平成26年2月県議会定例会知事演述

ID番号 N21256 更新日 平成26年2月21日

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平成26年2月県議会定例会知事演述の動画

1 はじめに

本日、ここに第14回県議会定例会が開会されるに当たり、今後の県政運営について、私の所信の一端を申し上げます。

冒頭、この週末の記録的な大雪により、不幸にしてお亡くなりになられた方々に、衷心よりお悔やみ申し上げます。また、被害を受けられた皆様に、心からお見舞いを申し上げます。県内においても、多くの被害や影響を受けたところであり、今後、必要な取組を進めて参ります。

東日本大震災津波の発災から間もなく3年となります。振り返りますと、応急対応に追われる中で復興計画を策定した平成23年、基盤復興を本格化させた平成24年、復興を加速させた平成25年と、県民一丸となった取組を進め、本格復興の段階を迎えるに至りました。
本年を、基盤復興から本格復興の段階に進む「本格復興推進年」と位置付けて、1日も早く元の生活に戻ることを願う被災者の皆様の思いに応えるため、復興を強力に推し進めて参ります。
本格復興に向けた施策を御説明するに当たり、改めて、大震災津波で貴い命を落とされた方々に対し、謹んで哀悼の意を表します。犠牲になられた方々の思いを心に刻んで、復興に取り組んで参ります。
応急仮設住宅等で不自由な生活を送られている被災者の皆様には心からお見舞いを申し上げます。そして、幾多の困難を乗り越えて復興に取り組んでおられる被災者、関係者の皆様に深く敬意を表します。
天皇皇后両陛下、並びに皇太子同妃両殿下をはじめ皇族の方々におかれましては、御来県いただいて温かい御言葉を賜るなど、被災者のみならず、県民皆を励ましていただきました。
私は、昨年米国を訪問し、復興支援に対する感謝の気持ちをお伝えしてきましたが、今なお被災地の復興に思いを寄せてくださる多くの方々がおられました。ケネディ駐日米国大使にも、着任早々被災地を訪問いただき、米国との強い絆を実感しました。
全国及び海外から復興を支えてくださる多くの方々とのつながりの力の大きな可能性を改めて感じています。

また、昨年は大雨・洪水災害が頻発し、県内各地に甚大な被害をもたらしました。災害への備えの大切さを再認識したところであり、地域防災体制の強化や災害に強い県土づくりに引き続き取り組んで参ります。

一方、昨年は、復興の基盤整備が進み、岩手の未来を切り拓く多くの成果を得た1年でもありました。三陸ジオパークが日本ジオパークに認定され、「あまちゃん」は岩手の観光振興や復興支援の大きな力となりました。
また、大震災津波の発災直後に一部区間で運行を再開し、地域住民に勇気と希望を与えた三陸鉄道は、県内や全国、さらにはクウェート国から寄せられた御支援により、開業30周年となる4月に全線で運転を再開します。
三陸鉄道は地域と地域をつなぐだけではなく、被災地の皆様と全国及び海外から復興を支援してくださる方々、すなわち、人と人をつなぐ大きな役割を果たしました。地元の底力とつながりの力で復活を成し遂げる三陸鉄道は、岩手、そして東北の復興の象徴であります。
さらに、国際リニアコライダー、ILCの建設候補地が北上山地に一本化されました。このことをきっかけとして、子どもたちが「研究者を目指したい」、「世界の人たちと共に岩手で働き、交流したい」といった夢を抱くようになりました。このような、子どもたちの夢や憧れは、岩手の未来を創る大きな力となります。
また、ILCは、大震災津波からの復興と、多文化共生社会の実現や産業のイノベーションなど社会・経済改革の象徴でもあり、その実現に向け、県の総力を挙げて取り組んでいきます。
このような成果を土台とし、被災地に復興の槌音をさらに高く響かせ、岩手の未来を切り拓く取組を進めます。さらに、復興のプロセスをやりがいのある、豊かなものとしながら、ソーシャル・インクルージョンの観点に立ち、県民一人ひとりが希望を持って確かな未来を描くことができる復興を進めて参ります。

2 本格復興に向けた取組の推進

(基盤復興の総括と本格復興に向けた課題)
これまで、被災市町村と連携しながら、応急仮設住宅の建設などの緊急的な取組と復興計画の3つの原則に基づく本格復興に向けた基盤づくりを推進してきました。
第1期復興実施計画では、防潮堤や水門等の津波防災施設の復旧・整備などに一部遅れが生じました。他方、災害廃棄物処理の完了には目処が立ちました。被災事業所の約8割が事業を再開しています。漁船や養殖施設、水産業共同利用施設等の整備が進み、産地魚市場の水揚量も回復傾向にあります。このように、第1期復興実施計画全体では指標の8割以上が順調に推移し、本格復興に向けた基盤づくりが進みました。
一方で、いまだに多くの被災者の方々が応急仮設住宅などでの不自由な暮らしを余儀なくされています。目に見える形で、1日も早い復興を進めていかなければなりません。
復興を早めるためには、復興を担う人材の確保や、被災地のニーズに的確に対応できる自由度の高い十分な財源措置、事業用地の円滑かつ迅速な確保といった課題を解決していく必要があります。
特に用地については、事業用地の確保のための特例制度を検討し、国への提言などをしてきました。引き続き、被災各県等との連携を図り、被災地の実情を踏まえた法制度の整備など、大震災特例とも言うべき措置を講じるよう国に強く訴えながら、本格復興に向けた取組を力強く推進して参ります。

(本格復興に向けた施策展開)
本格復興を具体的に進める第2期復興実施計画においては、若者や女性をはじめとした地域住民の復興への「参画」、多様な主体の連携による「つながり」、地域資源の発掘・活用による地域社会の「持続性」の3つを重視すべき視点としました。
安全の確保については、「暮らし」と「なりわい」を支える重要な基盤であり、地域とともに推進していきます。多重防災型まちづくりを推進し、復興道路等の整備による災害に強く信頼性の高い道路ネットワークの構築を図ります。沿岸地域の方々が、引き続き住み続けたいと思えるような住民本位の魅力あるまちづくりを推進します。
暮らしの再建については、被災者の方々が安心して心豊かに暮らせるよう、被災者と支援者をつなぎ、支援の輪を広げる「いわて未来づくり機構」の取組をはじめ、多様な主体との連携・協働により被災者個々の状況に応じたきめ細かい支援を行います。さらに、住まいの確保に向け、災害公営住宅の早期完成を目指します。持ち家再建を支援する被災者住宅再建支援事業の実施期間は、平成30年度まで延長します。
なりわいの再生については、復興まちづくりと一体的に地域のなりわいを再生し、経済の活力を回復させます。漁業と水産加工業の一体的な振興を図り、水産物の高付加価値化を推進します。被災企業の本格的な事業再建の促進や、商店街の再構築と経営力強化の支援、新産業の創出に取り組みます。風評被害にも的確に対応していきます。
さらには、長期点な視点に立ち、将来にわたって持続可能な新しい三陸地域の創造を目指す三陸創造プロジェクトの具体化を図って参ります。

3 地域資源を生かし若者と女性が活躍する岩手に向けて

(地域に根ざし、開かれた岩手の地域振興) 
我が国の経済情勢は企業収益などの改善が進む一方で、消費税増税をはじめとする負担増は、県民生活への影響が懸念されます。今こそ、強い地方経済に支えられた強い日本経済の実現に必要な内需拡大型の経済構造改革が求められます。
「あまちゃん」では、豊かな地域資源を生かし、地域の外とつながり、皆が好きなことに生き生きと取り組む姿が描かれました。これは、本県が進めてきた地域資源の発掘、磨き上げを基本とした地域に根ざした地域振興や産業振興の取組の姿と重なります。
岩手には、地域の宝と言うべき多様な地域資源があります。地域資源を発掘し、磨き上げ、付加価値をつけて、地域の外とつながりながら地域振興を進める、地元の底力と様々なつながりの力による開かれた地域主義が岩手の進む道であり、復興の道でもあります。
ILCなどの未来を見据えた取組も、岩手の豊かな地域資源を生かす取組にほかなりません。地域に根ざし、開かれた岩手の未来を創る取組として、ILCの実現に向けて、科学ILC推進室を設け、外国人研究者の受入れ態勢などの具体的な検討を進めます。また、海洋エネルギー実証フィールドの整備などによる国際的海洋研究拠点の構築、岩手の特徴である風力・地熱発電の導入拡大、将来的な世界ジオパーク申請も視野に入れた三陸ジオパークの推進に取り組みます。
さらに、世界遺産登録から3年を迎える平泉の文化遺産は、県民をはじめ国内外の人々の理解を深め、将来世代にしっかりと継承していく必要があります。このため、今議会に提案しております「平泉世界遺産の日条例」の制定を契機として、平泉の価値を守り、内外に発信する取組を更に推進して参ります。

(若者と女性が躍動する岩手) 
復興を進め、岩手の未来を切り拓いていくには、若者と女性の活躍が必要です。
中でも、未来を担う若者が、一歩前に踏み出すことを後押しすることが、全ての世代を元気にし、地域の活力を引き出します。
このため、若者女性協働推進室を設置し、若者施策等の推進体制の強化を図りながら、若者の交流の輪を構築し、具体的な行動を起こす若者の育成・支援を行うことなどにより、若者の主体的な活動を活性化させます。
また、結婚を望む若者が結婚を実現できるよう、総合的な少子化対策の一環として、地域ニーズや課題を踏まえた県の結婚支援の在り方を検討していきます。
そしてもう一つ、女性の力が復興と豊かな地域づくりには必要不可欠です。女性が社会的な活動の場等に、より一層積極的に参加しやすい環境の整備などを図りながら、男女共同参画の取組を進めます。
このような施策を通じ、若者や女性の力をこれまで以上に引き出し、復興とその先にある「希望郷いわて」をより確かなものとして参ります。

4 本格復興を推進する行財政基盤の確立

(予算編成方針)
平成26年度の当初予算は「本格復興推進予算」として、本格復興の着実な推進や、ILCの実現、国体・全国障害者スポーツ大会の成功に向けた取組、平泉の文化遺産を核とした地域振興、地域資源を活用した地域づくりなどの施策に留意して編成しました。
一方で、本県財政は、社会保障関係経費の自然増に加え、過去の経済対策等に伴い発行した多額の県債残高を抱え、公債費負担が高い水準にあるなど、非常に厳しい状況が続いています。このため、あらゆる手段を講じて歳入確保を図りながら、財源の最適配分や公債費負担の適正化に配慮して、徹底した歳出の見直しを行いました。
なお、今般の国の経済対策については、復興の推進と地域経済の活性化を図る観点に立ち、適切に対応して参ります。

(本格復興の推進体制整備)
大震災津波からの復旧・復興の着実な推進に向け、自治体間連携による応援職員の確保、任期付職員の採用、再任用職員の確保等は、引き続き重要な課題です。復興事業の本格化に伴い、多重防災型まちづくりや災害公営住宅の建設等のハード事業を担う技術者、用地取得業務を担う人材、被災者の健康を守る保健活動等のソフト事業を担う人材など、専門的知識を有するマンパワーが更に必要となります。 
このため、応援職員の派遣元に応援派遣の成果を還元し、更なる派遣に理解をいただくよう努めます。さらに、民間との連携など多様な方策による人的資源の確保を図り、本格復興の推進体制を構築します。応援職員の良好な住環境の確保、メンタルヘルスケアなどにも引き続き取り組みます。

5 平成26年度の主要施策の概要

平成26年度における主要施策についてでありますが、復興計画の3つの原則と、いわて県民計画の7つの政策に基づいた施策を、軌を一にして推進して参ります。
以下、具体的な施策の内容を申し上げます。

(「安全の確保」に向けた取組)
はじめに、復興計画の3つの原則のうち、「安全の確保」であります。
安全なまちづくりは、住民の暮らしとなりわいを支える大切な基盤です。市町村の復興まちづくりと合わせて、防潮堤などの津波防災施設の早期復旧・整備を目指します。
安全の確保に向け、震災体験を風化させず、地域防災体制の更なる強化が求められます。大震災津波の経験や教訓の継承、多発する風水害にも対応した防災知識の普及啓発に取り組みます。自主防災組織の育成・強化や消防団活動の活性化などを支援していきます。
また、現在策定を進めている広域防災拠点配置計画に基づき、既存施設を活用した広域防災拠点の整備、広域防災拠点運営マニュアルの作成を進めます。
陸前高田市に計画している津波復興祈念公園の整備に向け、国や市と連携しながら、基本計画の策定などを行います。
また、平成27年3月に仙台市を主会場として開催される第3回国連防災世界会議の関連会合の本県での開催の実現に取り組みます。
住民の安心を確保するため、放射線影響対策に引き続き取り組むことが必要です。環境及び食品等の監視や検査を行います。放射性物質に汚染された廃棄物の処理などの取組を支援します。また、原因者である東京電力に対し、十分な賠償を行うよう、関係機関と強く求めていきます。
被災地の方々が安心して暮らせるよう、治安基盤を強化します。警察官の緊急増員を継続し、被災した警察施設の計画的な再建、復興まちづくりなどの進捗に的確に対応した交通安全施設の整備を進めます。
災害に強く信頼性の高い道路ネットワークの構築に引き続き取り組みます。これまで、復興道路の整備に向けて、国等と一体となった取組を推進してきた結果、三陸沿岸道路が全ての区間で工事着手し、一部区間は開通するなど、事業は着実に進んでいます。復興道路の更なる整備の促進を図りながら、復興支援道路等も含めた幹線道路網を一体的に整備していきます。
産業の復興にも資する港湾機能の復旧・整備と利活用の促進も重要です。被災した港湾施設の復旧・整備を進め、平成27年度までに主要機能の本格復旧を目指します。さらに、企業へのポートセールスなど官民が連携した取組を進めます。
沿岸地域の方々の重要な足であるJR線の早期復旧を図るため、利用促進策を示しながら、沿線市町と連携して国やJRに対し、引き続き強く働きかけていきます。なお、JRから提案のあった三陸鉄道による山田線の運行については、地域の意向なども踏まえながら検討して参ります。
また、被災市町村における集団移転や新たなまちづくりに対応した情報通信利用環境の整備を促進します。
災害にも対応できるまちづくりのため、エネルギーの自給ができる体制整備が必要です。地域の防災拠点が非常時にその機能を十分発揮できるよう、市町村庁舎、避難所、医療機関などへの整備を促進します。また、災害時に地域で一定のエネルギーを賄えるよう、自立・分散型エネルギー供給体制の構築を推進していきます。
さらに、豊かな賦存量を有する風力及び地熱発電の掘り起こしや、洋上風力発電の事業化促進など、岩手の特徴を生かし、地域に根ざした再生可能エネルギーの導入拡大に取り組みます。
なお、県においても率先した取組を進めており、7月に胆沢第三発電所、11月には北上市に整備中の大規模太陽光発電所が運転開始予定です。今後も一戸町高森高原地区の大規模風力発電所など、再生可能エネルギーの開発を進めて参ります。

(「暮らしの再建」に向けた取組)
次に、「暮らしの再建」であります。
被災者の皆様が1日も早く安定した生活を取り戻すため、被災者一人ひとりに寄り添った支援を行います。災害公営住宅の早期整備を進めます。住宅再建をはじめ、様々なニーズに対応できる相談体制や各種支援施策を充実します。
安定的な雇用の確保が、暮らしの再建を図る上での基盤となります。産業振興施策と一体となった雇用の創出や、職業訓練等の再就職支援を行うことにより、就業の促進を図ります。また、被災地域の雇用情勢に対応した企業の人材確保を支援します。
被災地の方々が健康で心豊かに暮らせるよう、保健・医療・福祉提供体制の整備を推進していくことが大切です。市町村のまちづくりや住民のニーズに応じた医療施設・社会福祉施設の再建を支援します。災害時における医療・福祉体制の強化に取り組みます。
被災地の介護人材の確保に関し、働きながら資格を取得することを支援します。また、被災地の事業所に就職する介護職員の支援に取り組みます。
被災者の心身の健康に関し、被災者個々の状況に応じたきめ細かな支援を継続します。子どものこころのケアについても、「いわてこどもケアセンター」による支援を行い、さらに、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーを増員し、子どものこころのサポート体制を拡充します。
人材育成が郷土の復興と発展を支える基盤となります。「いわての復興教育」に県内の各学校が一体となって取り組むため、副読本を活用した取組を普及させます。学校、地域、関係機関の連携体制を構築、強化しながら取り組む「地域連携型の防災教育」を全県に広め、学校や地域における防災体制の確立を推進します。
県立高田高等学校の復旧に関し、平成26年度末までに校舎等の主要施設を完成させることを目指して整備を進めます。
学びを通じた被災地の地域コミュニティの再生も重要な課題です。地域住民が学校の教育活動等を支援する取組を促進し、地域住民が集い、学び合う機会を設け、地域人材の育成と地域コミュニティの再生を図ります。
また、被災地の復興事業を促進するため、被災市町村の調査支援にも対応できるよう、埋蔵文化財調査体制を強化します。
大震災津波の発災以降、NPO等による復興支援活動が活発に行われています。しかし、その運営基盤が脆弱な団体も多いことから、高い運営力を有するNPO等を育成するため、団体の基礎的能力の強化や復興支援活動への支援を継続します。さらには、様々な市民活動を支援する新たな基金を造成し、多様な主体の連携・協働を推進して参ります。

(「なりわいの再生」に向けた取組)
次に、「なりわいの再生」であります。
沿岸地域の基幹産業は水産業です。地域に根ざした水産業の再生を引き続き推進します。漁船や養殖施設、漁港等の復旧・整備を進めます。地域漁業の将来の姿を描く地域再生営漁計画の策定と実践を通じた地域漁業の再生を担う経営体の確保・育成を図ります。水産物の漁獲から流通、加工までの一貫した高度衛生品質管理サプライチェーンの構築を推進します。
農業に関し、農地や農地海岸保全施設の復旧・整備を進めます。施設園芸団地を核とした生産拡大等により、沿岸地域の気象特性を生かした産地づくりに取り組みます。
林業に関し、被災した合板工場などの木材加工流通施設の復旧・整備を進めます。県産材の利用拡大に向けた供給体制の強化に取り組みます。
産地の再生や風評被害対策など、放射線影響対策も着実に進めていく必要があります。原木しいたけの産地再生に向けて、きのこ原木の導入、簡易ハウスの整備などを支援します。計画的な牧草地除染による粗飼料生産基盤の再生、消費者の信頼回復、販路の回復・拡大を図る取組を推進します。
地域産業の再生は、復興の要です。被災した中小企業の支援に引き続き取り組みます。事業再生に必要な融資、助成制度を継続し、商工団体等と連携して経営と金融が一体となった支援を行います。
被災地の商業機能の回復を図るため、専門家による計画策定支援などを通じて、グループ補助金による新たな商店街整備を促し、まちづくりと連動した商店街の再構築と振興を図ります。
観光の振興は消費の拡大や雇用創出など、地域経済の活性化を図る上で重要です。魅力的な観光地づくりや人材育成などの受入れ態勢の整備、効果的な情報発信による滞在型・交流型観光の更なる推進を図ります。春夏期の「あまちゃん」を活用した各種宣伝誘客事業、秋冬期には大型観光キャンペーンを実施することにより、通年での誘客を強化します。
その際、沿岸地域の大型宿泊施設の本格的な営業再開を踏まえ、震災学習を中心とした教育旅行の誘致などによる県北・沿岸地域への誘客強化を図ります。
また、台湾との国際定期便の就航を目指し、年間を通じた本県の観光需要の創出と拡大に取り組みます。東アジア圏に加えて、訪日観光客が急増しているタイをはじめとするアセアン諸国からの誘客にも重点的に取り組んで参ります。

(「いわて県民計画」に基づく7つの政策等の推進)
次に、いわて県民計画の「7つの政策」であります。
第1は、「『産業創造県いわて』の実現」であります。
地域経済をけん引するものづくり産業の振興に関し、自動車・半導体関連産業の集積促進と医療機器関連産業の創出を図るため、引き続き、企業・事業誘致と県内企業の生産体制強化、次世代技術の研究開発促進に取り組みます。ものづくり産業人材や高度技術者の育成を推進します。
さらに、ILCの実現を見据え、関係機関と連携して、県内企業の加速器関連産業への参入に向けた取組を進めます。
本県経済の活性化を図るには、海外市場への展開を拡大することが必要です。「いわて海外展開支援コンソーシアム」の活動を通じ、事業者支援の強化と海外展開の取組拡大を図ります。これまで築いた人的ネットワーク等を活用し、東アジアなどでの経済交流を促進します。
第2は、「『食と緑の創造県いわて』の実現」であります。
農業に関し、国においては、農業の競争力の強化を図ることとし、農地中間管理機構の創設や、経営所得安定対策の見直しによる農業構造の改革、日本型直接支払制度の創設による多面的機能の維持発揮を図ることとしています。
本県においては、地域農業の活力を高めていくため、生産者自らが地域農業全体の将来の姿を描いた「地域農業マスタープラン」の実現に向け、関係機関・団体、生産者が一体となって、地域農業を担う経営体や小規模農家も参加した産地づくりに取り組んでいます。
このため、国の新たな農業政策も活用しながら、担い手への農地の集積・集約化や、水田を最大限に活用した地域農業の展開を進めます。
また、農地の維持や農道・水路等の機能向上のための共同活動を推進します。
さらに、園芸や畜産の産地の生産力向上に関し、りんどうの最需要期である盆向け品種の生産拡大を促進します。肉用牛肥育農家の繁殖部門の導入による一貫経営の実証、繁殖農家の増頭を支援します。
林業に関し、森林施業の集約化により、地域の林業経営を担う経営体を育成します。
里山資源を最大限に生かし、地域の経済活力を高めていくため、地域材による復興住宅等の家づくりを支援します。未利用の木質燃料を活用したエネルギー生産のための低コスト安定供給システムの構築、産業分野における木質バイオマスの利用拡大に取り組みます。
水産業に関し、復旧・復興の取組を基本に地域漁業の強化に向けた担い手の育成、流通・加工体制の強化に取り組みます。
農林水産物の高付加価値化と販路の拡大を進める必要があります。6次産業化に向けた農林漁業者への創業・経営サポート、企業化支援など、経営の発展段階に応じたきめ細かな支援により、6次産業化の取組の定着と拡大を図ります。
また、農林水産物の輸出促進に向けて、水産物の輸出拡大が期待できる新たな市場の調査・開拓や、既存市場での通年取引の拡大を推進します。
第3は、「『共に生きるいわて』の実現」であります。
県民の健康を支える地域の保健医療体制の確立が必要です。医師の確保と地域偏在等の解消を図るため、奨学金による医師の計画的養成と適正配置の仕組みづくり、即戦力医師の招へいや勤務医の勤務環境向上対策、県民総参加型の地域医療体制づくりを推進します。がん診療連携拠点病院の機能強化を通じて、緩和ケアや相談支援の充実に取り組み、がん対策を推進します。
さらに、ドクターヘリの運航実績の検証結果を踏まえた運航体制の確立とヘリポートの整備、北東北3県による効果的な広域連携運航に取り組みます。
県民一人ひとりが、自らの健康づくりに主体的に取り組むことが重要です。平成26年度から始まる第2次「健康いわて21プラン」に基づき、健康づくりに関する普及啓発や地域住民の自主的な健康づくりを支援します。本県の健康課題である脳卒中死亡率の改善や、がん検診などの受診率の向上に取り組みます。
さらに、昨年4月から施行された「岩手県口腔の健康づくり推進条例」に掲げる施策を推進するため、「岩手県口腔保健支援センター」を設置するなど、県民の健康づくりに取り組みます。
人々がつながり、支え合う社会を構築していくことが大切です。平成26年度から始まる第2期「岩手県地域福祉支援計画」に基づき、互いに認め合い、共に支え合いながら、誰もが安心して暮らせる地域社会の実現に取り組みます。
安心して子どもを生み育てられる環境を整備するため、社会全体で子育てを支える仕組みづくりが必要です。ライフステージに応じた子育て支援を充実します。待機児童解消に向けた保育所整備の支援や保育士確保の取組など、平成27年4月に施行予定の「子ども・子育て支援新制度」への対応と、制度の実施主体となる市町村への支援に取り組みます。
高齢者、特に75歳以上の後期高齢者人口が増加する中、医療・介護連携をはじめとした市町村による地域包括ケアシステムの構築に向けた支援を充実します。さらに、次期「いわていきいきプラン」を策定する中で、中長期的な取組についても検討を進めます。
総合的な自殺対策に引き続き取り組む必要があります。包括的自殺対策プログラムの定着に向けた市町村の支援、ゲートキーパーなどの人材育成、普及啓発に引き続き取り組みます。
第4は、「『安心して、心豊かに暮らせるいわて』の実現」であります。
地域の安全が保たれ、安心して生活を営めるまちづくりを進めることが重要です。地域における防犯活動や高齢者に重点を置いた交通死亡事故抑止対策を推進します。犯罪被害者支援についての啓発活動を強化し、犯罪被害者等を支える社会づくりを促進します。
さらに、消費者被害対策に関し、相談体制の強化、学校における消費者教育、知的障がい者等の金銭管理支援など、消費者行政の充実・強化に継続的に取り組みます。
食の安全・安心の確保も求められます。岩手版HACCPの普及定着、食品に対する監視・指導の強化、食品表示の適正化を推進します。
心豊かで意欲に満ちた青少年を育んでいかなければなりません。「いわて希望塾」の開催、青少年の活動支援などに取り組みます。
第5は、「『人材・文化芸術の宝庫いわて』の実現」であります。
これまでのいわて型コミュニティ・スクール構想と教育振興運動の取組をもとに、各地域、各学校の実情に応じた見直しを図り、実際的で効果的な家庭・地域との協働体制の構築、目標達成型の学校経営の一層の改善に取り組みます。さらに、私立学校の特色ある教育活動を支援します。
このような取組を基盤に、児童生徒一人ひとりの学力や学習状況を踏まえた学習指導の充実などを図るため、学力向上対策において市町村との連携を強化し、諸調査の見直しを行います。さらに、調査の詳細な分析結果を授業改善につなげる仕組みの構築を進め、各学校の主体的な授業改善の取組を支援します。
地域を支える人材の育成に関し、地域や産業界と連携したキャリア教育を推進します。
「共に学び、共に育つ教育」の実現を図ることが大切です。特別支援教育の充実を図り、特別支援学校の専門性を活用した地域の学校等への支援を更に推進します。
釜石市の橋野鉄鉱山を構成資産とする「九州・山口の近代化産業遺産群」の世界遺産への登録に関し、国や関係団体と連携しながら、イコモスの現地調査などへの対応に万全を期して参ります。さらに、「北海道・北東北を中心とした縄文遺跡群」の着実な推進に向け、関係自治体と連携した取組を進めます。
文化芸術を楽しむ環境や、海外とのネットワークの充実を図ることが大切です。震災復興を契機としたルーヴル美術館との交流を引き続き進めます。また、岩手の魅力と新しい文化芸術を融合させ、若者が自ら輝きを放つ取組を推進し、県全体の活性化へとつなげていきます。
復興で生まれた海外とのつながりを生かし、また、ILCの実現に向けて、グローバルな人材の育成に取り組みます。
平成28年に開催される岩手国体は、全国でも21年ぶりとなる完全国体として実施されることが決定しました。復興を成し遂げていく中で、国体と全国障害者スポーツ大会を成功させることにより、復興が進む岩手の姿を全国に発信し、県民の夢や希望となる大会にしなければなりません。
このため、県民総参加の機運の更なる盛り上げ、実施内容の具体的な検討、障がいに対する理解の促進など、大会開催に向けた準備を着実に進めます。さらに、選手の育成・強化についても、計画的に取り組んで参ります。
第6は、「『環境王国いわて』の実現」であります。
次期産業廃棄物最終処分場の整備を進める必要があります。平成26年度中の建設地決定を目指し、市町村の協力を得ながら検討を進めます。
青森・岩手県境の不法投棄産業廃棄物に関し、引き続き、汚染土壌・地下水の浄化と排出事業者等の責任追及を進めます。
また、シカによる農業被害を抑止することが必要です。市町村や狩猟者団体等と連携して、捕獲の強化に重点を置いた保護管理を推進します。
第7は、「『いわてを支える基盤』の実現」であります。
昨年発生した記録的豪雨をはじめ、近年、集中豪雨や台風による被害が頻発しています。自然災害から県民の生命と財産を守るため、洪水・土砂災害対策施設等のハード整備と合わせ、水位周知河川や土砂災害警戒区域の指定等のソフト対策を一体的に推進します。
自動車関連産業等の振興を支援するため、物流の基盤となる道路ネットワークの構築、スマートインターチェンジの整備に取り組みます。さらに、通学路における歩道設置など交通安全施設の整備を行い、日常生活を支える安全な道づくりを進めます。
交流人口の拡大や地域経済の活性化を図ることが重要です。いわて花巻空港の国内路線の拡充や、台湾との国際定期便の就航を目指し、国際チャーター便の誘致・拡大に取り組みます。さらに、空港の機能向上を図るため、旅客ターミナルビルの改修を行います。
社会資本の安全性や信頼性を確保するため、適切な維持管理が必要です。維持管理計画に基づいた計画的かつ効果的な維持管理により、施設の長寿命化に向けた取組を推進します。
さらに、いわて県民計画の7つの政策に加え、広域振興圏ごとの地域特性を生かした特色ある取組を展開し、地域に根ざした地域振興を図ります。特に、県北圏域については、食を通じた地域活性化、食と観光の連携など、優れた地域資源を生かした産業振興を市町村や関係団体と連携して推進して参ります。

6 むすび

今、岩手の若者たちがふるさとの復興に大きな力を発揮し、また、様々な分野で全国、そして世界を舞台に活躍しています。
私は、被災地の高校生と意見交換を行っていますが、参加した高校生からは、ふるさとの復興に尽くしていきたい、地元を盛り上げたい、将来は地元に就職したいといった復興にかける熱い思いと、実際に地域振興や被災者支援に積極的に取り組んでいることが語られ、自らの将来はもちろん、地域、そして岩手の将来を考え、行動に移している多くの高校生たちに感銘を受け、大きな希望を感じています。
また、「TOMODACHIイニシアチブ」などに参加し、短期留学体験やスポーツ・音楽などの文化交流、さらには、起業のトレーニングを受けるなど、世界と交わる中で、「自立と共生」の担い手たらんと自らの未来を切り拓く多くの若者がいることを大変頼もしく思います。
スポーツの分野でも、若者がすばらしい成果を挙げています。宮古高等学校ヨット部のインターハイヨット競技女子FJ級デュエットの優勝や、昨年の東京国体におけるハンドボール少年男子、陸上成年少年女子共通400メートルリレーの優勝などがあり、国体の総合順位の躍進につながりました。
さらには、現在開催されているソチオリンピックにおいて、二戸市出身の苫米地美智子さんがカーリング代表として、八幡平市出身の永井秀昭さんがノルディック複合代表として活躍されています。県人の冬季オリンピック出場は5大会ぶりの快挙であり、冬季スポーツに取り組む子どもたちをはじめ、県民に夢や感動を与えてくれました。
また、来月開催されるソチパラリンピックには、山田町出身の阿部友里香さんが出場されます。大震災津波を経験するなど、様々な困難を並々ならぬ努力で乗り越えて世界に挑む阿部選手の姿は、必ずや被災地に勇気と感動を与えるものと確信しています。
一方、文化芸術の分野においても、若者が岩手の伝統文化である郷土芸能、民俗芸能の担い手として活躍しています。地域のコミュニティを守り、さらには、地域の大きな魅力として人を引き付け、復興の大きな力になっています。
不来方高等学校音楽部は、全日本合唱コンクール全国大会で最高賞である文部科学大臣賞に輝きました。日ごろから被災地での復興支援コンサートなどに地道に取り組み、音楽の力で岩手を元気にしてくれている同校音楽部の快挙は、私たちの誇りです。
このような岩手の未来を担う若者たちの活躍は、復興に取り組む県民を励まし、未来への希望を感じさせ、復興に向けた大きな力となっています。
我々は、こうした若者たちの思いと行動にしっかり応え、若者が力を発揮し、活躍できる「ふるさと」を創り、次の世代に引き継いでいかなければなりません。
若者が活躍する地域こそ、社会活動が充実する地域、経済力が高まる地域、全ての世代が安心して暮らすことができる地域です。
若者の活躍は、今までにない発想や行動を生み出し、それらは岩手の未来を切り拓き、日本を変える大きな力にもなるでしょう。若者を支え、若者の背中を押し、若者が活躍できる地域を創るよう、県民みんなで力を合わせましょう。
本年が、本格復興に向けて大きく前進し、若者、そして県民誰もが光り輝く1年となるよう、ここにおられる議員の皆様並びに県民の皆様の深い御理解と更なる御協力を心からお願い申し上げ、私の所信表明といたします。

添付ファイル

平成26年2月県議会定例会知事演述要旨全文

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