社団法人日本記者クラブ記者会見スピーチ「復興の加速のために 現場からの提案」

ID番号 N5175 更新日 平成26年1月17日

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とき:平成25年4月27日
ところ:日本記者クラブ

はじめに

皆さん、こんにちは。ご紹介いただきました、岩手県知事の達増拓也です。
一昨年に続きまして、日本記者クラブでのお話となりまして、大変光栄でございます。
前回は、東日本大震災津波が発生してから2カ月くらい経った後の6月2日に、「東日本大震災津波 初動から復興に向けて」という題で、発災から初動対応、現場力が発揮された具体例や、東北復興院創設の提唱や岩手県東日本大震災津波復興委員会の設置などについて、スピーチをいたしました。
今日は、「復興の加速のために ~現場からの提案~」と題しまして、復興の加速の障壁となっている課題とその対応を中心にお話します。
はじめにですけれども、本県は、平成23年3月11日に発生した東日本大震災津波によりまして、沿岸部を中心に甚大な被害を受けました。4月10日現在、亡くなられた方は、岩手県だけで4,673人、行方不明者が1,151人という数字でございます。
全壊や半壊となった家屋は、約2万5千戸。現在も、約3万8千人の方々が、岩手だけでも応急仮設住宅での不自由な避難生活を送っています。
一方、発災直後からこれまで、全国、また世界中の皆さんから多くのご支援をいただいておりまして、この場をお借りして、あらためて御礼を申し上げたいと思います。
この写真は、今年2月の大槌町の様子であります。
被災地では、被災した建物の解体が進んではいるのですけれども、更地が広がっているような状態が、まだ多く見られ、その先の本格的なまちづくりはこれからというところであります。
先月の11日、発災2年を迎えまして、大槌町で行われた県と町の合同追悼式に、私も出席いたしましたが、ご遺族の心の傷がとても深いことをあらためて痛感いたしまして、あらためて、復興を加速すべく全力で取り組んでいかなければならないと決意をいたしました。

これまでの県の取組

1 岩手県東日本大震災津波復興計画の策定

さて、発災から5ヶ月後の2011年8月11日に、「岩手県東日本大震災津波復興計画」を策定しました。
目指す姿は「いのちを守り 海と大地と共に生きる ふるさと岩手・三陸の創造」、復興に向けた3つの原則として、「安全」の確保、「暮らし」の再建、「なりわい」の再生を掲げまして、まちづくりのグランドデザインや、具体的取組の内容を示した「基本計画」、施策や事業、工程表等を示した「実施計画」によって構成しています。
計画期間は8年間、今年度は「第1期 基盤復興期間」の最終年度、最初の3年間の終わりの年となります。
また、計画策定後の状況の変化を計画に反映させるために、昨年の8月、「復興実施計画」を改訂し、そしてまた、来年度から第2期本格復興期間に入りますので、今年度中に新しい復興実施計画を策定することとしています。

2 社会資本の復旧・復興ロードマップ

また、岩手県では、「社会資本の復旧・復興ロードマップ」というものを作っています。
被災者、そして、被災企業の方々から、「今後のまちづくりや公営住宅整備など、県民生活に身近な社会資本の復旧・復興の情報が欲しい」という切実なご意見、ご要望がありました。県の方でも、社会資本整備の今後の見通しを示す必要があると考えておりましたので、被災者や被災企業からのご意見などを踏まえて、昨年6月、「社会資本の復旧・復興ロードマップ」を作成しました。
被災地の復興の基盤となり、県民生活に関わりの深い社会資本の分野を選んで、事業の実施箇所や規模、平成30年度までの工程見通しを示していくこととしたもので、被災者や被災企業の方々をはじめ、県民や、また、復興を支援してくださる皆様にも役立てていただくことを目的としています。
大変大部でございますので、詳しくは、県のホームページでご覧いただくとよろしいかと思います。

3 いわて復興ウォッチャー調査

さらに、県では、復興状況を定期的に把握するため、被災地の方々の協力を得て、復興感に関する「いわて復興ウォッチャー調査」というものを3ヶ月に1回、年4回実施しています。
今年2月の、平成25年第1回調査の結果を見ましても、被災者の生活の回復度について、「回復した」「やや回復した」の合計が半分に達していません。自由記載欄には「高台移転などの住環境の整備が進まないことへの不安」というような回答が多くあり、被災者の方々は、復興はまだまだ進んでいないと感じているところであります。
被災者の方々が、目に見える復興の変化の度合いが弱まってくる中で停滞感を感じられていると、いうことだと思いますので、復興を加速することが重要なのですが、そのために何が必要なのか、課題と提案を、今から述べて参ります。

復興にあたっての課題

1 専門的な人材の不足

復興にあたっての3つの課題。
一つ目は、「専門的な人材の不足」であります。
本県では、発災直後から現在まで、県や県内市町村から、また全国の自治体から多くの応援職員が被災市町村に入っていただいています。「地元自治体」プラス「全国からの応援」で対応しています。
この、全国の自治体からの支援でありますけれども、国からきちっとした指示・誘導があるわけではなく、つまるところそれぞれの自治体の主体的判断によって行われております。この震災を契機に広がった自治体連携というのは、空前の規模の大規模なものであります。自治体によっては、岩手県内に現地対策本部を設置して、総合的かつ継続的な支援を行っていただいたところもあります。大規模災害の時における相互支援体制として、有効な取組みでありました。そういうことも含めて、自治体の力が非常に高まっていると言えると思います。ある意味、地方分権の一つの進化ではないかと思っております。
というふうに、まず地元自治体プラス全国の自治体が頑張っているのでありますけれども、まだまだ絶対的なマンパワー不足というものがございます。
具体的には、復興事業を迅速かつ着実に行うために必要な、被災地のまちづくりや災害公営住宅の建設等のハード事業を担う技術者、それから、被災者の心身の健康を守る保健活動等のソフト事業を担う人材など、各分野において専門的知識を有するマンパワーの確保が必要となっています。
自治体間連携によっても対応しきれないカバーしきれないような、そういうマンパワー不足については、やはり、国が主体的に動いていく必要があると考えておりまして、国に対して、「人的支援の継続とその強化」、「国による任期付職員の採用制度の創設」、「派遣職員受入れ経費等の交付税措置の継続」、「民会企業等からの職員受入れ制度の創設」、「復興人材のための宿舎の確保」、などについて要望・提案をしているところであります。
国の主体的な動きの例が、アメリカにございます。
去年の10月、アメリカ東海岸をハリケーン「サンディ」が襲いました。ニューヨーク市を中心に、ニューヨーク州とニュージャージー州に大きな被害があって、100人以上の方々が亡くなり、また、住宅損壊などの物的被害については東日本大震災に匹敵する大きな被害が出ています。
この災害の被災者支援に、FEMA(フィーマ)という政府機関が全面的にあたっています。FEMA、「連邦緊急事態管理庁」でありますが、職員数は約7,500人、自然災害、原子力災害、大規模テロなど天災にも人災にも即応するものであります。
私も、そもそもニューヨーク州、自治体がハリケーン「サンディ」について、どういう被災者支援をやっているのかホームページで調べようと思ったら、ニューヨーク州のホームページのハリケーン「サンディ」コーナーに入りますと、被災者の皆さん、まずFEMAに登録してください、というのが出てくるんですね。それで、FEMAに被災者登録をしますと、被害の様態に応じて、支援金を受け取るとか、一時住居の紹介を受けるとか、そういう被災者支援を連邦政府は直接やっているわけです。今年3月初めにこのホームページを見ていたのですが、FEMAは、ハリケーンの被災地、ニューヨーク州、ニュージャージー州の辺りに、20から30の救助センターを設けてですね、そこに約4,000人の職員を展開して、被災者支援をしていました。
日本では、基本的に被災者支援は市町村が窓口になり、また、市町村が支援金の交付、赤十字の義援金もそうでしたけれども、市町村がやります。日本で、国が前面に立って直接被災地を支援する例は、自衛隊の展開というのは、国が直接やっていたものでありますけれども、その後は、国土交通省と農林水産省による国管理のインフラ復旧、それ以外は、ハローワークの就職支援くらいなんですね。日本の政府が、直接被災者と接して、被災者を支援するようなことは。平時であれば、それは住民の暮らしを守るのは基礎自治体、市町村、広域的には、都道府県の役割でありますけれども、今回、この市町村、基礎自治体が被災して、町長さんが亡くなるとか、職員が大勢犠牲になるとか、役場が壊れて使えなくなるとか、なったのが今回の大震災であります。従いまして、日本国政府もアメリカの例も参考にしながら、被災市町村をしっかりサポートしながら、直接的に、被災地支援、被災者支援に乗り出すということも、今からでもやっていく必要があるのではないかと私は思っております。

2 現場に即していない財源措置制度

2つ目の大きな課題ですが、現場に即していない財源措置制度。
復興に必要な財源は巨額なものでありまして、国において様々な財源措置の制度を用意していただいているわけですが、地方の裁量は十分とは言えません。
例えば、「復興交付金」は、2011年、平成23年度の国の第3次補正予算で成立したのですが、被災地の復興地域づくりに必要な事業を実施できるように、ハード事業の幅広い一括化、地方負担の軽減等を内容とするというものです。
これまで、この「復興交付金」について、国の方でも、被災者の住宅の確保に必要な高台移転や災害公営住宅等については、翌年度計画分まで前倒しで交付するとか、先月には、基幹事業というものの対象拡大や、それから、被災地から要望のあった砂浜の再生にお金を使えるようにとか、といったことに対応するなど、ようやく採択対象の拡大が図られてはおります。
しかし、そもそも交付対象が5省40事業というものに限られておりまして、これから一層必要になってきます「なりわいの再生」に関する事業の認められる範囲が極めて狭い構造があります。さらに地方が創意工夫を発揮できるよう見直す必要があると考えておりまして、柔軟な活用の面ではまだまだ課題があります。
それから、有名になりました「グループ補助金」。被災した企業の施設・設備の修繕・復旧に使われる「グループ補助金」については、制度が設けられてしばらくの間、早期の事業再開を目指す企業がたくさん申請を行いまして、なかなか申請数に見合った財政措置がなされてこなかったということがありました。国の方で「そろそろもういいんじゃないか」という議論があるのですが、まだまだ需要はございまして、そのニーズに見合った財源の措置について、国に要望しなければと思っております。
土地の嵩上げ、区画整理に、また、そのための事業用地確保にかなり時間がかかるので、特に仮設商店街で、仮設から本設に移行していくという、まだまだこれから先に必要になる経費についての支援が、これから必要になってきますので、グループ補助金については、その事業の継続、また、事業期間の延長などが必要であります。
また、グループ補助金の対象となりにくい、事業規模の小さな事業者に対する要件の緩和や、そういう小さい事業者用の新制度の創設といったことも必要と考えておりまして、これも国に対して要望・提案していきます。
復興を加速するには、国費による充実した支援を基本に、地方負担分の補てんも含む復興財源の確保・充実が必要であります。国庫補助負担率の引き上げ、補助対象の拡大などについて、これまでも国に対して要望・提案をしてきました。
平成23年度に創設された「取崩し型復興基金」というのは、事業制度の違いによる支援内容の格差是正にも資する資金なのですが、今後具体化が進む被災地域のまちづくりに応じた地域経済の振興に向けた事業に活用できるように、追加的な財源措置が必要であります。
先日、岩手に来られた安部総理大臣に対しても、改めて、この3点について要望・提案をいたしました。

3 土地利用手続きの長期化

さて、3つ目の大きな課題、土地利用手続きであります。
まず、「安全の確保」のために、早くやらなければならない、また、県の事業でもあります防潮堤事業、これがまず進んでいるのですけれども、防潮堤事業の実施に際しまして、107地区、約4,700件の土地の権利者を調査したのですが、所有者が不明な土地、所有者はわかるけれども行方不明な土地、また、相続手続の未処理であるなど、用地を取得するのに時間がかかる所が約1,700件、約4割ということが分かりました。
今後、戸籍調査が進展しますと、更に、所有者の行方不明でありますとか、未相続ということが判明して、問題が広がると想定されています。
それぞれの市町村、また、その各地区が目指す復興まちづくりの実現には、土地の権利者から事業用地を確保したうえで、復旧・復興事業本体に着工するという流れとなるのですが、最初の段階の用地確保がボトルネックとなって、復興が長期化してしまうということが懸念されます。
具体的に起きている大変な例なのでありますが、登記簿上23名の共有地となっているのですが、実は、相続人が約200名にのぼっていて、その相続手続きに時間を要しているという事例があります。
複数の土地所有者の間で境界未定となっている土地があって、境界を決めるのに争いになって調整が進んでいないという事例があります。それから、土地の相続人が行方不明となっており、親族が失踪宣告申立て手続きを行っているのですが、失踪が確定するまでの裁判所調査官による調査、その後の公示催促期間に約1年を要すると言われている事例があります。
こうした、1筆の土地、あるいは1人の相続手続きが進まないことが理由となって、数か月、あるいは数年事業が遅れて、仮設住宅に住んでいる何百人、あるいは何千人の方々が、その仮設住宅暮らしの長期化を迫られるということが、現地が直面している最大の課題と言っていいと思います。これは、日本政府にとりましても、復興を加速できるかどうかの最大の課題だと思います。
今回の大震災津波では、行方不明者が多数いらっしゃいます。土地の境界確認の立会とか、土地売買契約相手の確定等ができないケースがあります。こういうときに、「不在者財産管理」制度というのがあるのですが、現行の「不在者財産管理」制度は、財産管理人の選任を行うために、不在者の配偶者や相続人に当たる人など利害関係人が、不在者の従来の住所地の家庭裁判所に、不在者の戸籍謄本、不在の事実を証明する資料、財産に関する資料などを添付して「申立て」を行わなければならないというように、事務手続きが煩雑であります。
それから、土地収用の手続きでありますが、事業の認定、収用裁決による事業用地の確保に、やはり膨大な事務手続、そして長期にわたる事務処理時間が必要でありまして、普通、2年以上を要するというものであります。
岩手県や、また、被災市町村では、用地確保、土地利用手続について、スピードアップを図るため様々な工夫や改善策に取り組んではいますが、そうした現場の努力、現場力による改善を重ねましても、膨大な労力と時間を要することから、行政手続を抜本的に簡素化するための特例措置「事業用地の円滑な確保に向けた特例措置」のような「大震災特例」が講じられるように、国に提案しております。
その提案は、大きく2つ、「所有者不明土地の市町村管理制度」というものと、「土地利用手続等の簡素化」であります。
「所有者不明土地の市町村管理制度」でありますが、手続きが面倒で時間もかかる「財産管理人」制度、現行の「財産管理人」制度ではなくて、もう現場の市町村が財産の管理権限を持つ。そして、境界を確認して同意する権限、土地の使用許可をする権限、復興事業用地の譲渡契約の権限、つまり処分権限を持つような制度を要望しています。
その場合、所在不明の土地所有者の、将来所在がわかった際などに補償ができるように、この事後的な「補償」がきちっと確保されていればいいだろうということで、土地代金に相当する金額を「基金」として管理するというようなことも考えております。
次に、土地収用法に規定する各種手続の簡素化による用地取得のスピードアップであります。
土地収用法第20条では事業認定の要件を事細かに規定しており、また、第15条の14では、事前に利害関係者への説明会を開催しなければならないとされていますが、これらを簡素化するように、国に要望・提案しています。
政府・復興庁は、今月の9日には「住宅再建・復興まちづくりの加速化措置(第2弾)」というのを打ち出しました。
土地収用手続きの効率化について、事業説明会を他の説明会と兼ねて開催できるようにするとか、防波堤事業の事業認定モデル申請書の作成手続の効率化などの一定の前進があったものではあります。しかし、現行制度の枠組み内での運用改善にとどまっていますので、復興を加速させるには、もう、法律や制度そのものを変えることが必要ではないかという主張を、引き続きしていくところであります。

4 鉄道の復旧

ここまで、復興にあたっての大きな3つの課題について申し上げましたが、絵は用意していないのですが、もう一つ大事な課題で、鉄道の復旧ということがあります。
三陸鉄道北リアス線、JR山田線、三陸鉄道南リアス線、JR大船渡線という4つの路線が、岩手の沿岸地方を縦に貫いているのですけれども、三陸鉄道の方は、今、NHKの「あまちゃん」で、北三陸鉄道と南三陸鉄道という名前で、三陸鉄道の北リアス線、南リアス線が、毎朝NHKのテレビに映っている、あの三陸鉄道ですけれども、あれは、3年間で直してしまうということを早く決め、国の支援プラス、クウェートからの寄付金とか、大口の国内外からの寄付金もいただき、来年4月には全線復旧ということで、工事を急いでいます。
しかし、その三陸鉄道北リアス線と南リアス線をつなぐ、間に入るJR山田線でありますとか、あとは三陸鉄道の南の方につながるJR大船渡線、この2つのJR路線が、まだJR東日本から復旧方針が示されていないために、県も沿岸自治体も大変困っているところであります。
JR東日本には、地域の公共交通を担う鉄道事業者として、一日も早く山田線と大船渡線の復旧宣言をしていただいて、復興に協力いただきたいと考えております。

5 障壁を突破するために

さて、現在、岩手県だけでも、約3万8千人もの方々が、応急仮設住宅等での避難生活を続けていらっしゃり、今なお「非常時」であります。
「答えは現場にある」という言葉がありますが、復興に携わる者すべてが、現場である被災地・被災者に寄り添い、耳を傾け、今なお「非常時」であるんだという認識を持って、迅速に復興に当たらなければならないと思います。
国として、今、行うべきは、対処療法的な個別の措置のみではなく、大震災復興特例ともいえる大きな「改革」であります。
そのためには、あらためて、大震災からの復興というものを国家的なプロジェクトとして位置付けて、岩手・宮城・福島などの被災地はもちろん、日本全体の将来を見据えた構想と、それに向け復興を必ず成し遂げるという国家としての姿勢が必要であります。

未来を掴んで引き寄せる復興の加速

被災地の復旧・復興、被災者の生活再建を一日でも早く成し遂げるということが、復興の加速化でありますが、それと同時に、壊れたところを元に戻すだけではなく、未来のあるべき姿をぐいっと掴んで引き寄せるような“加速”も必要であります。
このため、岩手では、長期的視点に立って、新しい三陸地域の創造を目指すためのリーディング・プロジェクトとして、復興計画の中に「三陸創造プロジェクト」というものを掲げました。
この「三陸創造プロジェクト」の中から、今から3つ、「国際リニアコライダー(ILC)の誘致」、「再生可能エネルギーの推進」、「三陸ジオパークの認定」をご紹介します。
岩手県のみならず東北地方全体の復興に寄与するもので、また、日本の再生ということにもつながるものであります。

1 「国際リニアコライダー」(ILC)の誘致

まず、「国際リニアコライダー」(ILC)の誘致でありますが、国際リニアコライダーというのは、30キロメートル以上の直線の地下トンネルに建設する素粒子物理学分野の大規模研究施設であります。この最先端の研究施設を世界のどこかに建設しようということを、今、専門家の皆さん、研究者、学者の皆さんが議論、検討をしているところです。
事業費は約8千億円、建設期間は5年から7年、稼働後は世界中から研究者千人以上が常駐すると言われています。
この研究施設は、電子と陽電子を光速に近いスピードに加速して衝突させ、その瞬間を観測することで、ヒッグス粒子の究明でありますとか、また、宇宙の起源、物質の根源、そういったものを解き明かす世界的なメガプロジェクトであります。
関連企業の立地による新産業の創出でありますとか、また、多くの研究者やその家族の居住による国際化でありますとか、東北が世界に開かれた国際的な頭脳拠点になる、そういうプロジェクトであります。
昨年7月に、東北6県の産学官連携組織「東北ILC推進協議会」が、「ILCを核とした東北の将来ビジョン」というのを策定しております。今後とも、東北各県が結束しながら、日本全体に広くこのプロジェクトの周知を図り、復興のシンボルとして、これが国家プロジェクトとして推進されるよう働きかけていきたいと考えております。

2 再生可能エネルギーの推進

2つ目、再生可能エネルギーの推進。
「さんりくエコタウン形成」プロジェクトと銘打ちまして、三陸の地域資源を活用した再生可能エネルギーや省エネルギー技術を推進し、災害にも対応できる自立・分散型のエネルギー供給体制を構築、環境と共生するエコタウンの実現を図ろうというものであります。
現在、被災地の建物への太陽光発電の導入、県内各地でのメガソーラー、大規模風力発電、地熱発電の立地計画が進んでおります。地域の特性を活かした小水力発電や木質バイオマスの熱利用なども進展しています。
そして、三陸の海は、多様な海底地形を有し、高い海洋エネルギーポテンシャルがあるとされています。漁業との協調を図り、海洋再生可能エネルギーの導入や開発の拠点化が十分に可能と考えております。

3 三陸ジオパークの認定

3つ目、「三陸ジオパーク」でありますが、三陸地域の自然や地形地質、災害の痕跡など、地球環境の保全をはじめ、教育やツーリズムなどに活用しながら地域の持続的な発展を目指すものであります。
東日本大震災の発生で、このプロジェクトは中断していたのですが、県内外の学識経験者等からジオパークの取組の再開を求める意見が数多く寄せられ、震災を踏まえて再検討しまして、世界的な地質遺産と地球規模の自然災害を学び伝えるフィールドとしての新たな、三陸ジオパークの取組を再開しました。
去年11月には、青森県、そして青森県の八戸市プラス階上町、また、宮城県の気仙沼市も構成団体に加えまして、青森から宮城までの、岩手を挟んだ沿岸部一帯を「三陸ジオパーク」として推進していくことを確認しています。今年秋に日本ジオパークの認定というのが受けられるように活動しております。

おわりに 8年後の未来に追いつく復興を

今年を「復興加速年」と位置付け、そして、復興事業をスピードアップさせる加速と、未来を掴んで引き寄せる加速についてお話をいたしました。この加速を成功させるには、復興とは改革である、「復興=改革」という考え方が必要と考えております。
改革というのは、要は「危機」を「希望」に変えるイノベーションでありまして、今、復興の現場にはまさに、このことが求められています。
そして、経済構造改革ということについても、地域資源を最大限活用して地方経済を強くしていく内需拡大型の構造改革の考え方が、復興の基本でありまして、そういう意味で、「TPP」は、地域資源の活用よりも、安ければ世界のどこの資源でもいいという考え方が基本でありますし、日本の地域経済を弱くするものでありますので、復興に逆行すると懸念をしております。
復興によって「危機」を「希望」に変え、すべての県民が、それぞれの希望を持つことができる「希望郷いわて」を実現するというのが、130万岩手県民共通の目標であります。
それは、復興計画の8年をかけて、あの3.11時点という過去に戻すということではなく、8年後の岩手のあるべき姿をビジョンとして描き、そのあるべき未来に8年かけて追いつく復興を推進するということであります。
3.11以降、日本国民は変わったと思っております。今まで出来なかったことが出来るようになり、今までやろうとしなかったことをやろうとしていると思います。
この力をもってすれば、東日本大震災からの復興、そして、日本の再生ということは可能であると信じております。
岩手の復興が、日本全体の復興と再生につながるように、あるべき未来に向かって、復興を進めていきたいと思います。

最後になりますが、2016年、平成28年、岩手県で第71回国民体育大会「希望郷いわて国体」が開催されます。「広げよう 感動。伝えよう 感謝。」をスローガンといたします。
大震災直後、この国体に向けた準備は一切停止をいたしまして、本当にやれるのか、やっていいのかということを検討したのですが、被災地を中心に、むしろ復興に向けた弾みとするためにも開催しよう、という県民の声が強かったです。また、日本体育協会などの全国的関係団体からも、是非やろうという励ましをいただきまして、開催することに決定しました。
この「いわて国体」を、東日本大震災津波からの復興のシンボルとして、県民、企業、団体等との「協働」を基本とする開かれた大会とし、全国の皆様に、岩手が復興に向かって着実に前進する姿を見ていただき、これまでいただいた多くのご支援に感謝を伝える大会としたいと思います。
国体と併せ、全国障がい者スポーツ大会も開催します。
被災地で初めて行う国体として、応援をよろしくお願いします。

ご清聴、ありがとうございました。

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