農作物技術情報 第5号 水稲(令和4年7月28日発行)

ページ番号2005476  更新日 令和4年7月28日

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タイトル

  • 県全体の出穂期は平年並みの予想です(7月26日現在予測)。生育ステージを確認しつつ、気象の変化に応じた栽培管理、防除を心掛けましょう。
  • 登熟前半に高温が続く場合(出穂後20日間の最高気温30℃以上、最低気温23℃以上)は、胴割れ粒・白未熟粒の発生による品質低下のおそれがあります。水の入替えをこまめに行うとともに夜間かんがいを徹底しましょう。
  • 穂いもちの発生に注意が必要です。予防粒剤の散布の有無に関わらず、上位葉に病斑を確認した場合は、ただちに茎葉散布による防除を実施しましょう。
  • 斑点米カメムシ類の被害多発が予想されます。穂揃期1週間後の薬剤防除を徹底しましょう。

1 水稲の生育状況と出穂期の予測

  • 7月上旬の日平均気温は平年を上回り、日照時間も平年並から平年を上回りました。7月中旬の平均気温は、平年並から高く推移したものの、日照時間は平年より少なくなりました(図1)。
  • 農業改良普及センター生育診断予察圃の幼穂形成期は県全体で7月11日頃(平年差±0)となっており、本報の作成時点(R4.7.26)の予測では、出穂期はほぼ平年並みの8月3日頃と見込まれています(表1)。
  • 今後の栽培管理や防除にあたっては、例年どおりの暦に頼らず、実際の出穂状況をよく観察したうえで、適期を逃さないよう実施します。

気象図1-1

気象図1-2

表1 出穂期予測

2 登熟を低下させない水管理

(1)出穂・開花期の水管理

この時期は生育の速度が早く、大量の水を必要とします。過乾燥は、穂の出すくみや開花・受精障害による不稔の発生を招くことがあるため、湛水管理(浅水でよい)を基本とします。


(2)登熟期の水管理

ア 基本管理

  • 間断かんがいを基本とし、登熟前半の20日間は湛水3~4日→落水1~2日、後半は湛水2~3日→落水3~4日とするなど、徐々に落水期間を長くしていく管理とします。
  • 間断かんがい中の管理の目安

  湛水時・・・水深3cm程度
  落水時・・・滞水部が消失し、土の湿り気を目視及び触れて確認できる程度まで。
  (土壌表面の白化・亀裂が広がるほどの過乾燥はしない)
イ 気温の高い日が続く場合

  • 特に登熟前半に高温(日中30℃以上、夜間23℃以上)が続く場合、登熟不良や玄米品質の低下(胴割粒や白未熟粒の発生)を招く恐れがあります。
  • 高温時の水管理も間断かんがいを基本としますが、水の入替頻度を高めて、水温・地温を下げるとともに、根に酸素を与えて活力維持をはかります。
  • 入水は、夜間に行います(水尻を止めて夕方から朝まで入水→その後、自然減水)
  • ヒタヒタ水程度の浅水での常時湛水管理は、根腐れや稲体の消耗をまねき、スムーズな登熟を阻害するので避けてください。

ウ 落水時期

  • 落水時期の目安は、排水良好な水田で出穂後35~40日、排水不良田で30~35日です。
  • 近年、登熟期間の早い段階から落水し、田面を乾燥させている圃場が増えています。極端な早期落水は腹白粒増加や千粒重低下、胴割粒発生の原因となるので避けてください。
  • また、直播栽培など、登熟の早い段階で用水の利用期間が終了する場合も、乾かしすぎに注意し、落水の目安時期まで水尻は閉じたままとしてください。

3 病害虫防除対策

(1)斑点米カメムシ類・・・発生時期「早」、発生量「多」の予想
〔令和4年度病害虫発生予察情報 注意報第4号(県病害虫防除所 令和4年7月14日発行)〕
ア 薬剤防除(茎葉散布で行う場合)の適期は、穂揃期1週間後です。
👉 地域一斉防除を行う場合の散布時期は、地域の圃場の半数が穂揃期に達してから1週間後を目安とします。

写真1

イ 被害多発の恐れがある場合(下記(1)(2)(3))は穂揃期2週間後に薬剤を追加散布します。
〔但し、穂揃期1週間後にジノテフラン剤(注)を用いた場合、追加散布は穂揃期3週間後とします〕
(1)近隣に出穂開花中のイネ科植物(特にイタリアンライグラス)を含んだ牧草地、雑草の繁茂地等があり、斑点米カメムシ類の発生密度が高いところ。
(2) 本田内にノビエ、イヌホタルイ、シズイなどの雑草が多発しているところ。
(3) 割れ籾の出やすい品種(あきたこまち等)を作付けしているところ。
注 スタークル粉剤DL、スタークル顆粒水溶剤、スタークル液剤10、アルバリン粉剤DL、アルバリン顆粒水溶剤


ウ 水稲出穂間際の草刈りは、カメムシを本田に追い込むので避けます。
草刈りを適期(水稲出穂15~10日前まで)に実施できなかった場合は、本田の薬剤散布(穂揃期1週間後)の後、1週間以内におこなってください。

(2)穂いもち・・・発生時期「早」、発生量「やや多」(県南部)の予想
〔令和4年度病害虫発生予察情報 注意報第5号(岩手県病害虫防除所 令和4年7月20日発行)〕
ア 穂いもち防除は、出穂前の予防粒剤の施用、または出穂直前と穂揃期の2回の茎葉散布を基本とします。
イ 穂いもちの多発生が予想される場合は、以下の防除を行います。

  • 出穂後に降雨が続いたり、低温等で出穂期間が長引く場合は、出穂直前から穂揃期1週間後まで、7~10日間隔で茎葉散布による防除を実施します。
  • 上位葉での葉いもち多発時には、確認時から防除開始とし、穂揃期1週間後まで、7~10日隔で茎葉散布による防除を実施します。

写真3

農薬安全使用

4 刈り取りに向けた準備

(1)現時点(7/26)での出穂期は平年並みの予測ですが、向こう3か月(8~10月)の気温は平年並または高い確率がともに40%(注)であり、刈取適期は早まる可能性があります。
注「東北地方3か月予報(8月~10月)」7月19日仙台管区気象台発表
(2)今後の気象経過及び長期予報に注意し、積算温度等の目安(表2、3)をみながら、早い段階から刈取り時期の見通しを立てるとともに、乾燥調製施設の運用が円滑に行われるよう、稼働計画の策定や設備点検などの準備を進めておきます。

表2

表3

5 異品種混入の防止対策

(1)出穂期間中の防止対策
出穂が極端に早い株、遅い株は異品種の恐れがありますので、株ごと抜き取ります。
(2)収穫、乾燥、調製時の防止対策
機械や施設内には、前年に収穫した籾等が残っている場合があるので、収穫が始まるまでに、余裕を持って機械や施設の点検・清掃を行います。

6 直播栽培の本田管理

直播栽培の出芽後の本田管理作業は、基本的には移植栽培に準じますが、出穂期や成熟期などの生育ステージが移植栽培より10日~2週間程度遅くなるため、今後は圃場を良く観察し、病害虫の発生(特にいもち病・斑点米カメムシ類)に注意します。

注意

最後

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農林水産部 農業普及技術課 農業革新支援担当(農業研究センター駐在)
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