農作物技術情報 号外 大雪対策(令和4年3月18日発行)

ページ番号2004958  更新日 令和4年3月18日

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タイトル

  • 気象庁発表(3月18 日6時現在)によると、岩手県では、急速に発達する低気圧の影響により、19 日は雪を伴った暴風となり、沿岸北部を中心に大雪となる所があると予想されています。今後の気象情報に注意し、ハウスや農作物被害の発生を防止するための対策を適切に行いましょう。

農業施設

降雪前から対策を実施しましょう!

(1)積雪荷重の強度超過
平年並みの降雪に対しては、予め柱の補強や暖房機の設定温度を上げるなどの対策で対処が可能ですが、記録的な積雪の場合、ハウスの耐雪強度を大幅に超過するため、構造的に必要と思われる筋交いが無い、水平ばりが配置されていない等のハウスは倒壊する危険が高まります。

写真1

写真2

(2)耐用年数
耐用年数を超過したハウスは、基礎や柱が腐食している場合が多く倒壊を助長します。

写真3

2 降雪前の対策
(1)ビニールハウス等被覆資材の破損部を補修して風の吹込みによる破損を避けます。
(2)筋交い直管は、各アーチパイプを針金等で固定し、下端部は必ず地面に30 センチメートル以上埋め込みます(図1)。既存の筋交いも台風等で緩んでいることがあるので、きっちりと固定されているか確認します。
(3)雪でハウス屋根中央部が陥没しないように、中柱(補強用の支柱)を3~4m間隔で設置します。中柱の上部は屋根面の直管パイプとT字金具等で固定し、下部はブロックや厚板等で沈み込みを防止します(図2)。
(4)暖房装置が設置されている場合、燃料残量や暖房装置の動作を確認します。また、停電になった場合に備え、暖房機を稼働できるように発電機を確保するか、石油ストーブ等を準備します。
(5)降雪後に除雪機を使用する場合は、ハウス周囲の障害物を取り除きます。

図1 2

3 降雪時の対策
(1)降雪前から施設内の温度を高め、積雪の自然落下を促します。
ア 暖房機が設置されている場合は運転して室内温度を上げます。
イ 暖房機がない場合、内部を密閉して気密性を高めることで、地熱により室内温を上昇させて屋根雪を滑り落ちやすくします。緊急に暖房(石油ストーブ等)を入れて融雪を促す場合は、くれぐれも火災や一酸化炭素中毒に注意してください。
ウ ハウス内でカーテンを使用している場合は、カーテンを開いて、屋根面からの放熱量を増して融雪を促します。                                                   (2)積もっているハウス側面の雪を遅れることなく除雪します。ハウスの雪下ろしを行う場合、あらかじめハウスの周辺、特に両サイドの雪を取り除いてから上部に溜まった雪を下ろし、再度ハウス側面の雪を除雪します。
(3)散水による屋根の除雪・融雪については、滑落目的で降り始めから行い、積雪後は実施してはいけません。
(4)除雪作業が追いつかない場合の緊急対策(非常手段)
ア 積雪による重みや、側面からの圧力によるハウス骨材の損傷を防止するため、ビニールを切断・除去し、雪をハウスの内部にも入れます。この時、事故防止のため、作業は複数人で行います。なお、園芸施設共済に加入している方は、ビニールを切断・除去する前に必ず農業共済組合に連絡を入れてください。
ハウスの倒壊が予測される場合には、ハウスへの立ち入りを避け事故を防ぎます。

 

4 降雪後の対策
(1)耐雪強度を超えた積雪があった場合は、倒壊の恐れがありますので、ハウスに近付かないでください。また、ハウスの片側だけ太陽光があたったり、風によって積雪が偏ったりすると、ハウスのバランスが崩れ、倒壊する危険性があるので十分に注意します。
(2)除雪を行う場合は、ヘルメット等をかぶり、複数人で作業を行うなど安全確保に努めます。
(3)施設倒壊の恐れがなくなったら、施設各部の損傷や被覆資材の緩み等を点検します。また、屋根・軒下・ハウスの間に積雪がある場合は、次回の降雪に備えて直ちに除雪します。


5 大雪になった時の注意
ハウスの軒下に積もった雪は、屋根に積もった雪の滑落の妨げになるとともに、ハウスの側壁に圧力を加えます。また、降雪前にハウスビニールを剥いだ場合でも、施設全体もしくはハウスの軒高を超える積雪になると、大きな被害を受ける可能性があります。骨組が完全に雪に埋没しないうちに、できるだけ除雪を行います。湿った雪は骨組に付着するので注意が必要です。

6 大雪被害発生に伴う復旧作業
(1)ハウスの倒壊が始まった場合には、ハウス内への立ち入りを避け事故を防ぎます。
(2)倒壊した施設は、一般に修復が困難で施設内の作物は放棄せざるを得ない場合が多いことから、十分に除雪して融雪を待ってから無理のない復旧作業に努めます。

7 関連情報
農林水産省では、チェックリストや農業版BCP(事業継続)の活用、園芸施設共済、収入保険への加入などにより災害に負けない施設園芸づくりを推進しています。関連する各種被害防止技術等の情報を岩手県ホームページ
https://www.pref.iwate.jp/sangyoukoyou/nougyou/seisan/1022400/index.html)に掲載していますので、これらの情報を参考にして対策に努めてください。

水稲

育苗ハウスの補強をしっかり実施しましょう!

1 事前対策
育苗ハウスが倒壊しないよう、「農業施設」の項を参考にして事前にハウスの補強や降雪時の除雪を行うとともに、ハウスの倒壊により育苗開始の遅れや育苗できない可能性もあることを想定し、事後対策を十分検討しておきます。

2 事後対策
大雪により育苗ハウスが倒壊した際は、通常どおりの育苗ができなくなる可能性がありますので、以下の対策を講じます。
(1)ハウス再建により播種・育苗の遅れが想定される場合
育苗は、品質・収量の確保を図るため、安全出穂期内に出穂可能な播種晩限、移植晩限の範囲で行います。播種晩限までにハウスを再建できない場合は、JA 等を通じるなどして必要な苗の購入を検討してください。
(2)ハウス再建のめどが立たず、利用可能な育苗施設が限られる場合
ア 育苗箱数の低減のための対策
a 苗の種類の変更
中苗又は稚苗の適正範囲内で播種量を増やすほか、中苗から稚苗に変更することで箱数の低減が可能です。
b 播種量増加による箱数の低減
慣行の稚苗移植栽培に比べ、播種量を4~7割増やし、加温出芽後に21 日程度育苗して移植する「高密度播種苗移植栽培」、同じく稚苗移植栽培より播種量を2~4割増やし、加温出芽後に常時被覆で9~12 日育苗後に移植する「乳苗移植栽培技術」により、育苗箱数の低減が可能です。
イ 直播栽培(育苗自体が省略できる技術)
代掻きした圃場に鉄粉でコーティングした種子を土壌表面に播種する「鉄コーティング湛水直播栽培」、畑地状態の乾籾または催芽籾を土中播種する「乾田直播栽培」などがあります。

上記のいずれの事後対策でも留意事項がありますので、詳細については、お近くの農業改良普及センターまでお問い合わせください。

野菜

育苗・栽培ハウスの補強をしっかり実施しましょう!

1 事前対策
施設野菜については、育苗・栽培用ハウスが倒壊しないよう、「農業施設」の項を参考にして、事前にハウスの補強や降雪時の除雪を行うとともに、ハウスの倒壊よる育苗開始の遅れや、栽培できないことも想定し、事後対策を十分検討しておきます。

2 事後対策
施設野菜で大雪によりハウスが倒壊した際は、育苗や栽培が継続できるよう、いくつかの対応を検討します。被害の状況によっては、露地栽培への変更も検討します。
(1)倒壊を免れたハウスを最大限活用する場合
ハウスの倒壊は免れたものの、修理・修繕に時間を要し、定植時期が遅れることが懸念される場合には、苗の順化の延長や大きいポットへの仮植を行い定植時期を調整します。
(2)ハウス再建の場合
ア 品目、作型の検討
再建されたハウスを活用して栽培を行う場合、復旧の遅れから、栽培期間が限定されることも想定されるので、品目や作型の変更を検討します。なお、再建時期が5月の場合はトマト、きゅうりの、6~7月の場合はきゅうりの栽培が可能ですが、8月以降は果菜類は難しく葉菜類のみが栽培可能です。
イ 定植苗の管理
再建が遅れた場合、6月以降(高温期)での育苗が想定されることから、苗の軟弱徒長が懸念されます。そのため、昼間は24~25℃を目安に換気を行うとともに、夜間は出来るだけ温度を下げ、苗の充実を図ります。
(3)露地栽培を行う場合
出荷量の確保を図るため、露地栽培の導入も検討します。この場合、必要な苗、誘引資材(パイプ支柱、イボ竹等)の確保について計画的に進めます。特に、誘引資材については地域内に遊休化した誘引資材があるかを確認し、借用や安価での購入など低コストな調達方法を検討します。
(4)遊休ハウスを活用する場合
地域内に栽培を休止した遊休ハウスがある場合は、その活用について検討します。その場合、土壌診断を実施し、必要に応じて土壌改良を行います。
(5)水稲育苗ハウスを活用する場合

  • 置き床育苗ハウスを活用する場合、土耕栽培では水稲育苗時に使用した農薬が残留農薬として検出されるリスクがあるので、必ず、隔離栽培(夢果菜恵、うぃずONE等)を行います。
  • プール育苗ハウスを活用する場合は、プールの用水がハウス外にしっかり排水される等の残留農薬のリスクがない場合に限り、土耕栽培を行うことが可能です。この場合、土壌診断を実施し、必要に応じて土壌改良を行います。ただし、地盤を壊せない場合は隔離栽培を行いますが、「いわて型自動点滴潅水システム」等の点滴潅水システムが必要となります。

果樹

雪害による被害軽減に努めましょう!

1 事前対策
(1)りんご
ア 幼木は、支柱を立てて結束をしっかり行い、普通樹の成木は、大枝に予め支柱を立てておきます。
イ 雪害を受けそうな枝は根雪前に荒剪定を行い、傷口に枝の保護材を塗布しておきます。
ウ 雪に埋まった枝を掘り出すとともに、雪が軽いうちに枝の上の雪おろしを行います。
(2)ぶどう
降雪前にぶどう棚を点検し、粗めのせん定により枝を短くするなどの対策を行います。また、ぶどう棚は、倒壊のおそれがある場合は棚上の雪おろしを行います。

果樹 写真

2 事後対策
(1)りんご
ア 樹が倒伏した場合
積雪の状況を見ながら、できるだけ早く、根を切らないように樹を立て直します。立て直した後は支柱等にしっかり固定します。
イ 枝が裂開や折れた場合
大きな枝の分岐部が裂開した場合は、ボルトやカスガイで接合し、支柱等に固定します。
裂開や折損した部位はできるだけ滑らかに削り、保護剤を塗布します。
ウ 倒伏や大きい枝の著しい折損により回復の見込みが無い場合
栽培に有利な系統(着色系ふじ)や高収益な品種(「紅いわて」、「はるか」)などへの更新(改植)を検討するとともに、りんごでは早期成園化技術(ポット養成フェザー苗)の導入により未収益期間の短縮を図ります。
なお、りんごのわい化栽培の場合、同一樹列内に異なった品種を植えると、品種により摘果、収穫、病害虫防除等の作業が異なる場合があるので、同一品種を植栽することが望ましいですが、周辺樹の樹齢や品種の植栽状況を考慮し、計画的な改植を検討します。
(2)ぶどう
降雪により棚が倒壊した場合には、安全が確保されてから早めに棚の針金の締め直し等を行い、せん定、枝の結束を速やかに行います。枝の倒伏、裂開等についてはりんごに準じます。

畜産

施設倒壊防止に努めましょう!

1 事前対策
(1)積雪により、倒壊の恐れのある建物は可能な限り補強します。
(2)大雪被害による停電を想定し、搾乳等作業に支障が生じないよう、早期の電力回復を図るため、電力会社や発電機の借用先の連絡先を確認するとともに、近所や団体等とも情報共有をしておきます。
(3)降雪が予想される場合、貯水タンク等を利用して必要な水を確保します。

2 事後対策
(1)畜舎等から異音等がないか巡視を強化し、異音が聞こえた場合は直ちに避難します。
(2)速やかに除雪と雪おろしを行います。屋根の雪おろしは複数人で行うなど安全性に十分配慮します。特に建物内に家畜が居ない場合(建設中、飼料庫、機械庫など)、内部からの家畜の放射熱がないため、屋根の滑雪が起こりにくくなります。また、積雪後、しばらく経ってから倒壊する二次被害もみられるので注意して下さい。
(3)停電等により、搾乳が出来なかった時間が16 時間を超えると乳房炎のリスクが高まります
(表)。搾乳再開後は、前搾り乳の凝固物(ブツ)の有無を確認し、クォーターミルカーでの搾り分けを行うとともに、獣医師に早めに治療を依頼します。

畜産 表

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このページに関するお問い合わせ

農林水産部 農業普及技術課 農業革新支援担当(農業研究センター駐在)
〒024-0003 北上市成田20-1
電話番号:0197-68-4435 ファクス番号:0197-71-1088
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