岩手県農業研究センター研究報告 第2号

ページ番号2004400  更新日 令和4年1月17日

印刷大きな文字で印刷

【報文】ホウレンソウ萎ちょう病に関する研究

勝部和則

 ホウレンソウ生産において土壌病害は重大な被害をもたらすことが知られている。本研究では、はじめに岩手県における土壌病害の発生実態を明らかにし、萎ちょう病が重要な病害であることを確認した。その上で、萎ちょう病菌(Fusarium oxysporum f. sp. spinaciae)の分離および菌糸和合性群(vegetative compatibility group, VCG)の類別によって発生実態の解析を試みた。さらに、本病の防除法について検討を加え、農薬を用いない防除方法を明らかにした。

1 岩手県のホウレンソウ産地における土壌病害の発生実態

 岩手県の主要な産地である遠野市、西根町、山形村を定点として6~9月穫り作型におけるホウレンソウ土壌病害の発生実態を調査した。発生が確認された土壌病害は萎ちょう病、根腐病、立枯病および株腐病であった。これらの発生様相は地域間差がみられ、遠野市では主に萎ちょう病と根腐病が発生し、西根町では特に根腐病の発生が多く、萎ちょう病の発生もみられた。山形村では土壌病害の発生そのものが多くないが、主に萎ちょう病が発生した。
 このような発生実態の違いは、土壌型や連作年数では一定の傾向が見いだせなかった。しかし、これら3産地を含む14市町村で広域に難防除病害である萎ちょう病の発生がはじめて明らかにされ、今後の発生拡大が懸念された。

2 ホウレンソウから分離したFusarium oxysporumの病原性検定法

 ホウレンソウから分離したFusarium oxysporumの病原性検定法を検討した。土壌への接種菌量は102cfu/乾土gで発病し、104cfu/乾土gで急激に病勢進展してほぼ枯死した。この場合、接種源にショ糖加用ジャガイモ煎汁液体培地による振とう培養菌体(芽胞状菌体)を用いると、汚染土壌を接種源とした場合と発病傾向が一致した。
 また、病原菌の接種時期については、ホウレンソウの出芽~子葉期に接種すると播種時あるいは本葉2~4葉期以降の接種よりも発病度が高かった。検定品種には「おかめ」、「マジック」、「オラクル」は病原菌の菌株間差も少なく、感受性が高かった。なお、検定に際し、次のような簡便法が多数の試料の検定に有効であることを確認した:セル成型用培土を用い、128セル・プラグトレイで出芽~子葉期のホウレンソウ幼苗に菌液を均一に潅注接種する。2~3週間後に試験区全体の発病を概観した簡易発病指数で評価する。
 この検定法によって、産地で発生する萎ちょう症状株から分離したFusarium oxysporum菌のホウレンソウに対する病原性を調査した。その結果、全分離菌株に対する病原性菌株の割合は、遠野市で91.7%と非常に高く、次いで山形村では69.0%と高かった。しかし、西根町では分離率が45.3%と低く、この地域間差は本病の発生実態におおよそ符合した。

3 ホウレンソウ萎ちょう病菌の菌糸和合性群による類別とその分布

 F.oxysporum f. sp. spinaciaeの菌糸和合性群(VCG)を用いて、わが国におけるVCGの地理的な分布、岩手県における分布および圃場内の個体群構造について検討した。その結果、VCG0330、0331が国内に広く分布し、VCG0332は供試菌株数の多かった岩手県でのみ確認された。
 岩手県では3つのVCGすべてが県内に広く分布しており、VCG0332が本県にのみ偏重するものではなく、VCG0330、0331と同様にわが国に広く分布するものと考えられた。いずれの場合も、VCG0330が優占し、VCG0331およびVCG0332はマイナーな個体群に過ぎなかった。圃場内においても同様で、VCG0330が優占して広く分布し、この他のマイナーなVCG0331、0332やこの他の菌株群とともに多様性を形成した。
 また、岩手県における分離株のVCG構成には季節的な変動がみられ、VCG0331および0332は夏作(7~8月穫り)に構成比がピークに達し、秋作(9月穫り)では検出されなかった。一方、VCG0330は他の2つのVCGに比べて常に優先し、作型が進むにつれて構成比率が高まった。このことから、VCG0330は連作に伴って蔓延しやすい可能性が示唆された。
 なお、3つのVCGの標準菌株は、いずれも生育適温20~30℃、最適温度25℃で一致し、温度反応のみでは季節変動を説明できなかった。本研究によって既知のVCGに属さない病原菌の存在が新たに明らかになったが、これらは和合性が低かった。

4 病原性検定法を利用したホウレンソウ萎ちょう病の品種抵抗性の検定

 新たに確立した病原性検定法で品種の抵抗性検定を行った。105~106bud cells/mlの病原菌液を、幼苗の株元に連続注射器で注入接種することによって萎ちょう病の発病指数に品種間差がみられた。
 病原菌として5菌株を用い、発病指数の平均を基に度数分布により検定25品種の抵抗性強度を「強」~「弱」の5段階に区分し、それぞれの区分に対応する比較品種を設定した。「強」:禹城、「やや強」:アトラスまたはソロモン、「中」:バルチックまたはアクティブ、「やや弱」:ミンスターランドまたはおかめ、「弱」:キングオブデンマークまたはマジックである。これにより、本病に対する品種の抵抗性評価を相対的に行うことが可能となった。
 なお、本試験で一部の品種と菌株の組合せによって発病度に順位の逆転がみられた。この現象は分散分析によって有意であったが、交互作用の誤差分散は菌株あるいは品種の要因効果のそれよりも小さかった。

5 ホウレンソウ萎ちょう病の防除

  1. 非病原性フザリウムを利用したホウレンソウ萎ちょう病の生物的防除
     ホウレンソウ根から分離された多数の非病原性F. oxysporumのうち、 S3HO3菌株をはじめとする6菌株を土壌に前接種すると、本病の発病を抑制できることがわかった。そこで、主に非病原性フザリウムS3HO3菌株を用いて本病の防除法を検討した。
     土壌接種では、本菌を104bud cells/乾土g以上かつ病原菌の10~100倍量の菌密度で病原菌より先に接種する必要がある。しかし、土壌接種では発病抑制効果が収穫期まで持続しなかったため、本菌接種床土(106bud cells/乾土g)で育苗した苗を汚染土壌に移植したところ、効果が持続することがわかった。
     本菌のホウレンソウ以外の作物に対する安全性を調べたところ、キュウリ、メロン、トマト、ナバナ、シュンギク、ミツバなど6科17作物に対して病原性を持たなかった。そこで本病の常発する現地圃場において、本菌の接種床土で15日間育苗した苗を移植したところ、太陽熱利用による土壌消毒と同等で、非接種苗に優る高い防除効果が得られ、本法が実用的な防除法であることを確認した。
     なお、本菌は本病の他、ホウレンソウ立枯病や各種Fusarium病に対しても発病抑制効果を示した。非病原性フザリウムによる本技術の防除機作を検討したところ、針接種により交叉防御の生じていることが確認されたこと、本菌の培養ろ液は病原菌分生子の発芽および発芽管伸長を阻害すること、本菌を接種した場合は病原菌単独接種の株よりも病原菌の根内からの検出が遅れるとともに、発病前のホウレンソウ根内では本菌の分離菌数が病原菌を上回ることから、両菌の競合現象が示唆された。
  2. 太陽熱を利用した土壌消毒によるホウレンソウ萎ちょう病の物理的防除
     岩手県において本病を対象とする太陽熱利用による土壌消毒法の適用性を検討した。この試験では有効地温(深さ10cm、40℃以上)を確保するためにマルチ被覆し、さらにトンネル被覆するという二重被覆とし、処理後は不耕起とすることによって、6~7月の1ヶ月間の処理によって有効地温を記録した時間数は131時間に達し、夏穫り作型前に高い防除効果を確認できた。1日の地温確保時間数はアメダス気象観測(地点:遠野)における日照時間数に比例した。以上,本法を6~7月に実施した場合、岩手県において実用的な防除方法である。
  3. キチン質資材を利用したホウレンソウ萎ちょう病の発病軽減効果およびその持続性
     キチン質資材としてカニ殻発酵資材(30kg/a)を用いた。ポット試験および現地圃場試験の結果、土壌消毒後に本資材を施用することによって本病を発病軽減できるが、汚染土壌に直接施用した場合には発病軽減効果の低いことが明らかとなった。
     そこで、別の常発圃場において初年目に土壌消毒した後、本資材を施用し、以降3カ年間にわたり資材の連年あるいは隔年施用等の施用条件に関する検討を行ったところ、本資材を毎年1回施用することで発病軽減効果が持続すること、隔年施用では施用しない年に本病の増加がみられることが明らかとなった。よって、発病軽減効果を引き出すために、本資材は毎年1回土壌施用する必要がある。

【報文】スターチス・シヌアータ栄養系品種「アイスター系」5品種の育成経過及び栽培特性

高橋寿一・内藤善美・佐藤 弘・吉田達夫

 市場性の高いスターチス・シヌアータの栄養系新品種を育成する目的で、種子系品種「ソピア」を育種素材として分離育種を行った。「ソピア」から優良個体の選抜は1995~1997年に実施し、選抜した16個体の各クローン増殖苗を用い、1996~1998年に圃場で特性検定を行い優良系統を選抜した。
 その結果、形態・生態的特性が斉一、且つ高品質であることが確認された5系統について1998年に系統番号を付し、翌年、栄養系新品種「アイスター」系5品種を品種登録に出願した。これらの育成品種の適応作型を検討した結果、春~初夏出し、秋冬出し、同作型の据え置き栽培などの作型に適していた。各品種ごとの諸特性は次の通りである。

  • 「アイスターロージーピンク」は、がくの色は明赤紫で、高規格品の採花割合が高い。がくの直径と花穂長がいずれも長いため、他の品種に比べてボリューム感が優れている。
  • 「アイスターライラック」は、がくの色は浅紫で、茎の翼は小さい。がくの直径は中程度で小花数が多く、花穂形の揃いは各作型で良好である。
  • 「アイスターライラックブルー」は、がくの色は浅紫で、高規格品の採花数は多い。がくの直径は長く、花穂長が長いため花穂部のボリューム感がある。
  • 「アイスターラベンダー」は、がくの色は浅紫、先端部が明青味紫で、茎の翼が小さい。花穂は幅が広く、いずれの作型でも花穂形の揃いは良好である。
  • 「アイスターモーブ」は、がくの色は鮮赤紫、分枝長、花穂長は中程度の長さで、花穂形の揃いは良好である。

 抽だいに必要な低温要求量を「アイスターロージーピンク」を供試して検討した結果、育苗温度15℃、低温処理期間50~60日間で抽だい率が高く採花本数が多かった。挿し芽繁殖による発根率には品種間差異があり、発根しにくい品種は発根剤処理により向上した。挿し芽苗を利用した秋冬出し作型について「アイスターライラック」および「アイスターライラックブルー」を供試して検討した結果、自然育苗による栽培が可能であった。

【報文】エダマメ品種「滝系C8(ちゃげ丸)」の育成

高橋拓也・作山一夫・井村裕一・木内 豊・及川一也・佐々木 力・神山芳典・新田政司・小綿寿志・扇 良明・石川 洋

 「滝系C8(ちゃげ丸)」は昭和61年に岩手県立農業試験場において、良食味で多収のエダマメ中生品種の育成を目指して、中生、良食味で県内において中心品種であった「ふくら」を母親、晩生で良食味の「中生茶豆」を父親として交配し、その後代より育成した系統である。
 収穫期は「ふくら」より約5日遅い中生の晩で、5月中~下旬播種の場合、岩手県中南部での収穫期は8月中~下旬である。稔実莢数は「ふくら」より多く、中生品種としては極く多収であり、完全莢率、多粒莢率とも高い。また、甘み、香りとも特に強く、「ふくら」より優っている。

【報文】エダマメ品種「滝系C11(ぷっくらこ)」の育成

高橋拓也・作山一夫・井村裕一・木内 豊・及川一也・佐々木 力・神山芳典・新田政司・小綿寿志・扇 良明・石川 洋

 「滝系C11(ぷっくらこ)」は昭和61年に岩手県立農業試験場において、大莢で外観品質に優れ、岩手県中南部において8月4~5半旬収穫のエダマメ中生品種の育成を目指して、中生、良食味で県内において中心品種であった「ふくら」を母親、晩生で大莢、多収の「錦秋」を父親として交配し、その後代より育成した系統である。
 収穫期は「ふくら」より約8日遅い中生の晩で、5月中~下旬播種の場合、岩手県中南部での収穫期は8月中~下旬である。完全莢率、多粒莢率とも高く、また、大莢で莢色が濃いことなどから外観品質に優れ、食味も優れる。

【報文】酒造好適米水稲新品種「ぎんおとめ」の育成

畠山 均・菅原浩視・佐々木 力・小田中浩哉・仲條眞介・高橋真博・高橋伸夫・漆原昌二・小綿寿志・扇 良明・中野央子・中西商量・上野 剛

 「ぎんおとめ」は、旧岩手県立農業試験場(現;岩手県農業研究センター)において、早生の酒造好適米品種の開発を育種目標に、1990年、「秋田酒44号」を母に、「東北141号」(後の「こころまち」)を父として交配した組合せの後代から育成選抜した品種である。奨励品種決定調査、醸造適性試験などにおいて、酒造好適米として有望と判断され、2000年に岩手県の奨励品種に採用された。
 熟期が「美山錦」より早く「たかねみのり」並からやや早く、短稈で草型は偏穂数型である。「美山錦」に比べいもち耐病性が優り、耐倒伏性は並、障害型耐冷性はやや劣り、心白の発現も少ないが大粒で多収である。また「美山錦」に比べ粗タンパク質含有率がやや多いが、70%精白米の吸水率がやや優り、砕米混入率がやや少ない等、醸造適性はほぼ「美山錦」並であり、醸造酒の官能評価も「美山錦」並である。「ぎんおとめ」の栽培適地は岩手県内の岩手郡を中心とした地帯であり、最大600ヘクタールの栽培が見込まれる。

【報文】リンゴわい化栽培における紫紋羽病の早期・簡易診断法と防除

仲谷房治・安藤義一・高橋 哲

 わい化リンゴ園における紫紋羽病の発生推移を見ると、はじめ外観的に健全な樹で地際部に菌糸膜が形成され、その後、樹勢が衰弱する傾向があり、まん延は樹列に沿って進む傾向が認められた。紫紋羽病に罹病した樹の特徴として、「ふじ」の場合、夏~秋期になると葉に紫斑点が形成され、形成量は罹病程度と密接な関係が認められた。また「つがる」においては、秋期に発生する芽枯れや果台部の枯死による枝枯れは、被害程度の軽い樹が夏期に病状が急性的に進行して落葉を伴うようになると発生することが明らかになった。
 秋期における菌糸膜の形成を把握する簡易な方法で罹病樹を選び、翌年の生育期に薬剤処理を行い、処理当年における菌糸膜の新たな形成の有無で防除効果を判定して有効な薬剤を選定した。またリンゴ樹枝(休眠枝)を台木部に接するように挿入する方法は根幹部および根部の病原菌を捕捉するのに有効な手法であり、薬剤処理樹の菌糸束の捕捉状況を比較することで防除効果を判定できることを示した。
 春期にトルクロホスメチル水和剤の1,000倍液を1樹当たり40リットル、地際部1m2に注入する簡易な処理方法で地際部の菌糸膜形成を抑制するとともに効率的に衰弱樹の樹勢を回復させることができた。また、薬剤の地際部露出かん注処理とカニ殻発酵資材の併用処理により、菌糸膜形成の抑制効果を持続させ衰弱樹の樹勢を回復させることができた。

【報文】キャベツ種子重量が生育に与える影響

菅野史拓・児玉勝雄・菅原英範

 キャベツの種子重量は、軽いものから重いものまでほぼ正規分布に近い分布を示していた。種子重量の軽い種子からは小さな苗が、重い種子からは大きな苗が生産され、軽い種子ほど生育がばらつく傾向にあった。
 種子重量の違いによる苗の生育差は、活着に影響を与えており、定植後もその生育差が縮まることはなかった。そのため、キャベツの生育斉一化のためには、種子重量を揃える必要があると考えられる。また、小さな種子は、登熟前の未熟な種子を多く含み、発芽が弱く生育がばらつく傾向にあることから除去する事が必要である。

【要報】雑穀を取り入れた普通畑作物の大規模機械化栽培

大里達朗・及川浩一

 雑穀は、健康食品・機能性食品として注目されている。軽米町は古くからの雑穀産地であり、特にこうしたニーズに応えることによって地域を活性化しようとする動きが出てきている。しかしながら、これらの栽培技術は、手作業を主体としたものであることから機械化栽培技術の開発試験および機械化一貫体系の実証を行った。
 その結果、

  1. 雑穀における播種、中間管理、収穫の機械化技術を開発し、アマランサス、キビ、大豆において適応性を検討した結果、
    (1)播種は真空播種機を用いることで、ヘクタール当たり3~4時間の作業が可能で、しかも従来の間引き作業の省力化が可能となった。
    (2)中間管理としての中耕除草は、乗用管理機を用いた1行程3畦間処理で生育中2回処理を行うことで、ヘクタール当たり4.5時間と従来作業の70%の省力化が可能であったが、補助的な人力株間除草が必要であった。
    (3)直流式扱き胴を備えたコンバインを用いて、ヘッダリールの拡大や粗選網を付加することにより、穀粒水分50%以下のアマランサスを脱穀選別損失20%程度以下で収穫できることが明らかとなった。
  2. 軽米町の八戸平原開発地域内で大型機械化体系の実証を行い、葉たばこ経営主体の農家でも雑穀を機械化栽培することで、6ヘクタールの経営から機械化共同経営も含めて13ヘクタールの経営に拡大することが可能であったが、大型機械の導入は機械経費の増大から経営の圧迫につながり、個人完結経営にはなじみにくいものであることが明らかとなった。
  3. 大型機械による雑穀栽培が成立するために、広域な機械利用を前提としてシミュレーションを行い、汎用コンバイン利用体系で最大稼働面積117ヘクタール、損益分岐面積29ヘクタールとなり、このときのオペレータ数は平均3人で最大時5人で、大規模畑作経営が成立することが示された。

 開発技術は、真空播種機、管理ビークル、汎用コンバインによる一貫体系であり、集落等広域に利用することが必要である。こうした機械を利用した大規模畑作経営体が成立するためには、複数のオペレータがそれぞれに補完しあって作業を行う必要があり、この営農が存立することで、地域内全体での輪作体系の確立や有機物の確保・交換が容易になるなど、岩手県北畑作地帯における地域営農システムが大きく変貌するものと考えられる。
 現在のところ、雑穀は高齢者に支えられ自給的な生産となっているが、若い担い手が雑穀を経営に取り入れた営農への参画及び社会的ニーズに応えた雑穀の高付加価値化流通システムの開発により、北上山系の伝統的な食文化の維持にもつながるものと考えられる。

【要報】岩手県内における主要水源等の水温実態と水田水温の推定

日影勝幸・尾形 茂・伊五澤正光・神山芳典

 岩手県内の農業用水の主要水源等16地点について、調査した結果、奥羽山系水源は北上山系水源より水温が低い傾向であった。また、ほ場水温は、アメダスデータ、または仙台リサーチセンターの推定日射量を用い平均誤差2℃以下で日平均、時間値水温が推定可能であった。
 さらに、河川及びオープン用水路での水温上昇、パイプラインによる給水温の低下、ほ場の湛水深の違いによる保温効果についても確認された。

【要報】日本短角牛に関する県内飲食店等・精肉店の意向

中森忠義

 岩手短角牛は、飲食店等のみならず精肉店においても知名度と比較し、扱っている店が少なく、その入手方法や肉の特性・調理方法などに関する情報の提供が必要であることが明らかとなった。
 また、「健康・安全」という特徴に加え、「産地が明らかであること」や「食材のオリジナリティ」が求められる飲食店や宿泊施設において適した食材として取り扱われている事例も見られた。

【要報】ヒエ「軽米在来(白)」・アワ「虎の尾」「大槌10」・キビ「田老系」「釜石16」の特性

菊地淑子・大里達朗・藤原 敏・石山伸悦

 雑穀の生産振興を図るための第一歩として、ヒエ・アワ・キビの特性を調査し、在来種の中から優良な系統を選定し普及に移した。選定した優良系統の特性を以下に示す。
 ヒエ「軽米在来(白)」は、「軽米町」の在来種でふ色が灰褐色、精白粒色が淡黄褐色の粳種である。形態的特徴は、稈長150cm、穂長15cm程度、穂の型が紡錘型であり、出穂期は8月上旬~中旬、成熟期は9月中旬~下旬である。
 アワ「虎の尾」は、ふ色・精白粒色とも黄色で粳性の強い品種である。形態的特徴は、稈長150cm、穂長40cm程度で、穂は名前が示すように虎のしっぽのような形である。出穂期は8月上旬、成熟期は9月中旬~10月上旬である。
 アワ 「大槌10」は、「大槌町」の在来種で、ふ色が黄色、精白粒色が乳白色の糯種である。形態的な特徴は、稈長140cm、穂長20cm程度、穂の型が円筒型、出穂期は8月上旬~中旬、成熟期は9月中旬~10月上旬である。
 キビ「田老系」は、「田老町」の在来種で、ふ色が黄褐色、精白粒色が黄白色の粳性の強い系統である。形態的特徴は、稈長140cm、穂長40cm程度、穂の型が寄穂型であり、出穂期は7月下旬~8月上旬、成熟期は9月上旬~下旬である。
 キビ「釜石16」は「釜石市」の在来種で、ふ色が褐色、精白粒色が黄白色の糯種で、形態的特徴は、稈長は130cm、穂長30cm程度、穂の型が平穂型であり、出穂期は8月上旬、成熟期は8月下旬~9月下旬である。

【要報】なばな「はるの輝」の消費者アンケート分析結果について

菅原豊司・斉藤 恭

  • 「はるの輝」に求められる製品要素は「入り本数」の寄与率が最も高く、茎が細く入り本数の多いものが好まれる。
  • 購入頻度は2~3月が高い。
  • 購入頻度の多い回答者ほど素材の良さを評価する割合が高くなっていることから、今後さらに定着すると見られる。
  • できる限り消費者が好む細い茎が入った形態で出荷し、利用者のすそ野を拡大していくことが必要である。

PDFファイルをご覧いただくには、「Adobe(R) Reader(R)」が必要です。お持ちでない方はアドビシステムズ社のサイト(新しいウィンドウ)からダウンロード(無料)してください。

このページに関するお問い合わせ

岩手県農業研究センター 企画管理部 研究企画室
〒024-0003 岩手県北上市成田20-1
電話番号:0197-68-4402 ファクス番号:0197-68-2361
お問い合わせは専用フォームをご利用ください。