年頭における知事訓示

ID番号 N31778 更新日 平成27年1月5日

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とき:平成27年1月5日(月曜日)
ところ:県北広域振興局(テレビ中継)
対象者:全職員

  平成27年、西暦2015年の年頭に当たり、訓示を行います。
 
  東日本大震災津波の発災から4度目の正月を迎えました。これまでの間、職員、そして県外の自治体からの応援職員の皆さんの尽力により、被災地の復興が着実に進んでいます。 
 
  昨年は、3月末に災害廃棄物の処理を終了することができ、4月には三陸鉄道の全線運行が再開しました。また、震災後に新規事業化された県内の復興道路が全て着工となり、海岸保全施設の約9割、災害公営住宅の約6割で着工することができました。
 
  年末には、懸案だったJR東日本山田線の宮古~釜石間を三陸鉄道が運営するということで、沿線市町村、関係機関とほぼ合意に至りました。
 
  また、復興の象徴的な事例としては、昨年から陸前高田市で稼働している土砂運搬用ベルトコンベアーは、気仙川を横断するための吊り橋が「希望のかけ橋」と呼ばれています。土砂をトラックで運ぶと7~8年かかるのを約1年2ヶ月に短縮するものであり、このように、様々なところで復興を加速するためにかつてなかったような技術や制度の工夫が行われています。
 
  「なりわい」の再生でも、漁業協同組合を核とした漁船や養殖施設の一括整備によって、整備目標をほぼ達成するとともに、グループ補助金を活用した事業所の早期再開も相次ぐなど、一定の成果を上げているところです。 
 
  一方、県内では未だ約3万人の方々が応急仮設住宅等での生活をされています。一日も早く、恒久的な住宅に移っていただくことが復興の最重要課題です。 
また、復興に関する意識調査では、依然として多くの県民の皆さんが十分に復興の実感を得られていないという状況にありますので、その現実を真摯に受けとめていかなければなりません。
 
  こうした現状を踏まえて、本年も「復興第一」で県政を推進します。
  今年は本格復興期間3年の中間年に当たり、8年間の復興計画の折り返しの年にも当たります。
 
 予算規模で計る事業の量がピークを迎えるので、この「復興の量」をしっかり確保していくということ、同時に「復興の質」も高めて、生活支援の面をはじめ、被災者イコール復興者の皆様が心と体の健康を維持しながら、意欲を持って復興に邁進していくことができるようにしなければなりません。
 
 来年には岩手の復興の象徴であり、全国に支援の感謝の意を示す「希望郷いわて国体・いわて大会」が控えており、今年はその準備のピークになります。
 
 また、復興基本計画において、長期的視点からのリーディング・プロジェクトとして掲げた「三陸創造プロジェクト」でもある、ILC国際リニアコライダー建設に向けた運動や、三陸ジオパークの推進、再生可能エネルギーの普及促進、海洋研究開発施設の検討、そして津波復興祈念公園と震災津波伝承施設の整備準備等も本格化する極めて重要な年になります。
 
 このように、本年も「復興」が岩手県政の基軸であり、本年を『本格復興邁進年』と位置づけて、職員一人ひとりが「本格復興」に向かって邁進し、各々の担当する業務にしっかり取り組んでほしいと思います。
 
 「本格復興」に続く2つ目の大きな柱として、「地方創生」があります。 
 昨年5月の日本創成会議レポートによって、全国的に「人口減少問題」が大きくクローズアップされ、政府も9月に「まち、ひと、しごと創生本部」を設置しました。
  
 岩手県では、私が平成19年に知事に就任した際に、岩手が直面している4つの危機の一つとして「人口流出」を取り上げ、これまでも克服を図ってきましたが、更に本腰を入れて取り組むために、昨年6月、知事を本部長とする岩手県人口問題対策本部を設置し、9月末には「中間報告」をまとめました。
 
 人口問題に対峙する基本姿勢として、復興もそうでありますが、人間本位・人間第一の政策を打っていく必要があります。平泉思想でも共生の理念として、「人と人との共生」、「人と自然との共生」ということがあるわけですが、「岩手県は人間を大事にするのだ」ということを、いわば哲学として中心に据え、この問題に取り組んでいただきたいと思います。
 
 特に、若者や女性に焦点を当てて、若者・女性の「生きにくさ」を「生きやすさ」に、「住みにくさ」を「住みやすさ」、「学びにくさ」を「学びやすさ」、「働きにくさ」を「働きやすさ」、「結婚しにくさ」を「結婚しやすさ」に転換していくことが必要です。
 
 来月にもこの人口減少問題最終報告書を取りまとめて、県の総力を挙げて実現に向けて取り組んでいきます。 
 
 いわゆる「地方創生」というのは、この「人口問題」への対応と、「地方経済の再生」をセットで行っていかなければなりません。国がやるべきこととしては、地方経済と都会の経済のバランスをとる、そのような内需拡大型の経済財政政策、そして若者・女性の生きにくさを解消する社会政策、これを国がやるべきことであります。そして地方は「オンリーワン的な地域振興策」を工夫して実施していくということを進めていかなければなりません。
  
 「オンリーワン的な地域振興策」の代表的なものが「6次産業化」でありまして、岩手では、一昨年の「あまちゃん」放映をきっかけに、より広い意味での「アマノミクス」として、地方発の内需拡大型経済構造改革を実践してきています。 
 
 今年も、6次産業化による農林水産物や伝統工芸品の高付加価値化や、2つの国立公園をはじめとする優れた景観や三陸鉄道をはじめとする有形無形の観光資源、郷土芸能、さらには座敷わらし、河童などの妖怪的といったようなそういう目に見えない要素も含め、ありとあらゆる地域資源を発掘、また有効活用して、付加価値を高め、県民の収入・所得を高めていきましょう。
 
 また、世界遺産平泉は、地域振興や観光振興にとどまらず岩手県民全体の精神的な支柱でもあり、今年も「平泉授業」や「ケロ平」を活用し、引き続き、平泉の理念や価値を発信していきたいと思います。
 
 3月には、仙台で国連防災世界会議が行われます。関連事業として一関で岩手県主催シンポジウムを開催します。近藤前文化庁長官や中尊寺山田貫首さん等にご参加いただき、中尊寺の視察も行います。外国の方々にも平泉文化をどんどんアピールしていきます。
 
 「復興」と「地方創生」を成し遂げる上で、重要な鍵を握るのが「若者と女性」であり、「若者・女性の活躍促進」が県政3本目の大きな柱となります。
 
 昨年2月、「いわて若者会議」をキックオフし、4月から環境生活部に若者女性協働推進室を設置しました。また、庁内の「若手ゼミ」が設置されて、若手職員らしい自由な発想で新規政策を検討してもらっています。
 
 11月には、県政初となる「いわて若者文化祭」を盛大に開催しました。 
 若者の力と文化芸術の力が一つになって、大きなパワーが発揮された事業だったと思います。今年も、来月、盛岡で「いわて若者会議」の全体会議を行うほか、県内各地での「地域サロン会議」もありますので、みんなで盛り上げていきましょう。
 
 女性の参画については、震災後、復興に向けて女性有識者との意見交換会を重ねてきましたが、昨年4月から県の復興委員会に正式に「女性参画推進専門委員会」を設置し、5月には、県内の経済団体やNPOなど17団体で構成する「いわて女性の活躍促進連携会議」を発足し、それぞれ様々活動をいただいているところです。
 
 このように、「若者・女性の参画」、そして「若者・女性の活躍支援」を今年は更に強化して、復興の現場、また全県各地で、一人ひとりの若者・女性の皆さんが益々活躍することができるように環境整備を進めていきましょう。
 
 最後は、やはり「あまちゃん」の話で締めたいと思います。
 
 昨年8月30日~31日、「全国あまちゃんサミット」が開催されて、全国から多くの「あまちゃん」ファンが盛岡や久慈に集まりました。 
 
 私も来賓挨拶、パネルディスカッションに参加しましたが、そこで、“100年経っても「あまちゃん」”ということを話しました。夏目漱石の坊っちゃんのように「あまちゃん」が100年経っても語り継がれるように、リアルの世界においても「元気な岩手」、「みんなを元気にすることができる岩手」をつくって、そして続けていかなければなりません。
 
 「地元の底力」+「様々なつながりの力」=「復興の力」。これを復興の公式と呼んでいますけれども、これは地域振興の公式でもあります。各職員それぞれが、各地域における「地元の底力」を高める役割を果たし、また、「様々なつながりの力」を築いていくコーディネーターの役割も果たすという意気込みで、県職員一人ひとりが「地元の底力」と「様々なつながりの力」を高める担い手になってほしいと思います。
 
 そのためにも、岩手県職員憲章の5つの信条、「県民本位」、「能力向上」、「明朗快活」、「法令順守」、そして「地域意識」を、今年も各現場において実践してください。
 
 県の役割、そして県職員に対する期待が益々高まる本格復興期間であり、そして本格復興邁進年になります。
 
 皆さん、健康に気をつけて、率先して県政推進していくことができるように、復興を成功させ、そして、“ふるさとが消滅することのない”希望あふれる岩手を実現するよう今年もがんばっていきましょう。

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