平成30年2月5日知事会見記録

ID番号 N61752

平成30年2月5日15時30分から16時25分

広聴広報課
 ただいまから記者会見を行います。最初に、知事から発表があります。それでは、知事お願いします。

知事
 それではまず、平成30年度当初予算案について説明します。まず、資料「平成30年度岩手県一般会計当初予算のポイント」1ページ目を開いてください。平成30年度当初予算案一般会計の状況ですが、平成30年度当初予算は、東日本大震災津波からの復興や平成28年台風第10号災害からの復旧・復興に最優先に取り組み、ふるさと振興も着実に推進して、県民の明日への一歩と共に歩む、共に進む予算として編成しました。
 具体的には、自動車や半導体関連産業などの産業振興、出産・子育て支援、働き方改革や若者・女性の活躍支援などの取組を進めるほか、ラグビーワールドカップ2019™、東京2020オリンピック・パラリンピックを見据え、スポーツを通じた交流人口の拡大を推進していきます。また、国民健康保険の制度改正に伴い、県に特別会計を設置し、市町村等と連携しながら、安定的な財政運営や広域的・効果的な運営を行っていきます。さらに、中期財政見通しや公債費負担適正化計画を踏まえ、財政健全化にも配慮いたしました。
 予算の規模は9,533億円です。この予算規模は、平成29年度当初予算と比較し、約264億円、率にして2.7%の減となります。
 具体的な歳入・歳出の状況について、2ページ目ですが、まず、歳入の状況について、震災分は、復旧復興事業の進捗に伴い、国庫支出金や基金からの繰入金等が減少しています。通常分は、県税収入はほぼ前年度同額を見込んでおり、県債については臨時財政対策債が減少する一方、平成28年台風第10号対応の河川改修事業などにより、合計で増加となっています。
 次に、歳出の状況については、震災分は、災害復旧事業や災害公営住宅の整備などの進捗により、前年度と比較して約194億円、率にして6.4%の減となります。通常分は、平成28年台風第10号災害の復旧復興事業に要する経費などが増額となった一方、公債費の減などにより、前年度と比較して約70億円、率にして1.0%の減となっています。
 次に、3ページ目、平成30年度における取組の概要についてですが、平成30年度においても第3期復興実施計画に基づき、三陸のより良い復興の実現につなげる「三陸復興・創造」に向けた取組を推進します。
 「安全の確保」では、被災した河川、海岸等の公共土木施設や災害に強く信頼性の高い復興道路等の早期復旧・整備を推進します。
 「暮らしの再建」では、内陸部に避難されている方も含め、被災者の方々が一日も早く安定した生活を取り戻すことができるよう、災害公営住宅の早期整備を推進します。また、被災者のこころのケアや新たな居住環境におけるコミュニティの形成など、被災者一人一人に寄り添った支援を進めていきます。
 「なりわいの再生」では、地域漁業を担う経営体の育成と資源回復に向けた支援や県産農林水産物の商品開発や販路開拓に向けた取組を推進します。また、中小企業における新事業展開の支援や官民連携による経営人材の育成を進めるほか、若者や女性をはじめとした被災地で起業等を行おうとする方々への支援を実施します。
 さらに、長期的な視点に立ち、津波復興祈念公園や震災津波伝承施設の整備、ILCの実現をはじめとする科学技術振興の取組など、将来にわたって持続可能な新しい三陸地域の創造を目指す「三陸創造プロジェクト」を進めます。
 次に、4ページ目、「いわて県民計画」の最終年度における主な取組ですが、まず「仕事」の分野では、自動車・半導体など本県の中核産業の一層の集積促進や競争力強化、地域資源を生かした食産業や観光産業などの振興に取り組みます。また、「いわてで働こう推進協議会」を中心に、若者・女性の県内就業の一層の促進や長時間労働の是正などの働き方改革の取組を進めます。さらに、新たな漁業者の確保に向けた取組や野菜産地の創造による生産者の収益の拡大、「金色(こんじき)の風」「銀河のしずく」のさらなるブランド化の推進などの農林水産物の高付加価値化を図ります。
 「暮らし」の分野では、医師等の確保に向けた取組や高度救命救急医療等拠点の整備を進めるほか、県民や企業が主体となって進める健康づくりの取組の促進を図ります。また、地域における子育て支援の充実、子どもの貧困対策やこころのケアなどによる子どもの健全育成を支援するほか、医療的ケアを必要とする在宅の超重症児や超重症者の方々を介助する家族の負担軽減、農福連携による障がい者の就労支援などを推進していきます。さらに、若者の主体的な活動を促進するための支援や女性の活躍支援に取り組みます。
 「学び・こころ」の分野では、児童生徒の学力向上や進学支援に加えて、教員の業務支援を行う非常勤職員の配置などによって、教育の質を高める取組を推進します。また、「平泉の文化遺産」の拡張登録に向けた取組やガイダンス施設の整備、「北海道・北東北の縄文遺跡群」の世界遺産登録に向けた取組を推進します。さらに、東京2020オリンピック・パラリンピックを見据えた若手トップアスリートの支援やスポーツの振興による地域活性化を促進します。
 「環境」の分野では、県民総参加による地球温暖化対策の推進や、いわてクリーンセンターの後継となる産業廃棄物最終処分場の整備に向けた取組を進めます。
 「社会資本等」の分野では、地域間の交流・連携、産業振興を支える道路の整備など、日常生活を支える安全で利便性の高い道づくりを進めます。
 次に、5ページ、「ふるさと振興」の推進における主な取組ですが、来年度は、計画期間5年間の後半に入る年に当たりますことから、各施策の効果検証により必要な見直しを行いながら「岩手で働く」「岩手で育てる」「岩手で暮らす」の3つの柱に沿った事業のさらなる展開に取り組んでいきます。
 まず、「岩手で働く」では、企業の三次元造形技術や第4次産業革命技術等を活用した「ものづくり革新」の取組や、ものづくり産業を支える高度技術・技能人材の育成・確保・定着を促進していきます。また、ゲノム解析の導入等による「いわて牛」の産地力強化や機能性成分を活用した農林水産物の付加価値向上に取り組んでいきます。さらに、全国の大学等との連携強化を図る「岩手U・Iターンクラブ」の新設により、首都圏等からのU・Iターン促進に向けた取組を強化します。
 「岩手で育てる」では、“いきいき岩手”結婚サポートセンター「i―サポ」による結婚支援や、企業や店舗等との連携による「いわて結婚応援パスポート事業」を展開していきます。また、分娩取扱診療所の整備支援、地域の開業助産師や潜在助産師等を活用した、地域で妊産婦を支える体制の構築を進めます。
 「岩手で暮らす」では、女性活躍推進員の配置による女性の活躍に関する理解促進や地域医療体制の充実、ものづくり産業人材の育成をはじめとしたふるさとの未来を担う人づくりなど、岩手の魅力を高める取組を進めます。
 次に、6ページ、「戦略的に取り組む重要施策の推進」ですが、「文化・スポーツ施策の戦略的展開」では、ラグビーワールドカップ2019™釜石開催に向けた準備や東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会を見据えた県産食材や県産材のPRを推進するほか、県民の心を豊かにする文化芸術の振興や、県民が元気になるスポーツの振興を図っていきます。
 「国際戦略の展開」では、友好協力協定を締結した雲南省との経済交流の促進やネットワークの強化をはじめ、県産品の販路拡大を図るための戦略的・総合的な対外売込み活動の実施、いわて花巻空港の活用や外航クルーズ船の誘致による外国人観光客の受入態勢の充実・強化、国際戦略を担う人材の育成などを推進していきます。
 「若者・女性の活躍推進」では、若者の主体的な活動の支援に向けた「いわて若者カフェ」の機能の充実、本県農林水産業をけん引する若手女性農林漁業者の育成や女性のネットワークづくりなどの取組を推進していきます。
 「科学技術振興を図る取組」では、ILCの実現に向けた取組を進めるほか、岩手発のイノベーションの創出に向けて、将来有望な研究シーズや地域資源を活用した研究開発を支援します。
 次に、平成28年台風第10号災害への対応については、平成29年度に引き続き、被災した河川や道路の復旧・改良をはじめ、農地・農業用施設の災害復旧や、岩泉町が行う中小企業、商店街、観光施設等の復旧・復興に向けた事業を支援します。
 最後に、広域振興圏の取組について、地域の特性や資源を生かした地域づくりを推進するための特色ある取組を展開します。
 これらの取組を通して、東日本大震災津波からの復興と平成28年台風第10号災害からの復旧・復興を着実に進め、「ふるさと振興」の取組を強力に推進していきます。
 次に、平成30年度の組織・職員体制の概要について発表します。東日本大震災津波や平成28年台風第10号災害からの復旧復興事業の着実な推進に向け体制を整備するとともに、「いわて県民計画」を推進するための体制強化を図りました。
 まず、東日本大震災津波からの復興に係る体制については、事業の進捗状況等に応じ、合計で327人の職員定数を配置します。また、東京電力に対する損害賠償請求や放射線影響対策に係る業務を、環境保全等の施策と一体的に推進するため、総務室から環境生活企画室に移管します。
 平成28年台風第10号災害からの復旧・復興に係る体制については、復旧・復興状況を踏まえて、県北沿岸振興施策と一体的に推進するため、専担組織である台風災害復旧復興推進室は廃止して、地域振興室に事務を移管します。また、用地取得事務や災害復旧事業を担う職員を増員します。
 次に、「いわて県民計画」の推進等に向けた体制整備として、交通政策を総合的に企画・推進するため、県土整備部から移管する空港利用促進業務と鉄道及びバス等の地域公共交通業務を一体的に推進する交通政策室を政策地域部に設置します。
 また、三陸地方を舞台にした防災、復興の発信、風化防止等を目的とした、いわゆる(仮称)三陸防災復興博やラグビーワールドカップ2019™の開催準備に係る体制を強化するため、それぞれ専担組織を設置します。
 さらに、広域振興局の産業振興体制を強化するため、各広域振興局の経営企画部に産業振興室を設置して、室長には総括課長級を配置します。
 その他、資料に記載のとおり、県北広域振興局への副局長の配置や、総務室への行政経営課長の配置などの体制整備を行うとともに、児童虐待相談体制の強化を図るため職員を増員します。
 最後に、職員体制についてですが、平成30年度当初における知事部局の職員数は、本年度とほぼ同数の4,450人程度となる見込みです。マンパワーの確保に向けて、任期付職員の採用や全国の都道府県等に対する職員の派遣要請を進めているところでありまして、引き続き、復旧復興事業やさまざまな県政課題に適切に対応できる体制を構築してまいります。

広聴広報課
 以上で知事からの発表を終わります。
 
幹事社
 それでは、ただいまの発表事項2件について、各社から質問があればお願いします。

記者
 当初予算案の方ですが、一番最初の震災からや、台風からの復旧・復興、あとは「ふるさと振興」の推進というのは、これまでも、昨年なども重大事項だったわけですが、それであえて「県民の明日への一歩と共に進む予算」というふうに名付けた知事の思いをちょっともう少し詳しくお聞きしたいと思います。

知事
 そうですね、東日本大震災津波からの復興と、平成28年台風第10号災害からの復旧・復興に最優先で取り組むということと、「ふるさと振興」を着実に推進していくということが柱になっている平成30年度当初予算案でありますけれども、これをそれぞれ復旧・復興の現場にいる被災者の皆さんや、また、そこで働く人たち、そしてふるさとを消滅させないということで、被災地では復旧・復興ですが、全県的には「ふるさと振興」ということで、それぞれ自分の地域あるいは自分の職域で働く人たち、また、ふるさとで生活する、子育てをしたり、親の介護などしている人たち等々、共通してイメージできるような言葉として「明日への一歩」という言葉を用いました。
 また、これは希望郷いわて国体・希望郷いわて大会のレガシーからラグビーワールドカップ™、東京オリンピック・パラリンピックへと向かう流れの中で、世界的に活躍するアスリートが県民の関心を高め、また、大谷翔平君のようにアメリカで新しい第一歩を始める郷土の英雄もいる。そういったこともイメージするような言葉として、「明日への一歩」という言葉を使っています。

記者
 来年度、2018年度はいわて県民計画と復興計画の最終年度になります。復興とふるさと振興を柱にこれまでも取り組んできたわけですが、これまでの取組と今回の予算を踏まえて、18年度をどのような年にしたいと知事は考えていらっしゃるでしょうか。

知事
 計画との関連では、計画に盛り込まれた事業を新年度1年限りできちっとやりながら、またその次につながっていくことも意識して、そういう意味では、そこも明日への一歩なのですけれども、次期総合計画につながるような形で平成30年度というものをきちんとやり遂げたいなというふうに思います。平成30年度、そして次の年度は違う元号の年号、違う元号の年度で呼ばれるようになり、そこも明日への一歩にというようなイメージで平成30年度を大事にしていきたいと思います。

記者
 復興計画の中では、着実に進めるとともに復興の先も見据えて総仕上げも視野にというのもあったかと思いますが、そういう仕上げるであるとか、そういったイメージというのはお持ちなのでしょうか。

知事
 宮古・室蘭間のカーフェリー航路にまつわるターミナル整備事業とか、それが象徴的なのですけれども、当初の復興計画には盛り込まれていなかったものが今の2年間の中期計画には盛り込まれているわけですけれども、それがまさに復興の先も見据えながら復興事業としてそういう将来、未来につながっていくような事業をやっていくということなのでありますけれども、そういう意味では仕上げというと何かもうほとんど完成したものの完成に磨きをかけるみたいなイメージがあるかもしれませんが、そうではなくて、やはり復興は現在進行形でありますし、その中で未来につながるような、復興の先につながるような事業にもきちんと対応していくというのが今年度であり、来年度であるというところです。

記者
 今のお答えにも関連してくると思うのですが、ちょっと総額の関係でお伺いしたいのですが、今回復興が進む(こと)に伴って3年連続で予算総額というのは減ってきているわけです。これまで大型予算によって、地域経済を支えてきたという面もあるのだと思います。今後も復興予算というのが減少していく中で、その復興後を見据えた取組というのもやはり重要なのだと思いますが、今回、予算の中で意識されたような点もあるのでしょうか。

知事
 そういうマクロ経済的な景気対策への配慮という観点からすれば、本当であればもっとまちづくりとか、まちのにぎわいのような分野に人やお金を向けたかったものが、どうしても建設、土木関係の方に人やお金が集中するような形になっていたのが是正されて、それぞれの市町村や地域が求めるような経済産業構造に是正していくことができるというのは基本的にいいことだと思っております。

記者
 今回予算を見ると、いわゆる人材育成であるとか、産業振興であるとか、そういった部分にも手厚く配分したようなところもあるわけですが、そういった将来という意味での予算のつけ方としてはいかがですか。

知事
 漁業関係の人材育成予算、新規で予算を編成したのは林業アカデミーに引き続いて、水産アカデミーもつくろうということでありまして、そういう岩手ならではの、岩手の自然や岩手の産業環境にふさわしい人材育成をやっていくということは、平成30年度力を入れたところです。

記者
 予算案を見ていると、今年はILC誘致に向けてだとか、いわて花巻空港と台湾との定期便就航に向けて海外戦略という意味でも大事な年になってくるのかなと思うのですが、岩手県の海外戦略の現状に対する知事のお考えと新年度この予算案をもとにどういうふうにしていきたいか、この2点を教えていただけますでしょうか。

知事
 日本の他の地域で、いわゆる爆買いと呼ばれるような突然の買い物客の殺到とか、あるいは急にたくさんの外国人観光客が押し寄せて、観光地の質が全然違ったものになったみたいなことが岩手を含め東北では基本的に起きていない。それが東北はまだまだこれからだという指摘にもつながるわけですけれども、岩手の場合であれば、岩手の良さをじっくり楽しんでもらえるようなインバウンド観光を丁寧に育てていくことができるのかなというふうに思っています。それに合わせて花巻空港の方もインバウンドにどんどん対応させていきたいと思いますし、それはクルーズ船寄港についてもそうですね、そういうインバウンド向けの交通インフラについても拡大したり、新しく対応したりしていくような30年度予算になっています。

記者
 インバウンドもそうですけれども、例えばリンゴであったりとか、農産物を今後海外に輸出していく、この増進もあると思うのですけれども、岩手から海外にそういったものを出していくということに関してはどう考えていますか。

知事
 去年はベトナムで始まり、タイで終わる一年でもあって、知事のトップセールスで東南アジアの方に初めて行ったのですけれども、それぞれ現地で確実に岩手のものを輸入して売ってくれるような、そういう小売の現地の人たちとの連携を生かしながら、こちらの方も丁寧に、着実に岩手からの輸出を増やしていけるようなスタートをしているなと思っておりまして、そういう人の顔が見えるような物産の売り込みということを海外に展開していくのがいいのではないかなというふうに思っています。

記者
 最後に、ILC関係も1億円余り(一部)新規で盛り込まれていますけれども、改めて勝負の年になると思うのですが、その辺はどう考えていますか。

知事
 日本国政府の決断を後押しできるようなさまざまな情報の収集でありますとか、その情報の整理、そして地元におけるILC建設に伴う科学者たちの生活環境のデザインとか、さまざまな必要な作業をしっかりやっていきたいと思いますし、また、これも政府の決断を促すということにつながりますが、やはり国民的な理解、支持が広がることが好ましいと思いますので、そういう宣伝的なことにも岩手県としても力を入れていきたいと思います。

記者
 いわての学び希望基金、奨学金給付事業についてお伺いいたします。来年度から給付月額を増額して大学院生まで対象を拡大するということですけれども、改定は2013年度に続いて2度目になるかと思います。前回の改定から5年が経過していますけれども、このタイミングで制度拡充に踏み切る理由についてお聞かせください。

知事
 被災地の震災孤児あるいは遺児の子供たちが成長してきて、そして上の学校に進んでいきたいという、そういう意欲が実際目に見えるような形で行政としても把握できるようになってきて、そういった現状に対応するようにこの使途を拡大することを決めたというところです。

記者
 基金事業の執行の合理性については、近年、議会の方からもさまざまな指摘があったかと思いますが、そしてまた奨学金事業の財源となる基金の積み上がり自体もかなり早い段階から把握されてきたかと思います。一個人の方々を対象とする事業以外に基金事業を拡大していく前に、このように奨学金事業を拡大できた可能性というのはなかったのでしょうか。

知事
 寄附をくださった人たちの思い、考え方と、そして被災の現場でのニーズというのをすり合わせながら使い道を決めていくということで、まずそれなりの調整をしながら拡大してきたのではないかなというふうに思います。

記者
 予算の関係で、財政面についてなのですが、プライマリーバランスが8年連続の黒字を確保ということですが、一方で財源対策基金からの多額の取崩しが続いている状態で、基金の方も目減りしている状態ですが、改めて財政健全化に向けた知事のお考えをお聞かせください。

知事
 財政赤字ということについては、県民の皆さんも心配されるテーマでありますので、プライマリーバランスを黒字にという形で、まず、県民の皆さんに岩手県の財政について、一定の安心感を持ってもらうことが大事だと思っております。そういう中で、行政需要、復興ということを先頭に行政需要に対応した歳出をしていかなければならない中で、今回は基金を一定程度取崩すということになりました。

記者
 そうすると、今回の予算も減額、基金の方が減っていく中で、県民への理解は求められる、一定程度理解いただけるというような考えでしょうか。

知事
 そうですね、財政を健全にということと、歳出の必要性の間でこういう一定の基金取崩しということは理解いただきたいし、いただけるのではないかと思います。

記者
 東日本大震災の対応分についてですけれども、震災後に組まれた予算ということでは、震災対応分は最少かと思います。背景には、大きくお金がかかってくるハード事業の進捗、そのピークが越えて、なかなか額面に表れてこないソフトの事業だとかというのが新規で入ってきておりますけれども、18年度の予算に込めたソフト事業を進めていく上での知事の思いをお聞かせください。

知事
 被災者の健康維持増進、こころのケアの推進というところにはしっかり予算を確保した形になっております。これは教育の場での被災児童生徒への就学、進学支援やこころのケアの推進というところの事業をしっかり予算確保していくということとも相まっております。また、被災者見守り支援事業費、新規の形で予算確保しておりますけれども、過去やってきたことを機械的に減らしていくような進め方ではなくて、必要であれば額を増やしたり、また新規の事業も立てたりしながら、復興の長期化に伴う生活支援、コミュニティ支援については、しっかり対応してきているところであります。

記者
 ありがとうございます。それとあとスポーツの分野では、東京五輪だとか、あとは2019年の釜石開催の(ラグビー)ワールドカップ™への準備なんかも本格化していくと思いますけれども、こちらのスポーツ分野で県予算に期待する効果と、機運醸成に向けた効果というところを改めてお聞かせください。

知事
 希望郷いわて国体・希望郷いわて大会が大成功でありましたので、そのレガシーを残していくというところがポイントですし、また、ラグビーワールドカップ2019™はこの東日本大震災被災地での開催は岩手・釜石だけになりますので、それを成功させることが復興の力にもなるということで、しっかり対応しなければという予算にしています。
 そして、東京オリンピック・パラリンピックも復興五輪でなければならない、そこはやはり被災の現場、復興の現場として積極的に関わっていくという、そういう基本的な姿勢が必要だと思っておりまして、そこは東京オリンピック・パラリンピック全体が本当に復興五輪になるようにという祈りも込めつつ、予算を編成したところであります。

記者
 全体的な話に戻りますけれども、18年度は復興計画最終年度であると同時に、次期総合計画の策定年度でもあって、具体的な事業として展開するのは、さらにその先になると思いますが、ある程度、いわゆる種をまくというのですか、次に何をやるのかというのをある程度イメージとして持ちながら予算編成作業に当たられたのかどうかというのをお伺いしたいのと、その部分をどう意識されたのかというのを伺いたいのですが。

知事
 「幸福」をキーワードにということで、(岩手の)幸福(に関する)指標の研究会の報告書では12の幸福の領域に整理していただいているのですけれども、その12の領域それぞれにおいて幸福度が高まっていくような予算ということも念頭に置きながら編成したところがあります。まず、雇用とか、仕事、収入から始まりますので、そういったところ、復興でいえばなりわいの再生とか、県民計画的にもそういう経済産業関係はしっかり対応しながら、もっと非経済的な価値を高めるようなスポーツ、文化関係の事業にも予算を積極的に確保して県民一人一人の生きがい、そして県全体としてそういう生きがい、やりがいがあふれるような県にしていくというようなことも念頭に入れつつ予算を編成しております。

記者
 県民の幸福度を向上させるというのは、ある意味いろんな面での需要に応えていく必要があるのかと思うのですけれども、そうすると最近の行政の予算編成のトレンドとしては、よく言われるめり張りをつけるというのがよくあって、それを両立させるのはなかなか難しいのではないかと思うのですけれども、その辺りの難しさみたいなものは今回感じられたことありますか。

知事
 幸福の領域というのは、非常に広い領域に広がっているから、それらに全部対応しようと思うと、いわゆる総花的になるということの懸念かと思いますけれども、それはもともと県民の森羅万象、生活、仕事、学びのそれぞれのあらゆるニーズに応えるような県予算をつくっていかなければなりませんので、そこは大きくやり方が変わるという感じではないのだと思うのですけれども、県民の仕事、生活、学び、森羅万象に目を向けるという姿勢は維持しつつ、その中でのめり張りというのは、何かを切り捨てたりするようなめり張りではなくて、トップアスリート育成のように県民が頑張って成果も出しているし、そこに応援する側の県民も関心を高めているというような、そこはチャンスなので、そこには県も事業をするみたいな、そういう形でめり張りをつけていますね。強み、弱み、リスク、チャンス分析というやつが行政でありますけれども、そういう発想をしながら弱いところにきちっと手当てしつつ、強いところを伸ばし、リスクをチャンスに変えていくような発想で予算編成しました。

記者
 あと組織体制の関係で伺いたいのですが、三陸防災復興博推進課(仮称)を新年度に新たに設置するということで、準備という意味では新年度は非常に重要になるかと思うのですが、例えば沿岸市町村との連携あるいは情報共有とかも非常に重要になると思うのですけれども、業務として今のところどのようなイメージをお持ちでしょうか。

知事
 やはり沿岸中心に、かつまたオール岩手でやりますから、県の市町村との連携というのが非常に重要で、市町村との連携を軸にしながら地域振興を図っていくというのが基本にありますから、政策地域部のもとに新しい課が置かれるわけですけれども、一方、復興事業としての側面もありまして、風化防止とか、発信とか、またさまざま県外からも人に来てもらって復興の力にするとか、そこは復興局との連携が非常に大事だと思っておりますし、また観光ということで、観光関係の面もありますので、商工労働観光部、農林水産部、そしてインフラを担当する県土整備部とか、イベントについては文化・スポーツ的なものもありますので、そういう意味では部局横断的な連携も大事にしながら、市町村との連携と部局連携の交差点に立つような感じで仕事をしてもらうことを考えています。

記者
 先ほど基金の取崩しの話が出たのですけれども、今年度の取崩額が100億円、残高見込み額が108億円ということで、取崩額と、あと残高見込み額は前年度、前々年度に比べて増えているように見えまして、先ほど財政を健全化するために一定の基金取崩しは、県民の方に理解いただけるのではという認識をおっしゃられていましたけれども、この額というのは、前年度に比べて若干多く見える額というのは、何か狙いがあるものなのか、これも理解いただけるものというふうにご認識でしょうか。

知事
 結果として、その数字になっているということなのですけれども、何でそういう結果になったかという背景としては、復興は現在進行形で、そこに台風第10号災害の復旧・復興も重なっているということ、そしてふるさと振興、これはいわゆる地方創生ですけれども、東京一極集中がむしろ加速して、岩手県全体としては人口の社会減が増えてしまっているというようなこともあって、その中で復興とふるさと振興という柱をしっかりしたものにしていくためには、(平成)30年度予算はそのくらい取り崩したということになります。

記者
 次年度以降は、なるべく額を減らすことに越したことはないというようなことですか。

知事
 特に復興は、ナショナルプロジェクトとして国にも頑張っていただきたく、また地方創生、ふるさと振興もそうですから、そこであまり地方財政が悪化しないようにしてほしい、国にも配慮してほしいという気持ちもあるので、そういう国の財政措置も含めて、これ以上きつくならないように、あれかしとは思いますけれども、ただそういった国の方がどうこうというのに、それでそっちが期待できないなら県も復興やふるさと振興関係、手を抜くということはあり得ないと思っているので、必要な歳出は手を抜かないという気持ちは持っています。

幹事社
 他にありませんでしょうか。それでは、発表事項以外について、本日は記者クラブを代表しての幹事社質問の用意はありませんので、各社から質問があればお願いします。

記者
 先日、総務省が発表した2017年の人口移動報告で、東京圏の転入超過が22年連続となっていて、知事から先ほど東京一極集中の話も出たのですけれども、岩手県は転出超過が逆に増えているということで、特に震災で転出が加速しているという面もあるとは思うのですが、そこら辺の東京一極集中の是正の難しさはどのように受け止めているか、改めてお聞かせいただけますでしょうか。

知事
 1月に岩手県内市町村長さんと知事はじめ県の幹部が意見交換会をやって、事前の準備段階も含めて地方創生施策について県、市町村の状況を確認したわけでありますけれども、もっとやれることはあり、もっと頑張らなければならない部分もあるという認識が一方にありますけれども、もう一方にはかなりいろんなことをやって移住者、定住者が増えているところもあり、大体どの市町村も、そして県も地元で働くこと、暮らすこと、そして魅力の地域づくりという3本柱で大体やっていて、それぞれ進んでいて、こういうことを始める前に比べれば子育てもしやすくなっていたりとか、環境もよくなっていたりとか、また働く場の雇用も増えたり、雇用環境もよくなったりとかしていて、これは岩手だけでなく日本全体地方は結構働きがいがあり、また暮らしやすくなって、地域の魅力も高まってきていると思うのですけれども、そういう中で東京圏の流入超過がどんどん増えて、10万ぐらいだったのが12万ぐらいにまでなってきているというのは、ここは今までやってきて、今でもやっている、いわばミクロ的な地方創生施策に加えて、マクロ経済的な地方交付税交付金を大幅に厚くするとか、そういう財政的な積極政策というものがいよいよ国に求められているのではないかなと思います。
 佐賀県でやった時の全国知事会議で、リーマンショック対策で地方において公共事業や地方交付税交付金を増やした時に、地方は人口減少に大体歯止めがかかっているというようなデータを全国の知事さんに、岩手県でつくって配ったこともありますけれども、過去のそういうマクロ財政政策が東京への一極集中的な流れに歯止めをかけたり、90年代のバブル崩壊後の経済対策に至っては逆転して流出超過から流入超過になった県もありましたからね、90年代の緊急経済対策の時には。だから、そういったマクロ経済政策をやはり国の方で本気で検討しなければならない段階に来ているのではないかなと思います。

記者
 県内の市町村でももっとやれることはあるけれども、少しずつ実績も出ている部分もあると。ただ、そこからより進めていくためには国の方でもっと一歩進んだ対策をとらなければいけないということでしょうか。

知事
 はい。他方、国では地方交付税を増やすとか、公共事業を増やすとかということは、そうしないという原理原則が地方創生政策にはあって、そこは変えていないし、変えようともしていないので、現実的には地方側はさらに頑張らなければならないので、そのために1月の岩手における作戦会議みたいな会議でもありましたから、今年はというか、平成30年度は、さらに県と市町村が連携しながらこのふるさと振興を力強く進めていきたいと思います。

記者
 これに関連してなのですけれども、先ほど発表された予算でもふるさと振興が政策の柱になっていて、雇用創出だったり、子育て支援の取組が盛り込まれているのですけれども、どのように活用してほしいかという点をお聞かせいただけますでしょうか。

知事
 さっき90年代で緊急経済対策に効果があったという話をしたのですけれども、同時にIT関係の投資とか生産とかが伸びたというのも地方に大きくて、今、岩手にデンソー(岩手)さんの工場拡張とか、東芝メモリさんの新工場建設とかが決まっているというのが追い風になりますので、その関係の予算も平成30年度予算に入れておりますし、働くということの関連で地元の高校生、また、学生たちの地元就職への取組ということは特に県がさまざまな政策プログラムつくって、そして市町村と一緒にやっていかなければと考えておりますし、また、大学等で一旦都会に出た岩手の若い人たちを岩手U・Iターンクラブを、県の方で創設し、そしてこれも市町村と連携してやっていきますので、その辺、県と市町村連携して取り組んでいきましょうというところです。

広聴広報課
 以上をもちまして記者会見を終わります。
 

 次の定例記者会見は2月15日(木曜日)の予定です。

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