農作物技術情報 第3号 野菜(令和2年5月28日発行)

ページ番号2000178  更新日 令和2年5月28日

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ヘッダ

  • 全般 排水対策の実施、潅水設備の導入について検討しましょう。
  • 施設果菜類 温度管理の徹底、草勢維持、病害虫防除に努めましょう。
  • 露地果菜類 土壌水分と地温を確保し、活着促進に努めましょう。
  • 雨よけほうれんそう ハウスの換気に注意して適切なかん水を心がけましょう。
  • 露地葉菜類 害虫の発生状況に応じた早めの防除を。

1 生育概況

(1)施設果菜類は、半促成きゅうり、半促成トマト、ハウスピーマンとも収穫が始まっています。生育は順調~やや遅れで、地域によっては1週間程度遅れがあります。病害虫では、アブラムシ類やうどんこ病が見られています。
(2)露地きゅうり、露地ピーマンとも一部で定植が始まり、例年並みの5月下旬~6月上旬頃が定植のピークとなる見込みです。
(3)雨よけほうれんそうも、順調~やや遅れた生育です。病害虫は例年に比べ少ない状況です。
(4)高冷地のレタス、キャベツは順次定植され、生育は概ね順調です。
(5)ねぎは、定植作業が進んでいますが、天候不順によるほ場準備の遅れや低温による生育遅れが見られます。

2 技術対策

(1)圃場の排水対策とかん水
例年、排水不良が原因と思われる生育不良が見受けられます。水田転作の場合は、水路等の点検整備を行い、圃場外からの水の浸入防止に努めるとともに、降雨後の排水を促すための明渠・排水溝の設置、高うね栽培とします。長時間滞水するなど排水不良が十分改善されない場合は、耕盤破砕や補助暗渠の設置も検討してください。
排水良好な圃場では、かん水を行うことにより生育促進、収量向上、施肥効率の改善などの効果が現れます。県内各地で簡易点滴かん水装置の導入も進んでいます。近年、定植直後や夏期など高温乾燥となる傾向にありますので、露地果菜類においても潅水設備の設置・導入をぜひ検討してください。

(2)施設果菜類の管理について
5月21日発表の1ヶ月予報では、平均気温が高い確率60%と予想されています。日中の最高気温が30℃を越えないよう、こまめな換気を行うなど、温度管理の徹底に努めてください。
果菜類全般に、気温の上昇とともに収穫量が増加し、草勢が低下してきますので、長期安定生産に向けて、追肥やかん水、整枝、誘引などの作業を遅れないように実施し、草勢の維持に努めます。

ア きゅうり
根張り不良で草勢が低下している場合は、低段位の雌花を摘花しましょう。また、側枝の発生が弱い場合は枝整理を遅らせる等、草勢の確保に努めましょう。
定植時期が早い半促成作型等では群落内への採光・通風を改善するため、葉ができてから45~50日経過した葉を中心に積極的に摘葉を行います。草勢維持のため、株当たり一度に2~3枚以内を原則としますが、主枝葉が25枚程度展開したあとであれば、一度に5枚程度摘葉しても問題ありません。

イ トマト
第5~6段花房開花以降、急激に草勢を低下させるケースが多いことから、第1~3段花房において、適切に着果制限を行うともに、生長点が細くなる等の草勢低下の兆候が見える前から、(1)早めの追肥を実施する、(2)適正着果数に調整し追肥を行ってからホルモン処理をするなど草勢維持管理を徹底しましょう。
また、6月の好天時に尻腐れ果の多発や急激な気象変動による生長点の萎れが発生する傾向にあります。今後の生育や天候に留意し、それに見合ったかん水をしっかり行うようにしてください。

ウ ピーマン
ピーマンは他の果菜類より根域が浅く狭い傾向があるので、気温の上昇とともに着果数や葉数が増加する時期は土壌水分が不足しないようにかん水量や回数を増加します。
初期はV字型(直立ぎみ)、主枝が伸びてきたらU字型(開帳ぎみ)に誘引しますが、品種によって生育が異なるため、草勢を見ながら調節し、生長点が上向きになるように誘引します。草勢が弱い場合は、主枝が芯止まりにならないように、側枝を2~3節で摘心して主枝を強く伸ばし、過着果にならないよう摘果します。

エ 病害虫管理
病害では、低温時にハウスを密閉すると湿度が一層高まり、灰色かび病の発生が助長されることから、換気を徹底して風通しを良くするとともに、殺菌剤の予防散布を行ってください。また、細菌病や、ウイルス病の感染拡大を防ぐため、わき芽取り、整枝及び摘葉は傷口が乾きやすい晴天時に行いましょう。
害虫では、アブラムシ類、アザミウマ類及びコナジラミ類などの害虫の発生が目立ってきますので、ウイルス病の感染防止の観点からも発生初期の防除やハウス内外の除草をしっかり行ってください。

(3)露地果菜類の定植と定植後の管理

ア きゅうり
生育初期に十分に根群を発達させることが、長期安定生産を実現する重要なポイントです。これは、キュウリホモプシス根腐病対策としても非常に重要な基本事項ですので、定植から定植後1ヶ月の管理をしっかり行いましょう。
初期生育を良好にするため、防風対策をしっかり行うとともに土壌水分が適湿な状態でマルチを張り、15℃以上の地温を確保してから定植するようにしましょう。
定植作業は晴天日を選んで行い、根鉢の部分が乾いたら株元にかん水するなど活着を促すようにします。また、定植直後の防風保温対策として、ポリキャップなどの利用が効果的です。
定植後、本葉10枚ころまでに主枝の7節以下の雌花と5節以下の側枝は早めに除去し、着果させる節位は必ず30cm以上で8~10節からとします。ただし、節間が短い場合や生長点が小さい場合は着果させる節位を2~3節上げ、草勢の確保に努めます。6~8節から発生した側枝は1節摘心、それ以上から発生した側枝は2節摘心、孫枝は1節摘心を基本とします。
病害では、梅雨時期は、「黒星病」「斑点細菌病」「べと病」を重点とした薬剤を選択し予防散布に努めます。なお、最近、一部地域で黒星病対象薬剤の耐性菌が発生している事例が見られますので、薬剤散布の効果が見られない場合は最寄りの農業改良普及センターに相談してください。

イ ピーマン
トンネル栽培では、日中はトンネル内が高温になりやすく、生育障害(葉焼け、落花等)が発生しやすいので、被覆資材を開放して換気を行います。有孔フィルムは、最低気温が17℃を超える頃を目安に除去しますが、低温が予想される場合は被覆期間を延長します。かん水設備がない圃場では尻腐れ果の発生が懸念されますので、カルシウム資材の葉面散布を行います。
露地栽培では、土壌水分が適湿な状態で定植1週間前までにマルチを張り、地温を十分に上げた状態で定植します。定植後は株元かん水により活着と生育促進を図るとともに、仮支柱に固定し風による倒伏を回避します。
露地およびトンネル栽培の整枝は主枝4本仕立てで側枝は放任とします。3本分枝は過繁茂の原因となりやすいので、誘引開始時までに整理します。第1分枝の下部より発生するわき芽は随時かきとり、誘引後はふところ枝が過繁茂にならないように適宜剪除します。
誘引は、うねの両側に支柱を立てマイカー線やフラワーネットなどを高さ50~60cmで水平に1~2段張り、枝が垂れ下がらないようにします。

(4)雨よけほうれんそうの栽培管理
5月21日発表の1ヶ月予報では、平均気温が平年より高いと予想されていますので、ハウス内の温度や湿度が高くなりすぎないように注意し、換気と適切なかん水を行います。
最近は、べと病レース7までの抵抗性を持った品種の作付けが多くなっていますが、抵抗性を打ち破るべと病が発生する可能性がありますので、ハウスの換気を十分行うとともに、適用のある殺菌剤の予防散布を心がけてください。
近年、6月でも高温になることが多く、萎凋病を中心とした土壌病害が早くから発生しています。ハウス内の温度が高温にならないように十分注意するとともに、例年土壌病害の発生が多い圃場では、計画的に土壌消毒を実施しましょう。
日長が長くなり、ほうれんそうが抽だいしやすい条件になりますので、抽だいしにくい品種を用いることが基本になります。また、生育が停滞しないように、播種前の十分な潅水、温度管理を徹底するとともに、圃場が乾燥する場合は、本葉3~4枚以降から生育中のかん水を行いましょう。
ホウレンソウケナガコナダニについては、防除対策として次の点を実践しましょう。

  • 未熟な有機物(ワラ、モミガラ、堆肥等)を施用しない
  • 農薬使用基準を遵守しつつ、薬液がムラなく十分かかるように丁寧に散布する
  • 被害の見られた株や残さはハウス外に持ち出し処分する
  • 生育中のかん水を行い、収穫直前まで圃場の表面が湿った状態にする

アブラムシ類の発生が見られる場合は、効果のある薬剤で適切に防除しましょう。ホウレンソウケナガコナダニに使用されている薬剤はアブラムシ類に効果がないものが多いので、注意が必要です。

(5)露地葉菜類の害虫防除

ア キャベツ
コナガの重点防除時期になるので、幼虫の発生を確認したら早めに防除を行いましょう。また、これから定植する作型では、必ず定植時に殺虫剤を施用しましょう。
ヨトウガについては、今後の発生予察情報に留意し、適期防除に努めましょう。なお、同系統の薬剤の連用とならないように注意して防除しましょう。

イ レタス
ナモグリバエの被害が多くなる時期です。特に低温で経過すると発生が継続して、生育や収量にも影響を及ぼす可能性がありますので、早めの防除を心がけましょう。
【防除適期の判断方法】(写真参照)
最上位葉~1枚目には被害がみられないので、2~4枚目の葉における幼虫の食入痕の有無を観察します。防除適期は幼虫の食入開始初期(写真の2、4葉にみられる被害程度)です。

写真:食入痕の有るレタスの葉

(6)アスパラガスの栽培管理
普通作型のアスパラガスでは、L品の割合が20%以下になった頃が収穫終了の目安です。立茎栽培(二季どり栽培)を行う場合には、さらに早く春芽(立茎前の萌芽)の収穫を終了します。
春の収穫が終了した後、茎葉が繁茂する前から、斑点病、茎枯病を対象とした殺菌剤を予防散布します。なお、近年多発傾向にある茎枯病は、萌芽直後2週間以内の茎で特に感染しやすいため、立茎開始直後が最重点防除時期になります。薬剤のローテーション散布、ひこばえや実こぼれ苗の除去、適正な立茎本数と下枝除去による過繁茂防止、降雨による泥はね防止対策を実施します。
また、倒伏防止用のフラワーネット等の利用や雑草防除により、通風や日当たりを良くするように心がけます。
アザミウマ類の発生が見え始める時期ですので、発生を確認したら速やかに防除を行いましょう。

(7)ねぎの栽培管理
定植後1ヶ月程度たってから培土を開始し、その後も生育状況を見ながら追肥、培土を行います。生育が遅れている圃場は、無理な培土を行わず、生育に合わせた作業を心がけましょう。
アザミウマ類やネギコガ、ヨトウムシ類の発生が見え始める時期ですので、初期防除に努めてください。

フッタ

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農林水産部 農業普及技術課 農業革新支援担当(農業研究センター駐在)
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