農作物技術情報 第9号 畜産(令和3年11月25日発行)

ページ番号2004161  更新日 令和3年11月25日

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タイトル

  • 牧草・飼料作物 来年度に向けた施肥計画を立てましょう。施用した肥料が確実に牧草や飼料作物に効くように、土壌診断に基づきpH 矯正等を検討し、来年の収量や品質アップにつなげましょう。
  • 子牛の飼養管理 子牛は、被毛や皮下脂肪が少ないため、寒さの影響を強く受けます。休息場所は、風が直接牛体に当たらないようにするとともに、牛床を乾いた状態に保ちましょう。また、換気にも気を配りましょう。晩秋期から冬季にかけて、体温維持に多くのエネルギーが必要になるので、代用乳の給与量や濃度等を検討するとともに、水とスターターをしっかり摂取させましょう。
  • 作業事故防止 冬期は転倒事故が起きやすいため、危険個所の点検、改善に努め事故を防止しましょう。

1 牧草・飼料作物

(1)施肥の効果を高めるために
土壌の化学性が悪化すると、作物は必要な養分を吸収できなくなり、生育が悪くなります。そのような場合、やがて作物の葉、茎、子実、根などに養分の過不足時特有の症状、いわゆる栄養障害が現れます。土壌分析によって土壌の状態を確認することは重要ですが、日頃からも作物の生育状態などをよく観察しておくことも大切です。
(2)土壌診断に基づいた施肥計画
ア 土壌診断のタイミング
 作物別の土壌の採取方法は分析機関の指示に従って行います。
・同じ作物を続けて栽培している場合は、分析結果が同じ傾向を示すことが多いため、毎年の土壌診断は必要ありませんが、2~3年に一度は診断を受けてください。
・土壌の採取は、収穫終了後から次作耕起前までに行います。
イ 診断結果に基づいた施肥設計
土壌診断結果から過剰な養分は減らし、足りない養分を必要量施用することによって、収量・品質の安定化と施肥コストの低減化を図ります。

 

図1

(3)肥料成分の吸収を左右する土壌pH の改善
pH は、7程度が中性、7から小さくなるほど酸性、7より大きくなるほどアルカリ性となります。農地では、一般的な適正値は6.5 程度であり、6.0 を下回ると酸性と呼ばれます。また、適正値を外れてしまうと作物の生育に必要な窒素、リン酸や微量要素が土壌中で溶解しにくくなり、欠乏することがあります(図1)。
草地や飼料畑が低pH になっていないか確認してください。牧草や飼料作物の最適pH は表1のとおりです。

表1

酸性土壌を改良するには、苦土石灰、炭酸カルシウムなどの石灰資材を用います。施用量については、土壌のタイプによっても違いますが、おおむね表2の施用量が目安です。また、土壌診断ソフトなどを活用して塩基飽和度から施用量を計算する場合もあります。
牧草や飼料作物は養分の収奪量が大きく、また降雨により土壌中の養分が溶脱してpH が低下しやすいので、診断の結果pH が適正であっても苦土石灰や炭酸カルシウムを毎年50〜100kg/10a 施用してください。

表2

2 子牛の飼養管理

(1)体熱の確保
ア 出生子牛のケア

出生直後は、体が濡れた状態であり体熱が著しく奪われます。放し飼いなど母牛が子牛を舐めることができる環境であれば舐めさせ、子牛の体を乾燥させるとともに血流循環を高めます。
つなぎ飼いなどで母牛が子牛を舐めることができない場合は、人が清潔なタオルや稲わら等で子牛の体を拭きます。最近では、保育器(カーフウオーマー 写真1)で出生子牛を乾燥し、厳寒期の体温低下による事故や発育不良を防ぐ事例が見られます。その場合、子牛のへその緒を消毒してからすぐに保育器に入れますが、利用後は洗浄・乾燥して、病原菌の感染を防ぎます。
イ 休息場所
子牛の休息場所では、すき間風が子牛に当たらないようにすき間を板やシートで塞ぎます。
休息場所がコンクリートの床で冷えが伝わりやすい場合は、断熱のために牛床マットを敷くまたは敷料を厚めに敷き、体熱の損失を緩和します。敷料は、こまめに交換し牛床が乾燥した状態を保ちます。
舎外のカーフハッチは、風がハッチの後部から当たるように向きを変え、盛土や砂などで地面よりも高く設置するなど位置を調整することで、風の吹き込みと雨水の侵入を防ぎ、ハッチ内が乾燥した状態を保ちます。

写真1 2

ウ 保温ジャケットや加温器
カーフジャケットやネックウォーマーの着用(写真3)、カーボンヒーター(写真4)など加温器の活用も効果的です。ジャケットやネックウォーマーは定期的に洗い、衛生的に保ちます。

写真3 4

(2)換気
牛舎の中で子牛を飼養する場合、保温のため牛舎を密閉するとアンモニアがこもり、湿度も高くなります。このような環境では、病原菌が増殖しやすく、肺炎や下痢が多発します。牛舎に入った時、目がチカチカするような場合は、子牛の体に直接風が当たらないように、入り口や窓を開放したり、換気扇で換気を行います。
(3)エネルギーの補給
寒冷時は、特に出生から3週齢までの子牛でエネルギー要求量が増加します。代用乳は、給与回数を増やすなどして給与量を1~2割増やす、または脂肪含量の高いものを用いる、濃度を指標の範囲内で濃くする、などでエネルギー給与量を増やします。また、外気温が低いので、代用乳給与時の温度が39~40℃となるようにお湯の温度をやや高めにする、ほ乳ロボットではミキサの保温温度を少し上げる、飲み残し排出時間を短めに設定するなどをします。
また、スタータをしっかり採食させることも大切なので、十分に飲水できるようにします。水飲みバケツの場合、ほ乳後20~30 分位したらぬるま湯を与えます。集団飼育では、熱帯魚用のヒーターを使用するなど水槽の凍結防止を工夫します。また、水槽の水は1日1回以上交換します。
(4)踏み込み消毒槽の凍結対策
消毒液の汚れや凍結に留意します。厳冬期には消毒液のかわりに消石灰を利用することも検討ください。

3 作業中の事故防止

冬期間は濡れや凍結箇所で足を滑らせることによる転倒事故が増えます。危険箇所の点検を行い、濡れや凍結箇所の改善、滑り止め材や凍結防止剤の散布等により対策を講じます。牛舎内では整理整頓や照明器具の掃除・点検により、明るさを確保することも事故防止に有効です。

最後

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農林水産部 農業普及技術課 農業革新支援担当(農業研究センター駐在)
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