農作物技術情報 第6号 畑作物(令和4年8月25日発行)

ページ番号2005530  更新日 令和4年8月25日

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タイトル

  • 大豆 開花期は、概ね平年並みの7月下旬に達しました。生育量は、6月下旬以降の気温が高く経過したことから、平年並み~平年を上回っています。                                            現在、子実肥大期となっており、紫斑病とマメシンクイガの防除時期を迎えています。必ず薬剤散布を実施しましょう。
  • 小麦 令和5年産小麦の栽培が始まります。収量確保のためには、越冬前に十分な生育量を確保することが必須です。排水対策は早めに実施し、播種は無理せず土壌条件が整ってから適期内に行いましょう。

大豆

1 生育概況

開花期は、概ね平年並みの7月下旬に達しました。生育量は、6月下旬以降の気温が高く経過したことから平年並み~平年を上回っていますが、7月中旬以降の相次ぐ大雨の影響により、湿害が発生した圃場がみられるほか、播種時期が遅れた圃場では生育が小さめとなっています。
現在、子実肥大期となっており、紫斑病とマメシンクイガの防除時期を迎えています。


2 病害虫の防除

マメシンクイガの防除適期は、県北部で8月第6半旬、県央・県南部で9月第1半旬となっています。また、紫斑病の防除適期は、若莢期(開花後20 日頃)~子実肥大期(開花後40 日頃)です。
薬剤は、莢によく付くように散布(液剤の場合、生育が旺盛な場合は登録の範囲内で散布薬液量を増やす)します。


3 手取り除草の実施

雑草は収穫時に汚損粒の原因となりますので、早めに除草します。
近年拡大傾向にある帰化アサガオ類やアレチウリなど、防除が難しい雑草が発生している圃場では、雑草が種子をつける前に除草を行ってください。


4 台風対策

台風の影響を受けやすい時期になります。土壌表面の排水を促進するため周囲溝や排水口等を点検・補修し、土壌表面水を速やかに排水する等、必要な対策を講じてください。

5 シストセンチュウ被害の確認

9月上旬までに圃場を観察し、湿害生育不良株(地上部が退緑、黄化等)が部分的に局在し、うねに沿って広がっていないかなどを確認します。湿害を受けていないにも関わらず、このような症状が見られる場合はシストセンチュウの可能性があります(写真1)。株を引き抜いてみて、シスト(卵の詰まった殻:写真2)の有無を確認してください。発生が確認された場合は、汚染土壌の拡散を防止するため農業機械等の洗浄を徹底するとともに、汚染程度の高い圃場の収穫は後に回します。

写真1

写真2

小麦

1 排水対策

水稲の収穫作業と小麦の播種作業が競合しないよう、計画的に播種準備等を行ってください。
水稲の収穫後、小麦を作付けする圃場については、必要に応じてサブソイラによる弾丸暗渠の施工を行うとともに、地表水の速やかな排水を促すため、できるだけ早く額縁明渠を設置します(写真3)。
額縁明渠は必ず排水路につなげてください(写真4)。

写真3

写真4

明渠のうち圃場内小明渠(写真5)は、播種後に施工が可能です。小麦を潰してしまいますが、収量への影響はほとんどありません。
額縁明渠については、雑草が圃場内に侵入しないよう非選択性除草剤等を適切に用いるほか、生育期間を通じてこまめに手入れを行います。

写真5

2 土壌改良資材・堆肥散布

県内の水田転換畑は土壌の酸性化が進んでいる圃場が多く、低収の一因となっています。土壌診断を実施し、石灰資材の投入を行ってください。なお、石灰資材投入の効果は施用後直ちに現れるものではありませんが、計画的な圃場利用の中で、積極的に施用することが重要です。
また、水田転換畑における麦作は、一般に適期作業を重視する観点から、堆肥等の有機物施用が困難な面があります(特に水稲収穫直後の麦作など)。しかし、堆肥等の有機物には土を膨軟にする、根張りをよくする、施肥の効果を高める、などの利点があり、継続して施用すると化学肥料のみを使用した圃場より収量・品質が向上します。堆肥を施用する場合は、雑草種子の混入していないものを使用してください。

3 プラウ耕

水稲栽培では一般的にロータリ耕が行われますが、小麦栽培では深耕のためにプラウ耕が望ましいケースもあります。プラウ耕等を行う場合は、作土や耕盤の深さなどを調査し、不良な重粘土、やせた下層土が作土に混入することを避けるなど、土壌タイプを考慮し、事前に十分に検討してください。
なお、近年は砕土性に優れるアップカットロータリー(逆転耕)の利用も増えています。

4 砕土・整地

大きな土塊が圃場にある場合は、砕土・整地作業を十分に行う必要があります。土塊が多いと播種精度が落ち、発芽が劣るなどの問題が発生しますので、水稲から転換後1~2年は砕土・整地をできるだけ丁寧に行います。
特に砕土の良否は発芽に大きな影響を及ぼすため、一般的に地表部10cm 層の砕土率(粒径2cm 以下の土塊の割合)を70%以上にする必要があるとされています。
砕土作業は、ハロー耕(ツースハロー、ドライブハロー、バーチカルハロー)やロータリ耕が効率よく行えますが、作業時の土壌水分によっては砕土性が劣る場合があります。また、プラウ耕を行った場合、砕土作業はプラウ耕の方向に対して直角か45゜の角度で行い、砕土後は圃場を均平にするため整地します。
一般にロータリ耕のあとは土壌が水分を含みやすく、降雨があると乾きにくくなるため、播種直前に行うようにします。アップカットロータリを用いると、表層の砕土率が高く、下層は粗い二層構造の土壌を形成し、有機物の埋め込み性にも優れるため、その後の播種作業も楽に行うことができます。

5 播種

(1) 適期播種
播種期が遅くなると、年内に確保できる茎数が少なく、穂数不足による減収や、根張りが少ないため凍上害にあうことが多くなります。また、播種晩限を過ぎるほど減収程度が大きくなるので、適期播種に努めてください(表1)。
小麦も稲と同様に、主茎の葉齢によって発生する分げつ数が決まっています。多くの有効分げつを確保するために、越冬前の主茎の目標葉齢は4葉以上とします。

表1

(2) 施肥
麦類の施肥は、越冬後の追肥の占める割合が高く、基肥は越冬前の生育量を確保するために施用します。
標準的な基肥量を表2に示していますが、土壌改良目標値を満たした圃場での施肥管理は、「補給型施肥基準」を適用することができます。
補給型施肥とは、「圃場からの収穫物による肥料分の持ち出し量」と浸透水による「土壌養分の溶脱量」を施肥によって補給する、という考え方で作られた施肥基準です。この施肥基準では、堆肥と化学肥料を区別することなく、含まれる肥料成分の合計で施肥設計しますので、堆肥の活用で肥料費を抑えることも可能です。詳しくは最寄りの農業改良普及センターにお問い合わせください。

表2

(3) 播種量と播種方法
品種別の播種量・目標株立数は表3を基本とします。しかし、圃場条件が整わず播種が遅れた場合には、播種晩限から1週間遅れるごとに播種量を1割ずつ増やします。また、前作で萎縮病類が発生した圃場にやむをえず今年
もナンブコムギを作付ける場合には、播種量は標準の3割増とし、100~120 株/平方メートル程度の株立数を目指し、茎数確保を図ります。
なお、砕土が粗い、土壌が湿っているなどの条件下では苗立ち率が低下します。このような条件下で播種する場合、播種量を増やすなどの対策を行います。
播種深度は通常3~5cm 程度を目標とします。播種深度が深すぎると、出芽のバラツキや出芽率の低下が問題になり、浅すぎると、凍上害や鳥害、干ばつ害、除草剤の薬害などが生じやすくなります。
砕土の状況、土壌の乾湿(排水の良否)、播種量、播種後の天気予報などを総合的に勘案して播種深度を設定してください。

  • 萎縮病類対策

萎縮病類に抵抗性を持たないナンブコムギを作付けする場合、萎縮病類が発病した圃場では安定した収量確保が難しいので、圃場の変更を検討してください。
萎縮病類は土壌伝染しますので、農業機械、農機具および作業者の靴の土壌をよく洗い、汚染土壌を他の圃場に持ち込まないようにしてください。

6 除草剤処理

除草剤をよく効かせるためには、
ア 砕土・整地を丁寧に行う
イ 散布のタイミングを逃さない
ウ 適湿条件で散布する
ことが重要です。
過湿条件では薬害が発生する危険があるので散布を避けてください。また、輪作や周囲の草刈りなど耕種的な防除を併せて実施し、総合的な雑草防除を行ってください。
やむを得ず連作する場合、前年にイタリアンライグラスが多発した圃場では、耕起前(イタリアンライグラス出芽後)に非選択性茎葉処理剤を散布し、その後耕起・播種する方法が有効です。耕起前の非選択性茎葉処理剤を散布してから播種後の土壌処理剤を散布するまで、できるだけ早く(10 日以内)行うようにすると効果的です。その他、土壌処理剤を2回散布する方法等が防除法として知られています。
詳しくは最寄りの農業改良普及センターにお問い合わせください。

最後

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このページに関するお問い合わせ

農林水産部 農業普及技術課 農業革新支援担当(農業研究センター駐在)
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