農作物技術情報 第3号 水稲(令和5年5月25日発行)
- 活着後、好天時は浅水管理で地温を高め、分げつの発生を促しましょう。
- 中干しは、6月下旬(6月21~25日頃)を目安に開始し、溝切りを実施しましょう。
- 除草剤は、適期を逃さず散布しましょう。
- 取置苗はいもち病の伝染源になるので、直ちに処分しましょう。
- 斑点米カメムシ類のふ化盛期に合わせ、地域一斉の草刈を実施しましょう。
1 田植えの進捗状況
5月18日現在の田植えの進捗率は県全体で60%となっています。平年に比べやや遅いペースですが、概ね適期での移植が進んでおり、各地域とも、概ね適期内(5月25日まで)に終期(90%)を迎える見通しです(表1)。
2 活着後の水管理
(1)分げつ促進のため、2~3センチメートルの浅水管理を基本とします(図1)
- 気温が15℃以下の低温時は、葉先が出る程度の深水管理とします。なお、低温でも日照があり、風のない日は、日中は浅水にして水温・地温の確保に努めてください。
- 昼間は止水、朝夕の短時間かんがいで水温・地温を高め、初期生育を確保します。
(2)稲を健全に保つため、以下に該当する場合は水の入れ替えをおこないます
- 藻類や表層剥離が多発する水田
アミミドロ:窒素・リン酸多、水温22~25℃
アオミドロ:リン酸多、低温・曇雨天、水温18~23℃、pH8.5~9
表層剥離 :リン酸多、水温25℃付近、pH6~7
- 水持ちが良すぎる場合(7日間以上入水不要)
- 春先に稲わらや堆肥を多投したときなど、早期にガスが発生する水田(表2)
3 中干し
(1)開始時期の目安・・・茎数が目標穂数の8~9割となる時期(平年6月25日頃)
- 中干しを適切に実施することで、余剰分げつ・節間伸長の抑制や根の健全化、機械収穫に必要な地耐力の確保のほか、温室効果ガス(メタン)の抑制にもつながります。
- 県内の主要うるち品種(ひとめぼれ、あきたこまち、いわてっこ等)で中干し開始の目安となる茎数は、概ね360~450 本/平方メートル程度(坪60株の場合、株あたり20~25本)です。
- 7月に入ってからの中干しは、梅雨で田面が乾きにくい場合が多いため、6月中に開始できるよう、初期生育の確保に努めてください。
(2)中干しの程度
- 中干しの効果を高めるため、溝切りをおこないます(図2)。
- 細かい亀裂が生じ、軽く踏んで足跡が付く程度まで乾かします(図3)。
- 十分乾いたら「1日湛水→2日落水」⇒「2日湛水→1日落水」と落水間隔を徐々に短くし、幼穂形成期頃には湛水管理とします。
- 根腐れ防止のため、中干し後の急な湛水はさけてください。
4 除草剤の散布
(1)除草剤の散布時期
雑草の種類や葉齢を良く確認し、散布適期内の早い時期に散布します。なお、除草剤ラベルに記載された散布晩限のノビエ葉齢(例:~ノビエ2.5葉まで)は、平均葉齢でなく「最大葉齢」ですので、適期を逸しないように散布してください(図4、図5)。
(2)散布後の水管理
十分な湛水深を確保してから除草剤を処理します。散布後3~4日間は水を動かさず、7日間は落水・かけ流しをしない管理としてください(この間、田面を露出させないこと)。
5 病害虫防除
(1)葉いもち・・・補植用取置苗の早期処分
ア 水田内や畦畔際に放置された取置苗は、いもち病の伝染源になる恐れがありますので、直ちに処分してください。取置苗をよく観察し、葉いもち病の発生を確認したときは(図6)、水田内の葉いもち病発生状況を観察します。
イ 移植時にいもち病予防箱粒剤を施用しなかった場合、葉いもち予防の水面施用粒剤を6月20日頃に施用し、中干し開始の1週間前までに散布を終えてください。なお、例年、葉いもちが早期に発生する地域ではこれより7日程度早めに施用してください。
ウ 葉いもち予防水面施用粒剤を施用する前や箱施用剤を使用した場合でも、圃場をよく観察して葉いもちの発生が見られた場合には、直ちに茎葉散布を行います。
(2)斑点米カメムシ・・・草刈り
- アカスジカスミカメ幼虫のふ化盛期は平年並みの予測です(表3)。今後平均気温が平年より高い日が続くとふ化盛期が早まる可能性があります。
- すでにふ化盛期を迎えている地域では、直ちに草刈りを実施してください。
ア 斑点米発生の原因となるアカスジカスミカメは、イタリアンライグラス等のイネ科牧草や雑草の穂などで繁殖します(図7、図8)。
イ アカスジカスミカメは卵で越冬しますが、越冬卵のふ化(卵がかえること)盛期の前後5日間に畦畔等の草刈りを行うと、越冬世代幼虫の密度低減に効果的です。
ウ ふ化盛期の前後5日間に、越冬場所である水田畦畔、牧草地、雑草地、農道等の草刈りを地域一斉に行います。→ふ化盛期を迎えた地域(表3)では直ちに草刈りを実施してください。
エ 草刈り後10日間程度は雑草の出穂を抑制できますが、その後も、イネ科植物(イタリアンライグラス、スズメノカタビラ等)を出穂させないように管理します。
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