《中部》秋まきと春まきの組み合わせで長期出荷が可能なたまねぎ産地をめざして(花北地域)

ページ番号2000627  更新日 令和2年3月1日

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写真1
根きりして拾い上げ直前のたまねぎ(7月下旬)

たまねぎ導入の経緯

花北地域では、花巻農協が農業法人等への園芸品目導入を推進しており、以前から小麦との組み合わせが可能な品目として、加工業務用の秋まき作型たまねぎ(以下、秋まき作型)の栽培に取り組んできました。
花巻農協では、機械移植用のポット苗の育苗を受託して、たまねぎの育苗に不慣れな方でも取り組み易い体制を構築していました。
また、平成二十四年度には、たまねぎ生産組合を設立し、歩行型移植機・歩行型収穫機・ピッカーを導入し、機械の共同利用による作業の軽労化にも取り組みました。
更に、平成二十七年からは出荷作業の省力化を進めるため、鉄コンテナを利用した出荷にも取り組んでいます。

「春まき作型」導入の経緯

水稲と小麦・大豆を組み合わせている農業法人の中には、降雪が早まると大豆の収穫が終わらず、低単収により収量払いが受けられない年もあり、大豆以外の品目を検討したいという思いがありました。
また、小麦栽培に取り組む農業法人では、秋まき作型では、収穫時期が小麦と重複することから、秋まき作型には取り組みにくいという事情がありました。
こうした中、平成二十七年に本県での春まき作型たまねぎ(以下、春まき作型)の研究成果が紹介されたことを受け、小麦と水稲の間に収穫できる品目として、春まき作型に注目する農業法人が現れました。
この法人では、平成二十八年に、試験的に栽培し好感触を得たことから、平成二十九年度に補助事業を活用して乗用移植機や乗用収穫機等を導入し、水田転換畑での機械化の大規模栽培の取り組みを始めました。

図
春まき作型を組み合わせた作型事例

関係機関と連携した取組

水田転換畑における春まき作型は、試験研究機関でも技術実証中だったこともあり、県の農業研究センターや東北農業研究センターと農業法人が連携しながら、排水対策や品種検討、作業時間調査等を行い、技術開発と現地への普及を同時に進めました。

水田転作での春まき作型の安定生産に向けて

(1)良い苗を作ること
花巻農協には機械移植用の苗を供給する体制がありましたが、春まき作型で規模拡大に取り組む農業法人では、種苗費の負担が大きくなることから、平成二十九年度以降、自家育苗に移行し始めています。
平成二十九年度から始めた自家育苗体系でしたが、平成三十年度は、育苗ハウス建設が遅れた為に播種時期が遅れ、春の雪解け水で冠水したことも重なって、苗の出来は今一つで、たまねぎの肥大も悪く単収が伸びませんでした。
その反省から、今年度は早期から計画的に育苗管理を徹底し、良好な苗生産につなげることができました。
定植時の欠株も少なく、活着・初期生育を十分確保し、たまねぎの肥大も良好で、目標とする単収4トンも狙える見込みとなっています。

写真2
播種後は出芽するまでビニールなどで保温します。
写真3
約10a分の苗を積める乗用移植機(自動操舵付き)
写真6
乾燥機で乾燥させた後、鉄コンテナから調整ラインにたまねぎを移します
写真7
たまねぎをサイズ別に仕分けます

(2) 排水対策をしっかりやる
たまねぎに限らず転作作物は、排水性の悪い場所の生育が良くないことは知られており、排水対策を行うことが、生育・収量を確保するうえで重要です。
しかし、平成三十年度のように定植後の降雨が極端に少ない場合、排水性を良くしたことにより、圃場が乾きすぎることもあり、排水対策と潅水手段の確保をセットで出来る圃場を選ぶことが望ましいと考えられます。

(3) 雑草を如何に抑えるか
本県における春まき作型は、秋まき作型と異なり、マルチを使わない栽培方法が一般的であり、体系的な除草剤の使用が必須となります。
農業研究センターの研究成果は、畑地での試験であったことから、水田転換畑では除草剤の使用体系を一部見直しする必要がありました。
さらに、平成三十年度は除草体系の柱となっていた除草剤の収穫前日数が変更となったことを受け、体系の根本的な見直しも余儀なくされています。
当面、新しい除草体系が確立されるまでの間は、登録のある除草剤を利用し、たまねぎの生育や収穫に大きな支障が生じないよう一部手取り除草を組み合わせるしか無い現実に直面しています。

(4) 圃場の計画的な利用も重要
連作年数が多くなると病害虫の発生が増加することが懸念されます。
関東以西の主要たまねぎ産地では、輪作や2毛作に組み入れ、連作しない体系を取っていることから、当地域においても麦等との輪作体系を組み立て、病害虫の発生リスクを抑えていくことが重要になると考えられます。

今後の課題

水田におけるたまねぎの大規模栽培体系については、一定の目処が立ちましたが、(1)除草剤の使用体系、(2)作業体系や圃場の肥沃度に応じた施肥体系、(3)収穫後の乾燥・調製体系の見直し等が新たな課題として残されています。
特に乾燥・調製について、大規模栽培では、圃場で一定期間乾燥させた後、乾燥機で仕上げる体系を取っていますが、この体系では収穫期間の降雨日が多いと収穫作業の停滞や乾燥不足に繋がり、出荷後にたまねぎが腐敗するリスクが高くなります。

写真4
ディガーでピッカーの作業する畝を集約します
写真5
オニオンピッカーでたまねぎを拾い上げます

産地の信頼を損なわないためにも、乾燥調製施設の整備など、体系の改善に取り組んでいく必要があります。
秋まき作型から始まった当地域のたまねぎ栽培ですが、春まき作型の面積が拡大しており、普及センターでは関係機関と連携しながら経営体の収益向上に向け、長期出荷が可能なたまねぎの産地づくりを支援して行きます。

(文 中部農業改良普及センター)

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