公益社団法人日本記者クラブ記者会見スピーチ 『「復興」と「ふるさと振興」で希望郷いわてを実現』

ID番号 N45097 更新日 平成28年5月1日

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とき:平成28年4月13日(水曜日)
ところ:日本プレスセンタービル

 本日は、この日本記者クラブでお話しをさせていただきますこと、大変光栄に存じます。
 先月3月11日に、東日本大震災津波から5年を迎え、日本国民全体としても、追悼の思いを新たにしていただいたと思っています。その前後には、オールジャパンとして多くのメディアによる報道や解説がありまして、東日本大震災への関心が高まり、また、理解が深まったということがありました。
 ここに改めて、全国の皆さん、また、海外の皆さんからいただいた多くの御支援や励ましに対しまして、心から御礼を申し上げたいと思います。
 
 岩手県では、未だに2万人を超える方々が、応急仮設住宅等での不自由な生活を余儀なくされており、復興は未だ道半ばです。
 復興道路や湾口防波堤など、岩手県の復興の基盤となる公共インフラは工事のピークにあります。このハードの整備の進捗に併せて、被災地=復興地の生活環境が変化していく中、体と心の健康や将来への不安などの被災者=復興者1人ひとりが抱える課題に寄り添っていかなければならない、そういう状況にあります。
 岩手県は、「復興」、そしてそれに重なり合う「ふるさと振興」を最重要課題としています。今日は、『「復興」と「ふるさと振興」で希望郷いわてを実現』と題しましてお話しをさせていただきます。

本格復興の推進

 まず、本格復興の推進についてですが、発災から1か月後の平成23年4月11日、「がんばろう!岩手」宣言を行いました。犠牲者の故郷への思いを継承し、そして、難を逃れた1人ひとりの幸福追求権を保障するという復興の基本原則がそこに謳われています。その日からちょうど5年となる今年の4月11日、新「がんばろう!岩手」宣言を出しました。
 岩手県の復興計画の全体フレームでありますが、震災から5か月後となる平成23年8月11日に、「岩手県東日本大震災津波復興計画」を策定しました。計画の目指す姿は、「いのちを守り 海と大地と共に生きる ふるさと岩手・三陸の創造」です。
 平成23年度から30年度までの8年間の復興計画ということで、最初の3年間を「基盤復興期間」、そして、次の3年間、平成26年度から今年度までを「本格復興期間」と位置付け、現在の第2期復興実施計画において343の事業を進めています。
 これまでに、災害廃棄物の全量撤去や三陸鉄道の全線運行再開を実現し、また、住宅再建補助制度の創設や医療機関の早期再開、漁港や漁船、養殖施設の復旧整備など、「安全の確保」、「暮らしの再建」、「なりわいの再生」という3つの分野に整理しながら、基盤復興の成果を土台として本格復興を進めています。
 本格復興期間の最終年度となる今年を、県としては、「本格復興完遂年」と名付けて、この本格復興をやり遂げるという意志を示しているところです。
 
 復興の状況について主なものを紹介しますが、まず、まちづくり整備事業です。住宅、集落、市街地の再建などですが、まちづくり面整備事業の進捗率は27%で、まだこれからというところです。
 奇跡の一本松で知られる陸前高田市では、掘削土砂を運搬するベルトコンベアが稼働していましたが、その役割を終えて、撤去が進められています。新しいまちづくりが着実に進んでいて、今年度末には約6割が完成します。高田松原津波復興祈念公園、震災津波伝承施設を陸前高田市内に整備して、未曾有の大災害からの教訓を確実に伝承し、将来に生かすことで、岩手の防災力の向上を図ります。
 
 復興道路ですが、岩手沿岸を縦に貫く復興道路、また、この復興道路から内陸と結ぶ2本の横軸の道路、国はこれらを「復興のリーディングプロジェクト」として、かつてないようなスピードで整備を進めています。平成30年代前半に概ね完成する見込みです。
 2018年には、宮古港と北海道室蘭港を結ぶ新しいフェリー航路の開設も決定しています。岩手県にとって初めてのフェリー就航ということで、この復興道路の効果があって、震災前になかったような動きも出てきています。
 また、釜石港のコンテナ取扱量も震災前を上回る水準に増えていますし、そうした交通ネットワークの発展により、新しい企業立地も港湾周辺に出てきているところです。
 
 鉄路の復旧について、三陸鉄道は、平成26年4月、2年前に震災から3年という早い段階で全線運行再開ができまして、全国的に大きな話題になりました。この南北リアス線の間、JR山田線の宮古-釜石間がまだ復旧していないのですが、JRさんが復旧を果たした暁には、その運行を三陸鉄道に移管すると決まりまして、これが完成しますと、沿岸部の鉄路160キロメートルを三陸鉄道が一貫して運行することになります。
 先ほどの復興道路の完成と三陸鉄道で沿岸が北から南まで1本に結ばれるということは、歴史上初めて、実質的に岩手沿岸、三陸地域が1つになるという画期的なことであり、それを受けて、岩手の沿岸市町村が、地域振興に連携して取り組んでいくための今までになかったような組織を立ち上げるという動きもあります。
 震災前になかったようなインフラ整備という土台の上に、行政の取組、また、行政と民間が一緒になって行う新しい取組などが進んでいるところです。
 
 次に、災害公営住宅の整備についてです。県では、持家による住宅再建を約1万戸と見込んで、県と市町村で災害公営住宅5,771戸を整備する予定としています。今年2月末時点で、そのうちの48%、2,748戸が完成しています。この災害公営住宅については、今年度中に9割まで完成する予定です。
 今、論点になっていることとして、内陸部に避難して、仮設住宅、あるいはみなし仮設住宅に住んでいる方の中には、仕事や子供の通学等の関係から生活の基盤が内陸に移っている方が多く、具体的な支援策を検討しているところです。
 
 次に、教育環境の整備についてです。去年3月、県立高田高校の新校舎が完成し、被災した県内の県立高校はすべて復旧することができました。そして、市町村立小中学校の復旧も進んでいて、子どもたちの学びの場の整備も着実に進んでいます。
 
 そして、県立病院の新築整備についてです。岩手県は、日本で一番県立病院が多い県で、20の県立病院、5つの県立地域診療センターがあります。
このうち、県立大槌病院、山田病院、高田病院が津波で被災し、移転再建が必要となり、今年度、大槌病院が5月1日に開院、そして、山田病院も今年度中に開院する予定です。高田病院も来年度には開院できるということで、現在、それぞれ仮設診療所で診療を行っていますが、県立病院をすべて再建し、地域医療を支えていきます。
 
 水産業の復旧・復興について、水揚量は直近のデータで震災前の81.6%まで回復しています。津波で漁船がほとんど全て流されて、一時壊滅状態にありましたが、今年の2月末現在で6,483隻、補助事業以外の漁船数を合わせて現在1万隻を超える漁船が稼働可能となっていて、漁業者の皆さんにほぼ行き渡っています。そして、養殖施設についても、99.7%の整備が完了しています。
 
 商工業については、まず「二重債務問題」の解決に向けて、国、県、県内金融機関が連携し、岩手県産業復興相談センターと東日本大震災事業者再生支援機構という二重債務問題解決のための仕組みをつくり取り組んでいます。
 グループ補助金は、もともと自動車産業などのサプライチェーンを中心に考えられた仕組みでしたが、岩手県から国に強く働きかけて、沿岸被災地の中小企業や、ホテルや旅館のような観光分野にも該当するようにして、グループ補助金の活用が進んでいます。岩手県だけで131グループ、1,322者、812億円が採択されています。直近の調査で約8割の被災事業所が事業再開または一部再開し、生産の現場にも活気が見られるようになってきています。
 
 こうした岩手の復興の取組について、平成24年度から、「いわて三陸復興フォーラム」と題し、順次、大阪、名古屋、神戸、静岡で開催し、復興に対する理解、また、継続的な支援、参画を呼び掛けて、そして、震災の教訓を今後の地域防災に生かしていただくということをしています。
 海外に対しても、平成25年にアメリカ・ニューヨーク市、平成26年にフランス・パリ市、そして、去年、平成27年は台湾・台北市で「岩手県復興報告会」を開催し、世界からの御支援に対する御礼と復興状況の報告を行いました。
 台湾からは、海外からとしては最も大きな金額の支援をいただいています。台湾からの観光客数は、岩手を訪れる海外観光客全体の約6割を占めていまして、岩手県にとって、台湾との関係は大変重要です。
 
 ここからは、復興に向けた課題についてお話しします。
 まず、「人材の確保」ですが、膨大な数の工事の設計・発注、埋蔵文化財の調査等に対応するために、任期付職員の採用や再任用職員の任用という手も打っていますが、行政のマンパワーは恒常的に不足していまして、これまでも多くの地方自治体、団体、企業から職員を派遣いただいています。
 被災地のまちづくりや災害公営住宅の建設等はまだピークが続きますので、技術職員を中心に、専門的知識を有する人材の確保が必要です。今年度は、被災市町村への応援職員については、派遣要請数731人に対して、受諾いただいた数は661人と、70人不足しています。県への応援職員については、派遣要請数170人に対して、受諾いただいた数は164人と、職員の派遣について、引き続き関係機関や全国の自治体に要請して、復興を進めているところです。
 国に対しては、必要な職員確保等の経費について財政措置の継続、関係団体等への働きかけや地方自治体間の丁寧なマッチングを行うなど、円滑な受入について支援を継続してほしいと思っています。また、大規模災害に備え、災害対策基本法等に基づく職員派遣制度が有効に機能して、必要な職員を迅速かつ確実に確保できる仕組みを構築するということが、今後ますます重要であると考えています。
 
 次に、「復興財源の確保」ですが、県が試算した復興事業費総額は約5.6兆円で、そのうち約4割に相当する約2.2兆円分が今年度以降必要となると見込まれています。復興事業の一部で地元負担が拡大となったわけでありますけれども、平成28年度以降5年間の復興支援の枠組みについては、去年6月に国の財源フレームが決定されて、岩手県が必要と見込んでいる国費は概ね確保されたところです。
 一方、今後5年間で、県・市町村合わせて約90億円の新たな地方負担額が生じるということで、これについては、県債を発行して対応しています。
 今後も、市町村と連携しながら、政府に対し、被災地や被災者の実情をしっかり訴えて、復興を遅らせることのないようしっかり対応していかなければなりません。
 
 次に、用地の問題です。発災直後から、必要な用地を円滑かつ迅速に確保するため、法律の枠組みを超えた、つまり既存の制度を超えた特例制度の創設を岩手県から国に強く要望してきまして、改正復興特区法が議員立法で成立しました。県や市町村ではこの制度を積極的に活用し、事例も増えています。
 一方、津波で被災した土地については、主に市町村が事業に使うのですけれども、住民から買い取った移転元地と民有地が不規則に混在していて、一体的な利用ができないという課題が生じています。市町村では、その地域の利活用について計画策定を急いでいますが、買い取った土地は虫食い状に点在していて、まとまった広さの土地利用ができません。
 県は、市町村の計画策定を支援するために、土地交換の制度運用や交付金の活用事例集を市町村に提供したりするといった取組を行っていますが、不動産取得税の減免措置を国の支援パッケージと合わせて講じて、被災市町村のまちづくりを支援していくこととしています。
 移転元地の有効活用を進めてまちづくりを加速させるためには、今からでも遅くないので、国において手続きの簡素化や柔軟な運用など、課題に対応した制度の見直しや手法について検討してほしいと要望しています。
 
 次に、「被災者に寄り添った生活の再建」について、建築資材の高騰や工務店の人手不足によって、住宅建設の坪単価が上昇しています。岩手県では、平成24年度から、県単独事業として、100万円を上限に「被災者住宅再建事業費補助」を実施しています。国の制度に100万円を地元、地方において上積みしているということです。
 しかし、オリンピックのための建設需要など、全国的な問題でもありますので、国による人や資材の供給調整といった工事単価を引き下げるような取組を進めてもらいたいと思っていますし、それが上手くいかずに資材高騰、人件費高騰が進むようであれば、被災者生活再建支援金をさらに上積みするということを国においてやってもらわなければ困ると国に訴えているところです。
 
 復興が進めば進むほど、壊れたものが直るとか、新しいものができるというのはどんどん進むわけですが、応急仮設住宅等での生活の長期化というのは、先に行けば行くほど辛くなるわけであり、そこへの生活支援、また、災害公営住宅などに移転することができても、その移転先での新たなコミュニティの形成というのはやはり課題になっています。そういったところに寄り添う支援というのがこれからの重要な課題です。
 
 最後に、「被災地における産業再生・振興」について、水産加工業は9割近くまで再開しましたが、売上等の実績が震災前の水準まで戻ったところは4割程度です。失った販路の回復や開拓、また、人手不足が構造化されてきていて労働力の確保が課題になっています。
 1人当たりの生産性を高めていくということが大事になっていまして、岩手県は、トヨタのアクアを作っているトヨタ東日本の工場がありまして、トヨタ関係の方々の支援で、トヨタ方式のカイゼンを導入し、水産加工工場でも、ラインを整理し、また、在庫を持たなくていいようにする、そうすると、冷蔵庫、冷凍庫も小さくて済み、電力消費も減るといった、そういうトヨタ方式のカイゼンを沿岸被災地に導入するということに取り組んでいます。

ふるさと振興の展開

 以上、復興に取り組んでいて感じるのは、「地元の底力」+「様々なつながりの力」=「復興の力」だということです。あれだけの大災害からの復興を進めていくに当たっては、地元の底力が引き出されなければいけないのですが、加えてやはり地域の外との様々なつながりの力が相まって復興の力になるのだと痛感しています。
 そして、これはそのまま「地域振興の力」でもあるわけで、地方創生に向けても「地元の底力」+「様々なつながりの力」という考え方が大事だと思っています。
 復興というのも、「ふるさとを消滅させない」という取組でありますので、復興を続けていく中で、この地方創生がそこに重なってくるということで、ここからは、地方創生、ふるさと振興について、お話しをしていきます。
 
 人口減少問題というのを大きく分けて、「東京一極集中問題」=地方からの人口流出の問題、そして、「若者や女性の生きにくさの問題」、人口の社会減、自然減の問題という分け方でもありますが、国のまち・ひと・しごと創生法に基づく人口ビジョンや総合戦略の考え方もこのとおりなのですけれども、岩手としても、以前からこのように人口減少問題を捉え、取り組んできました。
 このように問題を整理しますと、人口減少問題というのは、未来の問題ではなく、今目の前にある問題だということです。東京一極集中=地方からの人口流出というのは、毎年、就職、進学といった時期に、今目の前で起きていることでありますし、若者・女性の生きにくさ、働きにくい、結婚しにくい、子どもを産みにくい、育てにくいというのも今目の前にある問題であるということで、岩手県では、今目の前にある問題として人口減少問題に取り組んでいこう、地方創生、ふるさと振興に取り組んでいこうと考えています。
 
 その際に大事な過去の統計として参考にしているのが、「過去30年間の岩手県における社会増減数」と「有効求人倍率全国差の推移」を一枚に合わせたものです。人口問題というのは、ともすれば未来の予想図、人口がどんどん減って消滅に至っていく図を見ることが多いのですが、過去を振り返ることも大事です。
 全国との有効求人倍率の差が、岩手がプラスになったとき、如実に人口流出は抑えられていまして、そして、岩手がマイナスになったときに、人口流出は顕著に増えているというところがあります。岩手の人口流出が一番少なかったのは、1995年、329人しか流出しなかった年があり、一方で、2000年代には、マイナス6,709人まで悪化した年もありました。その後、復興需要もあって、人口流出がマイナス2,235人まで歯止めがかかったのですが、一昨年、それがマイナス2,975人まで増え、去年はマイナス4,000人くらいまで増えてしまいました。
 ここ2年間、やはり地方経済が相対的に悪化して、それが地方の人口流出増に顕著に出ています。毎年10万人くらいの東京一極集中もゼロにしようというのが国の目標ですが、去年は11万人くらいに増えてしまっています。全国的に地方からの流出が悪化した去年、やはり地方経済の低迷ということがあると思います。
 したがって、各市町村が涙ぐましい努力で数世帯の定住者を確保しているときに、国のマクロ経済政策によって、県単位で何千という単位で人口流出が悪化してしまっているということがありますので、本当は、国において地方経済が相対的に悪化しないようなマクロ経済政策、そこには財政出動や税についても含まれるわけですが、それをベースにした上で、地方が努力して定住者を増やすということをやっていかないと地方創生はうまくいかないということです。
 
 若者・女性の生きにくさについても、今、待機児童の保育の問題が話題になっていますが、国の政策によって全国一律に若者・女性の生きにくさを解消していかなければならないところが多いと思います。
 働き方改革も、社会政策として全国一律に若者・女性の生きにくさを生きやすさに転換していかなければならないところでありまして、加えて、岩手県も昨年度から、婚活支援のマッチング事業を始めたりしていますが、地域事情に応じたきめ細やかな就職、結婚、出産、子育てを応援するような政策を地方は地方で工夫していくという組み合わせが必要だと思っています。
 
 岩手県のまち・ひと・しごと創生法に基づく総合戦略は、「岩手で働く」、「岩手で育てる」、「岩手で暮らす」という3本柱に沿って政策を展開しています。
 トピックを1つ紹介しますと、今年2月に発表された国勢調査で、岩手県の人口は133万人から128万人に減りましたが、東日本大震災を挟んだこの5年間の人口減少率は、その前の5年間よりも縮小していて、人口の減り方が改善しています。
 ともすれば、被災地、被災県では、震災前から人口減少が著しく、大震災で大きく減って、震災後さらに悪化しているというイメージを持たれるのですけれども、決して一方向的、一面的にそういうわけではなく、人口減少に歯止めをかけるような動きというのもあるということです。

飛躍する岩手の実現に向けて

 その中で、若者活躍支援が大事です。
 若者に絞っても、陸前高田市においてここ3年、20歳代前半の人口が回復しているというデータがあります。東日本大震災で大きく減った20歳代前半の人口が、その後増えて回復してきています。
 また、大槌町では、出生率が2.0を超え、震災前より高くなっています。そして、岩手の沿岸市町村全体として、高校卒業者の地元就職率が高まっていて、若者の地元志向が強まっている傾向を見て取ることができます。
 そういった若者の思いに応えるような若者活躍支援の政策として、「いわて若者会議」といった取組や「いわてマンガプロジェクト」による地域振興などに岩手として取り組んでいます。
 
 女性の活躍支援ということについては、働き方改革の中で、働く場においての女性の活躍促進を、農林水産業を含む地域経済の中で実現していくように、経済・産業関係と男女共同参画に関する社会的団体、行政機関などが一緒になって「いわて女性の活躍促進連携会議」を立ち上げて取り組んでいます。
 
 さて、岩手県では今年、国体と全国障害者スポーツ大会を開催します。「東日本大震災復興の架け橋」希望郷いわて国体・希望郷いわて大会ということで、岩手の復興の状況を全国の皆さんに見ていただきながら、復興支援の感謝の気持ちを伝える、そういう国体・大会にしていきたいと思います。
 また、2巡目国体、2回目の国体なりの新展開ということで、スポーツだけではなく、文化プログラムにも力を入れて、文化の面でも、県民に大いに活躍してほしいと考え、新機軸として「国体・大会プラス」という取組を準備しています。
 例えば、「超人スポーツ」に取り組む予定にしていますが、テクノロジーを活用し、人間の能力を拡張していくような新しい取組がありまして、それをこの国体を契機に岩手で紹介をしていこうと考えています。
 オルタナティブ東京オリンピック・パラリンピックコンセプトを唱えている、宇野常寛さんという若手評論家に協力してもらいながら、2020年東京オリンピック・パラリンピックを東京だけのものにせず、地方が主役になるような東京オリンピック・パラリンピックにしていこう、また、従来のスポーツだけではなく、文化や、アニメやゲームなどのサブカルチャー的なものも大いに盛り上げようという、2020年東京オリンピック・パラリンピックのモデルになるようなイメージを、先んじて岩手で作りたいと考えています。
 
 飛躍する岩手の実現に向けた取組の1つとして、ILC国際リニアコライダーの実現に取り組んでいます。全長30~50kmの地下トンネルの中に、世界最先端の素粒子加速器を建設して実験し、物質の根源や宇宙の始まりの様子を研究しようというものです。
 世界中の研究者の皆さんの中で、次に作るなら日本で、日本の中に作るなら岩手の北上高地の花崗岩盤がよいというコンセンサスが研究者の中では大体取れていまして、日本政府が文部科学省のもとに委員会を作って検討していただいているというところです。
 今年12月には、盛岡市で専門家による国際会議が開催されますし、宮城県やオール東北で連携をしながら、東日本大震災からの復興を象徴するようなものでもあると思っていますので、実現に向けて力を尽くしていきたいと思います。
 
 他にも、岩手三陸沿岸は、昔から国立公園として風光明媚さは有名だったのですが、ジオパークという新しい位置付けのもと、国立公園+αの地域振興につなげていこうということで取り組んでいます。
 
 そして、世界遺産の関係では、東日本大震災直後の5年前の6月に、平泉の文化遺産が世界遺産に登録されまして、そして去年は、釜石の「橋野鉄鉱山」が明治日本の産業革命遺産の1つとして世界遺産に登録されました。
 世界遺産が複数ある県は5県のみで、世界遺産が2つあるということが非常にありがたいことでありますし、また、かつて東北で戦乱が続いて荒廃した東北を復興させるということでその中心となった平泉のまち、そして、幕末維新の頃、実は日本最初の近代製鉄が成功したのはこの岩手県・釜石ということで、「岩手の意外な先進性」を示すのが橋野鉄鉱山です。
 こうしたことは、復興の力にもつながりますし、ふるさと振興の力にもなっていくということで、うまく活用していきたいと思っています。
 
 観光交流人口の拡大については、国の方でも、東北の観光を振興することで復興の力にしていこうということで、観光庁と復興庁で取り組んでいただいています。地元の側も東北6県が連携し、あるいはそれぞれの県で、インバウンドに力を入れながら観光交流人口の拡大に努めているところです。
 
 最後に御覧いただく写真は、陸前高田市の奇跡の一本松です。この陸前高田市、大変被害が大きかったのですが、高台移転や平地のかさ上げによりまして、平成30年度、あと2年くらいで大体土地の造成については目途が立ち、住宅や建物が出来ていくというところまで回復する見通しです。
 まだまだ復興は続きますけれども、この復興を必ず成し遂げて、そして、ふるさとを消滅させず次の世代にしっかりと引き継いでいくようがんばっていきますので、よろしくお願いします。
 御清聴、ありがとうございました。

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