平成26年5月19日知事会見記録

ID番号 N24628

平成26年5月19日10時30分から11時14分

広聴広報課
 ただいまから記者会見を行います。本日は知事からの発表事項はございません。
 
幹事社
 本日は幹事社を代表しての質問はございませんので、各社から質問があればお願いします。
 
記者
 先週の知事会見でも出た質問なのですけれども、ビッグコミックスピリッツの「美味しんぼ」に関しての質問であります。
きょう発売の最新号で、小学館のビッグコミックスピリッツの編集長が編集部の見解を示しました。その中で、「批判を真摯に受け止め、表現のあり方についていま一度見直します。」というふうにして、以前からの予定どおりしばらく休載にするということにしました。ただ、一方で先週発売の号のように、大阪府で処理したがれきについて、鼻血が出たりとか、健康被害が出ているというような表現もありました。それに関して、改めて知事の所感とどのように思われるか、風評被害などについても問題になっていますが、その辺をちょっとお聞かせください。
 
知事
 岩手県としては、まず岩手県として責任を持って公表できる、あるいは発表すべき情報をきちんと公表、発表していくということで、今回の件で、改めて問題提起というか、疑問が呈されたというか、あるいは世の中で話題になっているというか、そういうことで岩手に関する部分についてきちんと情報発信するということで、ホームページでも改めてがれきの広域処理にまつわる情報について発表しているところでありまして、そういう対応をきちんとやって、この放射性物質の東京電力の福島第一原発からの飛散にまつわるさまざまなことについては、きちんと事実に基づいてそれぞれが適切な判断ができるようにしていきたいと思います。
 
記者
 ありがとうございました。健康被害が岩手から、宮古地区から送られたがれきがもとで大阪府で処理したその周辺で健康被害が起きているという描写に関して、県として抗議をするとかということは、今のところホームページなどで抗議などにはなっていなくて、県としてのご見解を示してはいらっしゃいますが、この後抗議の予定や、知事としてその表現に関して率直にどのように思われるかというのはどうでしょうか。
 
知事
 県としては、県として責任を持ってきちんと発表できること、発表すべきことを発表していくことが務めだと思っております。私もきちっと読んでいないので、当該事項が実在の人物がキャラクターとして出てきて発言しているものだったか、その漫画の外においても実在の人物がさまざまそういう発言をしていて、そこにも抗議ということはしてないわけでありますけれども、それはちゃんと県というしっかりした地方公共団体というか、法律に基づいて、また民意に基づいてできている、動いている団体が正式に情報をきちんと出すことが、まず県民、そして県外の皆さんに対する責任であるということでそういう対応をしているところです。
さらに、漫画の登場人物の発言ということであれば、そこはなかなか山岡とはそういうやつだったのかとか、海原雄山はそういうことはふだん言っていないはずだみたいな議論の中に立ち入ることは今のところ考えていません。
 
記者
 ということは、岩手県としては大阪府や大阪市のように抗議などをする予定は今のところはないということですか。
 
知事
 繰り返しますけれども、岩手県として発信すべき情報を発信していくということがやるべきことだと思っております。
 
記者
 引き続き「美味しんぼ」について、私も久しぶりに漫画雑誌を買って読んでいるところなのですけれども、きょう発売の号も検証の記事みたいなのが10ページぐらいあって、まだとても読むのが追いつかない状況ではあるのですけれども、先週お話しいただいた件、あと今のお答えも含めてなのですけれども、漫画という表現物に対して岩手県ということではなくて、例えば大阪は抗議しましたし、あるいは閣僚からも疑問を呈する声が出たとか、報道ではなく漫画というか、文化の一部からの発信に対して政治がいろいろ、政治以外も一般の世論としても話題になっているわけですけれども、政治がこういうものにどこまで立ち入るかというものをどう捉えるかということもあると思うのですが、その点全般の話のようになってしまいますが、知事としてはご見解はどのようにお持ちですか。
 
知事
 1つは、漫画によっては作者自身が登場人物として現れて、そしてはっきりその作者の責任ある発言として書いているようなオピニオン漫画というのがあって、そういうものであれば、その人の意見ということでいろいろ議論もしやすいのですけれども、今回のケースの場合にそういう山岡の発言はどうだとか、海原雄山というのは何を考えている、その存念は、とかという議論は、なかなか議論になじまないと思うのです。他方、理屈で議論をしていくのではなく、全体の印象とか、イメージとかで何か結論だけ浸透させていくという、そういう効果がやっぱり漫画にはあり、そういう影響力の大きさというのは社会的にやはり無視できないものがあるということは、今回改めてわかったと思います。そういう社会的な影響力の中で、その影響力を迷惑だと思う人、あるいは具体的な被害、風評被害とか、具体的に被害を受ける人たちも出てくるわけで、そこは当然非難であるとか、批判であるとか、さまざまな争いごとに発展していくということはあり得るのだと思います。そういう意味で、漫画の取り扱いというのは、やはり社会的にさまざま影響を及ぼすので注意しなければならないということは一つ教訓としてあると思います。ただ、一方で普段政治の現場で行われているような議論の対象になるような表現ではないのかなというふうにも思っております。
あと厳密に言えば、実在の人物の発言を引用している部分については、その当該実在の人物との間で、既にもう前双葉町長さんとか、そういう人の発言をめぐる議論はリアルの世界できちっと今進んでいると思いますので、それはそれできちんと議論が進めばいいというふうに思っています。
 
記者
 そういう意味では、今回は一石を投じたというような捉え方もできるとお思いですか、どうでしょうか。
 
知事
 福島県の中における現状について、問題な部分がまだまだ世の中に知られていないという立場からすれば、それが広く知られたという一種の効果があったということだと思いますし、ただその問題について、例えば、これ実在の人物の発言だったか、架空の人物の発言だったか、福島全体に今人は住めないみたいな台詞があって、それはやはり極端な意見であって、あの広い福島県の中に今人は一人も住むべきでないという、それがあたかも正しいことのように広まるというのは、これは悪い影響というふうに言えると思います。
 
記者
 合併号とあと先週号で、鼻血と健康被害というところで岩手もちょっと飛び火したような形にはなったのですけれども、基本的には読んでいる分には福島の再建というか、復興が日本の復興につながるのだというようなところは、岩手で知事がおっしゃってきていることとかなり重なっていることを山岡記者が、主人公が言っている部分があったので、先週号とその前々号のところだけで言うと何かちょっと違和感があるのですけれども、検証のページでは、特にそのことにはあまり触れられていないので、放置されたかなという気分はありまして、まだご覧になっていないと思うので、これは私の感想になってしまうのですけれども、そういう事情があるのは事実で、今後引き続き休載ということも発表になったので、いろいろ今後もまだ尾を引く問題なのかなとは思っています。そのときの対応については、その都度、検証あるいは研究分析していくというような、県として対応していくということで捉えてよろしいでしょうか。
 
知事
 いずれ漫画の外で、みんな真剣に頑張らなければならないのだと思います。そして、この放射能問題の解決というのも、それで日本がばらばらになっていくようなやり方で進めていくのではなくて、日本が一つにまとまっていくようなやり方で、深刻な問題ほどみんなが力を合わせて解決していくような進め方が望ましいと思っていまして、ですから前双葉町長さんみたいな問題提起というものについても頭から否定するのではなくて、いろいろ他の病気かもしれないのだから、そうかどうかをきちっと検証すべきだとか、その人の体を思いやるような形での反対意見の出し方を工夫している人もいるみたいですし、いずれそういうお互い思いやりの気持ちを持ちつつ、一方できちんとした事実に基づきながら、関係者それぞれが適切な判断をし、住む、住まないとか、そこでどういうまちづくりをしていくかとか、そういう決断を適切にできるように、漫画の外でみんなが頑張っていかなければならないと思うのです。
そういう意味では、漫画にこれだけ影響を受けるということは、まだまだ漫画の外のリアルの世界の努力が足りないということが言えるのだと思います。漫画の外のリアルの世界がきちっとやっていれば、漫画によるこういう影響というのはそんなに出なかったと思うのです。では、漫画の社会的なそれを貢献と言ってしまえるかどうかについては、一方では漫画として主人公山岡とお父さん、海原雄山の漫画のずっと流れの中での決定的な和解というものの舞台として福島が描かれているという、そういう文学的な側面もありますので、漫画の中で議論するのではなく、福島の問題については漫画の外できちっと対応していかなければならないと改めて思うわけです。
 
記者
 福島の話にいってしまっていますけれども、本県でちょっと焦点になっているのは宮古地区のがれきの話ですよね。いろいろ事前にチェックもして、安全だというのを確認した上で大阪にも預けて、大阪側の方も住民の反対もありながら、安全性を確認してやってくれたわけですよね。ああいう表現、漫画の表現では何か不快な症状を示しているというふうなことを言っていますけれども、大阪府や大阪市の抗議文にありますけれども、そういう症状も医者の団体から聞いている部分ではないと。苦労して広域処理をこういうふうにやられてきたわけですよね。そういったことに関してああいう表現をされたということについて、知事は不快に思いませんでしたでしょうか。
 
知事
 私は、岩手県民を代表して大阪府、大阪市にも出向いて、そして大阪府知事さん、大阪市長さんに直接お礼を述べ、またさまざま復興状況も報告し、大阪府民の皆さん、大阪市民の皆さんに直接きちんとそういう感謝の念を伝えていますし、前提としてお互い適切に事に当たったということをそこで再確認していますので、その重みをやはりみんなに改めて受けとめてほしいというふうに思います。
 
記者
 編集部にということでしょうか、改めてみんなというのはどちらを指していますか。
 
知事
 その漫画によって動揺している皆さんも含めて、漫画にはそれだけの影響力もあるので、いろいろその漫画によって悩んだり、迷ったり、風評被害的なことを感じて、風評被害につながるような間違ったイメージを持つ人とかに対して、きちんと岩手県知事が岩手県を代表して大阪府、大阪市の代表を通じて府民、県民の皆さんときちっとやりとりしているという、そのことの重みを改めて受けとめてほしいと思います。
 
記者
 十分に対策はやった上での処理だと思うのですけれども、それに対してああいうふうな描写があったということについてはどうなのでしょうか。あるべきものではないというふうな考えなのでしょうか。
 
知事
 そういういろんな疑問とか不安というものは、あの漫画以外の場でもいろいろネットで浮上したりとかしていて、あの漫画の問題だけではないと思っておりまして、それに対しては節目、節目にきちっとしたアクションをとってきたことと、そして今回県のホームページで改めて県の見解をきちんと述べているということで対応しています。
 
記者
 きょう発売号の見解では、「ご批判を真摯に受けとめ、表現のあり方について、いま一度見直してまいります。」というような編集部の見解が出ていますけれども、この見解で十分というふうにお考えでしょうか。
 
知事
 ただ、さっきも言いましたけれども、オピニオン漫画とは違って、あくまで主人公山岡と父であり、ライバルである海原雄山との漫画の流れの中での歴史的な和解という、その舞台として、そこに行き着くエピソードとして描かれているわけであって、そこは文学の世界の話かなというふうにも思うわけです。だから、そこに直接どうのこうのというよりも、漫画の外の世界の中で岩手県は今までもきちっと対応しているし、今回も改めてホームページで情報発信をしたところであり、必要に応じてこれからもそう対応していくということであります。
 
記者
 文学的な面というのがありましたけれども、編集部の見解として、「改めて問題提起をしたいという思いがありました。」ということなのですね。問題提起するのは全然いいとは思うのですけれども、その中でちょっと人に不快を与えるような表現があったりとか、岩手県にとっては関係者の努力を何か踏みにじるような表現もあったりという側面もあると思うのです。編集部の方が問題提起したいと思っていたというふうに書いている以上は、その文学的な側面を排除した上で、「真摯に受け止め、表現のあり方についていま一度見直してまいります。」という見解は十分かどうかというお考えをお聞かせください。
 
知事
 この後、また、福島県にもう人は住めないみたいな、端的に間違ったことを、しかし何か本当であるかのようなイメージで広く浸透させるようなことが岩手に関して出てきたら、それにはきちんと対応しなければならないと思います。
 
記者
 話が変わりまして、先週安倍総理が集団的自衛権の行使について、憲法解釈の見直しに関して与党に検討を求めたところでありますけれども、この解釈の変更については以前から外務省が意欲を示していたところでありますけれども、外務省出身の知事として、この件についてどのように考えますでしょうか、教えてください。
 
知事
 先週の記者会見でも言ったと思いますけれども、基本的に、今目の前にある本質的な問題に真剣に取り組む姿勢が行政には必要だと思っていまして、集団的自衛権の行使というのは戦後14しか例がなく、そのほとんどは大国が旧植民地だったり、あるいはアメリカがイギリスから引き継いだような、あるいはフランスから引き継いだような旧列強植民地の紛争に介入していくときのやり方として集団的自衛権というのが使われていて、今回総理大臣が示された例については、過去に集団的自衛権ということで国連に報告があったことはないのです。ですから、過去一度も例がないような、国連憲章ができてから一度も起きたことがないようなことが起きるかもしれないということで、そこにエネルギーを注ぐよりも、今の政府がエネルギーを注ぐとすれば、まず東日本大震災からの復興、それは原発の事故の収束も含めてですけれども、そこに取り組み、また外交安保的なことであれば尖閣問題をめぐる中国との間の緊張緩和、そして尖閣問題をうまく解決していく方策を追求するというようなところにエネルギーをかけるべきだと思います。
 
記者
 そうすると、憲法の解釈で集団的自衛権を使えるようにするということについては反対ということでよろしいのですか。
 
知事
 今やらなければならないこと、やった方がいいことをまず優先して進めるべきだと思います。頭の体操的にやってもいい憲法の改正の仕方とか、やってもいい憲法の解釈、例えば私学助成ですよね。私立の学校に国が補助するのは憲法が明文で禁止しているのですけれども、でもそれはそういう趣旨ではないという、一種の解釈によって憲法を変えているというのは実際にあるから、理屈を言い出せば解釈、改憲は絶対だめとは言えない、みたいな頭の体操はあり得るのでしょうけれども、今はそういう頭の体操をしている場合ではないのではないかなというふうに思います。
 
記者
 少し古いのですけれども、知事が衆議院(議員)時代に、集団的自衛権の行使については認めるべきだというふうに答えていたと思うのですけれども、その方法については政府の憲法解釈を変更するというふうにお答えされていたと思うのですが、知事は外務省出身(者)としてこの集団的自衛権の行使については、肯定的な意見でも違和感はないかなと考えていたのですけれども、その辺りのお考えが変わったのはなぜなのかということと、あといつなのかと。
 
知事
 どういう文脈で言っていたことか、ぱっと思い出せないのですけれども、米ソ冷戦の終盤で極東ソ連軍の増強が著しく、1970年代から80年代にかけてですけれども、集団的自衛権ということで日本もかなりの軍事的な役割を果たさないとアメリカの一方的な活動だけでは日本を守り切れない、ソ連軍に対応できないのではないかという、非常に深刻だった時期があり、私は学生時代ですけれども、その時には集団的自衛権は必要だなと思ったし、今回、安全保障の法制審議会(有識者懇談会)でしたか、そこに集まっている皆さんも大体そのころ、そういう切歯扼腕、あの頃は結構リアルにソ連軍による3海峡封鎖とか、北海道上陸とか、そういう脅威が言われていた時代ですけれども、あの時であれば集団的自衛権を使えるようにするということには合理性があったと思います。ただ、ソ連というのは本気でハンガリーとかチェコに入ったり、また周辺国のアフガニスタンに入ったりとか、周辺国を占領して、そこの政府がソ連と一枚岩になるように、そこの政府も変えるという意思と能力を当時は持っていたわけですけれども、またそれはソ連がそこまでやらないとアメリカとの米ソ冷戦の競争に遅れをとるという、そういうすごい被害者意識をソ連が持っていたからというところもあるのですけれども、今の状況は全然そうではないのですよね。日本を占領し、そして力ずくで日本の総理大臣を代えようという意図と能力を持っている国は今はないと言っていいと思うので、そういう意味で当時言われていたような集団的自衛権の必要性というのは今はないと思っています。
 あとは冷戦が終わって、ブッシュお父さん大統領の頃に、アメリカが世界の警察として引き続き頑張っていくには日本もそれを支えて、それは多国籍軍への参加という文脈ですよね。湾岸戦争のとき、日本も自衛隊掃海艇をさっとペルシャ湾に派遣すべきだみたいな議論はあったのですけれども、ただそれは、実は集団的自衛権というよりも集団安全保障の話であって、国連決議がきちんとあって、国連加盟国に対して呼びかけがあって、それで侵略国を被害国から追い出す作戦とか、あるいは侵略行為をする国が当時サウジアラビアに入らないようにするための防衛の体制をとるとかという、そういう国連決議に基づく活動に日本が参加すること、それは集団的自衛権ではなくて、集団安全保障の話ですよね。そういうことについては、私はむしろ積極的で、例えば朝鮮半島有事とかが起こった場合も、国連憲章の理念に基づけば国連のそういう集団安全保障の体制で解決するというのができるまでは日本の自衛で対応ということなのですけれども、北朝鮮のミサイル問題なんかも、もし北朝鮮がミサイルをどんどん撃ってくるというような場合に、理念としてはそれは国連決議に基づき、国連加盟国がみんなで力を合わせて北朝鮮にそういうことをやらせないようにすると、その中に日本が参加せずに、でも自衛だけはやりますけれども、その集団安全保障に日本は参加しないので、日本以外の国だけで何か北朝鮮ミサイル問題に対応してくださいというのは論理的にあり得ないし、そういう意味での集団安全保障については認めるべきということには積極的でありましたし、今もそうです。
 
記者
 憲法の解釈の変更ではなくて、憲法改正の必要はあると思いますでしょうか。また衆議院の解散総選挙をする必要はあるとお思いでしょうか。
 
知事
 自由党時代、あと民主党になってからも衆議院議員時代に日本国憲法をこういうふうに変えるとすごくいいのではないかという議論には参加し、またいろんな提案を私自身もしたりもしていました。「環境」というのを日本国憲法の基本的人権の尊重、国民主権、平和主義、この平和主義に国際協調を加える人もいるのですけれども、それプラス「環境」というのを憲法の理念として、明文化すべきとか、国民への社会保障の保障を憲法にきちっと明記すべきとか、あとは核兵器をなくすことを目指すというのを憲法に書いたほうが良いというような議論もしたことがあると思うのですが、そういう意味でよりよい憲法というのは常に考え得ると思うのです。ただ、それは時期によりまして、当時はちょうどソ連の脅威はなくなっていたし、日本の海上保安庁がいつ相手とぶつかるかわからない、みたいな緊張感あるオペレーションを強いられるような事態にも当時はなってもいなかったし、周辺諸国の理解も得ながら日本国憲法をより良いものにしていくということができるのであれば、それはやればいいと思うのです。ただ、今はそういう状況にはないし、特に周辺諸国の理解が得られないような方向に憲法を変えようというのは非常に非現実的な試みだと思います。
 
記者
 今の関連で伺います。先週の15日の安倍総理の会見のときに、今もちょっと解散総選挙の話がありましたけれども、要するにその必要性はないのかという問いかけに対して、簡単に言うと、今までも訴えてきた内容であるから必要はないというような、簡単に言えばそういうニュアンスでしたけれども、ただこれだけ政府が一貫して貫いてきた憲法解釈をここでダイナミックに変えると。報道各社の世論調査も出ていましたけれども、数字は多少ばらつきがありますけれども、必ずしも集団的自衛権の行使容認について、あるいは解釈改憲という方法論について、あまり好感を持ったような数字は出ていないという中で、改めてこれを国民に信を問わないままやっていいのかどうかという議論は当然あると思いますけれども、そこはもう一回お聞きできますでしょうか。
 
知事
 それはだめだと思いますよ。ただ、あまりそこを強調すると、信を問うならやっていいみたいに思われても困るので、そういうことで今国を割るような、民意を割るようなことをしてはいけませんよね。東日本大震災の復興とか、やっぱり「美味しんぼ」がこれだけ話題になるというのも原発事故の収束というものがまだ進んでいないからで、そこに向かって国民統合を図るべき時ですので、それをことさら分裂、分断させるような大仕掛けを政治がやっていくというのはよくないと思います。
 繰り返しますと、憲法改正というのは、やっぱりより良いものにしていくのだということで、国民的に拍手喝采を浴び、周辺国からも大歓迎される、そういう祝祭的雰囲気というのでしょうか、素晴らしい、いいぞというような中でやっぱり憲法改正はやったほうがいいと思います。そういう中でできるような憲法改正をすべきであって、そうではないやり方は非現実的だし、またよくないことだと思います。
 
記者
 もう一点伺います。知事が今おっしゃった信を問えばいいのだ、となるとかえって良くないと。これは、要するに、例えば各社の世論調査も出ていますけれども、自民党が1強で、あとは多弱体制という中で、そういう懸念もあるのかなと思うのですけれども、今回の集団的自衛権に関しての法整備も、これから国会でも審議がなされる展開になるかと思うのですけれども、国会の果たすべき役割とか、あるいは野党のありようとか、その辺りは何か意見をお聞かせいただければと思います。
 
知事
 もっと復興の問題を取り上げてほしいし、そして原発事故の収束についても国民が一つにまとまっていくような方向性で前進させていってもらいたいと思います。
 あとは日本の安全保障とか、周辺国との関係とか、真剣に考えるのであれば、やっぱり経済再生をもっと本気でやらないとだめですよ。冷戦の終わりに西側が冷戦に勝利するという展開の中で、日本の経済力が果たした役割というのはものすごい大きいものがあって、日本の経済力がアジアの経済成長、そして中国まで改革開放して、そういう西側の経済秩序の中に入って発展していこうという、その流れでソ連もペレストロイカしないともたないということで、ペレストロイカしてソ連が崩壊していく。日本の経済力というのが冷戦に終止符を打ったという、そういう歴史観をこの機会にみんなが改めて振り返る、そういう歴史観を持つべきだと思います。
 日本の経済力が弱くなると周辺国との関係もぎくしゃくするし、世界秩序も揺らいでくるわけでありまして、この10年、20年、日本が世界でも異例なゼロ成長だったということがかなり日本を弱くしたし、世界にも迷惑をかけていると思います。改めて一定の成長軌道に乗り、日本の経済、そして社会、そして地方が強くなるような手を、これは国会も、政府もその辺に集中して、ここ1年、2年の間に適切な策をびしっびしっと打っていく、それがむしろ日本の安全とアジアの平和、新しい世界秩序につながると思います。
 そういう中で、ILCを日本国内に建設するというのは非常にいい政策なので、むしろそういうことを国会で議論して早く決めてほしいと思います。国際リニアコライダー、そっちの方がよほど日本の安全とアジアの平和に効果があると思います。
 
記者
 先ほど聞き漏らしてしまったのですけれども、「美味しんぼ」の件なのですけれども、先ほど知事は福島に人は住めないみたいな間違ったことを本当だということになったら対処するとおっしゃっていましたけれども、今回の宮古地域から送られた大阪で処理された廃棄物によって、健康に不快な症状が出たというのは、これは間違っていることではないのでしょうかというのが1つ。
 あと大阪府や大阪市は抗議文とか出していますけれども、岩手県は抗議をしないのであればしない理由というのをちょっと教えていただけませんか。
 
知事
 大阪のごみ処理場の周辺のお母さん方が調べて、こういうデータだったということについては、そこはやはり岩手県からの抗議だ何だというよりも、実際その地域を所管する自治体である大阪府、大阪市が事実を地元の情報として掌握しているわけですから、そういう立場から対応していただくということで、今回みたいな形になったのはいいと思っております。
 
記者
 話は変わるのですけれども、先週から話題になっていますフィリピン人の外国人技能実習生の方が足止めになっているという問題についてなのですが、今もその問題は継続しているという中で、先週の金曜日に実習生を受け入れる予定だった農家の皆さんが協議をされたという話がありました。私としても実習生に対してはしかるべき措置が早く取られてほしいなと思っているのですが、農業県である岩手で、やはり農業の労働力を外部に頼らざるを得ないという状況が浮き彫りになったのかなというふうに私は思っております。その辺りについてどのようにお考えでしょうか。
 
知事
 先週金曜日に岩手町で農家への説明会があって、またJA新いわてでは農家に対して説明会を開催した上で、農家の意向に応じた支援を検討するというふうになっているという報告を担当の方からは受けています。ただ、農作業というのは、本質的に季節によって労働力がたくさん必要な時とそうでない時があったりし、地域を広く移動して、外部から一時的に働き手が入ってくるというようなことは昔からあることでもありますので、そこの農家の皆さんの自分の農業経営の判断、また市町村や農業団体の地域づくりとか、産業振興とかの観点から、そういう外部からの力というのをどのくらい入れていくかというのはそれぞれ判断して決められればいいのではないかなというふうに思います。
 
記者
 ちょっと話が行ったり来たりして申し訳ないのですけれども、率直に伺いますけれども、知事は憲法9条についてはどういうふうなお立場なのでしょうか。変えるべきか、変えないべきかという点について。
 
知事
 日本国憲法全体をより良いものにすると、国民的な合意と周辺国の賛意の中で拍手喝采の中でやるときに、もうちょっとわかりやすい文章にするとか、そういうことはあり得ると思います。ただ、9条の精神、平和主義というものは、これは日本の歴史をさかのぼって、日本という国ができたころからの、大和時代とか、平安時代とか、そのころからの日本の国柄というのを踏まえたものだと思いますし、かつ国連憲章の趣旨にも沿っていて、いろんな形で戦争を違法化し、国家間で戦争をしないようにしている今の国際情勢の中でも現実的だと思っています。
今ベトナムと中国の間で公船同士がぶつかり合ったり、水をかけ合ったりするような事態になっているのですけれども、それを双方は武力行使だ、戦争だとは見なさずに、戦争状態とはお互い見なしてないわけですよね。それで、平時の国と国とのつき合いというのを基本的にやっているし、またこれ以上エスカレートしないように、ベトナムの方でもベトナム国内のデモを沈静化させる努力をしているとか、そういう今の東アジアのリアリズムにも日本国憲法9条というのは即しているというふうに思っています。
 
広聴広報課

以上をもちまして、記者会見を終わります。

 

次の定例記者会見は5月26日(月曜日)の予定です。

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