農作物技術情報 第6号 畜産(令和3年8月26日発行)

ページ番号2003984  更新日 令和3年8月26日

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タイトル

  • 飼料用とうもろこし 収穫機械やサイロの点検、資材の準備を早めに行いましょう。              サイレージ調製は十分な踏圧と速やかな密封を行いましょう。
  • 牧 草 オーチャードグラスは秋の最終番草刈取り後に施肥を行いましょう。
  • 乳用牛・肉用牛 暑さの後遺症による繁殖成績の低下を緩和しましょう。

1 飼料用とうもろこし

雌穂、雄穂の出穂は平年よりも数日早いです。黄熟期到達も早まると考えられるので、収穫機械やサイロの点検、資材準備を早めに行います。
(1)刈取適期の判定方法
収穫適期は、「黄熟期」です。これより早いと、でんぷんの蓄積が不十分であったり、排汁とともに栄養分が流出したりします。また、黄熟期より遅れると、消化率が低下するほか、水分が下がりすぎて踏圧、密封が不十分となり発酵品質が低下しやすくなります。黄熟期の判定は、「ミルクライン」による方法が簡単です(図1)。
とうもろこしの雌穂(実)の中程を折って子実の断面を見ると、黄色い部分と乳白色の部分に分かれています。この境目を「ミルクライン」と言い、熟度が進むにつれて子実の外側から中心に向かって、黄色い部分が増えていきます。収穫適期である黄熟中期は、ミルクラインが子実の外側から40~50%に達した頃です。
なお、破砕処理を行う場合、消化率が高まるので、収穫期を黄熟後期まで拡大することが可能です。

図1

(2)乾物率の確保
品種によって子実と茎葉の水分の抜けるスピードに差があることが報告されています。また、収穫前の天候によっても茎葉の水分が変化します。より正確に乾物収量を設定するのであれば、収穫前に子実だけでなく茎葉も含めた状態で乾物率を測定することをおすすめします。最寄の普及センターにご相談下さい。
(3)サイレージ調製
ア 細断

(ア)詰め込み密度、反芻時間、子実の消化性の兼ね合いから、破砕処理を行わない場合で切断長10mm 程度、破砕処理を行う場合は、切断長19mm、ローラー幅5mm に調整します。黄熟後期以降は、消化率をあげるためローラー幅を2-3mm に調整します。
(イ)目的のサイズで細断できるよう、また切断面が鋭利となるようハーベスタの刃の調整と研磨を行います。

イ サイロの大きさ
二次発酵を防ぐために、表1の取り出し幅以上のサイレージを1日で取り出せるよう、サイレージの利用量に応じてサイロの大きさを決めます。

表1、図2、図3

ウ 詰め込み・踏圧
踏圧をしっかりすることにより、高水分であっても発酵品質をある程度安定させることが出来ます。サイレージの出来の良し悪しは踏圧がきちんとできるかできないかにかかってきます。踏圧作業の担当者が権限をもち、時には運搬ダンプを待たせてでもしっかり踏圧を行います
(ア)十分な踏圧を行うため、踏圧作業のペースに合わせて、詰め込み原料の収穫、運搬ペースを調整します。
(イ)土砂の混入を避けるため、運搬トラックはサイロの奥まで入らず、サイロの手前で詰め込み原料を下ろします。フロントローダー等を用いて、サイロ全体に薄く広げ、速やかに踏圧を行います。
(ウ)サイロの壁沿いや角などの重機では踏圧できない場所は、人の足で踏圧して下さい。人が歩いても足跡が残らない程度まで十分に踏み込みます。

図

エ 密封
(ア)変敗の原因となる好気性微生物の増殖を抑えるためには、詰め込み作業後速やかにサイロビニールやスタックシートなどで原料を密封し、風でシートが浮かないよう、廃タイヤ等で重石をします。
(イ)詰め込み作業は1日で終了させるのが理想です。やむを得ず2日に渡る時は、1日目の作業終了時にギ酸やプロピオン酸を散布して仮被覆します。また、気密性のサイロではガスによる酸欠事故の恐れがありますので、十分に換気してから2日目の作業を始めてください。
(ウ)刈り遅れや霜にあたったとうもろこしは、水分が低く、二次発酵しやすくなります。プロピオン酸・ギ酸などの添加剤の使用を検討しましょう。
(エ)セキュアカバー(サイレージ保護シート)の紹介細かく編みこまれた素材のためカラスによるいたずら
防止や風にあおられることなく、サイレージの品質を守ることができます(防鳥ネットはひと冬越すと耐久性が低下してしまうので交換が必要)。ブルーシートは必要なく、スタックシートの上から直接覆います。
(オ)適度な休憩
16~17 時はオペレーターが最も精神的、体力的にきつくなる時間帯です。天候の状況にもよりますが、ここで適度な休憩を取ればその後の仕事の効率がアップします。

写真1

2 牧 草

2番草の収穫は終了している地域が多く、収量は平年並~やや多いとなっています。
(1)オーチャードグラス(以下、OG)は前年秋の窒素施肥が重要です。なぜならOG は、最終番草の刈り取り終了後の秋に、新旧分げつの世代交代を行うからです。
(2)OG 主体草地の収量に寄与する分げつの大部分は、最終番草刈り取り後の秋に発生する新しい分げつに由来しており、この新しい分げつ発生量が翌年1年間分の茎数を決定します。
(3)従って、最終番草刈り取り後の秋に窒素施肥が重要です(2-4kg/10a 程度)。なお、初霜の1ヶ月前の刈り取り危険帯時期の窒素施肥は、牧草が越冬用の栄養を蓄えることを妨げるため、避けてください。
(4)例えば、OG1番草収量に対する窒素施肥は前年秋と翌年早春に分けて実施するほうが、いずれかに全量施肥するよりも収量が増加します。

図4

3 乳用牛

(1)牛舎内の環境
ア 残暑が続くので、屋根にあたった日光による輻射熱や牛舎に射し込む日光の遮断、換気と日中の送風を継続します(農作物技術情報第4、5号参照)。
イ 昼夜の寒暖差が約3℃~16℃(盛岡市9 月、過去3 か年)と、大きくなる日が多くなります。これに対しほ乳子牛の適温域は13~25℃と幅が狭いため、ほ乳子牛の飼養場所の気温にも留意します。
(ア)飼養場所に射し込む直射日光は、寒冷紗やすだれで遮ります。
(イ)日中は、牛舎の窓やカーテンを開放(トンネル換気牛舎は除く)して、主に自然の風の流れで体温の上昇を抑制します。牛舎内が高温の場合、小型扇風機を使うことも有効ですが、風を牛体に直接当て続けると過度に体温が奪われるので、首振りにする、一定時間の送風にとどめる、風の当たらない場所にも子牛が移動できるようにするなどの工夫をします。
(ウ)バケツや水槽はこまめに掃除し、新鮮な水を十分摂取できるようにします。
(エ)夜間は換気に留意しつつ、牛舎の窓やカーテンの開閉を調整して牛体に冷たい風が直接当たらないようにします。群飼の場合、休息場所の一画にコンパネ等の風よけを設置することも有効です。
(オ)牛体(特に腹部)の冷えを防ぐとともに下痢や肺炎を予防するため、敷料はこまめに交換し、牛床が乾いた状態を保ちます。

(2)飼養管理
ア 水槽の掃除をこまめに行い、清潔な水をいつも飲める状態に保ちます。
イ 良質粗飼料(食いつきの良い牧草やトウモロコシサイレ-ジ)の給与を継続します。
ウ 気温の低下に伴い飼料摂取量が増加します。ルーメンフィルスコアと残飼を確認し、摂取量が不足しないように給与量を増やします。なお、暑熱により長期間採食量が少なかった牛は、ルーメン内の発酵酸の吸収能力が低下している可能性があり、採食量増加に伴うアシド-シスに注意します。
飼料の食い込みが増え、軟便や糞中の未消化物・粘膜が見える場合は、粗飼料の給与割合を多めにして様子を見ます。糞便の状態が落ち着いてきたら、徐々に配合飼料の給与割合を増やし、栄養を充足させます。
エ 起立時間が増加した、あるいは飼料の選び食いや固め食いが多かった牛では、蹄真皮の圧迫や炎症による蹄病が発生しやすくなります。起立した姿勢、歩行時の状態をよく観察し、問題ある牛は早めに獣医師や削蹄師に処置を依頼します。
オ 暑熱時に分娩を迎えた牛は、分娩と暑熱双方のストレスを受け体調を崩しやすいので、いつもより意識して観察し、異常がある場合はすぐに対処します。これらの牛は、既にまたはこれから泌乳最盛期になるので、良質粗飼料の優先給与、粗濃比に注意しつつエネルギーを充足する、ビタミン剤等の給与量を少し増やすなどの栄養管理を徹底します。また、子宮の回復が通常よりも遅れると考えられるので、子宮の回復状態の確認と必要ならば治療を早めに獣医師に依頼し、初回授精が遅れないようにします。

最後

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