農作物技術情報 第3号 畑作物(令和5年5月25日発行)

ページ番号2006976  更新日 令和5年5月25日

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タイトル

  • 小麦 越冬後、気温が高く推移したことから生育が進み、出穂期は平年より7日程度早い5月上旬に達しました。生育は良好で、茎数は概ね平年並みを確保しました。                                   出穂期の早まりに伴い、成熟期も平年より7日程度早まると予想されますので、乾燥施設との連携や収穫機械の整備などを早めに行い、収穫作業に備えましょう。
  • 大豆 大豆は初期生育の良し悪しが、その後の生育、収量や品質に大きく影響します。排水対策・耕起・砕土などを丁寧に行い、土壌条件を整えましょう。                                           種子消毒や播種作業、除草剤の散布などは計画的に実施し、適正な栽植密度を確保して初期生育を良好にしましょう。

小麦

1 生育概況

越冬後、気温が高く推移したことから生育が進み、出穂期は平年より7日程度早い5月上旬に達しました。また、生育は良好で、茎数は概ね平年並みを確保しました。

2 赤かび病の防除

5月初めに出穂が始まった県中南部では、赤かび病防除が終了したところもありますが、これから防除を行う地域
では、開花状況を確認して適期散布を行います。赤かび病の薬剤防除は、品種や天候によって2回目、3回目の散布が必要になりますので、表1を参考に防除を行ってください。
また、薬剤防除だけでは完全に赤かび病を抑制することはできませんので、穂が緑色のうちにほ場を見回り、赤かび病にかかっている穂を抜き取ります。また、赤かび病が多発した場合は、健全粒に赤かび粒が混入しないよう刈分けします。

写真1

表1

3 収穫作業の事前準備

(1)出穂期が早まったことから、例年より成熟期が早まると予想され、6月中旬から収穫が始まると見込まれる地域もあります。小麦の収穫は梅雨時期と重なり、刈り遅れによる品質低下が生じる恐れがあることから、適水分に達したら速やかに収穫できるよう、圃場排水対策や機械等の点検整備を早めに行います。
(2)カントリーエレベーターや共同乾燥施設を利用して乾燥・調製を行う場合は、施設側との連携を密にし、計画的に収穫作業ができるよう、受け入れ時間や荷受け水分を前もって確認しておきます。
(3)品質低下を防ぐため、事前に倒伏圃場や赤かび病の発生状況を確認し、刈取りの順番を決めておきます。

4 収穫作業の注意点

(1)刈取りできる子実水分
成熟期は、出穂期の概ね45~50 日後に達します。成熟期になったら子実水分を確認し、概ね30%以下になったら速やかに刈取りを行います。なお、普通型コンバインでは35%前後から、自脱型コンバインでは30%以下から収穫が可能です。
(2)子実水分の確認
子実水分は、1 日で大きく変動します。晴天には1 日に2~2.5%程度低下するとされていますが、風がある条件では5%以上低下することもありますので、水分計でこまめにチェックします。
(3)刈分けの実施
降雨等で倒伏がひどい圃場や赤かび病等で品質に問題のありそうな場合は、刈分けし、良質な小麦への混入を避けてください。
(4)異物混入の防止
収穫・調製時は、圃場の土を収穫物に付着させないよう注意します。また、収穫時にコンバインによる土の噛み込みを防ぐため、できるだけ高刈りし、万一コンバインのヘッダ部に土を噛み込んだ場合は、作業を止めて清掃を行ってください。
収穫した小麦を運搬する場合は、急な降雨や異物の混入を防ぐため、シートをかけてください。
(5)高水分小麦の収穫について
最近は自脱型コンバインの性能が向上し、水分の高い小麦を収穫できる機種も登場してきました。
しかし、水分が高いと収穫時に粒がつぶれたり、乾燥時に退色粒が発生しやすくなります。やむを得ず高水分での収穫を行う場合には、作業速度や回転数を抑え、ていねいに作業を行い、刈取り後はできるだけ早く(1時間以内)乾燥作業に入ってください。

5 乾燥作業の注意点

収穫された麦をそのまま長時間放置すると変質し、異臭麦や熱損傷が発生します。刈取り後はできるだけ早く乾燥機へ搬入します。また、乾燥機の能力にあわせて収穫作業をすすめ、速やかに乾燥を行います。
(1)送風温度
送風温度は、子実水分が高いほど低く設定します。子実水分35~30%では送風温度40℃以下、子実水分30%以下では送風温度50℃以下とします。穀温が40℃を超えないように適宜様子を見てください。
(2)送風温度の注意点
高温で急激に乾燥すると、熱損傷や退色粒が発生する場合があります。
(3)テンパリング
水分が高いほど1回当たりのテンパリング時間は短く設定します(子実水分30%前後では1時間以内)。
(4)張り込み量
乾燥機への張り込みは、循環型乾燥機では子実水分が30%以下の場合は容量どおりの張り込み量としますが、水分が高い場合は容量の7~8割程度とします。平型では堆積の高さを20cm 程度に抑えてください。
(5)二段乾燥の実施
二段乾燥を実施する場合、水分が17~18%程度になるまで一次乾燥してからビンやサイロに貯留しますが、カビ等の発生を防ぐため、通風により穀温は20℃以下に下げてから貯留します。また、仕上げ乾燥は一時貯留から3~4日以内に行います。仕上げ水分は12.5%以下です。

大豆

1 排水対策の実施

(1)排水不良は、出芽不良を誘発するだけでなく、根粒の着生阻害による窒素不足や根の伸長阻害を招き、生育不良の主な要因となるため、大豆作では特に排水対策が重要です。
(2)播種前に弾丸暗渠やサブソイラ等を用いて排水対策を講じます(写真2)。特に転作田では必ず畦畔の内側に溝幅20~30cm、深さ15~30cm の溝(額縁明渠)を作り、ほ場水尻の排水口につなぎます(写真3)。排水溝の設置は、夏期の干ばつ時に畦間潅水を実施する際にも役立ちます。
(3)基盤整備の事後転作圃場は一般に重機による転圧等で透水不良となります。排水口を深く掘り下げて額縁明渠につなぐ等の対策を行います。

写真2、3

2 施肥・耕起・砕土・整地

(1)砕土は丁寧に行います。仕上がりが不均一だと、除草剤の効果が低下し、薬害の誘発、播種精度の低下に伴う出芽不良などの原因となります。
(2)耕うん・砕土後(特にロータリ耕後)は、土壌が水分を含みやすく、乾きにくくなります。事前に、土壌改良のための石灰資材等の散布も必要ですので、播種スケジュールと天気の動きをみながら、無理のない作業日程を立てます。
(3)整地終了後~播種前に雑草が目立つ場合は、非選択性除草剤を有効に利用します。

3 播種作業・・品種に応じた栽植密度の確保が重要です

(1)播種適期
概ね表2のとおりです。播種作業は適期内に行います。ただし、圃場が滞水するような条件や、播種前後に大雨が予想されるときは出芽が劣るので作業を控えます。播種深は通常3cm 程度としますが、乾燥しすぎた土壌条件で播種すると出芽が遅れるので、こうした場合は播種深を5cm 程度にして深めに播種します。

表2

(2)播種様式
畦幅(条間)は、その後管理する機械に合わせて設定します。品種別の栽植密度は表3を目安にしてください。

表3

また、水田転換畑での栽培では、排水不良による湿害を起こしやすいので、排水対策を実施した上で、以下の「湿害軽減播種技術」と組み合わせると効果的です。
湿害軽減播種技術には、
(1)代かきハローを用いた「小畦立て播種」(https://www.pref.iwate.jp/agri/_res/projects/project_agri/_page_/002/004/792/repo_366.pdf)
(2)改良型アップカットロータリを用いた「耕うん同時畝立て播種」
(http://www.naro.affrc.go.jp/laboratory/carc/contents/files/deliv-02_1.pdf)
(3)「ディスク式畑用中耕除草機を利用した畝立て播種」
(https://www.pref.iwate.jp/agri/_res/projects/project_agri/_page_/002/004/785/repo_664.pdf)


等があります。いずれも播種時に畝を立てることで、播種された種子の位置や根域が高くなり、地表付近の滞水の影響を緩和することができます。生育初期の湿害を回避することで、その後の生育が良好となり、収量や品質が向上することが確認されています。
一方湿害の多い圃場では、根が下層にまで伸長できずに根域が浅くなることが知られています。このような大豆は干ばつにも弱く、着莢数の減少や雑草の繁茂等が生じて悪循環を招くこととなります(図1)。

図1

(3)播種量
同じ栽植密度でも種子の大きさにより播種量が変わりますので、適正な栽植密度となるよう、種子の大きさに応じて播種量を決めます。主な品種の種子の大きさは次のとおりです。

参考表

(4)青立ち対策
青立ちの発生原因は様々ですが、(1)一株単位での生育過剰、(2)一株莢数の減少、などが主な原因と考えられます。一株単位での生育過剰を防ぐには、疎播にならないように「適切な播種量を確保」することなどが重要です。特にシュウリュウなどの大粒品種では入念な播種量の調整・確認を心がけてください。
令和3年産大豆では、県南部を中心に青立ちの発生が目立ち、その要因として、開花期前の高温と干ばつといった気象条件により着莢数が減少したためと考えられました。


(5)病害虫防除・・・種子消毒を徹底
紫斑病や茎疫病、タネバエ防除のため、必ず種子消毒をします。


(6)雑草防除
ア 播種後の土壌処理剤の散布は必須です。播種後すぐに散布できるよう準備します。また、土壌処理剤は土に適度な湿り気がある状態で散布するのが望ましいですが、土壌が乾いている時は、希釈水量の上限量で均一に散布し、処理層の形成に努めます。
また、連作圃場等で雑草発生量が多いと予測される場合は、10a あたりの使用量を農薬登録の範囲内で多めとし、しっかり雑草発生を抑えます。
イ 覆土が浅いと薬害の生じる場合があります。覆土は2~3cm以上確保し、しっかり鎮圧します。


(7)中耕培土・・・中耕培土で生育の安定化を
ア 中耕培土には次の効果があり、生育を安定化するのに役立ちます。
(1)雑草防除、(2)倒伏防止、(3)土壌の通気性を良好にし地温を上昇させて根の機能を向上させる、(4)発根を促進し根群を発達させる、(5)土壌の排水を良好にする、などです。
中耕培土の時期は大豆2~3葉期と5~6葉期が一般的ですが、雑草の発生時期に応じて(除草剤の効果がなくなってきたら)、雑草が小さいうちに行うことが重要です。培土の高さは、コンバイン収穫の場合はあまり高くしないこと(おおむね1葉節以下)に留意します。また、汚損粒の発生を防ぐため、培土の高さは一定に株元までかかるようにします。
イ ディスク式中耕除草機の普及が進んできています。ディスク式中耕除草機の主なメリットは、(1)湿潤土壌でも土の練りが少なく適期作業が可能、(2)作業能率・燃費に優れる、(3)畦立て栽培に適しており除草効果が高い、などが挙げられます。詳しくは農業改良普及センター等に問い合わせください。

最後

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