農作物技術情報 号外 台風対策(令和3年7月26日発行)

ページ番号2003927  更新日 令和3年7月26日

印刷大きな文字で印刷

たいとる 

気象庁発表(7月26日9時現在)によると、台風8号は7月27日午前に岩手県に接近すると予想されています。
今後の気象情報に注意し、農作物被害の発生を防止するための対策を適切に行いましょう。

人命第一の観点から、ほ場の見回り等については、気象情報を十分に確認し、大雨や強風が収まるまでは行わないでください。また、大雨等が収まった後の見回りにおいても、増水した水路その他の危険な場所には近づかず、足下等、ほ場周辺の安全に十分に注意し、転落、滑落事故に遭わないよう慎重に行ってください。

水稲

排水路等の点検整備と冠水後の圃場管理を万全に!

事前対策

(1)県内の水稲は、減数分裂期を過ぎ、品種やほ場によっては出穂が始まっています。この時期は大量に水を必要とすることに加え、暴風時(特に雨の少ない台風や、フェーンの場合)には稲体から水分が失われやすいため、湛水管理とします。
(2)浸水や冠水に備え、排水口・排水路を点検し、詰まりの原因となるゴミ類の除去に努めます。

事後対策

(1)冠水した場合は、葉が少しでも早く水面に出るよう排水に努めます。
(2)濁水が流入したほ場や、高温により水温が上昇した場合は、積極的に水の入れ替えを行います。
(3)冠水した稲体は、水分を消耗しやすい状態にあることから、排水後、出穂開花期までの湛水管理を通常以上に徹底します。なお、高温時は、稲体の消耗を抑えるため、積極的な水の入れ替え(夜間かんがい)を行います。
(4)沿岸部において、高潮害(潮風害)の恐れのあるほ場では、応急的に水の入れ替え・かけ流しにより、塩分の洗い流しを図ります。
(5)暴風・浸冠水を受けた稲体は、病害虫に対する抵抗力が低下しやすく、特にいもち病に感染しやすくなります。このため、穂いもち予防粒剤を散布したほ場においても、退水後、ただちに茎葉散布による防除を実施します。
(6)ほ場の排水口・排水路にゴミなどが詰まった場合は、安全な立入りが可能となったことを確認した後、(必要に応じ土地良区など関係機関と連携しつつ)早めに排水設備を点検し、機能復旧に努めます。
(7)ほ場内にある流木や瓦礫・土砂などの漂着物は、機械収穫などの作業に支障をきたすため、退水後、できるだけ速やかに取り除きます。ただし、状況によっては工事等が必要な場合があるため、無理な作業は行わず、関係機関に相談した上で対応します。

大豆

一刻も早い排水を!

事前対策

圃場表面の排水を促進するため、周囲溝や排水口などを点検・補修し、土壌表面水のすみやかな排水に努めます。

事後対策

(1)圃場が浸水、あるいは冠水した場合は、一刻も早く排水する必要があります。圃場内のゴミ等を除去して、土壌表面水の速やかな排水に努めます。
(2)倒伏した株は、地面に接しないよう株どうしを重ねて持ち上げておきます。また、根の健全化を図るため、圃場表面が乾いてから畦間を浅く中耕したり、乗用管理機でうね間を走行するなどして、根圏に酸素を供給します。圃場に入れるか確認して慎重に作業してください。
(3)生育回復のために追肥を行います。速効性の肥料を使用し、追肥量は窒素成分で10a あたり3~4kg とします。
(4)湿害の影響により大豆の生育が停滞するため、雑草害が甚大になることがあります。茎葉処理除草剤を利用して、雑草害の軽減に努めます。
(5)台風通過後は、風雨により茎葉が傷ついたり、圃場に滞水が見られるなど一般に病害が発生しやすくなりますので、大豆の生育状況をよく観察し、必要に応じて防除を行います。

野菜

排水対策と施設の保守点検を行い、通過後は草勢の早期回復を!

事前対策

【露地栽培】
(1)局地的な大雨に備え、排水溝の整備・点検を行います。特に、圃場外からの浸入水を防止するため、圃場の周囲にあらかじめ排水溝を設けておきます。
(2)強風に備え、圃場周囲に防風ネットを設置している場合、緩んでいるワイヤーや針金を張り直し、ネットの破れている部分は補修します。
(3)強風で、支柱が抜けたり倒伏する恐れがありますので、畦の両端や所々で支柱を補強します。また、支柱・ネット等への茎葉の誘引状況を点検し、しっかり固定します。
(4)収穫可能なものはできるだけ事前に収穫を終えます。

【施設栽培】
(1)局地的な大雨に備え、ハウス周りの排水溝の整備・点検を行います。特に、ハウスの外からの浸入水を防止するため、周囲にあらかじめ排水溝を設けておきます。
(2)強風に備え、ハウス周囲に防風ネットを設置している場合は、緩んでいるワイヤーや針金を張り直し、ネットの破れている部分は補修します。
(3)ハウスバンド(マイカー線)が切れていないか、緩んでいないかを点検するとともに、ビニールの破損があれば補修しておきます。筋交いなどの補強を実施して強風に備えます。
(4)収穫可能なものはできるだけ事前に収穫を終えます

事後対策

【露地栽培】
(1)排水対策等
圃場にたまった水はただちに排水し、長時間滞水しないように努めます。排水後、圃場作業が可能になったら、(ア)マルチ穴を広げ畝の中の水分を乾かす、(イ)畦間の中耕を行う等の対策を実施し、土壌中に空気を送って根の伸長を促進します。
(2)殺菌剤散布、葉面散布

  • 台風通過後は、冠水や多湿、茎葉の損傷等により病害が発生しやすくなっていますので、品目ごとの防除基準に従って殺菌剤を散布し、病害の発生を未然に防止します。
  • 茎葉に泥土が付着している場合は、動力噴霧機で水をかけ洗い流した後、殺菌剤を散布します。
  • きゅうりはうどんこ病、炭疽病、褐斑病、トマトは灰色かび病、疫病、ピーマンは斑点病、キャベツは株腐病、軟腐病、レタスは腐敗病、軟腐病、ねぎ、たまねぎはべと病、軟腐病を対象に防除を行います。
  • 草勢が低下した場合は、必要に応じて液肥を薄い倍率で施用または葉面散布し、草勢回復を図ります。

(3)整枝、摘葉、摘果
果菜類では、強風で主枝が損傷した場合には側枝を利用し主枝更新を行います。また、傷んだ茎葉や果実は摘除して草勢回復を図ります。
(4)降雹被害のあったほ場の対策
果菜類で降雹被害のあった圃場で、いまだに草勢回復が遅れている場合は、奇形果・障害果の摘果を行います。病害の発生しやすい状態が続いているため、殺菌剤散布は台風通過後優先して行います。キャベツやねぎ等の葉菜類も、台風通過後優先して殺菌剤の散布を行います。

【施設栽培】
(1)排水対策等
ハウス内に水が浸入した場合はただちに排水し、長時間滞水しないように努めます。排水後、圃場作業が可能になったら、マルチ穴を広げ畝の中の水分を乾かす等の対策を実施し、土壌中に空気を送って根の伸長を促進します。
(2)殺菌剤散布、葉面散布

  • 強風でハウスビニールが破損し風雨にあたった場合などは、冠水や多湿、茎葉の損傷等により病害が発生しやすくなっていますので、品目ごとの防除基準に従って殺菌剤を散布し、病害の発生を未然に防止します。
  • 茎葉に泥土が付着している場合は、動力噴霧機で水をかけて洗い流した後、殺菌剤を散布します。
  • きゅうりはうどんこ病、炭疽病、褐斑病、トマトはうどんこ病、葉かび病、ピーマンは斑点病、うどんこ病、ほうんそうはべと病を対象に防除を行います。
  • 草勢が低下した場合は、必要に応じて液肥を薄い倍率で施用または葉面散布し、草勢回復を図ります。

(3)整枝、摘葉、摘果
果菜類では、強風で主枝が損傷した場合には側枝を利用し主枝更新を行います。また、傷んだ茎葉や果実は摘除して草勢回復を図ります。

花き

排水対策と風による倒伏対策を十分に!

事前対策

(1)収穫期を迎えている圃場では、開花状況にあわせて早めに収穫を終えます。
(2)圃場外からの侵入水を防止するため、用水路の点検を行い、ゴミの除去や壊れた箇所の補修を行います。また、増水によっていつも水が溢れる場所は、土嚢等(肥料袋に土を入れたもので代用可能)で補強します。
(3)水のたまりやすい場所は、速やかに排水できよう事前に排水溝を設けておきます。併せて、排水路を点検し、上述した用水路と同様に対策を講じます。
(4)支柱やネットの強度を点検、補強します。ぐらつく支柱は打ち直すか打ち込みし、風の影響を受けやすい圃場は支柱を増設します。ネットは適正な位置に調整し、たるみがある場合はネットの両サイドにロープを入れて補強します。また、横木の設置、増設は、支柱・ネットの補強に有効です。
(5)パイプハウスでは、ハウスバンド(マイカー線)が切れていないか、緩んでいないかを点検します。被覆資材の破損が拡大しないように、ビニールの小さな破れや傷の補修を行います。
また、風が強い場合、施設を閉め切ることになりますが、湿度が上昇して灰色かび病などの病害が発生しやすくなるので循環扇等で空気を撹拌して予防に努めます。

 事後対策

(1)株の立て起こし、支柱・ネットの修復
強風によって株が倒伏・傾倒した場合は、時間が経過するほど茎の曲がりが戻りにくくなるので、風が弱まったら直ちに株を立て起こします。併せて、支柱・ネットを修復します。
(2)圃場の排水
圃場にたまった水は、速やかに排水します。特にキク類では、萎ちょう症状(水焼け)が発生しやすくなるので、長時間滞水しないよう努めます。
(3)病害対策
圃場の冠水や多湿、茎葉の損傷、泥の茎葉への跳ね上がりにより、病害が発生しやすくなります。品目ごとに農薬の使用基準や各地域の防除暦などに従って殺菌剤を散布します。特に、降雹による茎葉の被害を受けた圃場では、病害の発生に十分注意し対策を実施します。
りんどうでは、茎葉の損傷により灰色かび病や黒斑病、キク類では、多湿により白さび病の発生が助長されるので注意します。
薬剤散布する際は、株に付着した泥を洗い落とすため、動力噴霧機の圧力を高めにして十分量を散布します。併せて、施設栽培では換気を徹底し、施設内の湿度の低下を図ります。
(4)被害株及び茎葉の除去
出荷不能となった株や折損した茎葉は、圃場外に持ち出して処分します。

果樹

防風対策、排水対策により被害の軽減を!

事前対策


りんご
(1)防風ネットを設置している園地では、ネットの張りを点検し、緩んでいるワイヤーは張り直し、破れたネットは張り替えるなど十分に効果が現れるよう準備します。
(2)わい性樹は強風で倒伏することがあるので、主幹を支柱に2~3ヵ所結束します。長大な側枝を持つ樹形であれば、一層、バランスを崩しやすいので、丈夫な支柱で支え、はずれないよう縄で縛り固定します。幼木も忘れずに支柱に結束します。
(3)高接ぎ樹では大切な更新枝を保護するよう添え木をします。
(4)降雨による表面水を速やかに排水できるよう、予め排水溝を設けておきます。

ぶどう
(1)防風施設の設置、見直しを行います。(事前対策りんご(1)に同じ)
(2)棚が倒壊しないよう、棚内部の力線に補助支柱を配し、周囲柱、隅柱を補強します。
また、雨よけハウスは、ハウスやフィルムが飛ばされないよう、ハウスバンドやフィルム留め具等の点検を行い、ビニールの破損があれば補修します。
(3)降雨による裂果の発生や、土壌が軟弱化しアンカー等が浮き上がることを軽減するため、排水溝を切り、速やかに排水できるよう対処します。

 事後対策

りんご、ぶどう
(1)強風や雨により地盤が緩み、樹が斜めに傾いたり、横になった場合の立て直しは、できるだけ早く行います。ただし、そのまま不用意に引き起こすと、残っていた根も切ることがあるので、倒れた側からスコップで少し掘り下げるなど、注意深く戻します。また、すぐに起せない場合は、露出した根に土をかけるなどして乾かないようにします。
(2)滞水により枝に付着したごみ、果実の泥を排除します。また、果実に腐敗等が確認された場合は速やかに取り除きます。
(3)園地が冠水した場合や、枝葉や幹に無数の傷が生じている場合には、疫病などの果実腐敗性の病害やふらん病などの樹体病害感染の恐れがあります。このような場合は、定期防除を早めるか、特別散布で殺菌剤を全面散布し、感染を予防します。また、側枝や大きい結果母枝が折れた場合には、傷口をなめらかに切り、塗布剤を塗布します。
(4)低温、降霜、降雹により被害を受けた園地においても、次年度以降の営農を考慮して病害虫防除対策を行います。

畜産

転作田の排水対策の徹底、停電時対応の確認を!

事前対策

(1)飼料作物を作付している転作田では、排水溝の点検を行い、雨水の排水を促します。特に、とうもろこしは湿害に弱いので、排水対策を徹底します。
(2)強風により畜舎や施設の破損が懸念されるので、畜舎周辺を点検し、必要であれば修繕や補強を行います。風雨でカーテン等が飛ばされないように固定を補強します。また、畜舎内に雨水が入らないよう排水溝の点検等を行います。
(3)停電により、搾乳が出来ない場合を想定して、発電機の準備や使用方法を確認しておきます。また、可能であれば貯水タンクに水を確保しておきます。
(4)草地や敷地内で、雨水が滞留しやすい場所にラップサイレ-ジがある場合は、影響を受けない安定した高めの場所に移動します。
(5)紙袋の濃厚飼料等は雨がかからない場所に移動するか、シートで被います。
(6)河川や用水路等水辺近くの圃場で放牧や獣害用の電気柵を設置している場合は、念のため電牧器本体を撤収し、浸水等による紛失、故障等を防ぎます。


事後対策

(1)圃場が滞水した場合は、速やかに排水するよう努めます。飼料作物の収穫時には、飛来物が混入しないように注意します。
(2)台風の通過後は、とうもろこしの折損や倒伏が懸念されますが、倒伏は立ち上がりが期待できるので、そのままの状態にしておき(手で直すと茎が折れることが多い)、雌穂の登熟を待ち、黄熟期に収穫します。ただし、折損等の被害が著しい場合および土砂が圃場に流入し生育の回復が見込めない場合は、速やかにまき直しのための圃場準備を行い、ライ麦やイタリアンライグラスを播種して来年度の自給飼料の確保を図ります。
(3)倒伏したとうもろこしの収穫は、トラクタで茎葉をできるだけ踏まないように走行方向を決め、ハーベスタの走行速度も控えめにし、土の混入を避けるため高刈して収量を確保します。また、倒伏し枯れあがりが進んだものは切断長が粗くなりやすいので、詰込み密度を確保するため十分な踏圧に努めます。
(4)畜舎内に浸水や雨漏りがあった場合は、畜舎が高温多湿となり不衛生となるので、台風通過後は畜舎やその周辺の排水を徹底し、排泄物や汚れた敷料の除去、牛床等への消石灰散布と新しい敷料の投入、空気の入れ替え等による乾燥を図り、消毒を実施します。
(5)停電になった場合は、通電後に搾乳機器の確認を行います。また、給水・給餌等の動作も確認します。
(6)停電で搾乳が大幅に遅れた場合は、前搾り乳の凝固物(ブツ)の有無を確認します。乳房炎が疑われる場合はクオーターミルカで搾り分けするとともに、体調の変化も併せて確認し、異常時は獣医師の診察を受けます。

PDFファイルをご覧いただくには、「Adobe(R) Reader(R)」が必要です。お持ちでない方はアドビシステムズ社のサイト(新しいウィンドウ)からダウンロード(無料)してください。

このページに関するお問い合わせ

農林水産部 農業普及技術課 農業革新支援担当(農業研究センター駐在)
〒024-0003 北上市成田20-1
電話番号:0197-68-4435 ファクス番号:0197-71-1088
お問い合わせは専用フォームをご利用ください。