農作物技術情報 第8号 畜産(令和3年10月28日発行)

ページ番号2004116  更新日 令和6年3月13日

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タイトル

  • 牧草地 翌年の良質粗飼料確保を経済的に行うために、秋の草地管理を適切に実施しましょう。
  • 子牛 外気温が下がってきました。防寒対策の準備をし、発育の維持を図るとともに、呼吸器疾病の発生を防止しましょう。

1 牧草地管理


(1)早春代替施肥としての堆肥散布
堆肥施用は、早春の萌芽期の方が効果的といわれています。しかし、早春施肥の難しい地域では、晩秋に堆肥を散布することで春先の生育促進効果が得られます。
散布時には、翌年の減肥に向け、各圃場への散布量(肥料成分量)を概ね把握しておきます。散布後、堆肥の固まりが裸地を作るので、「パスチャーハロー」などで粉砕します。
(2)雑草対策
ギシギシ類への選択性除草剤の秋処理は、3番草の収穫後、葉の大きさが手のひら大に生育した時期に実施します。しかし、気温が低くなると葉面からの薬剤吸収が低下しますので、降霜後の防除は行わないようにします。
(3)石灰資材の追肥
経年草地には、pH5.5 を下回らないように石灰施用が必要です。石灰の施用効果は、化学肥料施用などによる酸性化の抑制の他に、土壌微生物の繁殖、有機物の分解等による牧草の生育促進があげられます。酸性化を抑制する等のために必要な石灰量は、年間約50kg/10a です。

2 子牛の防寒対策

子牛は、その体重に比べて表面積が大きいため熱が奪われやすく、体脂肪の蓄積が少なく、ルーメンでの飼料の発酵熱が少ないため、寒さに弱いという特徴があります。乳用子牛では、生後3週齢までは気温が15℃以下で、3週齢以降の子牛では5℃以下で寒冷ストレスを受けるとされています。牛体に風が当たる環境、牛体が濡れた状態であれば、5℃より高い気温でも寒さの影響が強く現れます。
防寒対策が不十分だと、「体温維持のため体を震わせたり、被毛を伸ばすことでエネルギーを余計に消費する」、「抵抗力が落ちるうえに冬場の乾燥とあいまって肺炎や風邪などの呼吸器系疾患にかかりやすくなる」などの状況に陥ります。このため、子牛の防寒対策である保温と清潔、換気の3つの重要なポイントにしっかりと対処します。
(1)保温と清潔
ア シートやコンパネ等を用いて、子牛の飼養場所のすき間風を防ぎ熱が奪われないようにします。
イ 子牛の休息場所に牛床マットを設置することや休息場所の敷料を厚めに敷くことで床からの冷えの伝わりを防ぎます。腹部の毛の伸びが目立つようであれば、腹が冷えていると思われるので、敷料の厚さや交換頻度を見直します。
ウ 牛体が糞尿で濡れた状態は、不衛生なうえ寒さの影響が大きくなり、下痢や肺炎の発生が懸念されます。敷料はこまめに交換し牛体の濡れを防ぎます。子牛の休息スペースは、水槽や飼槽から少し離れた位置に設置し、厚めに敷料を敷きます。
エ 保温ジャケットやネックウォーマーを用いたり、休息場所でカーボンヒーターなどの加温器を利用するのも牛体の保温に効果的です。保温ジャケットやネックウォーマーは定期的に洗い、衛生的に保ちます。

写真1

写真2

写真3

(2)換気
寒冷対策のため牛舎を閉めきり、換気が不十分になると、湿気やアンモニア、二酸化炭素が牛舎内に溜まり、風邪や肺炎などの呼吸器病にかかりやすくなります。朝方や暖かい時間帯をねらって一定時間換気を行います。また、換気扇を低速で回転させることも有効です。
(3)代用乳とスターター、水
寒冷時は、子牛が必要とするエネルギーが増加するため、エネルギーを補給しなければなりません。
適温域内の15℃で得られる日増体率と比べて、10℃では1割弱、0~5℃では1割強~2 割程度、日増体率が減少します(図)。飼養環境の温度と防寒対策の程度にもよりますが、下痢や肺炎の発生はないのに冬季の発育が良くない場合は、代用乳の給与量を1割~1割強増やした方が良いと考えられます。
また、代用乳の調製から給与までに温度が下がることを考慮して、少し温度の高い湯で代用乳を調製します。
人工乳(スターター)をしっかり採食させることがエネルギー補給と発育確保のために大切です。水とスターターは離して置くか仕切りを付けることで、水とスターターが汚れにくくなり、両方の摂取量が増加します。なお、水の代わりにぬるま湯を給与できれば、飲水量がより増えます。

図 環境温度

(4)観察→異常発見→対処を速やかに
一旦呼吸器病が発生すると、瞬く間に同居牛に感染していきます。感染が広がると、治療の日々が続き、管理者の時間的、経済的、精神的な負担が増えるだけでなく、増体が滞るなど、悪影響を及ぼします。早めの異常発見と治療がカギです。次のような子牛がいないか、しっかりと観察します。

  • エサを食べに来ない
  • 元気がない、耳が垂れている
  • 鼻水をたらしている、鼻が乾いている、咳をしている

もし、異常な牛を発見したら、できるだけその牛を隔離し、「熱を測る」「獣医師を呼ぶ」などの対応をとります。また、子牛が共用している餌槽、給水槽の清掃は1 日1 回行い、踏み込み消毒槽を活用するなど、消毒を徹底します。

3 本格的な寒さの前に、牛舎消毒で病気知らずに

牛舎には色々な病原体が存在しています。特に集合施設等では、各所から子牛が集まるため、牛舎の消毒を行うことで、病原体をできるだけ少なくして感染の機会を減らすことが必要です。
(1)牛舎洗浄
埃や蜘蛛の巣には病原体が付着しています。また、牛舎が糞などで汚れていると消毒薬の効果が低下しますので、取り除きます。発泡消毒は汚れを浮かせることができて、乾燥も速いのでおすすめです。
(2)石灰消毒
作業は大変ですが、「アルカリ消毒」と同時に病原体の「封じ込め」を行えるため、消毒薬に強い病原体にも有効な消毒方法です。塗る場所の汚れを落としてから、ドロマイト石灰を水に溶かして、牛舎全体に塗り付けます。
石灰を塗布した後は良く乾いたことを確認してから牛を移します。
なお、洗浄機と石灰塗布機は家畜保健衛生所で貸出しています。
(3)消毒のポイント
ア 定期的な消毒
牛舎消毒は一度で終わりではありません。定期的に行うことで予防効果が高くなります。病気が蔓延しやすい時期の前を中心に、年2回は実施してください。
イ 部分的な消毒の実施
牛舎全体の消毒の他にも1週間に1~2回程度飼槽、水槽、哺乳柵等を消毒します。人畜に比較的安全な逆性石鹸薬剤がおすすめです。

写真4

最後

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