農作物技術情報 第6号 水稲(令和3年8月26日発行)

ページ番号2003986  更新日 令和6年3月13日

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タイトル

品質低下を防止するため、完全落水は出穂後30~35日後としましょう。

刈取り始めの目安となる日(登熟積算気温950℃に達する日)は、平年より早まることが予想されます(8/20現在)。籾の黄化状況やテスト籾摺りにより、刈取適期を十分見極めるとともに、ゆとりをもって収穫できるよう、早めの準備を心がけましょう。

  • 刈取適期の目安は、黄化籾割合で80~90%です。
  • コンバインや乾燥調製施設の点検、整備は早めに行いましょう。
  • 籾の乾燥は二段乾燥を心がけ、玄米水分15%以下に仕上げましょう。
  • 異品種混入(コンタミ)対策を徹底しましょう。

1 生育状況

農業改良普及センター調査による各地域の水稲の出穂は、平年に比べ4~7日早く、県全体の出穂盛期は7月31日(平年差-5日)となり、過去40年間で最も早くなっています(表1)。

表1

2 気象経過

(1)概況(図1)
水稲の穂ばらみ期から出穂期の7月下旬は高気圧に覆われて晴れる日が多く、気温・日照時間は平年を上回りました。一方、7月28日には台風第8号が東北地方を通過し、29日は上空の寒気の影響で大気の状態が不安定で大雨にみまわれた地域もありました。
出穂終期にかかる8月上旬は、高気圧に覆われて晴れる日が多く、平均気温・日照時間とも平年を上回りましたが、8月中旬は曇雨天の日が多く、特に前半は平均気温が平年の9月中旬・下旬並に低い日(平年差-4~-7℃)も観測されました。
(2)今後の見通し
東北地方の1ヶ月予報(仙台管区気象台8月19日発表)では、平均気温は平年に比べ高い確率が50%、日照時間は、平年並または少ない確率ともに40%と予想されています。

図1

3 玄米品質を低下させない水管理

(1)登熟期の水管理

  • 間断かんがいを基本とし、徐々に落水期間を長くしていく管理とします。中干しが十分でない圃場は落水期間を長めにとり、機械収穫に必要な地耐力の確保を図ります。
  • 完全落水は排水不良田で出穂30~35日頃、排水のよい水田で出穂後35~40日頃を目安とします。 ⇒ 乾かしすぎ(白化・亀裂)は収量や品質低下につながるので注意
  • 遅植えや直播栽培などの出穂が遅い圃場において、登熟の早い段階で用水が利用できなくなる場合も、排水口を閉じるなどして、乾かし過ぎない管理とします。

(2)台風や大雨時の水管理

  • 台風、大雨等で浸水や冠水の恐れがあるときは、排水口を開けて排水を促します。
  • 浸水や冠水した圃場では、速やかな排水に努めます。長時間の冠水は登熟に悪影響を及ぼすため、少しでも早く排水し、水稲の葉先を出すことが重要です。
  • 台風通過後は稲体が水分を失いやすいため、田面を急激に干さないよう間断かんがいとします。

4 適期刈取りの励行

(1)刈取り適期の予測

  • 登熟前半の8月中旬は低温・寡照で経過していますが、出穂期がかなり早まったことから、今後、気温が平年並に推移した場合、登熟積算気温950℃(刈取適期の目安)の到達は、平年に比べ7日程度早まると予想されます(8月20日現在の予測:表3、図2)。
  • 長期予報においても、当面、気温は高めに推移する予想です。積算気温による適期の予測日が近づいたら、稲穂の黄化状況をよく観察し、テスト籾摺りをした上で刈取り可否を判断します。
  • 共同乾燥調製施設を利用する場合は、施設の稼働時期を確認し、作業計画を立てます。

表2

表3

図2

(2)刈取り適期の判断
積算温度による予測は、栽培条件や日照の多少によってずれる場合があるため、最終的な刈取りの判断は次の手順により、実際の登熟状態を確認しておこないます。
ア 黄化籾割合のチェック
平均的な大きさの穂を観察し、黄化した籾が1穂籾数に占める割合を確認します。
刈取り適期は「黄化籾割合80~90%」(80~90%の籾が黄化、10%程度が緑色:図3)です。

イ テスト籾すりによるチェック
黄化籾割合が80~90%に達したら、数穂を採取しテスト籾すりします(図4)。

図4

(3)収穫作業の留意点

  • コンバイン収穫では、作業開始前に籾水分が20~25%の範囲であることを確認します。
  • 収穫後は生籾のまま放置せず、速やかに乾燥調製施設へ搬入します。
  • 水口付近などで登熟が大幅に遅れている部分や、倒伏した部分は可能な限り刈分けを行い、青未熟粒等の混入を避けます。

5 乾燥・調製の留意点

仕上げ水分は15.0%以下を徹底!!

(1)胴割れ粒の発生防止

  • 火力乾燥においては、1時間あたりの水分減少率(毎時乾減率)を0.8%以下とします。        ⇒ 乾燥速度を上げすぎると胴割れ粒が発生するため、急激な乾燥・過乾燥に注意します。
  • 4%以上の水分差がある籾を一緒に張り込むことは避けます。                    ⇒ 籾水分18%の時に一旦乾燥機を止めて放冷・循環常温通風し、その後仕上げ乾燥して籾水分の均質化を図ります(二段乾燥)。
  • 自然乾燥(ハセ・棒がけ)は2週間以内を目安とし、時々掛け替えして乾燥を促します。

(2)籾すり時の肌ずれ、脱ぷの防止

  • 肌ずれを防止するため、玄米水分15.0%以下の適正水分で籾すりを行います。
  • ゴムロールのすき間は、籾の厚さの約1/2(0.5~1.2mm)が標準です。
  • 脱ぷ率は条件により変化するので、85%程度になるようロール間隔を調整します。

(3)ライスグレーダー
出荷製品用は、LL(1.9mm)の篩い目使用を基本とし、整粒歩合80%以上を目指します。

6 異品種混入の防止

  •  産地から出荷する米穀は「表示銘柄以外の混入のない米」であることが必須です。
  •  異品種混入(コンタミ)が発生すると、品種名の表示ができなくなることに加え、産地全体のイメージダウンとなります。機械や施設の点検・清掃を徹底します。
  • コンバイン、運搬機、乾燥機や籾摺機など収穫・乾燥・調製機械や施設内には、前年の籾等が残留している可能性があるので、これらの機械や施設の点検・清掃を十分に行います。

7 農作業安全

収穫時期は日没が早まり、例年農作業事故の発生が多くなります。余裕をもった作業計画をたてるとともに、作業機に反射シールを貼る等、交通事故防止対策を講じます。

最後

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農林水産部 農業普及技術課 農業革新支援担当(農業研究センター駐在)
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