農作物技術情報 第4号 果樹(令和3年6月24日発行)

ページ番号2003833  更新日 令和3年6月24日

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タイトル

  • りんごの結実は、4月の低温の影響により、着果量が少ない園地もあり、サビ果や奇形果なども見られます。また、6月の降雹による傷果も見られます。仕上げ摘果は慎重に果実を見定めて行いますが、隔年結果防止のため早期適正着果に努めましょう。
  • ぶどうは、結実を確認のうえ、状況に応じた適切な摘房、摘粒を進めましょう。

りんご

1 生育概況について

(1)結実の状況
県内生育診断圃の結実調査結果によると、4月の低温の影響により、結実率は「ふじ」、「つがる」、「ジョナゴールド」ともに平年を下回り、「ふじ」、「ジョナゴールド」の中心花結実率は平年の4割程度であり、中心果のみで結実を確保することが難しい園地もあります。さらに、花そう結実率が20%を切る園地も見られ、着果量を確保できない園地も見られています。

表1

(2)果実の生育状況
果実生育(横径)は、6月11 日時点では平年比110~113%、昨年比104~109%であり、おおむね順調に生育しています(表2)。一方、凍霜害の影響で側果を使用しているため、今後の生育は継続して確認する必要があります。また、サビ果や変形果も多いことが予想されるので、良質な果実を見極めつつ、花芽形成と果実肥大を促すため、適正着果数となるよう摘果に努めてください。

表2

2 栽培管理について

4月の低温の影響により、奇形果、サビ果の発生や着果不足となる園地も見られています。また、6月の降雹による傷果も見られています。さらに、着果不足になると樹体生育のバランスが崩れ、徒長枝の多発、枝葉の繁茂による枝の交差などにより、樹冠内部への日光の透過、薬剤の透過の妨げとなります。
良い果実を見極めつつ摘果を進めるとともに、徒長枝のせん除や支柱立て、枝吊り、誘引などの夏季管理を丁寧に実施します。

(1)仕上げ摘果(凍霜害が著しい場合)
ア 着果量が少ないと樹の成長とのバランスが崩れるため、良果のみで適正着果量を確保できない場合は、奇形果やサビ果、長果枝の果実も着果させます。また、頂芽果のみで適正着果量を確保できない場合は、腋芽果も利用します。なお、腋芽果の使用は、次年度以降の花芽の充実に悪影響を及ぼす可能性があるため、腋芽果が着生している枝に1果とします。
イ 樹冠上部の枝の着果量が多く、下部の枝の着果量が少ない場合、下部の枝は奇形果やサビ果、長果枝の果実、腋芽果も着果させ、樹体とのバランスの維持を図ります。なお、樹全体の着果量は適正着果量の範囲内とします。
ウ なお、着果調整のために結実させていた果実については、樹体生育の影響が少なくなる8月下旬~9月上旬に摘果します。
(2)仕上げ摘果(凍霜害と雹害の両方を受けた場合)
ア 凍霜被害が比較的軽微な園地では、丁寧に摘果を行い、できるだけ傷のない果実を残します。また、表皮のみの損傷で雹害の判断が難しい場合は、くぼみ等が明らかになってから摘果を実施します。
イ 凍霜被害が著しく着果量不足が見込まれる園地では、樹体生育とのバランスを保つため、被害の甚だしい果実を除き、調整果として被害にあった果実も残します。
ウ 雹害を受けた場合は、凍霜被害の程度によらず、殺菌剤を特別散布し、葉・枝・果実の損傷から発生する病害を抑えます。
(3)夏季管理
ア 徒長枝のせん除
6月中・下旬と8月下旬~9月上旬にかけて実施します。
(ア)6月中・下旬
主幹に近い側枝の背面、太枝の切除部、樹冠上部などから発生した30cm を超える新梢(以下徒長枝)をせん除します。
この時期の徒長枝のせん除はできるだけ基部から行います。基部を残して切ると、残った部分から新たに多数の徒長枝が発生するので、切り残しが無いように注意します。
(イ)8月下旬~9月上旬
6月にせん除した部分から発生した徒長枝に加え、側枝の背面から発生した徒長枝を適宜間引きます。加えて30cm 以下の新梢でも混みあっている場合は適宜間引きます。
一方、徒長枝の発生が多く、これらを切ることによって葉枚数が不足する場合は、葉を十数枚残してせん除し、冬季剪定で整理します。
過剰な夏季せん定は樹勢を弱めるため、紋羽病の発病要因となることも多いので、発病の恐れのあるところでの夏季せん定は最小限にとどめます。
イ 支柱立て、枝吊り
春に良好な樹形をしていた樹でも、凍霜害による着果不足で新梢伸長が旺盛になると、夏以降は重なる枝が多くなります。このような枝は、はじめから水平もしくは下がり気味の枝が多く、かなり太い枝でも下垂します。次年度の花芽の充実を図るため、支柱を入れたり、ひもなどを用いて枝吊りを行い、枝に日が当たるようにします。
ウ 誘引
側枝の誘引は、わい性樹の樹幹内部への日光透過のために必要な作業で、2年枝でも3年枝でも必要に応じて行います。また、樹形によっては上下の誘引にとどまらず、枝のない部分に左右に誘引することも必要です。

3 土壌水分管理について

りんごの樹体にとって、土壌水分を適正に管理することが果実肥大、花芽の確保など健全な樹体の維持に有効です。
(1)乾燥対策
今後、高温、干ばつで経過する場合は、養水分の競合を避けるため草生を短く維持し、樹冠下に刈草やわら等でマルチします。また、畑地かんがい施設の整備が進められている地域では、適宜潅水を実施します。特に、今年定植した苗木や幼木は根量が少なく、乾燥の影響を受けやすいため、優先して灌水を実施してください。
(2)排水対策
降雨が続き、園地内が過湿となる場合、根部が障害を受けて樹勢が衰弱することがありますので、園地内に滞水しないよう、溝を掘るなど排水対策を講じます。

4 病害虫防除について

(1)梅雨に入って降雨が続くようになると、斑点落葉病や褐斑病、輪紋病、炭疽病等の感染が増えてきます。また、気温も高くなりハダニ類などの害虫も発生してきます。週間天気予報などを活用して降雨の合間を捉え、散布間隔が空き過ぎないように防除を実施してください。また、本年4月の凍霜害により着果不足となった樹では、枝葉が繁茂することにより病害虫発生のリスクが高まりますので、十分量を散布します。
(2)これまで褐斑病の発生は確認されていませんが、昨年も県南部を中心に発生が見られています。特にも前年多発園では、防除速報や予察情報を参考に防除を徹底します 。
(3)黒星病については、他病害との同時防除を兼ねて、本病に効果のある予防剤を定期的に散布してください。その際には散布ムラがないように十分量を丁寧に散布します。また、降雨が予想される場合は、降雨前に散布を行ってください。そして、園地を見回り、発生が確認された場合は見つけ次第、発病葉や発病果を摘み取り、土中に埋めるなど適正に処分してください。
苗木など未結果樹での発生にも注意し、成木と同様に薬剤防除を徹底します。なお、落花10日後以降のEBI剤の散布は、耐性菌が発現する恐れがあるので行わないでください。

ぶどう

1 生育概況について

定点観測地点(紫波町)の「キャンベルアーリー」の調査結果では(表3)、開花始は平年より4日早くなっています。5~6月が比較的気温が高く、日照もあったため、新梢の伸長も含め生育が進んだものと推察されます。一方、「紅伊豆」などでは、1月の低温の影響で「ねむり(凍害)」により生育が遅れる樹も見られています。

表3

2 栽培管理のポイント

(1)摘粒(詳細は5月28 日発行の「農作物技術情報第3号 果樹」を参照)
ア 果粒肥大を促すとともに、裂果や病害の誘発防止、着色向上といった品質確保に必要不可欠な作業です。
満開後30 日以内の終了を目標としますので、今年は7月中旬までに実施します。
(2)袋掛け
ア 時期は7月上旬以降できるだけ早い時期が良く、摘粒などが遅れる場合には、晩腐病の一次感染期を逃さずに防除し、その後、袋かけを行うことが大切です。
(3)摘房
ア 「キャンベルアーリー」では、表4を参考とし、葉数に応じて着房数を決定してください。
最終的には一坪(3.3 平方メートル)当たり、新梢数20 本、着房数27~30 房が基準となります。樹勢が弱い場合は、1房当たりに必要な葉数を参考に、葉数に応じて着房数を制限してください。
イ 「紅伊豆」「シャインマスカット」などの大粒種では、1新梢1房以下が基本です。ただし、種あり栽培とする場合は、一気に摘房せず、強い新梢は、1新梢2房着果させておき、着色期前までに1房に摘房していきます。弱い新梢は、早期に1新梢1房とし、同様に着色期をめどに、伸長の程度に合わせて2~3新梢1房に調整していきます(表5、図1)。
ウ 着色期以降も着果が多いままだと、着色や糖度上昇が遅れ収穫自体も遅れるなど、樹体の凍寒害の危険につながりますので十分に注意してください。

表

表5

図1

(4)土壌水分管理
ぶどうの果粒が柔らかくなってきた時期以降に、まとまった降雨があったり、急激な潅水を実施すると裂果が助長されることがあります。
こうした園地では、点滴潅水等により少量の水を定期的に潅水することで裂果の発生を軽減できるといった報告がありますので、必要に応じて実施を検討してみてください。

潅水が実施できない園地では、稲わらなどを用いて、マルチを行います。
逆に降雨が続く場合は、雨よけハウスでは、雨樋等を点検し、園地内に水が停滞しないよう、溝を掘るなど排水対策を行ってください。                       

3 病害虫防除について

(1)病害虫の発生状況に合わせて適期防除に努めてください。
(2)薬剤によっては、果粉の溶脱、果面の汚れなど品質を損ねることがありますので、使用方法・時期などに注意してください。

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農林水産部 農業普及技術課 農業革新支援担当(農業研究センター駐在)
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