農作物技術情報 第7号 畜産(令和3年9月30日発行)

ページ番号2004082  更新日 令和6年3月13日

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タイトル

  • 飼料用とうもろこし 各地域で収穫が始まっています。刈り遅れないよう、収穫を速やかに進めましょう。
  • 牧草 刈り取り危険帯の時期が近づいています。この時期は収穫や施肥を避けましょう。
  • 獣害対策用電気牧柵 次年度設置を考えて撤収方法を工夫しましょう。
  • 家畜飼養 秋に増える牛の疾病に注意しましょう。

1 飼料用とうもろこし

(1)黄熟期に到達している圃場が多いので、子実熟度を確認し、速やかに収穫作業に入ります。(収穫適期については、農作物技術情報第6号を参照してください)。熟期が完熟期に近い場合は、子実が硬く、また詰込水分がやや低くなりますので、消化率とサイロ詰め込み密度を高めるため、収穫時の切断長を10mm 未満とします。完熟期で破砕処理を行う場合は、切断長19mm、ロ-ラ間隙3mm が目安です。
(2)過度の刈り遅れやすす紋病、霜にあたったとうもろこしは、水分含量が低く、開封後、二次発酵が起こりやすくなります。ギ酸やプロピオン酸など添加剤の使用を検討してください。また、刈り遅れた圃場では、カビが増殖している可能性があります。サイレージを開封するときに、カビの有無をよく確認し、給与時にはカビをしっかりと取り除きます。
(3)強風等により倒伏した場合の収穫は、ハーベスタの収穫方向をよく考え、作業機の走行速度を控えめにし、やや高刈りとするなど収穫時の土壌などの混入を避けます。また、切断長が粗くなりやすいことから詰込み密度を確保するために、十分な踏圧と早期密封に努め、発酵品質の低下を防ぎます。

2 牧草

オーチャードグラス等の寒地型イネ科牧草は、短日で気温が低下してくると、越冬のために地下部へ養分の蓄積を始めます。この時期に刈り取りを行うと、牧草が再生し、養分の蓄積が不十分となるため、冬季に凍害や雪腐病の影響を受けやすく、越冬株数が減少するなど、翌年以降の減収につながります。

(1)刈り取り危険帯の時期

オーチャードグラスの刈り取り危険帯は、日平均気温が5℃以下になる日から遡った約30日間となります。なお、年次や地域によって変動する場合がありますが、各地域における平年の刈り取り危険帯の目安は表1のとおりです。

表1

(2)施肥
刈り取り危険帯の時期に窒素成分を供給すると、地下部の養分の蓄積が止まり、分げつや茎葉の成長が始まります。この時期は刈り取りだけでなく、施肥も控えます。また、窒素成分を多く含んだ堆肥の施用も避けてください。

3 獣害対策用電気牧柵

飼料用とうもろこしの収穫が終わり、設置した電気牧柵を撤収する際に、来年も設置することを見越してひと工夫して撤収すると次年度の設置がスムーズになります。

(1)撤収器具を積極的に利用する
ワイヤーを巻き取るボビン、巻取りハンドルを準備しておくと撤収時の軽労化が図れるだけでなく、次年度のワイヤー張り作業をスピーディに行うことができます(写真1)。
ボビン、巻き取りハンドルについては各電牧メーカーにお問い合わせください。

写真1

(2)巻き取ったワイヤーを圃場ごとに区別する
電気牧柵を設置した圃場が複数ある場合は、ワイヤーを巻き取ったボビン等にどこの圃場に設置したものか分かるようにします。そうしておくことで次の年の設置時に大幅なワイヤーの接続・延長、切断等が少なくなり、資材のムダを省くことができます。
(3)アース棒に目印をつける
アース棒を抜かずにそのままにしておく場合は、次年度にアース棒の場所を見失うことがないように分かりやすい目印をつけておきます(そばに棒を立てておく、アース棒の先端やリード線に目立つ色のテープ、紐を結ぶ等)。
(4)電気牧柵設置の様子を記録しておく
写真2のように電気牧柵の設置した様子を写真等で記録しておき(携帯電話、スマートフォンも便利)、次年度にそれを参考にすると線の接続方法など迷うことなくスムーズにできます。
以上のことを実施しておくと、次年度の電気牧柵の設置にかかる労力、時間が大幅に削減できます。

写真2 

4 乳牛の疾病等の予防

秋になり、夏バテの症状が深刻になる場合があります。夏の疲れを溜め込んだ牛たちをよく観察し、疾病の予兆を早めに見つけ適切な処置を行います。

(1)周産期疾病の増加と繁殖(受胎)
7~8月に分娩を終えた牛は、9月以降にケトーシスや第四胃変位が発症しやすくなります。また、栄養不足から卵子の質が低下したり、子宮の回復が遅れるなどにより受胎が遅れる場合もあります。
これらの牛には、良質粗飼料の優先給与、疾病の回復と粗濃比に注意したエネルギ-の充足、ビタミンの補強などの栄養管理を徹底するとともに、卵巣・子宮回復の確認や治療を行い、初回授精が遅れないようにします。
9月以降に上記の疾病や受胎の遅れが少ない農場は、暑熱対策をしっかり行い、牛の乾物摂取量を確保できた農場です。もし、周産期疾病の発生が多くみられる場合は、来年の暑熱対策を見直します。

(2)体細胞数の増加
7~8月の暑さで免疫が低下した牛は、秋に乳房炎に罹患しやすくなります。搾乳作業での前搾り乳にブツ等の異常がないことを確認する、乳頭口をしっかり清拭する、除糞と敷料で牛床を乾燥・清潔に保つ等に留意します。また、粗飼料を十分に与えるなど、栄養の充足により免疫力の回復を図ります。

(3)蹄病の増加
夏場の飼料の選び食いや固め食いによるアシドーシス、起立時間の増加により、蹄真皮の角質形成不全が秋になっ
て外部に表れ、蹄病(特に蹄底潰瘍)が増加する傾向にあります。起立した姿勢、歩行時の状態をよく観察し、問題ある場合は、早めに獣医師や削蹄師に処置を依頼します。
宮崎県の研究で、蹄病は春期から発生し、季節が進むにつれ次第に罹患の程度が重くなり、冬季に沈静化する傾向にあると報告されています(図1)。

図1

5 台風対策

例年10 月は台風の発生が多い時期となりますので、今後とも気象情報を確認し状況に応じて排水対策、施設の保守点検など、事前事後対策を徹底してください。技術対策の詳細については、9月15 日発行の「号外 台風対策」を参照してください。

最後

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