少の割合については歯止めをかけていきたいと考えています。
記者
今の質問の答えの中で、23年度以降という話がありました。公債費なのですけれども、中期財政見通しの3年目のところから23年度以降は、金額的にかなり膨らむ予想が出ています。そういう状況で、今回の中期財政見通しの3年間では、先ほどの職員給与の減額とか、基金の取り崩しという形で財源対策を主にしているわけですけれども、その23年度以降に増える公債費に対応するために、この3年間のうちにどのように運営していけば23年度以降に予想される財政状況に対応できると考えているのか教えてください。
知事
県債の大幅増額というピークは、過去のことでありますので、今後は借り換えをうまくやっていくことで公債残高についてはほぼ横ばいという水準で持っていけるようにできる見通しが立ちましたので、公債残高が増えていくというふうには23年度以降はならないです。
記者
残高ではなくて、毎年度払っていく公債費が22年度までと23年度以降では額が増加すると県では予測していたはずなのですが、そういう財政、いわゆる義務的経費が増える状況に対して、この3年間でどういう手当てをして23年度以降の財政対策をしていくのかというところをお聞きしたいのです。
知事
公債費、いわゆる元利償還金については25年度あたりから26年度、27年度あたりにピークを迎えて28年度からは減額に転ずるという山を迎えるわけでありますけれども、ここのところはピークに向かう際に前年比で50億円から100億円の間ぐらいから少しずつ増えて、そしてまた減額にいくというふうになっているわけでありますので、行財政改革による節約分と、そして県民経済活性化、また国全体の経済の回復による増収分を合わせて、そこで50億円から100億円をその年ごとに確保できればよいわけでありまして、今の段階で詳しいやり方を明らかにすることはできませんけれども、まずこの3年間をしっかりやることができれば、そこからその後をやりくりする余力というのは生まれてくると思います。
記者
先ほど予算はオーケストラというお話をされましたけれども、新年度の予算で思い浮かぶ楽曲等がありましたら教えてください。
知事
ブラームスの交響曲第1番です。物すごい陰気に、重厚に始まるのですけれども、最後の方は明るい調子になって第4楽章が終わるという感じに仕上がっていると思います。
記者
2つお聞きしたいのですけれども、1つは先ほどから話が出ている義務的経費の関係で伺いたいのですが、今回47%ということで半分近く占めています。ということはそれ以外の政策的な経費とかがかなり窮屈だったのではないかと私は見ています。知事はかなり手ごたえを感じていらっしゃるようでしたが、47%というこの率については、実際に予算編成に臨んでみてどうだったのか教えてください。
知事
そこがブラームスたるゆえんなのですけれども、義務的経費とはいえ、それは無駄になってしまうわけではなくて、まず県内経済に対するマクロな資金の流れをつくることに少なくともなりますし、ただ政策的なプラスの効果というのを挙げられないところが悩みなのではありますが、その分は重点化した政策的経費でカバーしていくとともに、先ほどのトライアングルの「チーン」という音色のコミュニティー支援事業もそうなのですけれども、ほとんどゼロ予算といいますか、ほとんど人件費のような事業で経済的な効果も新産業や新ビジネスの誕生といったことも促していける、一種無から有をつくり出すような、そういう事業を今回大分増やしたと思っています。以前に県職員は10倍、100倍の力を発揮してほしいという話をしたのですが、あれは10倍、100倍苦労しろという趣旨ではなく、県民生活の向上、県民所得の向上が10倍、100倍、そういうゼロ予算であれば所得の向上効果がゼロ予算から生まれれば、それは無限大倍ということになるし、人件費程度のところから何千万円とか何億円とかというビジネスが出れば10倍、100倍の効果があったということになります。これは21世紀型の行政としては、とにかく大規模な予算を使ってマクロ的な力で経済を押し上げるというだけではなくて、広告代理店とか、シンクタンク、あとアドバイザーとか、コンサルタントがやるような仕事を県もやっていくということで、少ない予算で高い効果を上げていくということが求められていくのではないかと考えています。
記者
とはいえ色々な政策を実行するにはお金が必要なのですが、今回初めて本格予算に臨まれて、義務的経費が何%ぐらいに抑えられたらもっとやりたいことができるのになというようなところがあれば教えてください。
知事
それはあればあるだけ色々な事業ができるのですけれども、ただ増税とかの県民の負担増をするべき時期ではないと思っていますので、そういう意味では、ある中でやっていくということでよいのだと思っています。
記者
予算編成方式について2点ほどお伺いします。今回の予算では、これまでの部局枠を撤廃して一極型の編成方式に戻したのですが、以前の会見でも聞かれる場面はありましたが、ここで改めてそのねらいを聞かせてください。
知事
衆議院議員時代に予算委員会の委員もやっていて、国の予算書をいつも見て全体をぱらぱらと見ていましたので、やはり県の予算も全体を見たいと思っていました。それで、およそ1,000の事業を私も全部一通り見まして、そこも一人で見たのでは意味がないので、三役会議という場を設定してみんなでチェックするというふうにしたわけでありますけれども、それによって全庁規模での選択と集中ということができたと思います。知事枠とか、これは国のほうでも全体が80兆円規模の中で2,000億円くらい首相枠とか設けて、あとは各省縦割りでやっていくという手法があるのですけれども、あれは予算がどんどん増えている時代であれば各省庁もクリエイティブなことをどんどんやり、それに加えて総理が特にやりたいことを乗っけられるというメリットがあったと思うのですが、予算が減っていくときにはかえって分野ごとの予算がどんどんじり貧に陥る中で、選択と集中をしなければならない、そういう全体を見て決める予算の枠が少ないままだと、マイナス予算時にはいつまでも全体の見直しができないという弊害が強く出てしまうやり方だと思います。ですから、今回はいわば全体が知事枠のような形にいたしまして、6,584億円の全体が少なくなっていく予算の隅々にまで100万円単位、あるいはそれより小さい100万円以下の事業についてもきちんと知事の意思が入っていくようにして、それぞれが決して無駄に使われず、かつ全庁的な意思がそれぞれの事業に乗っかっていくようにする、そういう本当の選択と集中というのができたと思います。
記者
全庁的な選択と集中がしやすくなるというのはもちろんあると思うのですが、それは一長一短で、一方で現場から判断が遠くなったりとか、ヒアリングなどの中間の手間、これはコストとも言いかえられなくもないと思うのですが、そういう増えた部分も当然仕組み上出てくると思うのです。それからすると、今地方が国に対して求めている現場に近い地方に財源とか裁量を渡してくれという分権の流れの一方で、県庁内ではその逆とも言える方向に進んでいるようにも見えてしまうのですけれども、今回実際に予算編成を終えてみて部局枠撤廃のある意味で負の部分というのはどの程度あったかとお感じでしょうか。
知事
現場に任せるということについては振興局ですが、振興局に任せる部分ということで、これはかなり議論をして、その部分も大きく刈り込んで県庁で差配するようにしようかという議論もあったのですけれども、先ほど紹介した地域振興部予算の地域振興推進費として3億円は、これは本当に地域という意味の現場の中にいる振興局が市町村やNPO、個人と相談しながらつくっていく予算として確保しました。現場への裁量というのは、そういうところだと思います。
県庁各部局は、縦割りの弊害を越えて県庁としての意思決定をするものの一環として存在していると思いますが、先ほども言いましたけれども、予算がどんどん増えていく時代であれば各部局に任せてクリエイティブな事業をどんどん増やすことが効果的だと思うのですけれども、今はそういう状況ではないので、今回のようにしたということです。
記者
先ほどブラームスの交響曲とお話しされましたけれども、陰気なままで困るので、できれば陽気にしていただくよう頑張っていただきたいという要望が1点です。
冒頭にお話しされた副知事の選任案件の提案についてなのですけれども、前回の会見で聞いたときにはまだ意中の人はいらっしゃらないみたいなお話しをされていましたけれども、21日に同意人事を提案されるということで、今は名前の公表はできないでしょうけれども、知事の中ではもう人選は決まっているのかどうか教えていただけますか。
知事
開会日の21日に提案するというスケジュールに間に合うように調整していきたいと思います。
記者
まだ調整中ですか。
知事
総合的な意味で調整中であり未定です。
記者
今日、部長クラスの方々に退職勧奨がなされたみたいなこともあって、例年だと3月中旬くらいの県の異動人事があると思うのですけれども、それに向けて知事の頭の中に構想はあるのでしょうか。
知事
職員録を繰り返し読み返してはいます。
記者
それは過去の経験を見ているということなのでしょうか。
知事
色々とシミュレーションをしたりしています。
記者
まだ明かせる段階ではないということですか。
知事
未定です。
幹事社
それでは、今も出ましたけれども、職員体制、文化芸術振興条例、人事案件の残る3つの発表について、各社から質問があればお願いします。
記者
組織・職員体制の概要の一番最後に職員体制のスリム化というものがありまして、事務の簡素化、効率化を推進しながら職員数を削減とあるのですが、これは退職者の不補充という意味での削減ということですか。
知事
新規採用数を低水準にするという意味です。不補充といっても全然補充しないわけではなく、基本的に新規採用を抑制するということです。
記者
先ほどの副知事人事の関係の日程を確認したいのですけれども、21日の議会に提案するということですが、その前の20日とか、あるいは会派代表者会議を19日あたりに開いていただいてその時点で説明するとか、議会に対して真摯な対応で説明するということで今日お話しされたのだと思うのですけれども、その日程を確認させてください。
知事
具体的な細かい段取りは、総務部を窓口に執行部側と県議会側との間で詰めていきますけれども、その招集日前日に議会運営委員会があり、その前日に会派代表者会議ということですので、そういった場を利用しながら開会日の提案、そして採決ということがスムーズにいくよう議会の方にお願いしていくことになると思います。
記者
組織・職員体制の関係について伺います。大連市へ派遣する職員はどういう分野を想定されているのかということと、シンガポール事務所廃止の経緯、理由をご説明ください。
知事
大連に派遣する職員は、今の段階で特にこういう専門とか、そういう縛りは未定です。
シンガポール事務所については、北海道、北東北3県の共同の事務所なのですが、まず北海道から撤退の意向が示されまして、その理由としては物産の販路拡大等における所期の目的を達成したということだったのですが、その北海道からの撤退の意向を受けて、4道県で協議の結果、平成19年度をもって撤退することで合意に至りました。
なお、岩手県と秋田県は、なお存置の方向を模索したのですが、岩手と秋田だけの2県での設置は財政的に困難ということで、やむを得ず撤退ということとなりました。シンガポールは東南アジアの一つの中心でありまして、県内企業の経済交流の拡大が見込まれる地域でありますから、平成20年度以降は秋田県と共同で現地コーディネーターというものを配置して、シンガポール事務所で築き上げた人脈等を活用しながら経済交流活動を支援していきたいと思っています。
記者
先ほどの副知事人事の関係ですけれども、改めて今回副知事に新任の方を起用される意義というものを教えてください。
知事
そこは未定でありますので、そういう話は決まった後でお願いしたいと思います。
記者
この前の記者会見で、びっくりするようなことはないとお話しされていましたけれども、色々な解釈があるかと思うのですけれども、現在のところ県庁内あるいはOB等々からの登用を考えていらっしゃるのでしょうか。
知事
未定です。
記者
今日で上村出納長が退任します。竹内副知事も18日付で退任になるかと思います。知事の就任以降、知事を支えてきたと思われるのですけれども、このことについてはいかがでしょうか。
知事
お二人とも去年の4月30日任期スタートの時点で、あの日は振替休日でありましたから、私の初登庁は翌5月1日だったのですけれども、まず任期スタートの時点で私のもとでも働いてもらえるかということを確認したいと思い、知事公館でお二人とそれぞれ会いました。そしてそれぞれよかったら働いてもらえないかとお願いし、であれば働きますということで引き受けていただきました。達増県政のスタートのところを一緒に競馬問題はじめ色々な多事多難な中でのスタートだったわけでありますけれども、そういったところも的確に対応しながら、いわゆる達増カラー的なものについても積極的に県政に取り入れていく、そういう指揮、調整をとってもらい、また競馬問題、IGRのシステム変更負担の問題、森のトレーの延滞金問題、そういう大きい課題について本当に年末年始も挟んで一定のめどを立ててくれたということで感謝をしています。そうした成果を次の体制にしっかりと引き継いでいきたいと思っています。なお、上村出納長については、本来任期はまだ1年あったわけでありますけれども、釜石市長さんから強く副市長にということで、任期の途中ではあるけれども、本人もふるさと釜石に尽くしたいという意向があり、また私も県としてというか、総合的にそういう形で市長の突然の交代という危機的状況を克服しようとしている釜石市がまさに危機を希望に変えていくために上村出納長であればこの上なく大きな力を果たすことができるということもあるので、今回辞職を承認した次第です。
記者
部局枠の撤廃の関係なのですけれども、先ほど知事のお話の中でマイナス予算の中ではやむを得ない部分があるというお話でした。とはいえ大体一般財源ベースで今年度47億円ぐらいあったと思うのですが、それを撤廃するということは、逆にそれを撤廃して何ができたのだということを求められる部分があると思うのですが、知事として何ができたかということをお聞かせください。もう一つ、先ほどマイナス予算の中でというお話があったので、今後プラスになることは難しいのかもしれませんが、規模を維持する中で復活する可能性があるのかどうかお聞かせください。
知事
先ほど言わないでしまったのですけれども、部局枠の撤廃はシーリングで一律に抑えていくという形からの脱却でありまして、県全体にとって効果的な施策であれば青天井で要求してよいということも、今回特にそういうやり方でやったのです。そういう中で、かなり各部局新規事業で工夫を凝らしたり、また既存の事業を大胆に整理統合してまとめて大きい形に持っていったりとか、そういう創意工夫はむしろ予想以上に各部局から出てきたので、そこはよかったと思っています。部局枠復活の可能性については、予算がどんどん右肩上がりになるような時代になってくれば、クリエイティブな新しい事業をどんどん工夫してもらうということでまた導入するかもしれません。
記者
一部報道で東芝の半導体工場が北上に有力になったという話があったと思うのですが、県の幹部の方はまだ直接お話聞いていないと思うのですけれども、その後変化があったのかどうか確認させてください。
知事
これもそれこそ未定ということと承知しているのですけれども、正式決定があればその旨伝えられると思っていますので、それがない間は油断することなく、企業誘致のための色々な手を打ったり、工夫をしたりということをまだゴールインをしていないランナーのつもりで、きちんとテープを切るまでは全力で走る、テープの向こうに走り抜けるくらいの勢いで対処していきたいと思っています。
記者
感触は良い感じなのですか。
知事
良いか悪いかについては、秘密なのですけれども、感触のいかんにかかわらず、ベストは尽くさなければなりませんので、悪いなら悪いなりの対処もするし、良いなら良いなりに的確に対処してまいります。
記者
これまでのシンガポール事務所の果たしてきた役割、成果とかをどのように評価されているのかをまず伺いたいのと、職員体制のスリム化の中で、来年度当初で120人程度の減ということなのですが、この効果額をお聞きします。
知事
シンガポール事務所は、毎年物産フェアをデパート等で開催し、また日本人も多く住んでいて、かつ東南アジアの物流や、また情報の拠点ですから、そこに事務所を構えてさまざまな人脈を広げ、そして色々対応していったことは大きな成果だったと思います。去年マレーシアでイオンさんにいわてフェアをやってもらったときもシンガポール事務所の者がマレーシアに出張して事前の準備をしたり、当日の幾つかの行事の司会進行をしたりとかもして、まさに東南アジア全体の拠点として機能していました。そういったところを岩手は岩手で経験を重ねてきていますので、必要な場合には岩手から出張するなどの対応を先ほど申し上げた現地アドバイザーと連携しながら進めていくということになります。
職員体制のスリム化の120人程度の減についての効果額は、手元に資料がございませんので、あとで事務方に聞いていただければと思います。
幹事社
本日は記者クラブを代表しての幹事社質問の用意がありませんので、各社から発表事項以外の質問があればお願いいたします。
広聴広報課
それでは、以上をもちまして記者会見を終わります。
次の定例記者会見は2月21日(木曜日)の予定です。
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