岩手県立農業試験場研究報告 第28号(平成元年9月発行)

ページ番号2004850  更新日 令和4年10月6日

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岩手県南部沖積水田での各種作付け体系における収量比較

小野剛志・神山芳典・北田金美・高橋康利・折坂光臣・新毛晴夫・荻原武雄

 岩手県南部の沖積水田における適切な作付体系を見い出すため、8年間の試験が行われた。この体系は高収と長期的持続生産をめざして設計されたものであり、畑作物のみならず復元田水稲栽培も含む。

 小麦と大豆の1年2作体系は適時播種が要求されるが、全体の土地生産を向上させた。これは各々の連作よりも高い小麦収量とほぼ同程度の大豆収量の組合せによる。しかしこの体系を長期間継続すると、短期間の交互作のため雑草や病害により収量生産性が低下した。水稲生産のための水田利用はこれらの問題を減少し、畑作物のみならず水稲の収量も増大させた。そのため田畑輪換の土地利用はこの1年2作体系を安定化させるために有効であった。しかし田畑輪換の効果は小麦と大豆で異なった。このことは水田と畑利用期間の適正な組合せがあることを示している。我々は水田における適正畑利用期間を約3~4年と推定した。

 1年2作体系や田畑輸換の組合せは経営的にも優れていたが、主にそれは家族労働に依存しており、小規模経営に適している。2作体系による高生産性を規模拡大した場合も持続させるためには、経営的にも技術的にも更に生産費を下げることが要求される。

エダマメ新品種「岩豆系1」、「岩豆系2」、「岩豆系3」、「岩豆系4」、「C9」の育成

木内 豊・石川 洋・新田政司・佐々木 力・佐藤忠士

 昭和63年3月にエダマメ奨励品種「岩豆系1」、「岩豆系2」、「岩豆系3」、「岩豆系4」、「C9」が新品種に認められた。

 「岩豆系1」、「岩豆系2」、「岩豆系4」、「C9」は岩手県内から収集した在来種から選抜・育成した品種である。また、「岩豆系3」は「ふくら」にγ線を照射して、以後選抜育成を図ってきた品種である。これらは、いずれも既存のエダマメ品種の改良を目的として、良質、良食味、収量性について改善したものである。

 「岩豆系1」は開花期、エダマメ収穫期、成熟期が「夕鶴」とほぼ同じ晩生種である。エダマメの莢の外観品質、食味、収量は「夕鶴」並~以上である。

 「岩豆系2」は開花期、エダマメ収穫期、成熟期が「ふくら」と同じ中生種である。エダマメの莢の外観品質、食味は「ふくら」と同じく良。耐倒伏性は「ふくら」にまさる。早出しでは「ふくら」より多収である。

 「岩豆系3」はエダマメ収穫期が「ふくら」と「夕鶴」の中間で、「ふくら」より約5日遅い中生の晩である。エダマメの莢は「ふくら」と同じかやや大きい。稔実莢数は「ふくら」、「夕鶴」より多く、耐倒伏性は「ふくら」にまさる。

 「岩豆系4」はエダマメ収穫期が「錦秋」より6日遅い極晩生種である。エダマメの莢の大きさはエダマメ品種の中ではやや小である。耐倒伏性は「錦秋」にまさる。エダマメ収量は「錦秋」と同じかややまさり、食味は「錦秋」より明らかにまさる。

 「C9」はエダマメ収穫期が「盆茶豆」より1~3日遅い「夕鶴」並の晩生種である。糖含量及びアミノ酸含量が高く、食味は極良である。また、湯煮時に芳香を発する。「盆茶豆」に比較してやや低収であるが、耐倒伏性が強く、百莢重が大きい。また、「夕鶴」より多収である。

農業経営における投資限界 -稲作経営・施設園芸経営を事例として-

細田耕平・田中裕一

 稲作経営、雨よけハウスピーマン経営を対象として投資経済性基準方程式により、一定の家計費・家族労賃を確保しつつ、収量水準に応じた機械・施設への投資可能額を明らかにした。この投資限界額は、資本回収期間における機械・施設への投資可能額の合計を表わし、1年当り投資可能額である資本収益に年金現価係数を乗じて求めたものである。これは、経済的に許容される機械・施設への投資可能額の上限を示し、現実の投資額はこれを超えないように管理されなければならない。

  1. 稲作経営において、10アール当り収量を600キログラム、10アールで負担する家計費を10万円(5ヘクタール規模で500万円)とすると、10アール当り資本収益は41,260円、投資限界額は238,746円となり、5ヘクタール規模ではそれぞれ2,063千円、11,937千円となる。
  2. 雨よけハウスピーマン経営において、10アール当り収量を10,000kg、10アール当り家族労賃を100万円とすると、10アール当り投資限界額は1,826千円となる。

集落特性把握システムの開発

長森克之・田中裕一

  1. 地域農業計画策定、集落指導の前段となる集落の現状把握・分析を簡易に行うために、センサス集落カード情報をもとに、パーソナルコンピュータを利用した「集落特性把握システム」を開発した。
  2. センサス集落カードデータは、農林統計協会から磁気テープで提供を受け、それを市町村別、時系列に再編集し、ランダムファイル形式に登録したものである。データの登録範囲は、岩手県内全集落(3,646集落)について、1970年から1985年までの5年毎、4回分である。1集落当りの統計情報は1,453項目である。
  3. 本システムはデータベース機能と集落分析機能を保有している。データベース機能では、データ作成や、集落検索などデータの基本的な利用が可能である。集落分析機能では、簡易な手法を用いて集落の分析を行うことが可能である。また、分析結果をフェースチャート、レーダーチャートで見やすく表示することも可能である。これらのシステムを構成しているプログラムは、全体で10本からなり、OS・言語はMS-DOS上のN88BASICである。適応機種はPC-9800シリーズである。
  4. 本システムを利用した分析の一般的な方法は、(1)対象地域の全集落のデータ概観(データプリント(任意)プログラムを利用)、(2)主な指標のデータ分布状況や各集落の指標の組合的な把握(統計分析用データ作成、フェースチャート、レーダーチャートの各プログラムを利用)、(3)一般的な指標による基本的な分数(集落類型化プログラムを利用)、(4)目的に応じ必要な指標を用いた二次分類(集落分類、集落検索の各プログラムを利用)、(5)類型毎の代表集落のデータを概観(データプリント(標準)プログラムを利用)、(6)類型化グループ毎の問題点の整理、以上の手順を行うが(6)は分析結果をもとに利用者が総合的に考察する部分である。
  5. 本システムの適応として雫石町を対象として分析を試みた。分析の結果から集落を等質的な7グループに類型化し、それぞれの大まかな性格及び課題などについて整理した。
  6. センサス情報は集落の平均値であるため、このデータのみによる分析には限界があるか、本システムを用いた分析結果により、仮説を立て調査・分析を進めることにより、集落の実態把握と課題の整理を効率的に進めることができる。

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