農作物技術情報 第5号 畜産(令和4年7月28日発行)

ページ番号2005481  更新日 令和4年7月28日

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タイトル

  • 牧草

再生草の収穫は低刈りを避け、追肥は曇天時や降雨前後に行いましょう。
草地更新を行う場合は、播種床を準備する時期です。耕起、砕土、整地作業は丁寧に行い、良い播種床を準備しましょう。

  • 大家畜の暑熱対策

輻射熱の遮断や遮光、牛体への送風と換気など牛舎環境面からの暑熱対策を徹底しましょう。また、新鮮な十分量の水と消化性の良い粗飼料や重曹の給与など、飼料給与面からの暑熱対策も実施しましょう。

1 牧草

(1)再生草の刈取り管理

1番草の収穫期である5月下旬から6月上旬に雨が多く収穫が遅れたため、再生草の生育はやや遅れています。再生草の刈取りは、前回の刈取りからオーチャードグラス草地で40-45 日後、チモシー草地で50-55 日後が目安です。刈取りは、夏枯れを防ぐため、地際より10-15cm を残すように行います。
追肥量は10a あたり窒素5kg、リン酸2.5kg、カリウム5kg が標準です。追肥や尿散布は、猛暑が続いている時期に行うと肥料焼けの可能性があるため、曇天や降雨前後に行って下さい。

(2)草地更新の準備

草地造成・更新してから年数が経過し、裸地化や雑草の侵入が目立ってきた場合は、草地更新が必要です。「牧草の被度」「土壌pH および硬度」を確認し、更新方法を決定します(表1)。

表1

更新作業の概要は表2のとおりです。永年生牧草は、8月中旬から9月下旬を目安に播種します。播種日から逆算して耕起、砕土、整地を丁寧に行います。土壌に問題がなく、雑草が少ない場合は、牧草の追播も増収効果があります。

表2

土壌改良資材は、pH6.5 矯正量の石灰質資材と、可給態リン酸が5-10mg/100g となるリン酸質資材が必要です。また、3要素の施肥量は、窒素7-10、リン酸10-15、カリ4-7kg/10a が標準です。特に土壌改良資材は通常管理では施用できないので、更新に合わせて施用します。なお、牧草の播種量は表3が基準となります。

表3

2 大家畜の暑熱対策

本格的な暑さが続いています。牛舎環境面(農作物技術情報第3号参考)と飼料給与面(農作物技術情報第4号参考)からの暑熱対策を徹底し、分娩前後の代謝病や繁殖障害を予防するとともに、乳牛では、乳量の減少や乳成分の低下を最小に抑えます。


(1)牛舎環境面の対策

ア 輻射熱の反射や断熱、遮光
牛舎の屋根に当たった日光による輻射熱、牛舎に入り込む直射日光で牛舎内の温度が上昇します。屋根表面への遮熱塗料やドロマイト石灰の塗布、屋根表面への散水、屋根表面への寒冷紗の設置、屋根裏へのウレタン断熱材の吹き付け、牛舎の軒下や窓への寒冷紗の設置など、対策できることを徹底し、牛舎内をできるだけ暑くしないようにします。

写真1 2

イ 送風と換気
牛舎内が30℃であっても、牛体周辺を2m/秒の風が流れることで体感温度は21~22℃まで下がります(図1)。また、湿度が下がることで体感温度は低下します(図2)。牛体周辺、とくに頸から肩にかけてしっかり風が流れること、湿った牛舎内の空気をしっかり換気することが大切です。
牛の呼吸数が多い、横臥時間が少ないなどの牛の行動が観察される場合は、換気扇を増やす、吊り下げ換気扇の角度を60 度から45 度の範囲でやや小さくすることで牛体周辺の風速を増やします。また、分娩前後や乳量の多い牛、体調を崩した牛には、個別に扇風機で積極的に送風することも体感温度を下げるのに有効です。

図1 2

ウ 給水施設の整備
飲水量の確保も大切です。十分な飲水量を確保するため、配管を太くすることや、ウォーターカップの改修も検討してください。また、水槽のこまめな清掃も飲水量確保に必須です。

写真3

(2)飼料給与面の対策(乳牛)
ア 水
泌乳牛、乾乳牛ともに気温の上昇に伴い飲水量が増えるので、清潔な水を常に飲めることが大切です。水槽やウォーターカップの掃除をこまめに行います。
イ 粗飼料
繊維含量が少なく粒度の小さい粗飼料は、ルーメンにとどまる時間が比較的短く、逆に繊維含量が多く粒度の大きい粗飼料は、滞留時間が長くなります。ルーメンに滞留する時間が長いほど発酵熱が増加するので、前者の様な消化性の良い粗飼料の給与が必要です。
TDNが高く、CPと繊維を適度に含む「適期刈の一番草」で雨に当たらなかったものが最良です。特にも、乾乳後期から泌乳最盛期の牛たちには優先的に給与します。
そのほか、調製品質の良い三番草や良く食べてくれる輸入乾草があれば、それらも併せて給与を組み立てます。また、トウモロコシサイレージの貯蔵量に余裕があれば、給与量を少し増やすことも暑熱対策に有効です。
ウ 重曹、ミネラル、ビタミン給与
飼料の採食量と反芻が減ることで、ルーメンへの唾液流入量が減少します。また、呼吸数の増加に伴い唾液中の重炭酸イオンの含量が減少します。このため、泌乳量が多く配合飼料の給与量の多い牛ほどルーメンアシドーシスのリスクが高くなります。ルーメンpHの低下を緩和するため、重曹入りの鉱塩を置く、重曹入りのペレット給与、配合飼料への重曹の添加(目安100~200g/日・頭)などを対策します。放し飼いの場合は、TMRへ添加するほか、飼槽の一角に自由に摂取できるスペースを設けます。なお、乾乳牛には重曹給与は行いません。低カルシウム血症、乳房浮腫を誘発する恐れがあります。
また、発汗等によりカルシウム、リン、マグネシウムの要求量も増加するので、乾乳後期牛を除き、通常の1~2割増しで与えます。さらに、暑熱時の体温上昇で酸化ストレスが増加すると言われており、ビタミンE やセレンなどの抗酸化添加剤の補強も検討します。
エ 給餌方法
(ア)涼しい時間帯(朝、夕方から夜間)の給餌量を増やします。
(イ)分離給与では、粗飼料を食い切るのを確認してから配合飼料を給与します。給餌回数を増やし、1回の配合飼料の給餌量を減らします。牧草の摂取量を増やすため、牧草を細断して給与できれば理想です。
(ウ)TMR給与では、選び食い防止のため、粒度が粗くないこと、水分を含んでいること(50%前後)を確認します。必要に応じて二次発酵を緩和する添加剤を使用します。また、エサ押し回数を増やすことで、採食量を維持するとともに固め食いを緩和します。

最後

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農林水産部 農業普及技術課 農業革新支援担当(農業研究センター駐在)
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