農作物技術情報 第5号 畜産(令和3年7月29日発行)

ページ番号2003936  更新日 令和3年7月29日

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タイトル

大家畜の暑熱対策
輻射熱の遮断や遮光、牛体への送風と換気など牛舎環境面からの暑熱対策を徹底しましょう。また、新鮮な十分量の水と食いつきの良い粗飼料の給与、ミネラル等の補給など飼料給与面からの暑熱対策も実施しましょう。
 

牧草
高温時には過放牧、過度の低刈り、短い間隔での刈取りを避けましょう。
草地更新を行う場合は、秋播種にむけて、播種床を準備する時期です。耕起、砕土、整地作業は丁寧に行い、膨軟な播種床を作成し、最後の鎮圧作業は念入りに行いましょう。

1 大家畜の暑熱対策

7月中旬後半から、真夏日を越え本格的な猛暑が続いています。農作物技術情報第3号と第4号でもお知らせしていますが、牛舎環境面と飼料給与面からの暑熱対策を徹底し、分娩前後の代謝病や繁殖障害を予防するとともに、乳牛では、乳量の減少や乳成分の低下を最小に抑えます。

(1)牛舎環境面の対策
ア 輻射熱の遮断や遮光
屋根に当たった日光による輻射熱や、牛舎に直接射し込む日光で、牛舎内の温度が上昇します。遮熱塗料やドロマイト石灰の屋根への塗布、スプリンクラーによる屋根への散水などで輻射熱が低減します。また、寒冷紗やすだれ等で牛舎の窓から射し込む日光を遮ることも大切です。長期的な対策としては、屋根への断熱材の設置も有効です。

写真1

写真2

イ 送風と換気
牛舎内に気流を作ることで、牛の体感温度を下げることができます。
(ア)自然の風の流れを牛舎内に多く取り込めるように、壁や窓の開放、遮蔽物の片付けを行います。また、分娩前後や乳量の多い牛で、呼吸数がやや多いと感じる牛については、発熱量の多い頸から肩にかけて、扇風機等で積極的に送風し、体感温度の低下を促します。
(イ)乳牛で生産性を維持するためには、真夏は体感温度を8~10℃以上下げる必要があり、このための送風は風速で2m/秒以上確保する必要があります。また、体感温度は湿度の影写真1 牛舎屋根への石灰塗布 写真2 窓から直射日光が入るのを防止響を強く受けるので、舎内の湿気を含んだ空気が舎外の新鮮な空気と入れ替わる必要があります。
吊り下げタイプの換気扇を利用する場合、換気扇の床面に対する角度は45 から60 度の範囲で調整します。牛体への送風を重視する場合は45 度近くに、換気を中心に考える場合は60 度近くに調整します。
トンネル換気の場合、牛舎の距離が長いと、排気側に向かうにつれて牛床の空気がよどむことがあります。まずは、牛舎長辺の排気側にある窓の開閉により空気のよどみが解消できないか試してみます。解消できなければ、牛舎妻面の換気扇台数を増やす、または、空気がよどむエリアの天井近くに(設置角度はかなり小さくなります)換気扇を設置するなどを検討します。

写真3

写真4

ウ 給水施設の整備
飲水量の確保も大切です。十分な飲水量を確保するため、配管を太くすることや、ウォーターカップの改修も検討してください。

写真5 

(2)飼料給与面の対策(乳牛)
栄養の充足、ルーメンアシド-シスの予防・緩和のため、以下に留意してください。
ア 水
泌乳牛では、1日1 頭あたり100ℓ以上の新鮮な水をいつも飲める環境が必要です。また、水槽やウオーターカップの掃除をいつもよりこまめに行います。
イ 粗飼料
食いつきの良い牧草(例えば適期に刈取り、発酵品質抜群の一番草)やトウモロコシサイレ-ジの在庫量のやり繰りが可能であれば、これらをやや多く給餌することを検討します。繊維と粗飼料からのエネルギ-摂取を確保するとともに、泌乳前期牛で起こりやすいルーメンアシド-シスを予防・緩和します。
ウ 重曹、ミネラル、ビタミン等
泌乳量の多い牛は、粗飼料摂取量、反芻回数、唾液分泌量が減少し、ルーメン内pH の低い時間が長く続くので、重曹を給与(100~200g/日・頭)します。放し飼いであれば重曹の自由採食も有効です。また、発汗等によりカルシウム、リン、マグネシウムの要求量も増加するので乾乳後期牛を除き、通常の1から2割増で与えます。さらに、暑熱時の体温上昇で酸化ストレスが増加すると言われており、ビタミンE やセレンなどの抗酸化添加剤の補強も検討します。
エ 給餌方法
(ア)分離給与では、粗飼料を食い切ったのを確認してから配合飼料を給与します。給餌回数を増やし、1回の配合飼料の給餌量を減らします。牧草の摂取量を増やすため、牧草を細断し、給与できれば理想です。
(イ)TMR給与では、選び食い防止のため、粒度が粗くないこと、水分を含んでいること(50%前後)を確認します。必要に応じて二次発酵を緩和する添加剤を使用します。また、エサ押し回数を増やすことで、採食量を維持するとともに固め食いを緩和します。

写真6

2 牧草

(1)刈取り時期
2番草の刈取り時期は、1番草の刈取りからオーチャード主体草地で約40-45 日後、チモシー主体草地で50-55 日後を目安にします。
(2)暑熱時の牧草刈取りは高めに刈取る
高温時に過度の低刈りは、牧草の貯蔵養分を消耗させ、秋以降の草勢に影響しますので、低刈り及び短い間隔での刈り取りは避けてください。また、放牧地での過放牧も同様です。
刈取りを行う場合は、地際より10~15cmを残すように(握りこぶし1個分が目安)行います(写真7)。

写真7

(3)収穫後の施肥
3番草の生育促進のため、二番草収穫後、できるだけ早く施肥します。施肥量は10a あたり窒素5kg、リン酸2.5kg、カリウム5kg です。尿散布を行う場合は、肥料焼けを防ぐため、曇天や降雨前後に行って下さい。
(4)草地更新(除草剤の播種日同日処理における播種床の作成)
ア 永年草牧草は、8月中旬から9月中旬を目安に播種しますが、播種の約30 日前(7 月中旬から8月上旬)に播種床を予め形成し、雑草を十分に生育させます。
雑草の生育状況をみて展葉が十分であれば、経過日数にこだわらず非選択性除草剤を散布します。
雑草が大きくなりすぎると播種や施肥作業の妨げになることがあります。
イ 前植生処理が未実施の場合は、速やかに非選択性除草剤を散布するか刈払を行います。
ウ 耕起作業では、ル-トマットが確実に土壌と混和するよう十分な深さを確保します。耕起作業の良否が次の砕土・整地作業の精度に影響します。
エ 堆肥は、10a あたり5t を目安に散布します。炭カルなど土壌改良資材を必要量施用します。
オ 砕土・整地作業は、ル-トマットが確実に土壌と混和するよう、また、施用した堆肥や土壌改良資材が十分に土壌と混和するよう丁寧に行います。十分に砕土された膨軟な播種床は、牧草の出芽と定着を高めます。
カ 鎮圧は2~3回丁寧に行います。表土は硬くなりますが、牧草はきちんと出芽し、その後の定着や初期生育が改善されます。また、更新後の降雨による土壌流失を最小限にとどめることができます。

写真8

除草剤 図

最後

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農林水産部 農業普及技術課 農業革新支援担当(農業研究センター駐在)
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