農作物技術情報 第1号 花き(令和3年3月18日発行)
- りんどう 春の株管理と施肥を適期に実施しましょう
- 小ぎく 定植時期に合わせた計画的な親株・育苗管理を行いましょう
りんどう
1 生育の状況
今年度は積雪が多く、気温も1月中旬までは平年よりも低く経過しましたが、2月以降は平年よりも高温傾向で推移しているため融雪が進んでいます。今後、天候の大きな変動がない限り、萌芽期・展葉期の極端な遅れはない見込みです。
2 圃場管理
(1)融雪促進対策
圃場に雪が残っている場合は、融雪を促進する手段として炭の粉を散布する方法があります。散布後に降雪があると効果が劣りますので、散布するタイミングに注意します。
(2)株の保護
昨年定植した株や極早生品種などでは根張りが弱い傾向にあり、冬期間に株が浮き上がっている場合があります(写真1)。圃場を見回り、見つけた場合はていねいに埋め戻し、周りの土を寄せて株を保護します。
また、マルチを除去している圃場では、畦の肩部分が崩れて根が露出することがあります(写真2)。見つけたら早めに土寄せを行い、根やクラウン部を保護します。
3 残茎除去
前年に取り残した株元の茎は、リンドウホソハマキの幼虫やハダニ類が越冬している可能性があるので、暖かくなって動き始める前に除去します。併せて、地表に落ちている前年の花がらなどの残さも拾い集めます。いずれも、必ず圃場外で処分します。
4 施肥
(1)施肥量
春の基肥は、専用肥料を用い萌芽期頃に施用します。とくに、極早生種や早生種は、施肥の遅れによって草丈不足など品質に影響することがあるので、早めの施肥を心がけます。
施肥量は窒素・リン酸・カリ各10~12kg(10a当たり成分量)が基準ですが、土壌診断の結果や前年度の生育を参考に、過剰とならないようバランスのとれた施肥とします。また、鶏ふんや豚ぷん由来の堆きゅう肥の施用量も考慮して施肥量を決めます。
(2)施肥方法
近年は、雑草対策のためマルチを温存する例が多くなっています。この場合、植え穴からの施肥は株に肥料がのりやすく肥料焼けを起こすことがあるため、マルチの一部を切って施用するなど株に直接肥料が触れないようにします。
5 育苗
(1)播種後の管理
育苗は温度管理と水管理がポイントです。適切な管理を心がけてください。
とくに、出芽揃いまでは適温確保に努め、短期間での出芽揃いを目指します。その後は徒長を避けるために温度を下げるとともに、適宜換気を行い締まった苗を作ります。
かん水は、夕方の段階で培土の内部には水分があるものの、表面は乾いている状態が理想的です。当日の天候や苗の大きさ等により、かん水の時間帯、回数、かん水量を加減します。
なお、苗数の不足が懸念される場合は、2次根発根前に早めに間引きを行い、間引いた苗や余裕のある苗を別のセルトレイに移植して、予備苗を確保します。
(2)アルタナリア菌による苗腐敗症の予防
育苗期に発生するアルタナリア菌による苗腐敗症は、種皮に付着した病原菌が伝染源となり、子葉で発病した後、本葉に伝染します。適用殺菌剤による種子消毒に加えて、本葉2対目が出始める時期に薬剤散布することで、以降の病勢進展を抑制します(写真3)。
6 定植圃場
これから定植予定の圃場に堆肥を入れる場合は、定植間際とならないようできるだけ早めに施用し耕起しておきます。
また、排水不良圃場では、畦畔の内周に排水溝を設置する等対策を講じます。
7 病害虫防除
暖冬の影響により、当面注意が必要なのはハダニ類です。前述の早期残茎除去や周辺除草などの耕種的防除に努めるとともに、発生が確認された場合は、早期に薬剤防除を実施します。
小ぎく
1 生育状況
2月以降の高温傾向により、親株の生育が進んでいます。今のところ、挿し芽時期・定植時期に極端な遅れはない見込みです。
2 挿し穂の冷蔵貯蔵
親株の生育が早まり、定植までに穂や苗の老化が心配される場合や、数回分採穂したものをまとめて挿したい場合は、挿し穂の冷蔵貯蔵が有効です。
手順例は以下のとおりです。
- 採穂した穂を日陰でややしんなりするまで水分を飛ばします。
- 穂を揃え束ねて新聞紙で包みます。これを小さめのポリポット等に立てた状態とします。
- 束ねた穂を冷蔵庫に入れます。この時、冷蔵庫の冷風が直接当たらないよう箱に入れるか新聞紙等で覆います。
- 2~3℃で20~30日程度貯蔵可能です。庫内は冷えやすい場所があるため、設定温度ではなく必ず温度計で確認します。
- 出庫後は傷んだ穂を除いたのち、切り口の切り戻しをせずにそのまま挿し芽を行います。
3 育苗(挿し芽)
8月咲品種では、品種に応じた所定の定植時期に適期苗が定植できるよう計画的な作業に努めます。老化苗は開花期や切り花品質に影響するため、作業スケジュールや育苗管理に留意します。
挿し床の温度は15~20℃が最適で、培土の水分は多すぎない方が早く発根します。また、挿し芽後はしおれを防ぐために遮光しますが、徐々に光にあてて徒長や葉の黄化を防止します。温度・水・光管理を適切に行い、20日間以内の育苗期間を目標とします。
9月咲品種の挿し芽時期は、5月上旬以降が一般的です。親株の生育が進んでいる場合は、軟弱な生育や側枝の伸びすぎを避けるため、日中はハウスのサイドと入口を開放して適温管理を心がけます。また、過かん水を避けて軟弱徒長を抑制します。
また、気温の上昇とともに親株の白さび病やべと病等の発生が増加しますので、換気によりハウス内の湿度を下げるとともに、定期的な薬剤防除を行います。
4 定植圃場
これから定植予定の圃場に堆肥を入れる場合は、定植間際とならないようできるだけ早めに施用し耕起しておきます。
また、排水不良となりやすい水田転換畑では、高畦や明渠などの排水対策を講じます。
5 病害虫防除
上述のとおり、病気で最も注意が必要なのは白さび病とべと病です(写真5)。日中の換気と適切なかん水に加えて、例年発生がみられるハウスでは、有効薬剤を定期的に予防散布します。
また、害虫ではアブラムシ類とハモグリバエ類に注意します。親株からの持ち込みにより、育苗期に発生がみられることもあります。発生初期に有効薬剤を散布するとともに、採穂時に親株をよく観察し、健全な穂を選びます。
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農林水産部 農業普及技術課 農業革新支援担当(農業研究センター駐在)
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